このところちょっと『八重の桜』に肩入れしすぎかなとは思いますが(『花燃ゆ』より面白いのは事実ですが)、川崎尚之助について触れたので、山本覚馬についても書きたいと思います。パペットホームズも、後で前回放送分を投稿予定ですのであしからず。
さて覚馬自身も洋学者であり、洋式砲術の指南役です。何せ山本家が、かの山本勘助の流れを組むといわれており、いわば会津における兵学のエキスパートであったわけです。江戸で佐久間象山から教えを受けた覚馬は、故郷の会津の日新館で教鞭を執ります。ドラマではこの時日新館に尚之助を招聘し、彼を教授として取り立てようとしますが、守旧派の上層部から何度も突き返され、最終的には1年間の謹慎を命じられてしまいます。謹慎が解けた後は会津で軍事関連の要職に就き、尚之助も藩士たちを教えることになり、更に覚馬は藩主松平容保の京都守護職就任に伴って京に上り、西洋式軍事教練を行って、諸藩の様々な人物と交わることになります。
しかしその後眼病を患い、視力が落ちて行く中で、
西周(にしあまね)との交流も深め、西の『
百一新論』(後述)の出版にも関わっています。また、佐久間象山の遺児の面倒を見たとも言われています。そして武器の買い付け、あるいは造船所の建設計画など八面六臂ともいえる大活躍でした。幕末における会津を代表する人物であり、更に戊辰戦争後は一旦新政府軍に拘束されるものの、明治に入ってから釈放されて京都の治政に携わり、果ては妹の八重の夫となった、新島襄と共に同志社を創設します。その後キリスト教の会衆派の信者となり、同志社のために尽くすようになります。
ドラマではいい相棒であり、義兄弟であった川崎尚之助とは、明治後大きく違った人生を歩くことになりますが、妹の2度目の夫である新島襄にも、今度は尽くすようになることを思うと、常にこの覚馬の人生は、本人→妹(八重)→八重の夫(尚之助、襄)という歯車によって回転している印象もあります。というか、自分がこれはと見込んだ人物を、妹にめあわせたということなのですが、これこそが『八重の桜』にとって、覚馬が不可欠な存在、あるいは覚馬がもう1人の主人公である所以でしょう。正に「人むすぶ妹」(『花燃ゆ』第1回のサブタイトル)です。『花燃ゆ』も、こういう描き方をすればよかったかも。
それにしても川崎尚之助の人生は、なまじ学識や才能もあって義に篤い人物でもあっただけに、彼の最晩年には何か痛ましさを感じます。もし彼が覚馬と出会わなかったら、あるいはたとえば大坂の適塾に行って、大村益次郎や福沢諭吉と親交を温めていれば、また違う人生が開けていたでしょう。無論橋本左内のように、安政の大獄に巻き込まれた可能性も否定できませんし、あるいは戊辰戦争に、「新政府軍」の一員として参加していたかもしれませんが。
余談になりますが、西島さんと長谷川さん、お2人ともそこそこ好きなので、また大河に出てほしいですね。来年はほぼ決まりですので、再来年の『おんな城主 直虎』で、西島さんに今川義元の役を演じてほしいものです。長谷川さんは明智光秀など適役かもしれません。今川義元といえば、『風林火山』での谷原章介さんが演じた義元もよかったです。
最後になりましたが、『百一新論』についてはこの記事が参考になるかと思います。
山本覚馬の『百一新論』出版の不思議 (同志社女子大学サイトより)