『JIN -仁-』には、野風が万華鏡を覗く場面が度々登場します。日本には既に、1810年代には輸入されていたようです。ご存知のように万華鏡は、角度によって様々な図柄が楽しめるわけですが、それぞれの角度で見える図柄が異なり、それが、仁が医療に携わることによって、変わって行く人間模様を暗示してもいます。元々タイムスリップの前から、この万華鏡の図柄は使われていましたが、タイムスリップ後野風が登場し、彼女がこの万華鏡を覗いているところで、このからくりがより存在意義を高めるようになっています。
ところで仁の人間関係ですが、第1シリーズでは野風を含む、市井の人々が治療の対象になっていました。これが完結編では、その当時の要人、著名人へと変化し、治療に携わることによって、歴史を変えてしまうのではないかという懸念が、より大きくなって行きます。要人が多くなるのは、幕末の激動が一段と大きくなるのが原因の一つですが、それ以外にも、仁の名声を聞きつけた諸侯が、彼を招聘するという回もあります。もちろん身元も定かでなく、あくまでも医療の腕の確かさのみで幕末に医師として存在し、いつ未来に帰るかわからない危うさと常に隣り合わせの状態です。
一方で仁の存在を快く思わない人たちがいます。この時代の医学から見て、つい仁を含む蘭方医と漢方医の対決と考えがちです。ペニシリンを巡る医学館との確執がそれを物語っています。しかし実際は、仁の登場によって困るのは、彼と違う流れに属する蘭方医たちです。いわば、蘭方の内部抗争ともいえます。実際、野風の乳癌の手術の妨害を企んだのは、彼女の本来の身請け先であったさる御家門の藩医、三隅俊斉でした。今後も、この対立はまだ続きそうです。尤も、身内や親しい間柄が実は怪しいというのは、推理物、捕物関係にも多く登場します。意外性が読者、あるいは視聴者を惹きつけるという側面があるからでしょう。
ところで今夏放送予定のパペットホームズ続編は、第1シリーズの補完の可能性が高いのではないかということは、前にも書きました。つまり、ワトソンメモに記された小さな事件が中心になるということですが、第1シリーズの最終回を知っている身としては、この小さな事件を通して何が変わり、あるいは何が変わらずにあの結末へと結びつくのか、それを確認したいという気持ちがあります。正に『JIN -仁-』ではありませんが、これだとあの結末にならないというエピソードがあり、しかしそれに対して修正力が働く回もある。そういう楽しみ方が出来るといいのですが。
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