成長した小吉は吉之助と名を改め、郡方書役助(こおりかたかきやくたすけ)となります。そこで百姓たちの有様を目にし、彼らに手を差し伸べようとするのですが…。一方で父斉興が自分に家督を譲らないと思った斉彬は、ある行動に出ます。
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斉彬と出会ってから6年後の弘化3(1846)年、小吉は吉之助と名乗り、郡方書役助となっていた。その年は米が不作で、百姓たちは重い年貢と借金にあえいでいた。吉之助の上役井之上に、庄屋の園田は目こぼしのためにこっそり賄賂を渡す。そこへ小娘がいきなり走り出て来た。この娘は百姓平六の娘ふきで、借金取りに追われており、払えなければ身売りをさせられるのである。吉之助は放っておけず、自分のわずかな禄を渡し、また井之上の金を渡してその場を引き下がらせた。
禄を渡してしまったため、帰りに鰻を獲ることを考える吉之助だが、獲れたのはエビが2匹だった。それでなくても西郷家は弟の信吾が生まれ、内職をしなければ生活ができず、野菜は自給自足だった。そこへ禄を渡してしまった吉之助は、吉兵衛にひどく叱られる。その時大久保正助が現れた。正助は記録所書役助の役目に就いていた。そして藩主の嫡男である斉彬は、藩士2000人を集めて大砲の調練をしようとするが、家老の調所広郷からにべもなく断られる。調所は先々代の改革に伴う借金をどうにか帳消しにしたが、一方で50万両を懐に入れたともいわれていた。
一方ふきは、掘立小屋のような家に住んでおり、母は病気であった。自分が奉公に上がればなんとかなると考えるふき。吉之助は自分の握り飯を、ふきと弟の一平に食べさせる。そして西郷家で、正助の役目就任の祝いが行われた。正助は酒を勧められるも、胃が痛むと断る。たわいもない話が続く中、赤山と糸が、それぞれ鯛と酒を持って現れた。成長した糸に目を見張る吉之助と正助。糸は赤山のところで下働きをしていた。糸が鯛を塩焼きにし、吉之助は百姓たちのために、斉彬を担いで藩主にしたいと洩らす。
しかし村田新八は、斉興は久光を藩主にしたいという考えだと言う。斉興はもはや調所に頭が上がらず、調所も、お由羅も斉彬をよく思っていなかった。有馬新七と有村俊斎がふざけ合い、そのはずみに鯛を皿ごと落としてしまう。食物を粗末にする人が、お国を語るのはおこがましかと糸。
その斉彬は、薩摩の沿岸警備に関する建白書を幕府に出すことにした。しかし斉興は、老中にこれが知れたらどうなりるのかと言い、幕府の手先と斉彬を批判する。またお由羅も、斉彬に辛辣な言葉をかける有様だった。しかし斉彬は赤山に、翌日江戸に立つことを告げる。幕府は薩摩の琉球の取り扱いや密貿易に、不審な印象を抱いていた。斉彬は父を追い落とし、藩主として今度は薩摩に戻ることを望んでいた。
当時の薩摩の年貢の取り立ては厳しく、また役人の不正や賄賂も横行していた。これを取り仕切る定免法を、吉之助はどうにかしたいと考える。そこで調所のもとへ足を運ぶが、調所は多少の不正があっても、年貢の取り立てがうまく行けばいいと取り合わない。しかし百姓を守りたいと言う吉之助に、調所は全ての田で坪刈りを行うように命じる。吉之助は赤山の許しを得て、糸と共に検見取をすることにした。
しかしそこで吉之助が見たものは、隠し田だった。年貢の対象にならないように、百姓たちはこっそり隠し田を作って米を作り、金に換えていたのである。その夜吉之助は赤山邸に行き、赤山靱負に頼み込んで、斉彬に会わせてもらうことにした。また農村の実情を書類にして渡すつもりでもいた。正助は止めようとするが、かつての斉彬の言葉は、吉之助の大きな励みになっていたのである。
ふきは岩山家で働くはすだったが、結局それは反故になり、売られることになった。糸はわずかながら、家から持って来た米を差し出す。また糸からそのことを聞いた吉之助はふきの家へ走るが、ふきは覚悟を決めていた。
「立派なお侍さぁに敢えて嬉しゅうございもした」
ふきはそう言い、別れ際に桜島を眺める。また赤山は何とかして斉彬を引き止めるが、結局西郷は来なかった。誰かを待っているのに気づいた斉彬に、お目にかけたか二才がいたが、今頃その者は、百姓のために駆けずり回っていると答える。
吉之助はふきが去った後、悔し気につぶやく。
「おいは立派なお侍なんかなじゃなか、女子一人救えんやっせんぼじゃ」
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それから今回の島津斉彬ですが、吉之助の上位互換的な印象があります。ある目的のために邁進したい、されど資金がない(斉彬の場合は、使わせてもらえない)という意味では、両者はそっくりであり、これが斉彬と吉之助が、馬が合う一因になったともいえます。しかし策謀を巡らせることができる点では、流石に吉之助よりも上といえます。
そして隠し田です。これは昨年の『おんな城主 直虎』の隠し里を思い出させます。しかしこちらの方が、より切実な事情であるといえます。要は不作であろうが何であろうが、すべて定免法で年貢を取り立てたがり、しかも
賄賂や不正に対して平気な役人に対し、百姓たちもまた対抗して考えた手段であるのは事実でしょう。その意味ではなかなかしぶといわけで、この場合は何やら吉之助の一人相撲といった感もありますが、こういう背景が結構出て来るというのは予想外であり、興味深くもあります。そのふきが去り際に、桜島を見るシーンがあります。これは『篤姫』で、輿入れする篤姫が、船上から桜島を見るシーンを連想させます。篤姫はその後二度と桜島を見ることはありませんでしたが、ふきの場合はどうなるのか。
しかしかつての郷中仲間、茶坊主の俊斎も有馬新七も実に騒々しい。騒々しいならまだしも、せっかくの鯛を庭に落としてしまう辺り、いつまで子供なのだと言いたくもなります。ところで糸は、赤山靱負の下で学問をしているということですが、無論創作にせよ、かなりレアなケースだといえます。この糸自身は、あまり詳しい史料はないようですが、お転婆設定というのは『翔ぶが如く』によるものも大きいのかもしれません。
ところでこの大河の視聴率、初回と第2回が同じ15.4パーセント(地上波)という珍しい出だしとなっています。
その一方でBSの視聴率がかなり高いようです。こちらは初回が4.9パーセント、第2回が5.6パーセントと、『真田丸』を思わせるものがあり、その意味でもちょっと珍しいといえます。