今年も、大河ドラマの視聴率関連の投稿の時期です。まず直近三作品の視聴率の推移からです。
今年は特に『いだてん』の視聴率が色々と言われてはいましたが、青の『おんな城主 直虎』、オレンジの『西郷どん』に比べると、やはりかなり低めになっています。次にこの3作品の最高、最低及び平均視聴率に関してです。スタートからほどなくして下降線をたどるようになり、第40回頃からほぼ横ばい状態です。大体において大河は、最初の何回かは概して視聴率が高めで、その後やや下降して横ばいになる、つまり視聴率が安定することが多いのですが、『いだてん』の場合、安定するまでかなり右肩下がりが続いている傾向があります。
これで見る限り、『西郷どん』と『いだてん』は最高視聴率は同じです。しかし『いだてん』の場合、第6話から最終回まで一桁が続いたこともあり、オレンジの最低視聴率がかなり落ち込んでいて、これが平均視聴率に影響しています。無論ラグビーワールドカップと重なるという、今年ならではの事情もありました。NHKは日本とアイルランドの試合は中継したものの、スコットランド戦は日テレが中継していました。しかも日本が入るプールAのベスト8入りが、最後までもつれ込んだこともあり、リアルタイム視聴では多くの視聴者がこちらを優先したことになります。まあラグビー好きからすると、このプールの場合、ベスト8入りが簡単に決まる可能性は低いと思われましたし、もしNHKが『いだてん』の視聴率を考えるのであれば、このスコットランド戦の放映権を取っておくべきでした。ベスト8が決まった時点で「これは奇跡ではない」でもよかったのですから。
それから『いだてん』が最低記録を更新するまで、平均視聴率が最低だった『花燃ゆ』と比較してみます。
まず最高視聴率はそう変わりません。むしろ『花燃ゆ』は意外と言っては何ですが、最高視聴率は悪くなかったのです。そして最低視聴率ですが、これはやはり『いだてん』が大きく下回っていて、『花燃ゆ』の約3分の1、平均視聴率では3分の2程度です。
私の場合、途中で観るのを止めてしまった『いだてん』ですが、普通の大河で視聴率が低いというよりは、ある意味異質な大河であり、そのため観る人の範囲がかなり狭まったといえます。無論他の大河の一部にも、こういった異質な部分があるにはありましたが、歴史物ということもあり、そこまでは下がらなかったというのが事実でしょう。
また『いだてん』は金栗編が終わる時にバトンタッチが行われましたが、『麒麟がくる』とのバトンタッチは行われていないようです。「大河 バトンタッチ」で検索すると、『麒麟がくる』とのそれではなく、1年前の『西郷どん』と『いだてん』のバトンタッチの記事がヒットしますが、この手のセレモニーはもう終わったと考えるべきなのでしょうか。
それからネット記事などでは、『麒麟がくる』の制作発表時の「戦国のビギニングにして『一大叙事詩』」という表現を使っている物もあります。しかしながら、この「戦国のビギニング」とは一体何ぞや。要は始まりの意味ですから、草創期の戦国時代と言いたいのかもしれません。ならばビギニングなどと言わずに、きちんとそう書けばいいのです。しかもこの時代は戦国の始まりというより、寧ろ第二世代ではないかと思います。この大河では片岡愛之助さん演じる今川義元が出て来ますが、この義元の父親である氏親とか、武田信玄(晴信)の父親である武田信虎の頃が、草創期と言えるのではないでしょうか。
ちなみに公式サイトに、制作統括の落合蒋氏のインタビューがありますが、このような言葉が出て来ます。
「大河ドラマの原点でもある戦国時代を描いてみたい」
戦国は確かに人気がありますが、大河ドラマの原点なのかどうかはちょっとよくわかりません。それから、
「それまでの価値観が崩壊し新しい価値観が芽吹きはじめた戦国の世は、まさに時代の過渡期です。それは、戦後の日本や、昭和から令和にかけての日本と通じるところがあるのではないでしょうか。」
この表現は制作発表時のNHK ONLINEにもありましたが、ちょっとこじつけのような印象があります。言っては何ですが、やはり数字の取れる戦国をやりたい、しかも明智光秀の新事実(室町幕府再興)がわかったから、大河化したいということではないでしょうか。
「戦国ファンの方々にとって見応えのあるものであることはもちろん、戦国がどんな時代か知らない、明智光秀なんて知らないという人たちも楽しんでもらえるドラマになっています」
これはセールストークと解釈するべきかと思いますが、明智光秀を全く知らずして、光秀主人公の大河を観るのはちょっとしんどいでしょう。
何よりも、このインタビューのページの最後に、戦国の世を初めて4Kでフル撮影とありますが、NHK的に一番強調したかったのは、この部分ではないかと思われます。