反藤原勢力である源融が、とある桜の老木に目をつけ、別荘の庭に植え替えようとします。ところがその木は何やらいわくつきの木でした。実際にその木を見た道真は、どこか不自然な点があることに気づきます。
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業平は、その木が祟られていると見せかけることが、何の得になるのだと道真に尋ねる。道真は、この木をここから動かされて困る人間の仕業だろうと言うが、紀長谷雄はやはり何か秘密があるのだと、一人色めき立つ。最早他の木にした方がいいのではないかと道真。さらに、寄生している茸のせいで、病気になっていると言うのを耳にした、件の山菜売りの女が、彼らを引き止めようとし、長谷雄の手に触ったせいでかぶれてしまう。
道真は業平の仲介で、直に源融に合うことになった。確かに塩焼きの場にいた人物だったが、桜を植え替えても枯れてしまうという道真の言葉に、急に態度を変える。その時兄である信の文が届く。造園工事を中止せよとの内容に、融は、藤原に入れ知恵されたのだろうと怒りをあらわにする。
嵯峨天皇の子である融は、藤原一族に政権を握られていることを無念に思い、こきおろし、果ては自分が幸せであれば、世の中も落ち着くという、浮世離れしたことを口にする。最早これ以上の説得は無駄と道真は悟るが、帰りにもう一度古桜のある場所へ行くことにする。そこには例の山菜売りの女がいて、ひどくわけありげな感じだった。
実はこの女は、慕う男が東国に出兵することになり、花が3度咲いたら帰ってくることになっていた。しかし4度花が咲いても男は戻らず、切り倒されでもしたら一大事と、人々が近づかないように色々な細工をしていたのだった。
業平は東国への兵役が3年から5年に延びたため、それで遅れているのでないかと言う。また道真は、茸が生えている枝を切ればよくなると思うが、今掘り返したり植え替えたりするのはよくないと結論を下す。しかし融はこの桜の木で頑なになっており、実際にこの木に秘密があるところを、見てもらうしかないということで、業平と道真は一計を案じる。その後業平は自邸に融を招いて宴を開く。
その帰り、月を愛でながら牛車で業平は融を送ろうとするが、その途中牛がいうことを聞かないということで、例の桜のある場所に出てしまう。早う我が邸で桜を見たいものよと話す融だが、その桜の木の下に、奇妙な物があるのを見つける。
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桜の木に色々な仕掛けをし、人の足を遠ざけていたのはやはり山菜売りの女でした。しかもこの桜には茸が寄生しているわけで、下手に移すと枯れてしまうことにもなりかねません。しかし藤原一族に恨みを持つ源融は、何としてでも自分の別荘に桜を移すつもりのようです。仕方なく業平と道真は、その山菜売りの女にも協力してもらい、融が桜を移し替えるのを断念するように策を練ります。それにしてもこの時代は、坂上田村麻呂の東国平定の頃だったのですね。
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