オイルの件でカザマ商事の買収が保留となり、滝川は本社を追われます。そして脇坂が常務となりますが、すべてを掌握できるポジションに就いた彼は、ラグビー部廃部を宣言します。それは君嶋に取っては裏切りに等しいものでした。一方でアストロズは、今シーズンこそ優勝をと誓って破竹の勢いで勝ち続けます。今シーズンから参加した七尾は注目の選手でしたが、彼にはある弱みがありました。
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カザマ商事の790億円での買収プロジェクト会議が始まり、社長の島本博も顔をのぞかせる。しかしこれに関して、営業部主導のデューデリジェンスには見落としがあると脇坂賢治が発言し、その問題点を報告した君嶋隼人を会議室に入れる。君嶋はかつて、白水商船のタンカー瑞祥丸がエンジントラブルで座礁事故を起こし、それにカザマ商事のバンカーオイルが関与していたことを報告する。滝川桂一郎はその件は調査済みであると答えるが、君嶋はその調査を行った森下教授が、データを改竄したことをその場で明かし、見返りに3億円を受け取っていたと言明する。
しかもそれは、風間有也の個人資産から払われたものだった。滝川は分が悪くなる。さらに府中グリーンカントリーの青野宏が、3億円を現金で渡してデータ改竄を依頼したこと、しかもそれを証言したことを君嶋は強調する。君嶋はさらに、滝川と風間が同期であると指摘し、森下の3億円の受領書を見せる。役員に配られた資料にも同じ物が添付されていた。これで買収は保留と決まる。真希は、買収が保留になったことを喜ぶが、君嶋は後味の悪さを感じていた。これで滝川は役員を首になり、トキワ自動車の子会社である金融会社への異動が決まった。
会社の危機を救った脇坂は常務に就任する。そして君嶋がGMとして迎える2シーズン目のプラチナリーグ、アストロズは快進撃を続けるが、ライバルのサイクロンズも負けていなかった。サイクロンズは七尾に警戒するが、監督の津田三郎は、最終節の頃には平凡な選手になっていると断言する。そのアストロズは観客の性別や平均年齢まで割り出し、広告主を募るようになっていた。一方で君嶋は本社を訪れ、脇坂と久々に言葉を交わす。アストロズの収益はかなり上向きだったが、脇坂は思いがけないことを切り出す。
脇坂(石川禅)が滝川の後任として常務に就任する
それは、ラグビー部の予算の縮小だった。それではプラチナリーグに残れないと君嶋は言うが、脇坂は蹴球協会に払う金額に言及し、蹴球協会は変わらずラグビーも人気が出ないと言う。君嶋は脇坂もかつてはアストロズを応援してくれていたと言うが、脇坂に取ってアストロズはすっかりお荷物と化しており、しかもカザマ商事の買収が立ち消えになったことで、各部門は予算の削減を迫られていた。君嶋は脇坂の豹変ぶりに驚く。しかも何が悪いのかを理論的に話した滝川と違い、脇坂は潰せの一点張りだった。
君嶋は家でそのことをぼやく。真希は興味がなさそうな顔をしつつも、実際は興味があるのではないかと思われた。そしてアストロズは、タイタンズとの試合に臨む。各チームは七尾対策を練っていたが、それでも七尾はテクニックを弄し続けた。しかしこの試合、七尾はラックに入ることをためらったことで相手優位になり、何とか辛勝する。次のブレイブスはジャッカルを持ち味としており、対柴門琢磨はその対策として、ラックに入ってボールを奪うことを重視していた。その頃アストロズには、スポーツ用品メーカーのアトランティスからも話が来ていた。
脇坂は君嶋を呼び出し、取締役会議でラグビー部のあり方を検討し、予算を半分に圧縮する予定であると伝える。君嶋はチケットの売り上げは昨シーズンの230パーセント増であること、広告収入も獲得したことを話すが、脇坂の態度はにべもなかった。あと2試合勝てば優勝できると言う君嶋だが、脇坂は最終的にはラグビー部廃部を目論んでいたのである。府中に戻って来た君嶋は複雑な思いだった。選手たちもそれに感づいていた。そこで君嶋は、選手たちの前で予算の半減について話すことにした。
話し終わると浜畑譲がこう言った。
「今までだってそんな危機何度もあったし、乗り越えて来たでしょう」
君嶋は選手の成長に驚きつつ、このアストロズを守って行く覚悟を決める。そしてブレイブス戦でスタンドオフに選ばれたのは浜畑だった。七尾が外れたことに観客や子供たちは驚くが、浜畑はラックに果敢に入り、ボールを奪った。柴門が七尾を外した理由は正にそれだった。七尾はオールブラックスU20時代、ラックで膝を傷めており、そのためタイタンズ戦でもラックに突っ込むプレイを苦手としていた。大型選手にタックルする勇気はあるが、膝のケガはまだ体が覚えていたのである。
君嶋(大泉洋)は、選手の前で予算削減について話す
しかし今度は浜畑が、前半終了間際にラックで膝を傷めてしまう。君嶋は交代を提案するが、柴門は浜畑を中心に戦略を組み立てており、この試合は浜畑と心中すると言った。我慢比べとなる後半、七尾は浜畑に交代を申し出るが、浜畑はこう言った。
「怖いに決まっとるやろ。けどな、この試合勝たな優勝できへんのや。せやったらやるしかないやろ」
さらに自分の脚はどうなってもいい、逃げて負けるのは死ぬより嫌だと言ってグラウンドへ出て行く。劣勢に回るアストロズだが、博人は浜畑の応援を始め、観客が皆アストロズに声援を送るようになる。
そしてラックでの、浜畑の体を張ったディフェンスが起点となり、アストロズがボールを奪い返して、最終的に浜畑に渡ったパスはトライとなった。七尾は、浜畑は尊敬するアストロズのスタンドオフだと本波に言い、自らも拍手を送る。その後スタミナで優位に立つアストロズは、21-5でブレイブスを破った。サイクロンズもそのことを知るが、勝つのはうちだと津田は尊大に構える。試合後のスタンドに、君嶋は見覚えのある人物を見つけた。それは滝川だった。自腹でチケットを購入して試合を観戦した滝川は、君嶋にいい試合だったと言う。
君嶋は、滝川は脇坂とは違い、ラグビー部を含めすべてにおいてフェアだったと言う。実は滝川の父親はラグビー経験者で、子供の頃は高校大会に連れて行ってもらっていた。しかしその父親の家業が傾いて、滝川本人はラグビーができなかった。滝川は言った。
「ラグビーでは食べていけないからな」
さらに風間有也とのこと、高級レストランのことなどを話、どこかで奴の会社を奪ってやりたいという気持ちがあったのだろうと言い、ラグビーは自分の体だけで堂々と戦い公平なスポーツであると洩らす。
競技場に観戦に訪れた滝川(上川隆也、右)は君嶋と話をする
さらに滝川は君嶋に対して負けたと言う。それは例の資料に、風間の3つの口座からの出金の報告が添付されていたからだった。同じ日に1億円ずつが引き出され、例の森下の受領書と同じ日付になっていた。しかし君嶋にしてみれば、風間の口座のことなど身に覚えがなかった。どうやらこれは脇坂の仕業のように思えた。どうやら滝川も、そして君嶋もまだ知らないことがあるようだった。去り際に滝川は、君嶋にこう言う。
「君を府中工場に飛ばしたのは、私じゃない」
君嶋は驚いた。そして廃部と予算縮小を持ち出した脇坂の姿が目に浮かんだ。滝川は、君嶋の試合はまだ終わっていないと言い、負けるなと言って競技場を後にした。府中のグラウンドに戻って来た君嶋は、七尾がタックルの練習を繰り返しているのを目にする。そして膝を負傷した浜畑も、その様子を見ながらまだまだ終われないと口にする。信頼していた人物から裏切られた君嶋も、このまま終わるわけには行かなかった。
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この回の予告で「本当の敵」という言葉が登場していました。ということは意外な人物だということであり、ならば滝川である可能性はかなり低く、しかも府中グリーンカントリーの青野でもなさそうでした。となると脇坂ということになります。案の定この人物は、全権掌握した時からそれまでとは態度が変わりました。しかも同じようにラグビー部廃止に言及しつつも、言うことに筋が通っていた滝川とは異なり、この脇坂は何か恨みでもあるかのように、一方的にラグビー部潰しを叫ぶようになります。君嶋がオイルのことを脇坂に話した際、しばらく待つように言うシーンが登場しますが、どうも風間有也の口座の件とこれと、何か関係がありそうです。しかしアストロズに、「アトランティス」からサポートの申し出があったというのには笑いました。流石日曜劇場です。
ところでジャッカルというラグビー用語ですが、先日「リロード」でご紹介した、サンゴリアスのラグビー大辞典の当該項目のリンクを再び貼らせて頂きます。2本目のリンクは補足編です。
要は、タックルから倒されて密集になった状態でボールを取ることですが、このジョージ・スミス氏はジャッカルの名手でした。ドラマの中で、ジャッカルを得意とするブレイブスが「オーストラリアからコーチを呼んだ」というシーンがありますが、この人が頭をよぎってしまったものです。
さらにこのブレイブスのスクラムハーフの狩野伸太郎、どこかで見た顔だなと思っていたら、濱田岳さんが演じていました。何でも、ご本人が強く出演を願ったのだそうです。
(TBS公式サイトより)
あと、滝川が言っていた「ラグビーでは生活できない」は言い得て妙です。ヨーロッパなどでは、かつてアマチュアリズムが厳しい時代に、選手はこれで悩んでいました。日本では企業アマなので、ラグビー選手として会社のチームでプレイすれば、一応はプレイしながら収入を得ることはできますが、プロのような高額報酬が約束されているわけではありません。メディア露出も少ないため、いよいよ本格的プロリーグ構想が立ち上がったのは納得です。