タイトル=サブタイの今回、あれこれ動きがありました。そして、初回からの男性キャストの大半が、今回で退場です。何か、これまでの牧歌的(後の方はのぞく)な雰囲気が終わり、かなり荒っぽい現実が女城主の前に突きつけられそうです。
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掛川城下に迫った直親の一行は、今川の家臣や兵に取り囲まれた。直親は馬を下りて、奥山孫一郎や家臣の今村藤七郎と共に斬り抜けようとするが、多勢に無勢でもあり、孫一郎と藤七郎は相次いで落命する。そして直親も相手の剣を受け、一旦は井伊谷まで戻ろうと立ち上がるも、力尽きる。その頃竜宮小僧の井戸では、冬のさなかだというのに、次郎が直親の無事を祈って水垢離をしていた。その時彼女の目の前に直親の幻が現れ、その直後次郎は倒れてしまう。次郎は高熱を発し、三日三晩眠ったままだった。
次郎がかなたへ手を伸ばすのを見た、母の祐椿尼がその手を取り叫ぶ。
「直親、手を離せ!」
南渓や昊天、傑山は、唯一生き残った従者の報告を受け、現場へ向かう。そこには、一行の遺体が野ざらしになり、その上に雪が積もっていた。龍潭寺に遺体が運び込まれ、「殿のお帰りである」の声に、次郎はふらふらと立ち上がり、三人の遺体を目にする。直親の遺体に触れようとする次郎の手をしのが払い、こう言った。
「そなたが殺したようなものではないか、あの時但馬を成敗しておけば」
しのの妹なつが、姉は取り乱していると取り繕うが、次郎はその言葉を受け入れ、夢遊病者のように去って行った。これでは嬲り殺しであると嘆く直平。
その後犠牲者の葬儀が行われたが、病後の次郎は井戸の側にいて、川名で唱えた死者を悼む経を、直親のために唱え始めたが、途中で声が詰まってしまう。その頃井伊の館では、今川より虎松を始末するよう下知が来ていた。新野左馬助が命乞いに向かうが、氏真は聞き入れようとせず、左馬助の訴えを一蹴し、ならば欲しい首があるので、取ってくれば虎松の件は許すと伝える。井伊谷に戻った左馬助は、ことの次第を話すが、直平も中野直由も、戦には乗り気だった。しかし彼らの間には、但馬こと小野政次が裏切ったか、始めから手合わせをしていたのではないかという疑念があった。
一方駿府では、氏真が政次に、左馬助がお前の読み通りに動いたと話していた。また政次は、三河でも松平の家臣や一向一揆についても情報を仕入れ、これを利用すれば、元康の足をすくうことができると伝える。そんな政次に、氏真は満面の笑みでこう言った。
「悪い奴じゃのお、そなたも」
その頃岡崎城では、元康が家臣の裏切りに怯えていた。同じ頃左馬助の屋敷には、しのと虎松のみならず、なつと亥之助も滞在していてにぎやかだった。一度尋ねてはどうかという母祐椿尼の言葉に、次郎は言葉を濁す。次郎は寺から出ようとせず、ふさぎこむようになっていた。
竜宮小僧の助けを借りたいとやって来る村人に、昊天は次郎が、自分は災厄をもたらすだけと言って、頑なに人々を拒んでいると断る。そんな折、南渓が次郎に、酒を持たせて井伊の館に行くように勧める。曾祖父に当たる直平をはじめ、伯父の左馬助、そして中野直由が出陣することになったのである。自分たちでなければ戦はできないと語る直平たちだが、次郎は、三人がいなくなった後を不安に思った。きっと帰って来るという直平と、初めて酒を酌み交わす次郎。次郎が男子でないのが残念だったが、女子ならば逆縁にならずにすむという直平の言葉に、祐椿尼は涙を流す。
その夜次郎は井戸端で酒を飲み、様子を見に来た南渓に、自分は無用の長物でしかないと愚痴る。その後直平は出陣後、陣中で不審死を遂げ、左馬助と直由も、曳馬城で戦死した。その後政次は、今川からの三人の目付を連れて井伊谷へ戻って来た。所謂井伊谷三人衆である。政次は祐椿尼に、直親の内通ゆえ今川に捕らえられていたが、直平たち三名の忠義により帰還を許されたと告げるが、祐椿尼はよくできた話と皮肉る。そして政次は、その場で虎松の後見に就くという話を持ち出す。今川がそこまではできないと言う祐椿尼に、家督は虎松様、それがしは後見と強調する政次。
そして政次は、井戸の側で昼間から酒を飲む次郎に声をかける。なぜ政次だけ無事に戻って来られたのか、最初から裏切るつもりだったのかと問い詰める次郎。政次は、恨むのなら下手を討った直親を恨めと言い、さらに、同じ失敗を繰り返す井伊は、終わるべくして終わるとも言うが、それらの言葉にはどこか含みがあった。そして龍潭寺では祐椿尼が、南渓に虎松の後見を頼むが、その時昊天の大きな声が響き渡る。飛び出した二人は、次郎が槍を手に昊天に向き合っているのを目にする。ならば鶴を狩りに小野屋敷に行くかと南渓。
次郎は槍を何度も地面に突き刺し、自分には災厄を振りまくことしかできないと口にするが、その時小坊主がおずおずと、次郎様は竜宮小僧ではないのかと話しかける。生きておる者は、死んだ者を己の中で生かすことができると南渓に諭され、次郎は直親の遺志を継ぐことを決意する。そして次郎は、夫婦約束が決まってから、母が作った小袖に手を通しながら、直親が駿府に発つ前に、一緒になろうと言ったことを話す。評定の席では南渓が、後見は直虎と決まったと告げたが、一同が初めて聞く名前であり、政次が唯一誰であるのかを察した。そして、恐らく彼の察知通り、その場に入って来たのは次郎だった。
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直親が暗殺され、直平や左馬助、直由と井伊ゆかりの男性がいなくなり、井伊家は危機的状況を迎えます。しかも虎松も危険な目に遭っており、さらに政次が後見に就くということになって、祐椿尼は南渓に相談を持ちかけ、結局南渓は次郎=直虎を推すことになります。しかし父和泉守そっくりになった小野政次が、本当に悪意があったかというと、それがまた何ともいえないわけです。絵に描いたような悪役ともいえないだけに、今後もこの人物の動向が気になります。この役を演じる高橋一生さんが、かつて出演した『民王』のスピンオフ「恋する総裁選」をちょっと思い出します。