個人的に思うのですが、この『おんな城主 直虎』は、
『江ー姫たちの戦国ー』と表裏一体の関係 にあります。『直虎』が歴史上の著名人物を、あまり出さない設定であるのに比べ、『江』の方は、むしろ著名な人物と絡ませることに重点が置かれています(『花燃ゆ』もそうだといえます)。ただし、どちらもやりすぎのように思えます。『篤姫』とか『八重の桜』はその点、あるいは男女それぞれのシーンなども、ほどほどにバランスが取れていたともいえます。
第24回の放送では、三英傑である信長や家康の登場が、何やらアイコン的です。これは人物のみならず、今川仮名目録や孫子の兵法、綿の栽培などにも似たような傾向があります。
戦国時代だから、取り敢えず入れました 感があるわけで、歴史を見る楽しみが殺がれてしまうのは、やはりこの辺りに原因ありのようです。だからこそ、信長があの時点であの恰好であっても、特に構わないとなるのでしょう。前にも書きましたが、これが他の時代劇枠であれば、まだ楽しめなくもないのですが。
ドラマの展開に関していえば、キャラやストーリーの細かい設定が今一つ見えにくいところがあります。直虎もあれこれやってはいるものの、本質が今一つわかりにくい。そして
前振りとか、それとなく窺わせるものがなく、突如としてあるシーンが登場する。 たけが耳が遠くなったから里下がりするなどというのは、その前からそれらしさを出せたはずです。また人質で急に佐名を思い出すのも、何か唐突な感じですし、後見しているはずの虎松とか、情報をもたらす松下常慶ががなかなか出てこない。各エピのテーマの消化で精一杯なのでしょうか。
それから直虎を演じる柴咲コウさんの声についても、色々指摘されています。割と一本調子になりがちな感じの物言いなので、シーンに合わせた変化に乏しいと思う人もいるでしょう。『ガリレオ』の内海薫であれば、これでもよかったかもしれません。それと
やはり気になるのが彼女の打掛です。 あれはどう見ても桃山期の物のように見えます。それと中野直之を「之の字」と呼ぶのも、何か江戸時代の遊び人や、巾着切りを思い出してしまいます。
そもそもこのドラマが、戦国というよりは、江戸時代の領民思いの殿様の、女性バージョンのような感じです。以前ご紹介しましたが、『超高速!参勤交代』の内藤政醇、この人は民思いのいい殿様なのですが、あれは一方で参勤交代、しかもお金がなくて、ぎりぎりで要員をかき集めてやっている参勤交代という、対比関係の面白さがあるわけです。
単に日常生活だけを見ていても、しかもそれなりに丁寧に作っていても、実はあまり面白くないわけです。 森下佳子さんの
「史実の縛りから解放する」も、度を越せば単なる史実無視、史実軽視であり、逆に「史実を描かない」という方法で、ドラマを縛っているように取れてしまいます。 これはかつてラグビー代表強化で、型を作らないという方針を取った挙句、才能ある選手たちをうまく使えなかったのとだぶります。1年かけての大河ですから、もう少し本腰を入れてほしい。本腰を入れているのかもしれませんが、その方向性に疑問があります。女性より先に、大河にするべき男性は沢山いるのですが。
しかし結局、木材を盗んで行った盗賊を井伊で伐採に使い、その木材を売るというのも、近藤家に取っては納得が行きかねるものでしょう。そして政次も、井伊家では一番客観的な見方をするものの、やはり
最後まで直虎を警戒させるキャラであってほしかった です。ただその場合、直虎がひそかに政次の裏を読む、互いに腹の探り合いをするようなキャラでないと、面白くないとは思いますが。それから今後、直虎関係の投稿を多少変更し、エピソードと感想を一緒にしようかなと考えています。
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