まずこの投稿とは関係ないのですが、スーパーラグビー関連の投稿で、プレーオフのライオンズとジャガーズのスコアに誤りがありましたので、訂正しています。失礼いたしました。
本題に入りますが、大河関連で書こうとしていてなぜか書き漏らしていた分です。とはいっても、以前に何度か書いたことがあり、その関連投稿を見てくださっている方もいるようなので、ここで改めて。大河ドラマの制作発表の時の、脚本家やプロデューサー(制作統括)のコメントなのですが、これが何か今一つではないかと、最近とみに感じています。(最近だけではないかもしれません)せっかくの大河であるにも関わらず、何か期待をそぐような格好になっていないでしょうか。
今回の『西郷どん』、これは目下楽しんでいますが、制作発表時には原作と脚本が女性というせいもあったのでしょう。スイーツになりそうだなという意見もありましたし、また女性の視点で云々と報道されたこともあり、私もちょっとこれはどうなるかと思いました。その時の林真理子さんのコメントはこうでした。
「男の作家というのは、談合とか政治的な駆け引きとかの描写が好きでそういうのにばかりやたら時間をかける。 私はもっと西郷の人間らしい部分やナイーブな面を描きたい」
また制作統括の櫻井賢Pのコメントにはこうありました。
「古文書や手紙は残されていても、男と女がどんな気持ちを通い合わせたのかなんて、史実からうかがい知れない。でも、女性である林さんや中園さんなら、男性の発想では出てこない西郷像を描けるのではないか。人間・西郷を裸にできるのではないか、と期待しています」
今観ていて特にスイーツという印象は受けません。無論吉之助のナイーブな部分は登場しますし、男女の機微ももちろん出て来ます。しかしかといって、史実を特にないがしろにしているわけでもなく、政治的な駆け引きも結構出て来ます。大久保一蔵の久光とのコネ作りなどはその一環でしょう。制作発表時は未定の部分もあったにせよ、どうもこれらのコメントはミスリードだったように思えます。それこそ『翔ぶがごとく』とは違った西郷の成長物語とか、人間として未熟な部分も描く程度にとどめておけばよかったのですが…あとBL云々、これも余計だったと思います。自分たちが作るドラマなのだから、マイナスのイメージを持たれないよう、コメントには注意していただきたいものです。無論マスコミが多少編集した感もありますが。
制作発表のコメントがいいのに期待外れだったという作品もありますが、今回はコメントはやや疑問で、でも本編はそう変でもなかったというケースでしょう。
それから制作発表時のコメントとして、『麒麟がくる』も気になります。関連ページの文章をいくつか拾ってみます。
そのメモリアル・イヤー(私注・2020年)に、大河ドラマで最も人気の高い「戦国時代」をはじめて4Kでフル撮影、従来とはまったく異なる新しい解釈で英雄たちを描く、まさしく「大河新時代」の幕開けともいえる作品が第59作「麒麟がくる」です。
「麒麟がくる」は、大河ドラマの原点に戻り、戦国初期の群雄割拠の戦乱のなか、各地の英傑たちが天下を狙って、命をかけ愛をかけ戦う、戦国のビギニングにして「一大叙事詩」です。
これも「従来とはまったく異なる」とありますが、別にそのような言い方をしなくても、主人公の明智光秀視点とでも書いておけばいいと思います。そして舞台は、後述のように1540年代から始まりますが、その時は既に「戦国初期」ではないでしょう。戦国初期というのなら、武田信虎の若かりし頃かと思われます。既に1540年代のはじめの方に、その信虎は息子の晴信から追放されています。この時代といえば、それまでの守護が戦国大名化し、また新興の大名も登場した頃で、それぞれの生きざまを描くというのが正直なところでしょう。
そして制作統括の落合蒋プロデューサーのコメントにはこうあります。
「このドラマは最近の大河ドラマとしては珍しく、1540年代から始まります。まだ信長も子供で、父の信秀が活躍していた時代。今川義元もまだ20代の青年、各英傑たちの「父親世代の活躍」から描く、いわば「ビギニング物語」です。」
1540年代であれば、『おんな城主 直虎』の最初の頃もそうでしたし、『風林火山』はそのもっと前からのストーリーでした。そして『風林火山』の今川義元も、はじめはまだ梅岳承芳を名乗っていた20代の青年でした。特に最近の大河として珍しいわけではないと思います。これもむしろ、『風林火山』と同じくらいの時代というのを引き合いに出せば、わかりやすいのではないのでしょうか。大河はなぜか他作品を引き合いに出したがりませんが、別にいいのではないかと思いますが。
それと脚本の池端俊策氏、
「室町幕府という古い体制が崩れ、日本が近世近代へと駆け上がる前夜の混沌とした」
と表現しておられますが、信長に倒されるまでは、戦国期でも室町幕府は存在し続けています。ただ弱体化しています。足利義輝などはすべてを自分でやろうとし、傀儡を立てようとした三好勢がそれに反発して、その結果将軍を暗殺しています。それと近世近代というのもやや難ありです。この場合は近世で、『西郷どん』が近代でしょう。
いずれにしても意気込みは感じますので、面白い大河を作っていただきたいものです。ただこのコメント、発表時は何を誰が演じる的なものにとどめて、地固めが出来てから制作なり脚本家なりがコメントする方法でいいのではないのでしょうか。前出のように、まだ発表時は未定の部分が多いわけですから、主役レベルのキャストが発表され、ある程度路線が決まって来たところで、改めて発表するという形の方がむしろより具体的な発言ができるかと。