唐から密航して来て、しかも殺人容疑をかけられた寧(ニン)を、協力してどうにか逃がした道真と昭姫は、談笑しながら歩いていました。しかしその二人を目にした宜来子は、道真が年上好みと思い込み、へそを曲げてしまいます。
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道真が昭姫と歩いているのを目にした島田宜来子は、ひどく腹を立てて戻り、夜具をかぶって拗ねてしまう。また戻って来た父忠臣にも悪態をつく。白梅は届けた干柿をそこに置いて、菅原家へ戻る。宜来子は、道真が年上の女性が好きである、しかも唐の女が好きであると思い込んでいた。
話はその八年前にさかのぼる。菅原家は私塾を開いており、寝殿の渡殿である、中門廊下に門下生を集めて授業を行っていた。阿呼とよばれていた道真は柿の木に登り、その様子を見ていた。するとそこへ、島田忠臣が現れて、木から降りて学問をするように命じる。
しかし阿呼は反発する。もう飽きた、一度聞いた話は二度と聞かずともよいと言い、それまでに覚えた詩をことごとくそらんじてみせる。忠臣はなすすべはなかった。道真の父是善もその点を案じており、忠臣は己の至らなさを恥じるが、是善は逆に、忠臣の娘の宜来子を阿呼の嫁にと言い出す。
東宮学士、つまり皇太子の師となった是善は、この塾を忠臣に任せるつもりでいたが、官位すらない忠臣は、貴族の出である他の門下生によく思われていなかった。そして忠臣は、学問をさぼる道真を机につかせようとし、硯が割れているのに気づく。
阿呼は忠臣が優秀なこと、そして宜来子の件で、誰かがわざとやったのだと言う。忠臣はことを穏便に収めようとするが、阿呼は反発し、さらに柿の汁がつくから木から降りるようにと言う、女官桂木の言葉にも耳を貸さなかった。そんな時、阿呼はある物を目にする。
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白梅が干柿を置いて行きますが、宜来子は道真と昭姫のことが腹にすえかねており、食べようとしません。一方忠臣は、菅原家の柿の木に思いを馳せます。その柿の木こそ、かつて年少の頃の道真が登って遊んでいた木で、忠臣はその家で学問を学んでいました。
宜来子の父でもある忠臣は、菅原是善の塾でも優秀な門下生でしたが、それが他の門下生の妬みを買い、嫌がらせをされるようになります。しかも、その後塾の後継を辞したことが、その後の彼の生き方を、大きく狂わせることになります。
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