では第34回「挙兵」のあらすじです。石田三成の家康襲撃は失敗に終わり、謹慎させられることになります。宇喜多秀家らの尽力で、政務に戻った三成を待ち受けていたのは、加藤清正、福島正則ら武断派の襲撃でした。豊臣家内部に亀裂が入り、家康はそれを巧みに利用して行く一方で、三成は佐和山城への蟄居を命じられます。そして家康は自らの行動を正当化するため、茶々にある頼みごとをします。
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家康夜襲未遂後、宇喜多秀家たちは、謹慎中の三成を復職させようと尽力する。一方で石田屋敷に行った信繁は、城から持ち出した記録の整理に余念がない三成に、春には苦労するとはどのような意味か尋ねる。かつて三成は大谷家への礼のつもりで、春に筆を贈ったことがあるが、それがもとで春は三成を慕うようになり、妻のうたに離縁を迫ったことがあった。帰宅した信繁から、石田家に行ったことを告げられた春は、部屋を出る際に障子を破ってしまう。
加藤や福島といった武断派の武将たちは、病床の前田利家に三成の処遇について迫るが、利家は和睦の身を繰り返す。そして三月三日、利家は他界し、歯止めがなくなった武断派諸将はより過激な行動に出始める。その前に利家は家康に頭を下げて、三成は復職して北政所の寧に謝意を述べる。しかし北政所は、既に政に口を出すのはやめ、秀頼の婚儀を機に出家を考えるようになっていた。そのためきりも暇を出され、信繫は上方が不穏なことから上田に帰そうとするが、今度は細川家に奉公してしまう。
三成は大坂城の茶々と秀頼に桃の木を献上するが、その場で徳川を信じるなと口にしてしまい、気まずい空気が漂う。一方で細川屋敷で、忠興の治部成敗という言葉を耳にしたきりは、真田屋敷にそのことを知らせ、信繫が石田屋敷に走る。三成を苦し、武装した諸将を欺くために将棋の山崩しをする信幸と信繁。他を探そうという加藤清正の言葉に、一同はその場を立ち去るが、一人残った黒田家の家臣が山を崩してしまう。その男こそ、後藤又兵衛基次であった。
宇喜多屋敷に逃げた三成は、いくら武断派でも城には火を放てまいと、伏見城の治部少輔丸に籠ることにし、明石全登が案内をする。一方武断派の武将たちは勢いづいており、信繫も歯が立たず、大坂城へ向かうが、寧も茶々ももはや動く気配はなかった。大谷刑部は家康に頼むことを提案し、家康は考えた後、武断派諸将の労をねぎらうと共に、三成には佐和山城蟄居を命じた。三成は己の不運を嘆くが、信繫がたしなめる。そして最後に清正と顔を合わせた後、信繫に「今生の別れだ」と声をかけて去って行った。
その後家康が伏見城に入る。これは彼の計画通りだった。三成がいなくなったことで、信繁も家康に仕官を勧められるが、三成でさえできなかった家康の下での仕事が、なぜ自分にできようかと断り、その後は真田家のために働くことにする。そして信繁は大坂城に行き、茶々・秀頼母子や片桐且元と会う。茶々は実は三成を嫌っており、何を考えているかわからないと言うが、信繫は一度心を開けばわかりやすい相手と答える。
それから一年が経過した慶長五年(1600)五月、大坂城に入っていた家康は、西笑承兌から文を受け取る。所謂直江状で、家康の行状を批判したその書状に家康は苛立ち、上杉攻めを決意する。その頃昌幸は上杉からの密書を受け取っていた。乱世の再来を望む昌幸はこれを機に上杉に味方し、かつての武田領を取り戻す魂胆だった。息子たちもそれに従う。しかし信繁は、乱世は再び来ない、上杉を助けるために父を欺いたと兄に話す。策士だと指摘する兄に、真田昌幸の息子だからと信繁は答える。
家康は老衆筆頭である自分に、上杉が宣戦布告も同然のことをしたからには、これは豊臣と上杉の戦いであるべきと主張する。これに片桐且元は精一杯の抵抗をするが、むなしかった。しかし上杉を信頼している秀頼の手前、陣中見舞いということで、金子と兵糧米を茶々にねだり、ひいては士気を高めるためという名目で、豊臣の軍勢、旗、幟の使用許可を得た。これにより家康は、豊臣の旗をなびかせて、堂々と会津征伐に赴いたのである。
その家康が出陣後、宇喜多秀家と小早川秀秋は、家康弾劾の作戦に出る。そして彼らが密会した場所に現れたのは、佐和山城を抜け出した石田三成であった。彼らはその後毛利輝元の到着を待って、ある謀議を始める予定だった。
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かなり情勢がきな臭くなって来ます。三成が政務に戻ったものの、前田利家の死によって武断派諸将は彼を狙うようになります。家康もいささか手を焼いたものの、うち一部はまだ使えるとみて、一旦矛を納めさせ、三成に蟄居を言い渡します。いわば三成を蹴落とした家康は伏見城、その後大坂城へ入り、直江状を機に上杉攻めに向かいますが、自軍を豊臣の軍勢とするために、茶々に働きかけます。無論これには様々な画策があってのことですが、茶々はそれにどのくらい気づいていたのでしょうか。もしわかっていて家康を利する行動に出たのなら、やはりこの茶々は怖いです。しかし秀頼が老衆の中で一番頼っているのが上杉景勝とはうなずけます。確かに家康ではないでしょうね。
しかし今回は昌幸や上杉主従同様、この家康も実にキャラが立っていてよろしい。ある意味三成よりも家康に共感したくなるのは、こういうキャラ設定のせいかと思ってしまいます。三成も気の毒ではありますが、「自分がいなければ(政務)はどうにもならない」などと言う辺りは相変わらずですね。しかも、自分を殺そうとしても、家康が喜ぶだけだとも言っていますが、彼らは「家康のために」三成を討ち果たそうとしているのですが…。そしてきり、今度は細川屋敷への奉公ですが、これは長くは続きませんから、その後一旦上田へ戻るのかもしれません。しかし今回は、このきりにアイリーン・アドラーがだぶります。それに関してはまた後日。