『応天の門』あらすじその二です。藤原親嗣(ちかつぐ)の家の女官が行方不明になり、道真の友人の紀長谷雄が疑いをかけられる一方で、道真自身は権少将の在原業平と出会うことになります。
あらすじ親嗣邸の女官が2人行方不明になったのは、鬼のせいであるという噂が都では流れていた。しかし、何事も理詰めで考える道真はそれに不審を抱き、しかも親嗣自身も事実を隠していた。道真は業平に連れられ、女官と思われる死体を検分するが、こらえられず戻してしまう。仕方なく業平が、道真の言うままに検分を進めたところ、
- 死体の足の裏には、引きずられた跡がない
- 体中があざだらけである
- 髪の毛のにおいが、護摩を焚いた時のものである
実は業平も、その少し前に親嗣を訪ねた際、女官の手にあざがあるのに気づいていた。この3点がはっきりしたことで、道真は、この女官は事実隠蔽のため邸内で殺され、他殺に見せるために外に運び出されたことがわかる。しかも親嗣は、
物忌みと鬼除けのため護摩を邸内で焚いていた。しかし業平は、既に権力者となりつつあった藤原氏が、この事件をもみ消してしまうことを懸念する。道真は食ってかかるが、業平は、女官の1人や2人のために、藤原氏に楯突く者はいないと道真をたしなめる。
これによって紀長谷雄は、条件付きながら釈放された。気の弱い長谷雄が、自白する前に釈放されたのは喜ぶべきことだったが、しかし驚いたことに、長谷雄は例の女官の行方を知っていると、業平と道真に話す。というよりは、長谷雄が小藤というその女官に言いより、振られてしまったのである。やけになった長谷雄が、小藤が入って行った双六宿の前に立っていると、そこで双六をしないかと店の者に誘われ、賭けをして借金をこしらえてしまう。さらに長谷雄は、小藤もあざを作っていたと2人に話す。
その店の主人の昭姫に、業平は小藤のことを訪ねるが、昭姫は首を縦に振らない。どうやら長谷雄が借金を返さないと教えないようである。そこで道真が、三番勝負で自分が勝てば借金は帳消しにしてくれと頼み、昭姫と勝負に出て、しかも漢語で昭姫とやりとりをし、ことの次第をつかむ。実は道真は、5年前に長谷雄から双六を教わったものの、つまらないとやめてしまっていた。業平は、そんな素人同然で大丈夫かと訝るが、実は道真が強すぎて、周囲の者が相手にならなくなってしまったのがその理由だった。結局道真はやすやすと昭姫に勝ち、そしてこう切り出した。
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まず双六宿の女将、
昭姫ですが、後漢から三国時代にかけての女性の詩人です。この女将の本名なのかどうかは定かではありませんが、なかなか妖艶で一癖ありげな女性です。しかし結構利害関係で一致すれば、協力しそうな人物でもあります。そして女官失踪の件、段々と事実関係が明らかになって来ました。この3つから道真は犯人像を割り出しますが、藤原氏に正攻法で行くことがかなわず、他のやり方を模索することになります。それがずばり「鬼退治」なのですが、さてどのようにするのでしょうか。それについてはまた次回にて。
そして道真君、流石に死体を目にすることには慣れていないようです。しかし戻してしまうなんて、『相棒』の神戸尊かと(苦笑)。子供を相手にすると蕁麻疹が出てしまう、湯川准教にも一脈通じるものがありますね。