すべての都道府県で緊急事態宣言が解除されましたが、本当に気を付けなければならないのは、寧ろ今後かも知れません。では、第18回と第19回のあらすじと感想です。
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第18回
光秀と牧、煕子は燃え盛る明智城を見ながら、駒と菊丸の手引きで越前へ向かう。折しも伊呂波太夫もその場にやって来て、一同は越前を目指した。途中腕に傷を負った煕子を手当てする駒は、自分がかつて桔梗紋の侍に火事から救出されたこと、さらに麒麟のことをその侍が話して聞かせていたこと、その後自分は旅芸人の一座に預けられたことを打ち明ける。牧は、それは自分の夫である光綱であることを明かした。
越前一乗谷で、伊呂波太夫に連れられた光秀は、朝倉義景に目通りする。伊呂波太夫は、細川藤孝からの推挙の文を携えていた。また光秀は帰蝶の縁者であり、美濃が越前に押し寄せた場合は、尾張が越前を救うとも伊呂波太夫は話すが、光秀は自分にはそれまでの力はないと言う。義景は、今日の米にも困るであろうと気を配るが、扶持を受けることは、藤孝や帰蝶に迷惑がかかるのではと思い、取りあえず一軒の小屋に住んで、手持ちの品を質入れすることにした。己の非力さに打ちひしがれる光秀だが、牧に諭され、誇りを失わぬように決意する。
一方で信長は、弟信勝の家臣柴田勝家から、信勝が美濃の義龍(高政)と手を結んでいることを聞かされた。そこで信長は病と称し、信勝に見舞いに来させる。信勝は白山の湧水を持参していた。この場で兄弟は互いに、それぞれが相手を妬ましく思っていたことを打ち明ける。そして信長は、信勝にその水を飲んでみるように強いた。水を飲んだ信勝はこと切れる。信勝は初めから兄を殺す所存だったのである。
第19回
信勝を殺された土田御前は信長を激しくなじり、お前はいつも私の大切な物を壊した、この母も殺したのだと言って去って行く。その頃光秀は越前で子供たちに学問を教えていた。その光秀に朝倉義景は、上洛して将軍義輝に鷹を届けるように命じる。それを煕子に聞かせる光秀は楽し気であり、煕子もまた夫に、自らの妊娠を告げるのだった。そして京へ着いた光秀は三淵藤英、細川藤孝に会って書状の礼を述べる。その場で光秀は信長の上洛を知らされる。
その後光秀は義輝に同席し、能を見物するが、その前にあろうことか、義龍と名を改めた高政もその場にいた。しかも義龍の手下が、信長暗殺を企てていると聞かされる。しかも京を仕切っているのは、義輝ではなく三好勢であり、その中でも実権を握る松永久秀に話をするようもちかける。久秀はかつて、長慶襲撃の際に借りを作ったことから、義龍に口を利くが、義龍は光秀と差しで話をしたいと言い、いつか自分に仕えぬかと言う。しかし光秀は断る。
光秀は道三が言い残した「大きな国」の夢を抱いていた。義龍は光秀を去らせ、その後両名が合うことはなかった。そして信長は上洛し、義輝に拝謁する。今川の侵略を防ぐため、信長の官職を義元より上にし、御相伴衆にするように持ち掛ける義輝は、京のすべてが変わり、父もいなくなったことに空しさを感じていた。その気持ちは信長にも理解できた。その信長はその後久秀に国替えを求め、また将軍家は当てにできぬと言い出していた。実際今後どうなるかはわからず、光秀も久秀もその点では同じものを感じていた。
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まず第18回、特に駒と明智家の女性たちの絡みが、どうも朝ドラ的です。しかも煕子が腕にケガをしたのは、明らかに駒を出すためだなとしか思えませんし、そしてあのシーンで、いともあっさりと桔梗紋の侍の種明かし。これもどうにも肩透かしを食った感じです-あのネタ、最後まで引っ張るのかと思っていたので。それとこれは度々書いていますが、何度も何度も「麒麟」がどうこう、またかと思わされます。ちょっと出し過ぎでしょう、『花燃ゆ』のおにぎりではないのですから。
そして第19回、この大河らしくと言うべきなのか、史実がかなりカットされています。男性版『直虎』と思ってしまう所以です。別にドラマだから、創作を入れてもいいのですが、この義輝は三好長慶に対して、何度も兵を挙げては敗れています。ドラマの中ではその部分が殆ど描かれていません。そのため長慶に対する複雑な思いは、互いの表情だけではなく、セリフで表現してほしかったと思います。
あと向井さんの義輝は如何にも大人しげで、やりたいことがあるのにできないもどかしさは感じられますが、この人物が後に二条館で、三好勢相手に派手なチャンバラを演じた挙句、殺された人物にはちょっと見えないのです。それと信長、言っては何ですが、この時20代後半であるにも関わらず、甲冑姿が初陣の若侍のようです。彼と帰蝶がいる時も、大人というよりは高校生のカップルのように見えてしまいがちなのですが、でも50歳近くまでを演じるのですよね。
ところで第18回の脚本は岩本真耶氏ですが、第19回は前川洋一氏です。前川氏といえばあの『軍師官兵衛』の脚本を担当しており、そのせいか、義龍の退場の仕方(ナレ退場)は、官兵衛の時の高山右近の退場の仕方とそっくりです。ただやはりこの人は、官兵衛の方がよかったかと思います。岩本氏は今まで、池端氏と一緒に仕事をして来たうえでの抜擢でしょうが、複数の人物の脚本は、やはりどうかなとは思います。
それから光秀の立ち位置。なぜか伊呂波太夫が細川藤孝の文書を持っていたり、いきなりお屋形様である義景に目通りできたりと、ドラマにありがちなことですが、前半生が不明ということもあり、主人公補正をかなりされているようです。また伊呂波太夫が近衛の姫君だの、家出娘だの言っていますが、何か高貴な家柄と血縁関係にあるのでしょうか。こうなると、いよいよ『太平記』の花夜叉のコピーのように見えて来ます。
しかも家臣でもない光秀が、その後いきなり義景に呼びつけられて京に行けと言われたりで、藤孝と知り合いだから幕府との交渉に使えると思われているのでしょう。自由が利く身ではありますが、しかしこの時、光秀は客分でもなく一介の牢人に過ぎないのです。しかもフォーマルウエアである素襖を持っておらず、このお屋形様のを借りる立場の人物です。
加えて無位無官でもあるわけで、果たしてああいう形で将軍義輝と同じ部屋にいられるものでしょうか。その一方で普段着姿で義龍に会いに行き、この時だけタメ口と言うのもやはりちょっと妙なものです。
あと義輝が信長に官職について話していますが、このシーンだけ見ると、あたかも将軍が官職を与えているようにも取れます。無論これは朝廷から下されるものです。ちなみに義輝は、あまり御所へ参内しなかったとも言われています。
しかし信長も、だから幕府を見限ったと描かれているのはやや短絡的かと思います。これに関しても義輝の、三好への言及があってよかったかも知れません。実際この時は義輝が三好長慶に及び腰であったことから、信長が将軍家の足元の危うさを見たという説があるようです。しかし尾張は戦が多いから領国を替えてくれなど、松永久秀がいくら実権を握っているとは言え、直訴するものでもないでしょう。一方で幕府再興を考えていた光秀も、何やら幕府の頼りなさに言及していますね。
それと光秀が、一乗谷で私塾を開いて子供たちに学問を教えていますが、どうもあれは江戸時代のイメージですね。この頃何かを教えるのであれば、兵法や剣術を入れる必要ありでしょう。しかも光秀は、牢人のせいか髷を結わず髪を束ねたままですが、物を教える側としてどうかなとは思います。なお長谷川さんは、このシーンを見る限り、松下村塾の吉田松陰のイメージがあります。しかしどれだけ収入があるのか知りませんが、仕官しないと、そのうち扶養家族が増えることになるのですが。
それから光秀の青い、というか「真青」な素襖、前出のようにお屋形様である義景から借りたものですが、借りものだからわざわざテーマカラーにしなくてもよかったのではと思います。しかしあのお屋形様の羽織も、化繊ぽく見えます。それと煕子の着物、物にもよりますが、市販のセット物浴衣に見えて仕方ありません。牧は流石にそこそこの着物を着ていると思いますが。
また光秀が父光綱と馬を走らせる姿、『国盗り物語』で、幼少の頃の光秀(桃丸)を人質として稲葉山城へ連れ帰る道三を連想します。
それと伊呂波太夫が「くれる物は貰っておけばいい」と言うところ、あれは『真田丸』の昌幸が、「貰えるものは病気以外貰っておけ」と言ったのを思い出します。結構他の戦国大河からもヒントを得ているのでしょうか。
あと、この中で演じられている能の演目は、『春日龍神』かと思われます。なぜか日本語ではなく、英語とフランス語のウィキに解説があります。