まず本題に行く前に。真田信幸(之)の陣羽織の素材と、第36回「勝負」の中での地図での文字の使われ方について、NHKに問い合わせたところ返事が来ました。まず、信幸(之)の陣羽織は羅紗素材であるとのこと。そして、「勝負」で信繫が見せていた地図、「會津」とあるべき所が「会津」になっており、これに対するNHKの回答は、「現代の幅広い視聴者の方にご覧いただくことを考えながら」こうした、とあったのですが、やはりこれは当時の字を使うべきでしょう。そもそも日本人で大人だったら「會津」でもわかるでしょうし、わからなければネットで調べることもできるわけですから。
ところでこの回、コテコテのともいうべき真田家回でした。何せ家康すら登場せず、出演者クレジットのトメが、高畑淳子さん演じる薫でしたから。その薫さんも、これで退場です。
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信之が九度山を訪ねてくる。父昌幸の位牌に手を合わせた後、信繫は昌幸の「兵法奥義」を兄に見せる。しかしその内容は記号だらけで、信之の言葉通り「凡人にはまるでわからない」代物だった。その後、今なお赦免を考えている信之に対し、九度山での暮らしに満足していると答える信繁。夜になっても互いに昔話をしていたが、実は借金がかさんでいることを切り出す。きりは縫物を教え、佐助は子供たちに忍びの術を教えていたが、焼け石に水の状態だった。信之は弟に、ひもじい思いはさせないと約束する。
その後信之は上洛し、小野お通に会うも、やはり高台院に会うのは難しいと答える。しかし信之がお通に会うのは、お通と話している時間が信之には楽しかったせいもあった。また来てもいいかと尋ね、お通は快く応じて、和歌を教える約束を交わす。一方江戸の真田屋敷では、母薫(山手殿)と稲、繁誠・松夫妻らが談笑していた、そこへすえがやって来る。当主の家族が江戸に住み、当主が藩と江戸を往復する、後の参勤交代の原型がこの当時出来上がっていた。薫はすえに、自分の扇や公家との交流を誇らしげに語り、その二年後に世を去る。
九度山では、信繫が内記に大助の傳人を頼んでいた。内記は大助に碁を教え、ひいては碁に象徴される戦を教えようとするが、大助は内記に歯が立たなかった。そして時が流れ、慶長19年(1614)、大助は成長したが、碁では内記が上だった。そして信繁夫妻には、次男大八も生まれていた。そんな折、信之から荷が届く。中身はそばの実だった。日々そばがきだけでは子供の成長にもよくないと言う春。そこで信繁はそばを売ることを思いつき、春手製のそばがきを村人たちに振舞うが、これは成功しなかった。
自分を責める春は、再び障子に穴を開ける。しかも春は、信繫が商いにきりを連れて行ったことも気に入らなかった。商人の真似をさせたくないからと言う信繁に対し、割り切れない思いの春。きりはここを出て行ってもいいと話すが、一度春と話してみてくれと言う源次郎に「逃げる気か!」とどなってしまう。そして内記は、若殿である大助に碁で勝ちまくって上機嫌だった。そこへ、秀次の娘で呂宋に渡ったたかがいきなり訪ねてくる。春にどのような間柄かを訊かれ、側室だと答えていきなり信繁に抱きつくたか。春は火箸を手に取るが、かろうじてきりが押さえた。
たかは助左に習って、呂宋を拠点に商売をしており、珍しい物を土産に持ち帰っていたが、その一つ一つに金を取ろうとする。その中に、ネエパラ(ネパール)のサナールという紐があった。その紐を見て、上田の紬にそっくりだと感じた信繁は、きりと春に同じものを織らせる。紐を織っている最中、きりは暇乞いをする予定だと切り出す。人間関係で無理をしている感がある春に、自分に正直にならないと損すると諭すきり。結局春は、きりに九度山にとどまるように頼む。その後たかは祖母を訪ねるため京に行き、再び呂宋に戻った。
信繫は佐助を使って、真田紐を梁にかけてよじのぼらせ、強度を確かめる。その後それを持って長兵衛の家へ行き、製造と販売を委託する。当初は驚いていた長兵衛もその気になり、真田紐が販売されることになった。これも村の衆への恩返しと話す信繁。そして身入りがよくなった真田家では、ご馳走を囲んで家族の団欒が行われていたが、大助がその場にいなかった。大助は内記に負けた悔しさから、一人で碁盤に向かっていた。そんな息子に、碁の打ち方を教えてくれと頼む信繁。大助は内記から教わった通り、碁盤を土地、碁石を杭になぞらえて手ほどきを始める。
外では色づいた木の葉が散り、風が強くなっていた。我が家のごく平和な風景を、外から見る信繁。そんな平穏な生活を送っている真田家を、ある男が訪ねようとしていた。外にいた信繁に、その男は笠を取って近づき、明石掃部頭全登であると名乗る、かつて宇喜多秀家の家臣を務めていた明石全登だった。信繁を迎えに来たと口にする明石。牢人となったこの男は、何の目的で信繫を迎えに来たのか。
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九度山編後編とも言うべき回です。父の死後に訪れた兄信之に、ここでの暮らしは満足だと言いつつも、金の無心をせざるをえない状態であることを打ち明ける信繁。また、春ときりとの関係、兄から指摘された「大助はおとなしすぎる」などなど、当主としての悩みも抱えていました。生活費の方は、たかが土産に持ち帰った紐を見て、上田の紬を元にした紐を作り、売りさばくことを思いつきます。これで多少はゆとりができ、穏やかな日々を送る真田家に、かつての宇喜多家の家臣である明石全登がやって来ます。それは、再び勃発するであろう戦闘に、信繫の手を借りるためのものでした。また信之は信之で、赦免を求めて奔走し、それがもとで知り合ったお通との会話を楽しみます。
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