久々に本編絡みの投稿です。
<ピロリ菌> 一般細胞は、身体を守ることができる免疫細胞を羨ましく思い、ある種のコンプレックスを抱いていた。そんなある日、彼は小さな生き物たちが流されているのを目にし、助けてやる。彼らは丸っこい体とペンギンのような翼手を持ち、にゅーにゅー鳴いていた。そして助けてくれた彼の家へついて行ってしまう。
しかし彼らは抗原の一種で、それを探知した白血球から持ち去られてしまう。その頃胃ではピロリ菌が暴れており、1146は決死の覚悟で胃粘膜を守ろうとする。しかし例の生き物たちが、崩れ落ちる胃粘膜の下敷きになりそうになったため、一般細胞は身を挺して彼らを助ける。
細胞が菌をかばうのかとあざ笑うピロリ菌だが、そのピロリ菌はこの生き物たちに見覚えがあるようだった。その内の、白くて目のふちが黒い1匹が、胃酸をものともせずピロリ菌に襲いかかり、撃退してしまう。彼らは乳酸菌、もっと言えば体のためになる善玉菌だった。目のふちが黒い個体は、ここにいた仲間たちに合流する。
<抗原変異>
一般細胞は1146に連れられて小腸までやって来た。ここでは胃で消化された栄養素が取り込まれ、細胞の栄養になっていた。しかしそれらに混じって、大量のプリン体が入って来てしまう。その時例の乳酸菌たちの中で、頭の一部が黒い白の個体が、そのプリン体を食べ始めた。
その個体のみならず、同じ外見の乳酸菌たちもこぞってプリン体を食べ、この乳酸菌もまた仲間と合流した。こうして赤と黒の乳酸菌が、一般細胞の手元に残った。しかし一般細胞が、彼らを手と頭に乗せたことから、他の免疫細胞が反応してしまい、赤い方は流されてしまう。一般細胞は、いいやつだから殺さないでくれと言うが、白血球には抗原提示能力がなかった。一般細胞は免疫細胞をなじるが、それを聞いていたNK細胞は、免疫系がいなければ細胞は皆死んでいるとするどく詰め寄る。
仕方なく、人目を避けるようにして赤い乳酸菌を探す1146と一般細胞だが、その時インフルエンザウイルスが現れる。しかもこれは変異しており、今までの抗体では効果がなかった。一方赤の乳酸菌は、樹状細胞に助けられていた。樹状細胞からクッキーを貰い、机の上の書類でスロープを作り、転がって遊んでいる乳酸菌に、樹状細胞はもう1個クッキーを差し出しながら、願いを聞いてくれと言う。
<サイトカイン>
一方で抗原変異したインフルエンザウイルスには、免疫細胞もなすすべがなかった。しかもこのウイルスは竜巻(腹痛)を引き起こしてしまう。それに煽られて、唯一一般細胞の手元に残った黒の乳酸菌が飛ばされそうになる。おまけにストレスで弱体化したNK細胞だが、あるものを見て活性化する。それは昔の、ゴスロリファッションをしていた時の写真だった。
ウイルス侵入の有様を見ていた樹状細胞は、赤の乳酸菌のツノ(多糖体)により活性化し、免疫細胞たちの昔の恥ずかしい写真(サイトカイン)をばらまいて、皆を奮い立たせていた。また一般細胞は黒の乳酸菌を服で隠すようにしながら、いずれ仲間のところに帰してやると約束していた。
その一般細胞は、1146をはじめ他の免疫細胞をなじったことを謝るが、昔の恥ずかしい写真のことを口にしてしまったことから、免疫細胞たちからは逆に距離を置かれてしまう。また1146は、自分たちが探していたのは乳酸菌だったとNK細胞に打ち明けるが、NK細胞も探し物をしていた。それは流出したある細胞の抗原情報だった。その細胞は、かつて彼らが手に掛けたがん細胞だった。
この第5巻は、実質的に乳酸菌と一般細胞、そして白血球の1146が主人公で、それに免疫細胞が絡む形になっています。で、乳酸菌とわかった彼らを、仲間の許へ帰す旅に出る一般細胞(そんなことができるのですね)と1146ですが、途中で様々な発見あり、またトラブルありです。
インフルエンザウイルスの変異株が彼らに襲いかかります。変異株と言えば、新型コロナでも話題になりました。今の時点では、変異株にも対応できるようですが、今後まだ改善されて行くようにはなるでしょう。ともかくここでは、B細胞が放った抗体の効果がなく、樹状細胞が助けた赤の乳酸菌の力を借りて、サイトカインを出すことになります。
樹状細胞と言えば、『はたらく細胞フレンド』では、ぬいぐるみ(ぬい酸菌)をはじめ、乳酸菌グッズばかり作っていますが、恐らくこのエピソードを基にしたものでしょう。しかもキラーT細胞(フレンドの主人公)が、なぜか彼のハンドメイド友達にさせられてしまいます。
さらにNK細胞が言うように、がん細胞がまた復活して来ます。『はたらく細胞BLACK』でもそうですが、がん細胞は一旦は退治される(BLACKでは外科手術や抗がん剤治療なども含まれる)ものの、また復活してくるという設定になっています。で、このがん細胞退治に乳酸菌が絡むことにもなるのですが、それはまた次回で。しかしこのがん細胞、前にも触れましたが、『ゲゲゲの鬼太郎』地獄の四将編に登場する石動零にちょっと似ています。
それにしても胃粘膜が荒れている場面で、白血球が鍋をかぶって応戦しているのには笑えます。こういう時は、ブラックな体内で鍛えられた1196姐さんと、白血球ちゃんが助太刀に来てくれるといいですね。あと、この本編では身体の持ち主の性別や年齢、健康状態が特定されておらず、細胞の活動と身体の意志や日常生活の因果関係が見えにくく、たとえば本人が煙草を吸ったから、がんが復活したと言うような関連性が乏しいのはマイナスと言えます。
(2021年9月30日加筆修正)
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