『直虎』まとめその2です。キャストに関しても色々いわれており、柴咲さんや菅田さんの演技に関して、かなり批判もありました。実際主役は、もう少し地味な女優さんでよかったと思いますが、無論これはディレクターにも責任があります、それと、脇を締めるベテランの俳優さんが、途中からいなくなったことも大きいでしょう。結局前田吟さんとか、苅谷俊介さんのような人たちが3月まででいなくなり、後は若手、中堅中心となりました。浅丘ルリ子さんや山本學さんも出演していましたが、もっと主人公サイドに、それなりの年季の入った人を持ってくるべきでした。
武士の描き方に難があることは前にも書いていますが、たとえば徳川家にしても、もう少し武骨な印象でよかったはずです。妙に優し気な徳川家になってしまっていて、覇気が伝わってこない。また本多正信には、やはり米沢さんがダブりました。一方で矢本悠馬さんの直之の殺陣、刀に全然血がつかないし、息も切らしていない点でかなり素人臭かったこと、高瀬が一度間者らしきことをしただけで、その後目立たなくなったことなどなど、スタッフも出演者も、いつもに増して時代劇慣れしていない感じで、大河としては貧弱に映る点もありました。
一方で、1回かせいぜい2回しか出て来ない人もいました。佐野史郎さんの太原雪斎とか、ダンカンさんの蜂前神社の神官などがそうですし、特に雪斎の登場回数の少なさは、今川を描いた大河とは思えないものがありました。もったいないなと思います。その割に、オリキャラがやけに出張っていました。龍雲丸とその手下しかり。尤も龍雲丸の登場でおかしくなったというよりは、それ以前からどこか不自然だったのが、オリキャラメインで表面化したと見るべきかもしれません。そして瀬戸方久や井伊谷三人衆などは実在ですが、主人公に合わせてかなり改変されているといっていいでしょう。
それとストーリー展開、城主になった辺りから、ありがちな女性主人公大河の印象が強くなりましたが、それに加えて、内面的な描写がないのが気になっていました。出家していて、しかも小さな国衆の一人娘という立場である以上、あれこれ思い悩むシーンがあってもよかったはずです。そういうのがまるで描かれていない。しかも当初対立していた政次が味方だったとか、それを『孫子』の適当にめくったページで知ったとか、さらに周囲の女性たちが妙に物分かりがいいとか、大河の主人公にありがちな艱難辛苦を乗り越えるシーンが描かれないのも物足りなく感じました。
唯一の艱難辛苦といえるのが、井伊家の崩壊でしょう。しかしこれも結局は龍雲丸と一緒になり、気ままな農婦生活を楽しむようになるわけです。なのに家督を虎松に渡さないとか、何とも矛盾した光景が見られました。ならば彼女が井伊家を再興するかといえば、家など要らないと言う、しかも養子の主君である家康に戦は嫌じゃ、もとい戦無き世の中にしてもらうなどと言い出す。どう見ても後世を知っていないと言えない言葉ですし、本来は尼となっているはずなのに、あれこれ歴史上の事件に首を突っ込むため、政次の処刑同様話がおかしくなり、失速したといえなくもありません。
結局実在も定かではなく、しかも史料の乏しい主人公で、さらに原作もないオリジナル脚本で進めた結果、エピによっては、『花燃ゆ』を下回る視聴率となってしまいました。創作部分がもう少し面白ければ、それでも納得できたのでしょうが、それも面白くないことが多い。その中で今川氏真について描かれたのは、ある程度納得できるものがありましたが、ならばなぜ今川家を主役にしなかったのかと思います。それとやはり、戦を描かない戦国大河というのは、今後制作するべきではないでしょう。そもそも、制作する理由が見当たりません。これでは経費の無駄でしょう。
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