それでは、第23回についてあれこれ感じたことを書いて行きます。まず、秀吉出陣に際しての、徳川を離れることになった昌幸の嬉しそうな顔(笑)。しかし家康も狸、また何かの折に一緒に戦おうと、しれっと言い残して去って行きます。一方で、久々に上杉景勝と会った信繁、景勝は自分が信繁を置いて帰っただけに決まりが悪そうですが、信繫の「今もお慕いしています」の言葉にいくらか和んだ様子。そして無駄が嫌いな石田三成は、今でもこの戦をするべきではないと思うが、戦うからには勝たないと、負け戦では無駄になると一言。しかしこれがとんだ形で跳ね返って来ます。
そして、仮に伊達政宗が援軍に来たところで勝ち目のなさそうな北条氏政の籠城ですが、本人もそのことは薄々感づいていたでしょう。しかし、秀吉めに頭など下げられるか!というのが結局裏目に出た感じです。無論伊達は結局裏切るわけで、今回は金の十字架こそ無いものの、やはり死装束で出向く辺り、この人も結構芝居っけたっぷりであるとは思います。無論豊臣に従うには、このくらいのパフォーマンスが必要だったわけで、この点氏政とはかなり違った人物でもありました。
一方で、城を取り巻く秀吉、秀次の陣は華やかです。しかも秀吉が阿国歌舞伎を呼びよせて興じているシーンといい、また千利休が茶の相手のみならず、京や堺から、あれこれ商品を運んで取り揃えている辺りといい、どう見ても北条にプレッシャーをかけるための、戦わずして勝つ戦であることに間違いはないようです。しかしこの利休はなかなか黒いですから、あるいは北条とも通じていたのではないかとも思えてしまいます。そして寧は京で留守番、茶々が呼ばれることになりますが、寧は「怖い人」がそばにいなくて、あるいはほっとしていたかもしれません。
そして茶々、秀吉は美しい物しか見せないと言いながら、彼女を戦陣に来させるのですね。尤もこの戦であれば、問題ないと踏んだのでしょうが。茶々も退屈を紛らわすために扇を買いますが、その柄はどうも山吹文様のように見えます。まして利休が、特別に念を入れて作らせたなどと言う辺り、どうもいわくつきな感じです。そして信繁ですが、こちらは茶々が怖い存在といいながら、一人でいる彼女に率先して声をかけていますね。また、茶々の「城が焼け落ちるのを見たい」も、無論本心ではないとは思いますが、こういう言葉が何気なく出て来る辺り、尋常ならざる女性という印象です。しかし信繁が「取り残された者は消える」と彼女に言うのは相当暗示的です。
そして「無駄が嫌いなはずの」石田三成、戦関連では大いなる無駄をやっているとしか見えません。いざ戦が自分の考えた通りに進まないとなると、それだけでもう一杯一杯になってしまうようで、しかも身を粉にして戦を続けている東山道軍に、あなた方が無能だから忍城を落とせないのだといわんばかりの暴言です、後で巨大なブーメランが来ることになってしまうのですが…。おまけにお腹具合も悪くしてしまってますし。一方で昌幸は上杉景勝の「大義がない」に、「そう、大義、大義」などと調子よく合わせていますが、この父上に大義という言葉は似合いませんね(苦笑)。出浦さんの方がまだ似合うかも。
それから信繁が氏政を説得に行くところ、ここは何やら主人公を出すためのシーンと取れなくもないのですが、今回の小田原征伐は、従来とは結構違う側面から描いていますので、覆面姿の本多正信が迎えに来て、しかも信繁が途中で危なくなって、そこにいたのが姉の夫の小山田茂誠であってもおかしくはないでしょう。そもそも、この信繫が行くこと自体が、前回の裁定シーンの伏線回収なのですが、次回はこれがどのように回収されるのでしょうか。それから、説得に行った徳川方の人物は出て来るのでしょうか。
ところで、三成の言に呆れていた東山道軍、実質上杉主従と真田父子なのですが、直江兼続を演じる村上新悟さんの表情が、まるでチベットスナギツネだというネットの指摘には笑いました。この方は『軍師官兵衛』では大谷吉継役で、三成に「己の知略を恃みすぎる」というセリフがありました。同じ言葉を、今回も三成に向けて投げてほしかったです。あと、『花燃ゆ』で、久坂玄瑞の兄の玄機の役だったことは以前書きましたが、この兄弟は見かけに加え、声が違い過ぎな感があります。村上さんはあの通りの声ですが、玄瑞役の東出昌大さんは、滑舌の悪さを指摘されていたこともあり、その点でもあまり似ていないというイメージでした。
そして北条氏政。湯浴みもせずに引きこもり、薄化粧をして蹴鞠に興じるさまを、板部岡江雪斎はこのように表現しています。
「蹴鞠に興じるのは戦を心配しておられるから、薄化粧はやつれたお顔を隠すため、香を焚くのは体の臭いを消すため」
氏政はどのような思いでこれを聞いていたのでしょうか。しかしかつては如何にも出来ない息子風であった氏直が、ここでまともな判断を見せます。しかし、最早氏政は聞く耳を持たず、そのための信繁の派遣という設定です。
最後にこの三成は、やはり『平清盛』の「悪左府」藤原頼長ともダブります。同じ人が演じているのだから、確かにそうなりますし、『新選組!』の土方歳三もこの雰囲気でした。山本耕史さん、最初に名前を知ったのは『世界ふしぎ発見』で、スコットランドのバグパイプコンテストに出場する回でしたが、その時はまだ、こういう役が似合うようになるとは思ってもいませんでした。
ところでスコットランドといえば、明日のラグビーの試合、さてどうなりますか。しかし蹴鞠て、よく見るとラグビーボールを潰したようにも見えてしまいます。