宜来子の父である島田忠臣は、かつて道真の父是善に師事していました。優秀さと、娘を道真に嫁がせる予定であることから、嫌がらせを受けるものの、道真(阿呼)に助けられます。しかしその阿呼に、自分は及ばないと感じるようになります。
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ある朝、道真の父是善が講義に赴くと、写本が水浸しになっていた。水差しの始末をしていなかったことを、是善に詫びる忠臣。ならばこの写しを二巻作れと是善は言うが、今度は忠臣の筆がなくなっていた。その前にも忠臣は紙を紛失しており、他の門下生の中傷が飛び交う中、当時阿呼と呼ばれていた道真がその場に現れて犯人を言い当てる。
実は阿呼は、忠臣の部屋の戸口と敷居に柿の渋を塗っていたのだった。忠臣より先にその部屋に入った者には、その渋がついているはずだった。しかもその男の着物から、忠臣の持ち物が色々と出て来た。その後写本を仕上げた忠臣は書庫で阿呼を見つける。
阿呼はそこで板切れに詩を書きつけていたが、忠臣を見ると逃げ去って行った。その場に残された板切れを見て、その出来に忠臣は驚く。しかしそこへ是善が呼びに来たため、忠臣は板切れを懐に入れ、講義の手伝いをするが、ふとしたことでその板切れを落としてしまう。
そこに書かれていたのは、以前是善が講義をした漢詩を読み直したものだった。是善は忠臣の作だと思い込み、それを門下生たちに見せて、己の力で新しきことを切り開くことこそ大事と訓示する。しかし忠臣は、その場で阿呼の作だと言えなかった己を恥じる。
忠臣は是善の跡を継ぐ予定だったが、阿呼が元服するまでという条件をつけ、その後は見聞を広めたいと是善に話す。しかし是善は、阿呼と忠臣の娘、宜来子を結婚させるつもりでいた。その阿呼は、まだ幼い宜来子に論語を教えていた。
8年後に戻った忠臣は、宜来子がいつの間にか眠ってしまっているのに気づく。その時、藤原基経の屋敷より車が来ていた。忠臣は大納言暗殺が失敗に終わったことを詫び、極刑をも覚悟するが、基経は、薬の替えはあっても、そなたの替えはどこにもおらぬと言い、自分のために詩を読んでくれと言う。
再び8年前。忠臣は阿呼に礼を言う。忠臣は阿呼が是善の跡を継げると確信していた。しかし阿呼は、父のような文章博士になるのではなく、唐へ行きたいと言う。忠臣は内心驚きつつも、ならばまず大学寮に入るように言い、勉強をするように勧める。
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既にこの頃から、捜査の方の才能も芽生えていた道真ですが、ヒントは柿の木に登っていて、女官からかけられた言葉でした。一方で忠臣は優秀な門下生でしたが、道真(阿呼)の非凡な才能、唐へ行きたいという強い思いに、自分とは違ったものを感じます。
そして現在(8年後)の忠臣は、すっかり基経の手下のようになった感があります。大納言は伴善男のことと思われます(詳しくは
こちら を)。しかし基経が言うように薬が効かなかったのではなく、道真の処理が正しかったと、この場合は見るべきなのでしょう。
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