大老井伊直弼に反撃するため、京への出兵を提案する吉之助に、斉彬も乗り気になります。先発隊として京へ乗り込み、準備をする吉之助ですが、教練中の斉彬はその場に崩れ、やがて息を引き取ります。
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吉之助たちは京で着々と準備を進め、鍵屋で皆で一杯やっていた。しかしそこへ月照が訪ねて来て、書状を渡す。それは斉彬の訃報であり、死後8日経って京に届けられたのである。教練での無理が祟ったと思われるが、近衛忠煕や橋本左内は、毒殺の可能性も捨てきれないと言う。吉之助は忠煕に、もう一度詔を帝に発してもらいように頼む。それは最後の手段として、水戸に出兵をしてもらうということだった。
橋本左内は京の同志へこのことを知らせ、吉之助は水戸斉昭に会いに江戸へ向かうことになった。気をつけるように2人に月照が忠告する。そして江戸では、まず一橋慶喜が江戸城で井伊直弼に面会した。所詮自分の言うことなど聞き入れぬと察した慶喜は、抜き打ちで会いにやって来て、日米修好通商条約の件で直弼を批判するが、当の直弼は多忙を言い訳にして、型通りの平身低頭を繰り返すのみに終始した。また松平慶永と水戸斉昭も登城した。
直弼は知ってか知らずか、2人に茶も食事も出さず長時間そのまま待たせておいた。空腹を抱えた2人がしびれを切らせた頃、直弼はやっと姿を見せ、何も出されていないことに驚いてみせ、さらに斉昭に、無理をなされると薩摩守のあとを追いかねないと嫌味を言う。そして今回も日米修好通商乗う役の件を持ち出された直弼は、慇懃無礼な態度を繰り返す。しかもこれが不時登城ということで、斉昭は蟄居、慶永も隠居と謹慎の処分を受けた。このため京から出兵の願いに駆け付けた吉之助は、斉昭に面会することもできなかった。吉之助は磯田屋を訪れることにした。
案の定そこには慶喜がいて、およし(ふき)に一緒に逃げようと打ち明けていた。そこへ吉之助が来て、2人は2階で話をする。水戸を動かそうと懸命な吉之助に、たとえ天子様の詔が下されたところで、蟄居処分で出兵などできぬと話す。また慶喜は自分もそうなることを予感していた。日本のために立ってくれと言う吉之助に慶喜は言う。
「薩摩守はもうおらんのだ。口惜しいが、あの男は大きかった」
そして2度と会わぬだろうと言って慶喜は去る。およしには、しばらく待っているようにと言って慶喜は磯田屋を後にした。
また詔の件は、直弼の知るところとなった。何と恐ろしい詔じゃと口にする直弼に、長野主膳はこの写しが諸藩に出回っていることを告げる。しかし帝を捕縛するわけに行かず、このような形で、帝をたぶらかした者を逮捕するべきと主膳は言う。吉之助は思いつめていた。自刃を考えもしたが、月照から、薩摩守のご遺志を無駄にしてはならない、ここで死ねば、吉之助の頭に中にある薩摩守の考えも無に帰してしまう、薩摩守となって生きるようにと諭される。
こうして幕府にたてつく者たちの捕縛、所謂安政の大獄が始まる。近衛忠煕は意気消沈するが、月照は幕府に赴くつもりでいた。そんな月照に吉之助は、薩摩に逃げる方法を勧める。いずれまた月照の力が必要になるとにらんでいたからだった。そして山伏に変装させることを思いつくが、かえって目立ってしまうため、普通の服装で薩摩へ行くことになった。また薩摩言葉も控えることになり、左内の手配で吉之助、俊斎、月照は舟に乗り込む。左内は別れ際に薬を渡し、日本国を治す医者になりたいと言う。
左内はこの時船頭に変装し、3人を見送る。しかしその変装を長野主膳に見破られ、捕らえられてしまう。これにより、吉之助と月照も幕府の狙うところとなった。吉之助は遠路を歩くことに慣れない月照を背負い、薩摩を目指す。しかし俊斎が、宿場で月照と吉之助の人相書きを見つけ、街道を歩くのが危険であるため、山中の道なき道を歩くしかなかった。宿にも泊まれず、3人は荒れ寺で夜を明かすことにする。
吉之助は月照に、殿がいなければ意味のない男だと言ったことを思い出していた。月照の「薩摩守になりなさい」、慶喜の「薩摩守はもうおらんのだ」の言葉が頭の中で渦巻き、吉之助は斉彬から拝領の脇差で自刃を考える。その時背後で声がした。振り向くとそこに斉彬が立っていてこう言った。
「お前は一体何を学んできたんだ」
吉之助は斉彬に近寄ろうとするが、それは幻だった。嗚咽しながら斉彬の遺志を継ぐことを誓う吉之助を、月照が見ていた。
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まず、殿が立っている姿がなんだか舞台的ですね。背景の中に紛れ込んでいると言うべきか。もっと普通の格好で出て来てもよかったかと思うのですが、吉之助が最初に出会ったのがあの格好だから、今回もこうなったのでしょうか。
それと山伏の格好で歩くシーン、あれをお虎がやると妙に様になります(笑)。あと左内の船頭の変装も似合っています。またヒー様がしばらく会えないとおよしに言うシーンですが、およしも何か気づくところがあったようです。何か悪いことをして、追われているとでも思ったのでしょう。これがその後何かの伏線になるのでしょうか。あとこの次に慶喜と吉之助が会うのは、既に敵同士となってからでしょう。
伏線といえば、前回の「お前はわしになれ」が様々な形で登場します。改めて吉之助が、殿の不在を実感せざるをえなくなるわけで、だからこそ水戸に出兵を依頼する形となるわけですが、わざわざ登城するように仕向け、それを狙って蟄居にするという井伊直弼のやり方は、実に巧妙でした。しかもこの直弼のポーカーフェースが、その悪どさというか、面従腹背的な雰囲気を強めているように感じられます。
そして詔、所謂戊午の密勅ですが、将軍を通さずに水戸藩に直接届けられたこともあり、幕府はこの勅諚の内容をひた隠しにしました。またこの勅諚の取り扱いを巡って、水戸藩の状況が混沌としたともいえます。それにしても近衛様の羽織、あれは鳥獣戯画の柄なのでしょうか。
しかし『鳴門秘帖』のあらすじでも書きましたが、無論別々に脚本が作成されていると思うものの、幕府VS反幕府ということでどこか似通った点もあります。一度その共通点を拾い出してみようかとも考えています。
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