ここで言うのも唐突ですが、寒中お見舞い申し上げます。寒さが続くようですのでご自愛ください。それと「シャーロッキアン度検定問題集」の回答、もうしばらくお待ちください。では『応天の門』続きです。
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加持丸が書庫に鍵を下ろして閉じこもった件で、権少将在原業平が検非違使を連れてやって来る。加持丸を捕らえようとする業平の前に道真が立ちふさがり、書庫の中の貴重な文物が、下手に抵抗されて破壊されるようなことがあれば、業平の責任になると主張し、その前に中の男の様子を見せてくれと頼む。中に入る道真の踏み台にされた長谷雄は、業平にまかせた方がいいのではないかと言うが、もし加持丸が捕らえられれば、盗品である鏡を買ったお前も共犯だぞと返す。
石川殿の話によれば、加持丸はひと月ほど前に唐で山犬に噛まれ、それ以来おかしくなったのだと言う。業平は悪霊ではないかと疑うが、長谷雄は盗賊ではないかと口にしてしまい、鏡のことを業平たちに話さざるを得なくなってしまった。一方道真は書庫の中に入り、加持丸の様子を見るが、痙攣や光への恐怖、熱などから何かの病であるとにらむ。
道真は書庫の中から橘広相に、医術書がどこにあるのかを訊き、それを開いて「狂犬(たぶれいぬ)」の症状が加持丸にあることを知る。書庫の鍵を開けて、加持丸を外に出そうとする道真に、その加持丸が襲い掛かり、上衣を噛みさこうとしたはずみで2人は外に転がり出る。加持丸は既にこときれているようだったが、業平は内裏で死人を出してはならぬといい、急いで外に運び出す。その加持丸に自分の上衣をかけてやる道真。また道真は、検非違使たちに血や体液に触れぬよう伝えてくれと、業平に依頼する。
業平は、形だけだが祈祷師を呼ぶと橘広相に伝える。騒ぎが大きくならなかったことに例を述べる業平だったが、加持丸を治すことのできなかった道真は言う。
「私の思い上がりでした。知っていることと出来ることは違う」
業平は道真に言う。
「…ならこれでひとつ「知った」な」
道真はそれまで、兄に関していわれたこと、父が狩に反対したこと、そして加持丸が書庫の中で「来るな!」と言ったことなどを思い返していた。しかし長谷雄はあれは祟りであると言い、「ただの疫病でああはなるまい」と口にする。その言葉に道真は急いで帰宅し、流行病(はやりやまい)で死んだといわれう兄の遺品を調べる。そこへ父是善が現れ、兄の遺品を勝手に手に取って調べる道真を咎めるが、道真は父に言う。
「兄上は殺されたのですね」
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結局加持丸は狂犬病に罹っていたようです。書物での知識はありながら、結局この男を助けられず、無論真相を聞くこともできなかった道真はどこか浮かない表情です。これでまたひとつ成長したなと言いたげな業平。そして、紀長谷雄の言葉がかなり今回は伏線になっています。晋代の鏡、盗賊、そして「ただの疫病」などなど。
しかし今回のことをひっくるめて、道真が「兄が殺された」と結論付けたのは、兄もあるいは何らかの理由で狂犬病をうつされ、加持丸と同じような病状で亡くなったのでしょうか。そして道真は兄の遺品から何を読み取ったのでしょうか。