あまり他の作品と比べるのもどうかと思いますが、そして、既に以前『花神』のDVDを観た時点で似たようなことをやっていますが、やはり同じ長州を舞台にしているということで、いくつかの点で比較してみます。まず脚本家ですが、現在『花燃ゆ』は大島里美さん、宮村優子さん、金子ありささんの3人体制のようです。
たとえばシリーズものなどで、各シリーズで多少趣向を変えるため、複数体制というのはあるかもしれませんし、最初から脚本は2人体制というのはあるでしょう。しかし3人いて、それぞれの放送回で違う人が書いている場合、よほど原作があるとか原案があるというのでない限り、それぞれ見方が異なるため、キャラ設定にばらつきが出るような気がするのですが。というか、既にそれが出てしまっている感じです。あと時代劇を手掛けている方もいますが、基本朝ドラとかドラマ畑の出身ですね。
一方『花神』ですが、脚本は大野靖子さんです。この方は劇作家の三好十郎さんのお弟子さんで、たとえば『松本清張シリーズ』とか『ザ・商社』、『居酒屋兆治』など、男性的な作風が持ち味の作品を手掛けています。大河ドラマは『花神』の他には、『国盗り物語』も担当しています。やはりこういう人物だからこそ、『花神』に見られる骨太な描写が可能だったのかなと改めて思います。女性の脚本家を大河に起用するのは構わないのですが、やはり朝ドラとか普通のドラマ出身の人だと、どこか弱いところがあるのもまた事実でしょう。
大野さんはいわゆる群像劇(アンサンブル・プレイ)を持ち味とした人で、この『花神』も群像劇です。村田蔵六、吉田松陰と高杉晋作、河井継之助が同じ時代を生きて、それぞれの立場からの視点でドラマが進行するため、互いが見えないものを補完し合うというメリットがあるわけです。河井継之助という、賊軍側の人物を持って来たのも大きいでしょう。しかし『花燃ゆ』の場合、萩のみが中心になっているから、他からの視点というのが登場せず、そのため常に一方的な見方のみになっている部分が大きいように思われます。あと『花神』は、『花燃ゆ』に比べると原作があるせいもあって、やはり要所要所をきちんと描いているふしがあります。
『花燃ゆ』は急に決まった、またそのせいで制作発表が遅れたといった理由から、下準備があまり出来なかったということもあるでしょう。しかし、やはり大河である以上、脚本家はそれなりに吟味してほしかったなとは思います。ドラマはやはり脚本次第なところがあります。ところで来年の、『真田丸』の撮影がそろそろ始まる頃ですが、この『花燃ゆ』の脚本を三谷幸喜さんが手がけていたら、どんな感じになったでしょうか。いくらかあの『新選組!』のイメージに近い物になっていたかもしれないし、また全然違っていた物になっていたかもしれません。ただ、言っては何ですが、お握りばかり作っているドラマにはなってはいなかったでしょう。
先日、ちょうど1年前の『軍師官兵衛』、有岡城に幽閉される回を観ていて、やはり大河とは男性の主人公がしっくり来るなとは思いました。ここで官兵衛は一度脱出を図り、荒木村重に気付かれて、大立ち回りをした挙句、より待遇の悪い石牢に入れられてしまうのですが、こういう辺りはやはり女性が主人公だとなかなか見られないし、久々に観てまた新鮮な感じでした。今ならまだ間に合うから、『花燃ゆ』も主役を男性にシフトすればいいのにとやはり思います。
しかし毛利敬親役の北大路欣也さんを見ると、未だに『半沢直樹』の中野渡頭取を思い出します。そういえば、周布政之助役の石丸幹二さんは浅野匡の役でした。半沢を嵌めようとして、逆にフィリピンに出向させられる人でしたね。
スポンサーサイト