本題に入る前に。ハースト婦人画報社の季刊誌『美しいキモノ』の、
2016年秋の号 171ページから175ページまで、『真田丸』の衣装関連記事、そして出演者のインタビューが掲載されています。この出演者とは、真田信尹役の栗原英雄さんで、お母様が和風の物を好まれ、子供のころから和服が比較的身近にあったとのこと。また栗原さん自身が、上田紬を着こなしている写真もありますので、興味のある方は書店で手に取ってみられるといいかもしれません-男のきもの最前線という記事がありますが、それとは違いますのでご注意を。この号は表紙と巻頭のページに、稲を演じている吉田羊さんも和服姿で登場していますが、大河とタイアップしているのでしょうか。
前置きが長くなりましたが、今回は徳川家康の描かれ方についてです。『天地人』の徳川家康がどこかおちゃらけ設定になっていること、そのため今一つ家康のブラックな雰囲気が感じられないことは、前にも書きました。恐らく上杉が主人公というせいもあるのでしょうが、主人公が敵対する相手を、一方的にディスるような描き方も如何なものかとは思います。たとえば、直江状に怒り心頭の家康は、書状を手に取り乱し、あからさまに地団太踏んで悔しがるような描かれ方です。
一方『真田丸』ですが、書状を読んで気難しそうな顔をして、後で引き裂いてしまうものの、ここまでみっともなく感情を露わにすることはしません。『天地人』に比べると、家康も兼続も、大人の設定であるといえます。西笑承兌がいるのもポイントが高いです。
もうひとつ、方広寺鐘銘事件関連ですが、この時も『天地人』では、子供のように足をじたばたさせて悔しがるという設定です。わかりやすいといえばわかりやすいのですが、脚本がどうも創意工夫に欠けるようです。こういう書き方しかなかったのでしょうか。
そして『真田丸』、この件で片桐且元にあれこれ口を出したのは本多正純でした。家康はといえば、茶々と相談して駿府に乗り込んだ大蔵卿局相手に、この件は問題ないからと言い、大蔵卿局はすっかりその気になってしまいます。実際は「問題ない」どころか大ありで、しかも大蔵卿局と片桐且元は、これで決定的に対立してしまいます。豊臣を滅ぼしたのは、実は茶々と大蔵卿局であったとも考えられるほどです。
前後しますが、『天地人』で秀吉の没後、瘤の部分を隠さなくなった家康。これは老衆の会議の時ですが、裃はつけず羽織のままです。
『天地人』の五大老(『真田丸』の老衆)五奉行はこのような感じで、大老はすべて羽織に立烏帽子姿です。
そしてこちらは『真田丸』の老衆の会議での、裃姿の家康。自分の掟破りに、何とか抗議しようとする上杉景勝に、お声が小さいと言うシーンです。
『真田丸』は老衆五奉行をはじめ、皆裃姿です。これは家康目線ですが、真正面に石田三成がいます。
しかしやはり『天地人』の家康の描かれ方というか、すべての登場人物の描かれ方、そして情景描写は何か軽くてひねりがない印象です。次回ではそれについて触れる予定ですが、最後に、それぞれの関ヶ原での様子を上げておきます。『天地人』ではおちゃらけキャラであるものの、この時は堂々たるものです。
『天地人』徳川家康
『真田丸』徳川家康
ところで『天地人』で家康を演じた松方弘樹さんは、1998年のテレビ東京の新春ワイド時代劇である『家康が最も恐れた男 真田幸村』で、主役の幸村を演じています。実はこの時真田昌幸を演じたのが、『真田太平記』の昌幸役の丹波哲郎さん、そして徳川家康を演じたのが、『独眼竜政宗』で家康を演じ、さらにこのドラマの2年後、『葵 徳川三代』でも家康を演じる津川雅彦さんです。さらに『真田丸』出演者では、山本耕史さんが秀頼を、遠藤憲一さんが服部半蔵をそれぞれ演じています。またこの作品では、霧隠才蔵役は女性の国生さゆりさんです。
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