まずはこちらの2つの記事についてです。
最終回「西郷どん」暗殺された大久保のとこに「忘れもんをした」と死んだ西郷が戻って来たのかと思った
(exciteニュース)
NHK放送総局長 終了の「西郷どん」に「素晴らしいドラマを作ってくれた」
(スポニチ)
最初のexciteニュース。このライター氏には、実はあまり共感したことはなかったのですが、『西郷どん』の一部の記事は同意できました。近代物を描くには、それでなくても考証などが難しいのに、記事中にあるようなポリティカル・コレクトネス、所謂ポリコレもあって、主人公の思想を強く出すのが難しくなっているのは確かでしょう。文中にあるような「その(ポリコレの)波に飲まれた悲劇の大河ドラマ」という印象はありませんでしたが、以前の幕末大河に比べると制作面での制約も多かったかと思われます。特にNHKはかなり自主規制しているようにも見えますし、それが女性主人公の幕末大河が制作された一因でもあるでしょう。
そういう中で西郷隆盛を描くとすれば、最初から大いなる思想を持ったリーダー的存在というよりも、自らも下級武士出身であり、庶民の味方としての主人公が、時代の変化に伴ってリーダー的存在に押し上げられて行く、その成長過程という形を取らざるを得なかったのかもしれません。記事中のこの部分に、それが表れているかと思います。
「戦国ものならまだしも、幕末ものはまだ記憶が生々しい。戦ったあちらとこちらのどちらの視点で描くか、悩ましい。結果、西郷隆盛は、清濁併せ呑む、聖人のように、といって天の人ではなく、あくまで地に足をつけ、庶民のために行動した人として描かれた。鈴木亮平は、このスーパーヒーローではない西郷隆盛を立派に演じきった 」
この記事の最後に、来年の大河についても触れられています。来年は明治後期からのドラマであり、より今の時代に近づいているため、スポーツプロパーで、史実ベースのフィクションとして描かないと、さらに描きくいというのもあるでしょう。近代物だと、様々な面で現代につながる描写、それも史実ベースでと期待する声もあるかもしれません。しかし、それは結構難しいと思います。左右どちらからもクレームが来る可能性が高そうです。
そしてその次の、木田総局長によるコメントです。NHK関係者としてのコメントですが、私としては特にこれに対して異存はありません。とりわけ
「時代が変われば、大河ドラマで一度取り上げたことある素材でも全然違う 」
にはかなり同意できます。前出の制作面での制約や、ヴィンテージ物の大河を、今そのままでは作れない点にも関連しています。木田氏のコメントにある視点の新しさ、あるいは視点を変えなければならない部分というのはどうしても出て来るでしょう。以前同じような薩摩大河でも、『翔ぶが如く』とこの『西郷どん』は別物だし、描かれ方も違うから比較は難しいといったことを書いたことがあります。
主人公が共通する以上、似たようなシーンも登場しますし、それがしばしば比較対象になることはあります。ただコンセプトは全然違うわけですから、どちらがいい悪いとはなりにくいでしょう。無論『翔ぶが如く』そのものも面白いのは事実ですが。あと主人公が男性か女性かでも描かれ方は違いますが、これについてはまた改めて。なお視聴率ですが、東京13.8パーセント、大阪15.8パーセント、鹿児島では30パーセント超えで、北部九州では18パーセント(373news.comより)となっていました。この数字で見る限り、やはり西へ行くほど視聴率が上がっています。『軍師官兵衛』も、北部九州で25パーセント近くあったようですから、地元、準地元の数字はやはり高いと見るべきでしょう。
第47回では、単に西南戦争だけではなく、後に残された人々の表情も色々登場しました。西郷家の人々は言うまでもありませんが、最後まで登場した国父様こと島津久光、亡兄斉彬の写真のそばで、碁石を片付け始めたのは、この戦いの正に「終局」を予感したからでしょうか。そしてヒー様こと徳川慶喜、なぜ俺みたいに逃げなかったと言うものの、隆盛は敢えて逃げなかったといえます。その慶喜を一喝した勝海舟は龍馬とよろしくやってくれと言いますが、龍馬もさることながら、彼のパートナーといえば、やはり大久保利通ではあるでしょう。それと全体的に鰻が多く出て来る大河でしたが、当時はやはり獣肉よりも、簡単に手に入る蛋白源ではあったと思われます。だから寺田屋事件の前に、鰻を取って食べたというのは、可能性としてはあったかもしれません。
なお『西郷どん』の総集編の放送ですが、
12月30日(総合テレビ)
〈第一章〉薩摩 午後1:05~2:05
〈第二章〉再生 午後2:05~2:55
〈第三章〉革命 午後3:05~4:25
〈第四章〉天命 午後4:25~5:35
1月2日(BSプレミアム)
午前8時から4本続けて放送
このようになっています。
(公式サイトより)
スポンサーサイト