第9週第1話(第41回)と第2話(第42回)です。
第41回
2007年4月、北海道帯広。航空学校のフライト課程が始まる。その頃貴司から舞に絵ハガキが届き、福井の港で働いていること、もう少し色んな場所で自分の言葉を探すつもりであることが書かれており、さらに、帯広で飛行機に乗るんやろ、楽しみやねとも付け加えられていた。また裏面の写真の部分には貴司自作の短歌が添えられていた。
「トビウオが飛ぶとき他の魚は知る 水の外にも世界があると」
食事中、舞は自衛隊出身の鬼教官のことを知る。中澤曰く元は戦闘機のパイロットで、情け容赦なく学生をフェイル(退学)にしてしまうらしい。能力がないなら当然と言う柏木に、自分はそうならないという自信があることねと言葉を挟む。舞は担当教官がその日発表されることを思い出し、その教官の名前を尋ねる。中澤は最もらしい口調で答える。
「人呼んで帯広の雷様、サンダー大河内」
その後主席教官からの訓示が行われ、さらにその後チームの発表があった。フライト課程では3人が1チームで担当教官の指導を受け、舞は水島、柏木と同じチームになる。「足を引っ張らないでくれよ」と柏木。倫子は中澤、吉田と同じチームだった。倫子たちのチームの教官は山下と言い、そして舞たちの教官はあの大河内だった。大河内は3人のプロシージャ―(飛行手順)の最終確認をチェックし、緊張した舞は一部を飛ばしてしまう。
岩倉学生は、プロシージャ―を覚えていないのかと大河内。覚えてたつもりという舞に、明日までに完璧にできるようにしろと大河内。次は柏木の番で、こちらは難なく終わった。空では一刻一刻状況が変わる、シミュレーターとは違うぞと大河内。次いで水島の番となる。水島は出だしはよかったが、その次の段階で早くも忘れてしまっていた。その後学生たちは談話室で、明日のフライトに向けて気象データの解析をしていた。
舞や柏木はそれぞれ解析にいそしむが、明日の予報はどれも晴れだし、フライト可能ということでOKっしょと水島は言い、柏木に注意される。一方倫子は訓練空域を提案するが、ここも中澤との意見が噛み合わない。中澤はここは女性にゆするとしようと言うが、倫子はそれが面白くなかった。部屋でも倫子は中澤はむかつく、教官も変な人だと不満をぶちまける。山下教官は、やたらに横文字を使いたがる一癖ある人物だった。
そんな倫子に舞は、寝る前にプロシージャ―をやらないと持ちかける。しかし倫子はもう遅いし、なるようになるってと言い、舞は仕方なく水島と柏木の部屋に行って水島とプロシージャ―を行う。そこへ柏木が戻って来る。事情を説明する水島。しかも舞は自分で作った、コックピットを模した装置を傍らに置いていた。お前は暇なのかと言う柏木に、もっと優しい言い方できないのかと水島。
彼女にもそんな態度なのと訊かれ、彼女はいないと柏木。その時水島の携帯に、彼女からの連絡が入る。舞は1人で、小声で復習を始める。すると柏木が、水島が戻ってくるまで付き合うと横に座る。舞のやり方は合ってはいたが、大分遅いと柏木は言い、最終的にOKを出すものの舞は不安だった。そんな舞を見ながら柏木は、明日のフライト、俺は楽しみだけどなと口にしてさらにこう言う。
「だって、飛ぶために来たんだろ?」
水島が振られたと戻って来るが、既にチェックは終わってしまっていた。話を聞いてほしそうな水島と、相変わらず我関せずといった感じの柏木に舞は言う。
「明日のフライト、3人で頑張りましょ」
第42回
初フライトの日がやってくる。最新のノータム(航空情報)を「メモして来たと舞。資料が全部そろい、大河内もやって来て互いに挨拶をかわす。
フライト前には、訓練計画の説明であるブリ―フィングが行われる。安全にフライトが行えるかを判断して、教官に説明するのである。やがて舞たちは練習機に乗り込むが、その前に、エルロン(補助翼)、エレベータ(昇降舵)のチェックなどの外部点検を行う。そして大河内はこう尋ねる。
「岩倉学生は、プロシージャ―はできるようになったのか」
はいと返事をする舞は、最初に操縦をすることになった。舞は緊張した面持ちでプロシージャ―を行う。やがてプロペラが回り始め、運行管理室に連絡が入り、練習機が滑走を始めた。舞は落ち着いてプロシージャ―を行い、大河内に注意されながらも慎重に操縦し、機体は空中に浮上する。無論浮上した後も、大河内の厳しい指摘が待っていた。
この練習機では、そばにいる教官の席にも操縦桿があり、学生を補助しながら指導できるようになっていた。大河内は舞の操縦を助けつつ、この上昇姿勢を目に焼き付けろと大河内。そして英語で、管制圏を出たら報告するようにとの連絡が入るが、舞はそれへの反応が遅れ、またも注意される。その後水平飛行に入り、舞は心の内で「飛べた…」と口にするが、その喜びに浸る間もなく、左へ360度旋回との大河内の指示が出る。
しかし機体がピッチダウンし、舞は操縦桿を引くことでその場に対処する。飛行機を思い通りに飛ばすのは難しかった。そして舞は水島との交代となるが、水島は空酔いのため柏木が代わることになる。舞は多少しくじりながらも無事交代し、柏木はクルーズプロシージャ―(巡行中手順)から開始する。最初のフライトは終了し、その後デブリーフィング(反省会)が行われる。
ピッチが何度なのか即座にわかるようになれと大河内。その後食事となるが、舞は食欲がなくサラダだけを手に取る。しかしそれは他の仲間たちも同じだった。皆疲れ果てたような表情で、柏木でさえ
「ちゃんと乗れるようになるのかな」
と口にする有様だった。
その頃東大阪では、浩太とめぐみがうめづで食事をしていた。舞が初めて操縦するのに、連絡が何も来ないのをめぐみは気にしていた。めぐみは舞に電話をしようと携帯を手に取るが、雪乃は便りがないのがええ便りやろと言う。しかしその雪乃も、貴司からハガキが来ていないか、しょっちゅうポストを見に行っていると勝。ポストが照れてまっかっかやとの勝の言葉に、浩太もめぐみも大笑いする。めぐみはメールを送ることにし、浩太は、新しい工場の建設も進んでいると知らせといてくれと頼む。
舞は寮の部屋でめぐみに返信メールを送る。しかし食事をあまり摂っておらず空腹であり、談話室でこっそりカップ麺を食べようとする。すると吉田もカップ麺を持って入って来る。ちょうどその時、柏木もカップ麺を持って来るが、2人が室内にいるのを見て入るのをためらう。その吉田は初めて操縦して楽しかったらしい。舞も一瞬やったけど楽しいて思た、この景色が観たかったんやてと言う。吉田は舞に、宮崎で諦めてたら飛べなかったと言って舞に礼を述べ、岩倉さんも困ったことがあったら言ってくれと舞に言う。柏木はそっとその場を立ち去る。
いよいよフライト訓練が始まります。舞は貴司から絵葉書を貰います。やはり行く先々で仕事をしながら、自分の言葉を探しているようです。その舞はフライトチームで柏木、水島と一緒になりますが、担当教官はサンダー大河内こと大河内守でした。そして舞はプロシージャ―の確認のため、かつて倫子がやっていたように、男子寮の部屋を訪れます。その時水島に電話がかかって来たため、柏木が代わりに相手をしてくれますが、その時柏木はフライトが楽しみだと言い、こう付け加えます。
「だって、飛ぶために来たんだろ?」
この「飛ぶために」と言うのは、かなり言いえて妙です。そして翌日大河内の指導のもと、3人は練習機を飛ばすことになります。舞はまだまだ不十分と思われるところはあるものの、何とかこなします。柏木は楽しみと言っていただけに、落ち着きもあって隙のない操縦です。水島は空酔いで最初から無理でした。個人的にこの水島君がどうなるのか気になります。一方浩太とめぐみも、このことを気にしていたようで、メールを舞に送ったようです。
その舞は、フライト後ろくに食事をしていなかったこともあり、カップ麺を作って談話室で食べようとします。と言うか、そういうことができるのですね。そしてそれは他の仲間も然りでした。吉田もあまり食事をしていなかったせいか、カップみそラーメンを持ってやって来ます。そして舞に、宮崎での特別テストを都築教官に掛け合ってくれたことへのお礼を言います。そしてこちらもカップ麺を持ってやって来た柏木ですが、2人の様子を見てそのまま入室せずに去って行きます。
この吉田君ですが、実際成績はいいし、パイロットになる夢は人一倍でもあり、フライトが楽しかったというのもうなずけます。どちらかと言えば、あまり自己主張するタイプではなさそうですが、やるべきことはきちんとやっているのでしょう。倫子が中澤はいやだとか、教官は変わった人だなどと言いつつも、吉田には何も言及しないことからもそれは窺えます。先週の総集編はそのせいもあってか、彼が比較的多く登場していました。
それとこのドラマの主人公舞は、どちらかと言えば自分で作る、自分で動くあるいは動かすと言ったことが得意で、模型飛行機や人力飛行機のシーンにもそれが見て取れました。ですから第8週のように、待機とか座学などといったいわば受け身のシーンは、彼女の本領発揮とは言えないのではと思われました。実際こういうのは、どのようにドラマとして描くかちょっと難しそうで、それが先週ちょっと変わったかなと思った一因でもあり、だからこそパーティーとか、周囲の人々を目立たせることで話題を作ったとも言えそうです。
あと先日も書いていますが、第8週の演出の野田ディレクターは、第2週の五島編も担当しています。この週で、脚本と演出がそれまでと一変したわけではなさそうです。