シリアにボランティアの医師として赴き、一時帰国した橘和都は空港で恩師水野に会うも、突如体内で爆発が起きて水野は亡くなります。警察署に刑事たちと同行した和都は、そこでシャーロックなる奇妙な女性と対面することになります。
************************
医師である橘和都は、飛行機の中で恩師水野隆之からの手紙を読み返していた。空港に飛行機が着陸し、和都は迎えに出た水野と出会う。しかしその時爆音が轟き、水野はその場に倒れた。その場に駆け付けた警視庁捜査一課の礼紋元太郎と柴田達也は、内臓を破壊されて即死状態の水野の画像を「ある人物」に送る。やがて水野の妻が警察署に到着し、和都も礼紋たちに同行する。しかし安置された遺体は、シャーロックと呼ばれる先客が調べていた。
そのシャーロックは、和都が外科医でシリアへボランティアに行っていたことを見抜き、呆然とする水野の妻亜紀子に矢継ぎ早に質問を浴びせかける。かなりきわどいことも訊くシャーロックに和都は驚く。水野の死因は遠隔操作による液体爆弾によるもので、和都が外科医でシリアから帰国したばかりというのは、スーツケースに縫合糸を巻く練習をしていたことと、腕時計の時差からわかったのだった。3日前に爆撃があり、ボランティアの医師団は一時帰国していたのである。さらにシャーロックは和都に近寄ってにおいを嗅ぎ、爆薬のRDXとアルミニウムの混合火力であると言い当てる。礼紋は和都に、自分は指の擦過傷と一部が太いことから、ボウリングが趣味だと彼女に見抜かれたと話す。
和都は宿泊先の部屋で、礼紋の名刺を見つめる。しかしその部屋のコンセントは外れかけていた。その後栗本隆一という若い男が、同じ手段で殺された。同じ頃和都は221Bを訪れ、大家の波多野君枝を通してシャーロックと会い、あまりの変人ぶりに驚く。彼女の本名は別にあるが、ある時期を境にシャーロックと呼ぶようになったと君枝は言う。シャーロックはその時液体爆弾による殺人のシミュレーションをしていたのだが、新たな事件で現場に行き、和都も同行する。被害者の栗本は薬物常用者で、薬箱と呼ばれるダンスクラブに出入りし、手の甲に再入場可能のスタンプが認められ、遺体からスモークマシンに使うフォグリキッドのにおいがしていた。2人はそのダンスクラブに乗り込み、栗本が桐崎空也と名乗る売人から、薬物と称して爆弾を受け、それを飲み込んだことがわかる。
シャーロック(竹内結子、左端)の兄、双葉健人(小澤征悦、右から2番目)に遭う橘和都(貫地谷しほり、左端)
和都は水野家を訪れていた。亜紀子は胃の辺りを押さえながら、夫が、橘さんは辛い立場の人を放っておけないから、立派な医者になるだろうと言っていたことを話す。しかし和都は自分の無力さに気づいており、医師を辞めようとしていた。亜紀子を慰めるはずで来たのが、逆に励まされるようなことになり、2人で外に出て歩いていた時、亜紀子が髪留めを落とした少女の髪を、うまく整えているのを目にする。その時スマホに連絡が入り、約束の場所に行ったところ、シャーロックが兄の双葉健人と一緒にいて、和都と健人は互いに自己紹介をする。健人は内閣情報調査室勤務で、頭の回転が速すぎて嫌われ者と話す妹に、お前に言われたくないと言いつつ、3人はとある企業を訪ねる。
そこはクラウドファンディングで資金を募り、高額出資者には開発商品のサンプルを贈ることになっていた。液体爆弾はそれを元に、誰かが改変していたのだった。シャーロックと和都は、出資者の中に桐崎空也の名前を見つける。しかも空也と同棲している女性から、空也が薬物使用後、精神錯乱状態で部屋を出て行ったと通報があり、シャーロックと和都は礼紋たちとその部屋に向かう。空也は品川の薬物更生施設へ向かっており、出かける間際にメールチェックをした後、タブレットで、10年前に6歳の少女が刺殺されたニュース記事を見ていた。空也は途中で隠してあった拳銃を手に入れ、更生施設へ向かって、やはり更生者の牧島洋介の足を撃つ。
その時シャーロック、和都と警察が施設に到着し、空也が爆薬を飲み込んでいると叫んで、その場にいた人物を下がらせる。その施設には、薬物更生施設のケアは傷のなめ合いという抗議文が届いていた。その切手を見たシャーロックはあることに気づき、礼紋に、10年前に刺殺された少女の親の名前を調べるように頼む。さらに水野夫妻には子供はいないが、亜紀子は少女の髪を直していたように、子供の扱いに慣れていることを和都から聞く。その後2人はまたも水野家を訪れ、シャーロックは亜紀子に犯人はあなただと言う。亜紀子はかつてシングルマザーで、一人娘を育てていたが、その娘が牧島によって殺害されたため、職場と住まいを東京に移し、水野隆之と結婚した。
その後亜紀子は空也名義で投資をし、手に入った薬を爆薬に改造した。しかしこのことが夫にばれてしまい、爆薬を飲ませて殺害した。栗本は言うことを聞かないので同じ方法で殺し、さらに空也に牧島を襲撃させたのである。抗議文の切手には、2年前に発売された20枚つづりの記念切手の1枚が使われていた。他の19枚は、水野が和都へのエアメールに使っていたのだった。切手についた指紋から、既に亜紀子の身元は割り出されていた。害虫は誰かが駆除するべきと言う亜紀子に、駆除するのはあなたではないとシャーロックは言う。亜紀子は胃の辺りを押さえていたが、気分が悪いのではなく、ペンダントを触っていたのだった。そのペンダントには、亡き娘の髪の毛が入っていた。
亜紀子はテーブルの上のスマホに近づく。何かを察したシャーロックは亜紀子に近づくが、彼女は遠隔操作で自殺した。シャーロックは裏に大掛かりな組織があると感じ取っていた。やがてその場に礼紋たちと健人がやってくる。和都は今後のことを聞かれて、ホテルに戻って考えると答え、さらになぜシャーロックがそう名乗っているのか尋ねるが、回答は得られなかった。健人はルームシェアをしてみたらどうかと提案する。ちょうどその時、大田区のホテルニュー蒲田が全焼したという知らせが入るが、それは和都が泊まっていたホテルだった。このようないきさつもあり、2人は同居することになるが、シャ-ロックはこう言う。
「私といることを必ず後悔させてあげる」
************************
まずこの第1回、ホームズ物の第1回によくある『緋色の研究』も原作ではありますが、実は大元の原作になっているのは『悪魔の足』です。そもそもこの爆薬の名前が「デビルズ・フット」になっています。和都が警察署で初めて会ったシャーロックなる女性に、どこか常軌を逸したところがあること、その割に彼女の推理が的中すること、さらに、恩師であった水野の妻亜紀子の過去などが登場し、それに薬物更生者の存在が絡んで行きます。何よりかにより、和都はこの人物がなぜシャーロックなどと呼ばれているのかを知りたがるのですが、ここではその回答は明かされません。しかし、そんなに知りたいのなら、今は家も仕事もないし同居してはどうだと和都は勧められ、実際コンセントがどこか怪しげだった彼女の宿泊先は全焼して、221Bの居候となることになります。
ところで爆薬のRDXですが、これはトリメチレントリニトロアミンという成分です。しかしこの液体爆弾、水野の妻の亜紀子がこれをそこまで改造できたというのも謎ですが、薬物更生者を探し当てるというのも、組織ぐるみでないと恐らくはできません。しかし亜紀子は、それに関しては黙秘を貫いたまま亡くなり、シャーロックが「言え!言うんだ!」と亜紀子に声を張り上げるシーンが出て来ます。いささかネタバレですが、亜紀子のスマホケースにその秘密が隠されていて、後の方のエピソードで組織の存在が徐々に明らかになります。それと亜紀子が、娘の髪を入れたペンダントを肌身離さずつけている件ですが、これはドラマ中ではモーニング・ジュエリー(mourning jewelry)と呼ばれていますが、センチメンタル・ジュエリーなどとも呼ばれ、19世紀ごろに盛んになったとされています。