男性主人公の大河に関しての投稿をしようと考えていましたが、先日側室に関するコメントを頂いたので、まずそちらの方を投稿することにします。大河に限らずですが、日本の場合は主役、あるいはそれに準ずる女性が、比較的清廉潔白に描かれることが多いです。無論これも場合によりけりで、例えば『太平記』の阿野廉子や、『花の乱』の日野富子などは、元々がかなり影響力が大きい女性たちであるため、悪女的に描かれていました。それでも日野富子は足利義政の正室ですが、阿野廉子は後醍醐天皇の寵姫です。後醍醐天皇には中宮や女御もいましたが、そのいずれでもありません。
この廉子は、天皇の皇子である護良親王(大塔宮)を失脚させ、さらに暗殺にも関与したとされている人物です。そして、我が子恒良親王を皇位につけようとし、実際親王は即位して後村上天皇となっています。日本史上の著名な寵姫や側室で、これに近い人物としては淀殿がいます。ただし淀殿は後継者をめぐる争いがあったわけでもなく、自分の息子秀頼が後継者になることが決まっていました。むしろ関白秀次がこの件で割を食っています。淀殿は跡目争いというよりも、幼くして父を失い、また母の自害の元となった男の側室となり、自信の最期が悲劇的という点でドラマ向きといえます。
淀殿はともかく、廉子のような女性を準主役的に入れると、一般的な女性主人公とはまた違った味わいがあるかと思います。ただし問題は、こういう女性がどのくらい実在したのかです。それに加えて、大河であまりそういう部分を描くというのは、好ましく思われないかもしれません。ただ側室というのは、明らかに現代とは違う発想であり、その当時らしい雰囲気を出すうえでは、適度にこういう存在を入れていいかとは思います。『独眼竜政宗』でも、愛姫と猫御前の確執などがありました。『風林火山』の由布姫と油川夫人(於琴姫)などもそうであるかと思います。
女性主人公についてはもう何度も書いていますが、彼女たちが常に正義の側に立つ存在というのが、当然ではあるものの、あまり面白みを感じさせないという点もあるでしょう。『江~姫たちの戦国~』の淀殿や『八重の桜』の八重が比較的面白い存在だったのは、彼女たちが追い詰められる側であったというのもあるかもしれません。それとはまた違いますが、たとえオリキャラであってもえぐい感じの側室を登場させ、それによってドラマそのものが引き締まるのなら、ことさらに主人公にしなくても、女性を活かす手段とはなりうるでしょう。
ただし大河の男性主人公は、近年は正室しか持たなかった人物が多くなっています。山内一豊、直江兼続、黒田官兵衛(*)などはそうですし、また再来年の主役の明智光秀も、正室しかいなかったといわれています。(西郷吉之助は島妻がいますのでここでは省きます)側室を入れると話が複雑になるというのもあるのでしょう。しかしたまには側室の多い武将を出して、正室と側室の対立、それによって導き出されるものをフィクションとして、うまく話に織り込むという方法もまたありかと思うのですが。
(*)前田利家を入れていましたが、この人は側室がいたので外しています。尚1997年大河の主人公、毛利元就は側室がいましたが、正室死後に継室のような形で迎えています。
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