結局龍馬の遺体は見つからずじまいで、仁は、やはりあの時病院に搬送されてきた男は、タイムスリップした龍馬ではなかったのかと考えます。一方、咲の縁談話が進み、野風の身請けも間近になりました、野風の乳癌の疑いに関しては、未来に影響が出るのではないかと、仁はことさらに無視していましたが、佐分利が間違いなく癌であると診断します。実は佐分利は、華岡流の免許皆伝であること、しかし手術をした遊女が感染症で亡くなったことから、逃げるようにして西洋医学所に来たことを、仁は山田純庵から訊かされます。
実際佐分利は、今までよりも効果のある麻酔薬を作り始めていました。悩んだ仁は、緒方洪庵の墓参りに出かけ、墓前で背後に何か人影を感じます。実はその人影は、漁師の格好をした坂本龍馬でした。あの後、漁師に助けてもらい、こっそり江戸に戻って来ていた龍馬は、野風の身請けが行われている店の前にいた仁にいきなり抱きつき、再会を喜びます。そして龍馬は、野風の手術をしてくれと、土下座して仁に頼みます。無論手術をすれば、妾の件も立ち消えになり、花魁としてもお払い箱になるわけですが、その時は自分が彼女の面倒を見るからといわれ、仁は野風の手術を決意します。
手術に当たって、仁は未来との写真を箱に入れ、よく行く丘に埋めます。自分の気持ちが鈍らないようにするためでした。野風は吉原を去り、手術の当日になりました。佐分利が作った麻酔薬、通仙散を飲んで、手術台に横たわる野風。そして仁は、いつもの癖で「咲さん、メス」と口に出してしまいます。一方橘家では、結納が執り行われていました。しかし、仁の声が聞こえたような咲は、その場で話を断り、兄の恭太郎は勘当を言い渡すものの、こっそり妹に、仁の元に行くように勧めます。正装のまま走り出す咲。
しかし仁たちが手術を行っているその外に、刺客たちが押し寄せます。三隅俊斉が金で雇った連中で、手術の妨害をしにやって来たのでした。そこに咲がたどり着き、妨害するならばここで自害すると懐剣を抜きます。本気を見せるために、咽喉を突こうとする咲。そんな中手術が終わり、仁は、野風は身請け先の御隠居を辱めたという刺客たちに、ご隠居からは温かい言葉をいただいた、あなた方は誰に言われてここに来たのかと返し、刺客たちは言葉もなく去って行くのでした。
仁はその後、例の丘に行って写真を掘り出します。箱の蓋を空けるまでは、何が起こるのか不安でしたが、空けてみると、写真は影も形もなくなっていました。何か肩透かしを食わされたような気持と、これで写真から解放されたことに安堵する気持ちがないまぜになる仁。そして野風は、雪が降り始めた中、仁たちの前から去って行きます。龍馬の世話にならず、横浜で手習いを教えることにしたのです。そして仁は、仁友堂で額を壁に取り付けようとして、脚を踏み外し、頭部を打ちます。立ち上がろうとすると、頭の中から、何か動悸にも似た音が聞こえてくるのですが、これは一体何であるのか…。
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