第26週第3話(第124回)と第4話(第125回)です。
第124回
2020年4月。何とかパリ暮らしを続ける貴司は、窓の外に飛行機を見つける。貴司は舞がかつて、昔の飛行機は星の位置を目印にしていたと言ったのを思い出す。さらに五島に舞と久留美が迎えに来たこと、短歌賞受賞の時の舞、貴司の短歌が好きだと言ってくれたこと、舞との新婚時代、歩のことなどが貴司の脳裏をかすめて行った。
日本でも新型コロナウイルスの流行が拡大し、うめづは休業し、めぐみは出勤することを曜日ごとに変えることにする。こんねくとも、人が集まる企画はやめ、オンラインでの業務を考えていた。またアビキルも詳しいことは、舞も含めた翌日の会議で決めることになり、めぐみは翌日歩を預かることにする。歩も家で一人遊びをするようになっていた。祥子はデラシネを見てこようとする。
しかしその年で感染すると命に関わるとめぐみは引き止める。窓辺には、五島で送別会を開いて貰った時の写真が飾られていた。祥子は五島に帰って、皆に会いたいと独り言を言う。めぐみにもその声は聞こえていた。一方刈谷は秋に有人飛行をやると決めるが、玉本は時期尚早だと止める。状況を見ながら目標の時期を遅らせることも必要と言う玉本に、そげな猶予はなかと言う刈谷。
そして刈谷は、自動車の製造で世界有数の技術を誇る日本が、航空機を作れないのにはわけがあるのですよねと尋ね、荒金は戦後7年間、飛行機作りを禁止されたからだと答える。そのブランクが尾を引く、開発はスピードが命と刈谷は主張する。しかし玉本は岩倉の家には歩も祥子もいてもし誰かが感染して岩倉にうつったらどうすると問いただし、無論他の皆も同じだ、元気でおんのが大事やろと言う。
そして刈谷は、家に帰っても誰もいないという理由で作業場に残るが、舞は、刈谷さんは空飛ぶクルマと未来で待ち合わせしてて、はよ会いたいんですよねと言い出す。そして舞は就職が延期になった時、嵐で船が出せなくても、無駄な時間ではないと祥子に言われたことを話す。いつか晴れるまで、自分のやりたいことやったらええと話す舞は、今何ができんのか考えて来るから、1人で焦らないでくれと言って出て行く。
家では歩が貴司の絵を描いていた。そして深夜、舞の携帯に貴司からの連絡が入る。貴司はパリで随筆を書き始めており、パリで見たことや考えたことを言語化していた。不在を詫びる貴司だが、誰も予想できなかったからと舞は答え、貴司はまだロックダウンが続いて生活も制約があると話し、互いに会いたいと言う。
祥子は家にいて、どこか手持ち無沙汰そうにしていた。ばんば最近元気ないなあと言う舞に、めぐみは祥子が五島に帰りたがっていることを話す。めぐみも結城にIWAKURAを任せたら、2人で五島へ行くつもりだった。また貴司は帰りたがっていたが、飛行機のチケットを取るのは至難のわざで、一っ飛びで会いに行けたらと言う貴司と舞。すると舞はあることが閃いたようだった。
舞の提案で、アビキルに感染症対策が施される。そして舞は閃いたアイデアを絵にして皆に見せる。それは固定翼の、島から島へ移動できるような飛行機だった。そして刈谷は夢を夢で終わらせる気はなかと、作業を再開し、舞のアイデアを褒める。
第125回
舞は歩に紙飛行機の飛ばし方を教える。かなり向こうに落ちた紙飛行機を、拾い上げる者がいた。それは、日本に帰って来た貴司だったのである。久々の再会を喜ぶ舞と歩と貴司。そして7月。このアビキルのPR動画を作る為、純が動画撮影を行う。動画にはアビキュラ2号の様子、空飛ぶクルマとは何か、垂直離着陸や電気が動力であること、ドローンを飛ばす要領で操縦できること、安全性のために試験飛行を重ねることなどが、作業に携わる人々によって語られていた。
動画を休業中のうめづで観ていた結城や町工場の社長たちは、チタンボルトが使われているのに目を止める。雪乃は、飛行機の部品やらへんのとちゃうかと結城に訊くが、めぐみがうちの機械でもできる部品やから、挑戦していいと言ったらしい。さらに結城は、空飛ぶクルマに本格的に関われるように、必要な資格を取ろうとしていた。
さらに曽根の工場のカーボンが登場し、皆が我先にと動画を見ようとすると、密になっていると雪乃が彼らをどかす。そして最後に、執行役員の舞からのあいさつだった。
「未来は空飛ぶクルマが島から島へ、山から山へ人を運ぶ。会いたい人に合えない、行きたい場所に行けない、その悲しさ悔しさを私たちはよく知っている、だからこそ誰でも乗れる物にしたい。この車が空を飛ぶ日が来ると私たちは信じています」
そしてベンチャーキャピタルからアビキルに、是非会ってみたいと電話が入る。結果次第では1億クラスの出資も考えるという話で、一同喜ぶ。そこへ舞が、マスコミ向けの有人フライトの日程が、11月6日に決まったと知らせに来る。舞が考えた空飛ぶクルマの機体に、また一歩近づいたと言う風間は、なぜその名がかささぎであるかを尋ね、舞は織姫と彦星を引き合わせるために、橋を架けたからだと答える。作業場前の笹の短冊には
「かささぎと一緒に空を飛べますうように 梅津舞」
と書かれていた。
2026年。八木はやはりパリにいて、貴司の著書『トビウオの記』を読んでいた。それによると、舞はテストパイロットとして飛行試験を繰り返し、仲間たちと空飛ぶクルマを改良し、やがて基準をクリアして日本の空を飛び始める。貴司の歌も添えられていた。
「深海の星を知らない魚のためカササギがこぼした流れ星」
かささぎは2027年1月31日から、五島列島で運航開始となった。
初フライトの操縦は舞に決まった。そしてめぐみは会長職を退き、五島で祥子と暮らすことになる。花束を手にしためぐみは、この後もIWAKURAには関わって行くから、何でも相談してくれと別れの言葉を述べる。そしてサプライズとして、舞と悠人も花束を持って現れる。祥子は車いす生活となり、歩は10歳となっていた。
祥子はさくらに、年が明けたら五島に行くと話していた。さくらとむっちゃんは釣り客の相手をし、その彼らは若葉の船で釣りに出かける。年が明け、祥子はめぐみ、そして舞の一家と五島に着く。刈谷も同行していた。五島の人々が港に出迎えており、一太は息子の進を紹介する。こんまか頃の一太そっくりと言う祥子。信吾も来ていて久しぶりの島暮らしやしねと、めぐみに話しかける。祥子だけでなく、めぐみに取っての久々の五島での生活だった。
港にはかささぎが待機していた。マスコミも取材に来ており、多くの人々が一目見ようと待ち構えていた。飛び出すところを見届けたら、めぐみ丸で追いかけると祥子に伝えるめぐみ。祥子は若葉によろしくと言う。舞は祥子と、離島に往診に向かう医師を乗せて飛ぶことになる。歩は自慢そうに進に母親のことを話し、自分も将来パイロット、それも宇宙船のパイロットになると言う。
最後の方の、これから空飛ぶクルマに乗るというシーンを除けば、何だか30日が最終回みたいでした。あと舞の娘の歩と一太の息子の進のそれぞれの中の人は、舞と一太の子供時代の中の人ですね(ついでながら『ちむどんどん』の智の妹と弟の中の人でもあります)。
荒金が国産飛行機について話すところ、あれについては私も知っていましたが、あの2020年時点では、MSJが確か開発をしていたと思います。ただ今年2月7日に、開発が中止されるに至りました。こういう記事があるのでURLを置いておきます。と言うかこの筆者の方、ツイートを何度か目にしたことがあります。
MSJはなぜ「開発中止」に追い込まれたのか? 本当に日本の技術を憂うなら、まず製造国として型式証明を承認せよ
https://merkmal-biz.jp/post/32457
アビキュラ2号の開発がとんとん拍子で進んで行きますが。あまり過程が描かれないのが残念です。こんねくとはアビキュラ2号だけの仕事を請け負っているわけではないでしょうし、純が動画撮影係だけで登場と言うのも、何だかなあという気は正直しています。しかし貴司は思ったよりも早く帰って来たように見えます。それはいいのですが、事前に何も連絡はしなかったのかなと思います。
そして空飛ぶクルマのテストパイロットは舞に決まります。ライセンスを持っているから、それは理解できますが、ここのところ飛行機への思いをあまり感じられていなかった上に、彼女がテストパイロットを務める、あるいはそのようなオファーを受けて色々考えるようなシーンがなかったので、何か唐突な印象を受けます。
一方でめぐみの退職、花束を舞や悠人から貰うシーンなどはそこそこよかったです。前にも書きましたが、めぐみが主人公の方が、あるいはよかったのではないかとも思います。しかし祥子ばんばも、2026年時点ではもう車いすの生活なのですね。
あと「かささぎ」ですが、この鳥は福岡、佐賀、長崎などの九州北部や北日本などで繁殖が確認されています。ですからそれに絡めたのかと思ったのですが、七夕絡みだったようです。だから笹と短冊も登場したわけですね。ちなみにサガン鳥栖のマスコット、ウィントス君はカササギがモチーフですし、JR九州に「かささぎ」という特急があります。
それから新型コロナウイルスの流行が描かれていますが、1月から2月頃にアメリカで猛威を振るったクラーケン変異株(XBB.1.5)が、日本でも流行する兆しを見せているようです。実際第9波は3月頃と言われてもいたようで、まだまだ気を付けたいものです。