入内前の藤原多美子が住んでいる屋敷で奇妙な物音がし、漢学の教師として屋敷に通っていた白梅は、ネズミの仕業と言って目草(ハッカ)を焚かせます。しかし奇妙な物音の正体は、五寸釘で人形を床下に打ち付ける音でした。さらに多美子の食事に毒が仕込まれていたことで、その配膳を請け負っていた女官が里下がりさせられるなど、入内前の姫を巡って、何やら陰謀が仕組まれているようです。そんな時白梅は在原業平に会います。
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多美子のいる屋敷で白梅は在原業平と出くわす。業平は訝しむが、すべて高子が仕組んだことと知って納得する。しかし高子は、敢えて業平を通さずに道真に要請してのに、白梅が見つかったことですべてがわかってしまう。その一方で、多美子の警護に関してはかなり事態が緊迫していた。道真は業平がいるから、わざわざ白梅が出るまでもないと言うが、入内前の姫の屋敷に、男が立ち入るのはまずいと白梅を頼りにする。
その多美子は入内前日に父良相の屋敷へ移り、それから御所へ向かうことになっていた。良相の屋敷から御所までは近く警護もできるが、問題は今の屋敷(多美子の母の実家)から良相の屋敷までの道順だった。過剰な警備はつけられないが、誰が多美子を狙っているかもわからなかった。そして百鬼夜行のこともあり、手が抜けない状態だった。道真は百鬼夜行という言葉にぴんと来るものがあった。
その頃紀長谷雄は、昭姫の店に来ていた。人通りが多いという長谷雄に昭姫は、藤原の姫様の入内が間近であること、さらにその祝いとして、藤原屋敷の前で粥の炊き出しが行われることを話す。昭姫はまた長谷雄に双六を勧めるが、長谷雄はもう二度としないと決めていた。最近道真も付き合いが悪いのでこの店に来たのだが、そこで長谷雄は店の女、小藤が怪しげな男に羽交い絞めにされているのを見る。
その男は伴善男の甥の豊城だった。同行していた中庸の制止を振り切り、小藤を慰みものにしようとするが、小藤の夫が現れる。しかし豊城はたじろぐ様子もなく、そこで長谷雄が小藤を助けたさに登場する。名を名乗れと豊城にいわれた長谷雄は、自分の名を名乗るが、紀家、特に兄の夏井を恨む豊城はその場で刀を抜いて、小藤の袖を床に突き刺し、そのうえでサイコロ勝負を挑む。お前が勝てばこの女を解放すると言うのだった。
長谷雄は受けて立つしかなかった。しかしその時、店の女たちが入り口で慌ただしくしているのを目にする。賽の目は豊城が8、長谷雄が9であったため、長谷雄が勝って小藤が解放されるはずだった。しかし豊城はいかさまだと言いがかりをつける。長谷雄は窮地に陥るが、その時業平が現れる。豊城は業平が昔藤原の姫を攫ったことに触れ、入内前の姫はさぞかし味がいいのだろうなと無遠慮に話す。
中庸が何とか豊城を連れ帰る。あれは誰なのですかと訊く長谷雄に、紀夏井の弟だと業平は答える。長谷雄にしてみれば、夏井の家はとうの昔に枝分かれており、一緒にされてはたまったものではなかった。危険な賭けに出た長谷雄を昭姫はほめるが、実は入り口付近の様子で、誰かが役人を呼びに行ったのに感づいていたのだった。しかしうちで借金を踏み倒したのは忘れませんからねと、今度は昭姫に釘を刺されてしまう。
業平は豊城の刀を不審に思っていた。それは検非違使の刀だったのである。魂鎮めの祭りで矢が撃ち込まれた際、殺された検非違使の刀は回収されていなかった。矢を射込んだのは豊城ではないかと思ったのである。そして業平は、長谷雄がなぜまた双六をしているのか尋ねる。暇だからと言う長谷雄に、手伝ってほしいことがあると業平は持ちかける。何でもやりますと言う長谷雄に、「何でも」だなと業平は念を押す。
そして藤原良房の屋敷では、護摩が焚かれ、祈祷が行われていた。表向きは多美子の入内の無事を祈願してのことだが、養子の良房はそれに裏があることに気づいていた。そして庭先で間者と会い、多美子の女官、深雪が失敗したという報告を受ける。良房は、ではやはり物の怪の力に頼るとするかと、意味ありげな言葉を吐く。その頃多美子は、奉納の写経を行っていた。入内まであと5日だった。
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品行の悪さで定評のある豊城が昭姫の店に押し掛け、乱暴狼藉を働きます。しかし業平がその場に呼ばれ、豊城は店を後にしますが、その時の豊城の刀が、検非違使の物であることに気づきます。あの場で矢を射た犯人は誰なのか、そして多美子をどうやって安全に父の屋敷に移すか、なにかと気苦労が多そうな業平です。その時店に来ていた長谷雄が暇そうにしているのを見て、業平はあることを思いついたようです。そして多美子の入内を快く思わない良房は、「物の怪の力」を借りることにします。
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