由布姫退場回であると同時に、雪斎の退場回でもありました。この雪斎がいなくなったことにより、今川家が勢いを失い、そして人質であった元信が台頭することになって行きます。一方武田は木曽攻めを行います。
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勘助は晴信から、由布姫が吐血したことを知らされる。諏訪の小坂観音院へ向かった勘助に由布姫は会い、諏訪湖を久々に見たいと言う。戸外で由布姫は勘助に、四郎のことを頼むと言い、勘助を戸惑わせる。また生まれ変われるのなら、男に生まれてお屋形様や勘助と戦をしたい、政を行いたいと言い、さらに男でもなく、水鳥となって自由に空を羽ばたきたいとも口にした。姫様には生きて頂かなければ困りますると言う勘助に、そなたを困らすのが私の癖と由布姫は答え、そして、庭に咲いている桃を折って来てくれと頼む。
高島城に入っていた晴信がやって来て、桃を活けた部屋で三人が語らう。例のことで由布姫に意見を聞きたいと言う晴信に、勘助は嫁取りのことかと表情を変える。しかしそれは、木曽への出兵のことだった。不穏な動きを見せる木曽一族に対して、越後とどちらを先に討つべきかを晴信は由布姫に尋ね、由布姫は木曽をまず討って、その後晴信の姫を木曽と縁組みさせることによる、両家の間は盤石になると言う。晴信はこの意見を入れ、勝てば真っ先にそなたに知らせると言い、真田と相木の調略が行われる。
その頃晴信が陣を敷いた朝日城で、伝兵衛は鉄砲を点検していた。そこへ葉月が来て、なぜ伝兵衛は独り身なのだと尋ねる。葉月とのやり取りの中で伝兵衛は、自分がどうやら彼女を愛していることに気づく。また勘助は木曽へと発つが、由布姫にしばし引き止められ、戦が終われば嫁をもらって、山本家の血筋を絶やさぬように約束させる。また、己が家のことをおろそかにする者に、四郎は託せぬとも言う。しかしこれは由布姫にもつらいことであり、これが二人の今生の別れとなった。そして勘助が木曽福島で策を練っているところで、狼煙が上がる。
それは、長尾景虎が攻めて来たということだった、木曽攻めは中断され、両軍は犀川を挟んで200日の間にらみ合う。長尾方の宇佐美定満は、旭山城を挟んだ葛山に陣を置くことを提案する。これで武田とも五分になると宇佐美。この付城の策に相木と真田は感心するが、それは兵糧が尽きれば武田は終わるということでもあった。秋山虎繁は、敵を褒めている場合ではないと言い、勘助は、今川方に間に立ってもらうことにした。そこで太原雪斎が長尾陣を訪れ、荘子の言葉を持って和睦を申し入れる。
武田は当てにならぬと言う景虎に、ならば自分を信用してほしいと言う雪斎、宇佐美は、雪斎の経歴を景虎に教え、景虎も結局和睦を受け入れる。晴信は雪斎に酒を振舞うが、雪斎はわずかしか飲まず、早々に駿河に戻り、松平元信に酒を用意させた。元信が六歳の時から手塩にかけた雪斎は、彼が元服したことに喜ぶ。また武田北条は大したことはない、ゆくゆくはそなたが今川の力となり、天下の平安をと言ったところで雪斎は昏倒し、帰らぬ人となる、この松平元信、ひいては元康と名乗ることになる青年は、後の徳川家康である。
雪斎の死は今川家に大きな衝撃をもたらした。そして諏訪では、由布姫の最期が迫っていた。勘助は後ほど来ると聞いた由布姫は、木曽との戦のことを訊き、勝ったと答える晴信。また四郎の元服後の名を勝頼と決めたと聞かされ、その名に恥じぬように生きよと四郎に伝える。志摩の嗚咽を聞き、自分はもう死んだのか、まだ自分は空を飛んでおらぬと言いつつ、由布姫は亡くなった。その頃武田方の藪原砦では、木曽は恭順の姿勢を見せているが、家中が二つに割れているため、守りを緩めない秋山を勘助がねぎらう。
その時彼方の方で鬨の声が上がり、木曽の兵たちが攻めて来た。声の方へ向かおうとする勘助に、伝兵衛が急ぎ足でやって来た。そして勘助に、諏訪の姫様が亡くなられたと伝える。驚きのあまり声も出ず、辺りの声も聞こえない勘助。やがて、取り落とした兜を拾うこともなく刀を抜き、鬼神の如く木曽の兵を倒して行った。あの、自分を困らせる姫がもうこの世にいないということが、信じられない勘助は叫んだ。
「さようなことがあるわけがなかろう!」
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この木曽攻めの際の当主は木曽義康、そしてその子が木曽義昌です。木曽義昌といえば、『真田丸』で滝川一益から人質を受け取り、その人質の一人だった真田幸隆の妻、とりから「信玄公の前で小便を洩らしおった」といわれた、あの小物臭漂う人物です。
そして由布姫が亡くなったことで、勘助は何やら八つ当たりの如く、木曽軍の兵に襲い掛かります。由布姫から山本家を絶やさぬようにいわれ、その後ある方法を考え出す勘助。一方このことを勘助に知らせた伝兵衛は、葉月が色仕掛けで諜報をするということに抵抗を覚え、自分の葉月への思いに気づくことになります。
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