『炎立つ』について3度目です。第三部に入ると藤原秀衡の時代となり、所謂源平物と同時代になります。そして鞍馬山を抜け出した遮那王、後の義経が奥州を訪れます。この大河では奥州藤原氏がメインであり、秀衡と共に泰衡も主人公であるため、義経の描かれ方がいくらか軽めになっています。たとえば『義経』などの描写では、義経が凛としていて、藤原泰衡が小物に描かれていますが、それの逆と考えるといいでしょう。
秀衡は「御館」(みたち)と呼ばれています。「お館様」あるいは「お屋形様」と同義と考えていいかと思います。元々これは国司を呼ぶ時に使われる言葉で、時代が下るにつれ、国司に取って代わった守護大名の呼称となります。この秀衡は義経に理解を示し、頼朝との関係悪化から逃れて来た際にも匿いますが、秀衡の死、泰衡の家督相続と共に関係が悪化して行きます。頼朝から圧力をかけられ続けた泰衡は、この大河ではそのことで、ひどく悩む設定になっています。
しかしこの第三部、やはり原作をベースにしていないため、第一部、第二部に比べるとやや迫力に欠けます。原作の遅れにより、オリジナルにせざるをえなかったというのがその理由のようです。また、元々秀衡役だった北大路欣也さんが降板し、代役として渡瀬恒彦さんが秀衡を演じています。なおガイドブックには、北大路さんが秀衡役として紹介されています。原作がほぼ同時出版というのは、リスクがやはり大きいようです。
ところでこの第三部で、毬杖(ぎっちょう)が登場します。名前の通り、毬と杖を使って行う、フィールドホッケーのような遊びです。
(『炎立つ』DVDシリーズより)
こういうのが登場するのは、その時代らしさがしのばれ、なかなかいいなと思います。またこの大河は、えさし藤原の郷で多く撮影を行っているため、当然ながらロケが多く、スタジオでの屋外を想定した撮影の狭苦しい印象がありません。それぞれの季節の雰囲気、たとえば紅葉なども自然ですし、秋から冬のシーンで吐く息が白いのもリアリティがあります。本当は大河はもっとロケをやるべきなのでしょう。
ところで義経を演じている野村宏伸さんですが、『独眼竜政宗』で、政宗の子秀宗を演じています。やはり『炎立つ』の安倍貞任役の村田雄浩さんも、政宗で茂庭綱元を演じていますし、頼朝役の長塚京三さん、そして清原真衡役の萩原流行さんと、政宗出演者で炎立つ出演者は結構います。藤原経清と、藤原泰衡の二役を演じた渡辺謙さんはいわずもがなです。同じ東北つながりということもあるのでしょうか。
ちなみに『義経』を先日久々に観ました。OPテーマが『葵 徳川三代』と似ているなと思っていたら、同じ岩代太郎さんの作曲でした。あと義経の家来の一人が、昨年の伊達政宗役の長谷川朝晴さん、金売り吉次が市川左團次さんですね。どうもこの方は、『風林火山』の関東管領、上杉憲政の印象が強いです。次の『風林火山』では、憲政が上野を脱出して越後へと逃げますが、その子竜若丸は悲運に見舞われます。
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