プレシーズンに放送された「
恐怖の切り裂き魔連続殺人!」の続編というべき回です。
投身自殺したはずの浅倉禄郎が、実は生きていた…ホームレスとなった浅倉は、炊き出しを待っている間に、他のホームレスの男から自分の正体に気付かれ、法務省刑事局刑事課長の永井の取り調べを受け、再び拘置所に戻された。しかし浅倉は記憶を失っており、亀山薫はそのことに怒りをぶつけるが、もはや浅倉は、母を殺した以外の記憶は残っておらず、逆に自分は他にも殺人をしたのかと問いかけるのだった。
永井は浅倉に催眠療法を受けさせようとする。楽しかった時の記憶だけでも戻ってほしいと願う亀山、しかしそんな矢先、拘置所内でサイレンが鳴り渡る。その後、亀山は浅倉が自殺したという知らせを受け取って、やるせなさを感じる。葬儀がひっそりと行われた後、亀山の元を「特命係の亀山~!」とからかい口調で訪れる伊丹を、亀山は殴りつけてしまう。しかし伊丹は一言、「そう邪険にするな」。実は伊丹は、浅倉の自殺に隠蔽工作があったらしいことを伝える。
浅倉は刑務官の斎藤を殺して脱走したかどで、一部の刑務官から私刑を受けており、刑務主任の中津がそのことを永井に伝えていた。亀山は永井に連絡を取り、隠蔽工作の裏付けのために監視ビデオを提出するよう依頼するが、永井は、刑務官がテープを入れ忘れたと話す。そこで亀山は、かつて自分が担当した未決囚の田端を拘置所に訪ね、サイレンが鳴った当時について訊く。田端によると、サイレンは午前2時ごろ鳴り、その後、ドアノブで首を吊っている浅倉が発見されたのだった。
杉下は、刑務主任の中津が浅倉を殺したのではないかと密かに疑っていた。中津が浅倉を殺す理由はただ1つ、斎藤を殺したのが、本当は浅倉ではなく、浅倉が記憶を取り戻すとまずいからだった。そもそも、浅倉は斎藤を殺すのが目的ではなく、脱獄が目的なら、斎藤を気絶させておけばよかったのである。杉下は亀山と、その当時の状況をシミュレートし、上着の袖で絞殺する場合、最低でも8分はかかることを突き止める。また中津は斎藤からいじめられていたこともわかった。しかし今度はその中津が死亡する。
中津の携帯電話には、最高検察庁の次長検事である、皆川千登勢への発信履歴が残されていた。皆川は、浅倉の私刑の件でビデオを公開しており、中津による斎藤殺しも疑っていた。そのため、中津にちょっと脅しをかけていたことを告白し、のみならず、浅倉殺しを中津に依頼までしていたのだが、ことの真相を永井に知られてしまっていた。浅倉を殺したいために、法務大臣の瀬戸内に、彼を死刑にするようはっぱをかけるも、なかなか承諾してもらえなかった。結局その後杉下が、中津の司法解剖で胃から遺書が出てきたと嘘をついたことで、あっさり自分の罪を認めてしまう。
なぜそこまでして浅倉を殺したかったのかと問われた皆川は、こう答える。
「殺人犯として捕まった彼が不憫だったから」つまり、憐みによるものだったと。
その後亀山と美和子はマンションの屋上で、かつて浅倉と3人で星を眺めた時のようにワインを持ち込み、友人を偲ぶのであった…。
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第2シーズン最終回で、浅倉のその後が描かれています。結局記憶喪失、しかし母親の殺人だけは記憶に残っている状態、しかもホームレスとなっていた浅倉は、最終的には拘置所で刑務官により殺されてしまいますが、その決定を下したのは、かつて検事であった彼の大先輩ともいうべき皆川千登勢でした。皆川は「不憫さゆえに」彼を殺すように指示したことを特命の2人に伝えます。屈折した愛情というか、何か「
聖女の救済」をちょっと思い起こさせます。無論それぞれを取り巻く状況も立場もまるで違いますが、皆川にとって、浅倉が殺されたことで何かが完結したのかもしれません。この皆川を演じていた岸田今日子さんがいい雰囲気でした。
しかし伊丹を殴りつける亀山の熱さ、これだけ自分を悼んでくれる友人がいたのは、浅倉にとっては幸せだったといえるのかもしれません。しかし、杉下と亀山の絞殺のシミュレーション、如何にも杉下らしい、徹底した立証というべきでしょうか。あと、亀山から殴られても、珍しく?あっさりといなす伊丹がまたなかなかよかったです。