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ベイカー寮221B/Baker House 221B

パペットホームズ、大河ドラマなどの好きなテレビ番組やラグビーについて書いています。アフィリエイトはやっていません。/Welcome to my blog. I write about some Japanese TV programmes including NHK puppetry and Taiga Drama, Sherlock Holmes and rugby. I don't do affiliate marketing.
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科学者の先端知識が負の形で活かされる-『ガリレオ』2007シリーズ「壊死(くさ)る」

突然ですが、以前こちらでも紹介させていただいている、BBC版『シャーロック』ファンのナツミ様のブログに、「最先端の男」という記事があります。探偵という職業が情報収集力、そして捜査のスピードを高めるうえで不可欠の通信の分野において、最先端であるべき姿について言及されています。実はこの「先端」に、何度かここで取り上げている『ガリレオ』の2007シーズン第4話を思い出したので、書きたいと思います。この中に、四ツ谷工科大学の応用物理教育学会というものが登場します。湯川学がそこで講演を行うという展開ですが、この学会のテーマが「ユビキタス時代を拓く 先端量子ナノデバイス」となっています。

無論この場合の先端とは、ホームズのような情報収集や通信とはまた違い、科学、特に物理学における先端分野です。ガリレオにホームズ的なものを感じるとは、以前にも書いたことがありますが、このエピソードには特にそれを感じます。容疑者が同じ科学者ということで、わずかながらホームズとモリアーティの対決を思わせること、そして、ストーリーとしては、先端技術を使った殺人であり、細部に凶器の特徴が現れているという点です。ちなみにユビキタスとは、ひところよく使われた言葉なのでご存知の方も多いでしょうが、「偏在」、つまり「同時にいたるところに存在する」の意味で、ちょうどこの作品が放送された頃、IT業界を中心に使われています。

そのユビキタスを象徴するものが半導体であり、その半導体に使われるのがシリコンウエハーです。余談ながら、このシリコンウエハーは、日本企業がかなり関わっています。このシリコンウエハーを加工するのに使う超音波機が、実はここでの殺人に使われています。しかもその殺人に携わったのは、日の出の勢いの新鋭科学者で、湯川も一目置いている四ツ谷工科大の大学院生、田上昇一でした。田上は学会の後湯川の実験室を訪ね、海外に出て、軍事産業の仕事をやりたいと漏らします。

ところでこの時の被害者は、四ツ谷工科大の女子学生で、自宅のプールで死亡していたのが確認されていました。心臓麻痺という検視結果が出ますが、内海薫は死体の胸の部分にある、壊死状態でできたあざに不信感を抱きます。それを聞いた湯川は、内海に、過去何年かで同じような死に方をした人物がいないか調べさせます。その結果、2人の健康な人物が、水中で心臓麻痺で死んでおり、しかもやはりあざを残していました。なぜ心臓麻痺なのにあざがあるのか、湯川は珍しく悩みます。その一方で、捜査のために田上の研究室を訪れていた内海は、ホテルのレディースプラン宿泊券をプレゼントされます。

湯川は、学生たちに「暗殺」「殺人」「兵器」「心臓麻痺」を含むキーワードで、世界中の軍事産業を検索させます。その中でヒットしたサイトの1つに、やはり田上は関わっていました。そして、内海がプランを利用して宿泊しているホテルに自分も宿泊し、内海と共に偶然を装って宿泊し、すきを見て彼女のワインに催眠薬を入れます。その後田上は彼女の部屋に磁気カードで忍び込み、入浴したまま眠ってしまった内海を超音波装置で殺そうとしますが、既にその場には刑事が張り込んでおり、また犯人は田上ではなく、彼が金で雇った人物でした。

実際の田上は、そのままホテルをチェックアウトしようとしますが、そこに湯川が待ち構えていました。ホテルのバーで2人は話します。善悪は表裏一体だと湯川、湯川がモラルを持ち出すことを不思議がる田上。湯川は、科学者は研究のテーマに誠実であるべきといい、またこうもいいます。あの超音波装置に5年以上もかけているようでは、とても軍事産業は無理だ、あの実証は失敗だ、自分ならあざを残さずに殺す兵器を開発する。そういって、自分のメモを田上に渡して去って行きます。それを見て、「あの人はやっぱり天才だ」とつぶやく田上。

ところで凶器が超音波だと、なぜ湯川は気付いたのでしょうか。それは、内海が落としていったブローチでした。それは田上から、シリコンウエハーを加工したものだといわれてもらったものですが、超音波は条件によっては、圧力による破壊作用があるため、それを応用したものであったわけです。それをそっとゴミ箱に捨てる湯川。ちなみに内海自身は、田上の、湯川と好対照といえるそつのなさに好感を持ちながらも、結局はブローチを落としたことにも気づいておらず、また後からそれを探すこともなかったようです。

ちなみに、ホームズとモリアーティは表裏一体であると私は考えていますが、このエピソードの中で、湯川が善悪は表裏一体という以外に、このようなことを草薙俊平に向けて言っています。
「人間は計算式のように美しくはない。
それどころか見るに堪えないほど醜い時がある」
そして、科学者のモラルを説く前に、田上に対して、才能を馬鹿げたことに使ったと非難します。これは『容疑者Xの献身』で、石神に対して吐いたセリフと似ています。

ところでドラマの中で、「円端具流」という文字が、研究室の黒板にでかでかと、しかも縦書きで書かれています。これは既にネット上で多くの方が指摘していますが、entangle、つまり量子もつれ(エンタングル状態)の意味のようです。それと、湯川が田上とバーにいる時飲んでいたのは、ソルティドッグでしょうか。今はウォッカベースですが、元々イギリス海軍発祥のカクテルで、ジンとライムジュースで作られていたといわれています。ジンもライムジュースも、あるいはラム酒もですが、かつてのロイヤルネービーには、不可欠のアイテムでした。
飲み物-マティーニ
[ 2015/07/18 00:31 ] ドラマ ガリレオ | TB(-) | CM(0)

容疑者Xの献身 5

さて、この『容疑者Xの献身』関連記事も大詰めです。私としては、やはり石神はこの隠蔽工作を行うべきではなかったと思います。ただし、自殺を図ろうとしていたものの、容疑者が訪ねて来て思いとどまったこと、容疑者経営の弁当屋を利用していたことなどが絡み合い、結果として容疑者のために、大がかりで、しかもばれるはずのない隠蔽工作を練り上げたわけです。もちろん湯川は、誰かが隠蔽を指示していることに気付いていました。パンフレットの中にチケットの半券をを隠しておくなど、隠蔽テクニックとしてはかなりのものだと、草薙の前で口にします。

しかも石神自身も殺人を犯しています。靖子とは全く関係のない身代わりの死体を現場に置くことで、彼女のアリバイを完全なものにしようとしたわけです。これに関しても湯川は、自分が殺人をやったことで、堂々と富樫殺しを主張できるともいっています。もし、彼が単に靖子を庇っているだけであれば、自分が罪をかぶって拘置所にまで行くことができるかどうかはきわめて微妙ですが、いずれにしても彼自身も人を殺している以上、堂々と殺人犯として名乗りを上げることができるわけです。

こういった点を見て行くと、やはり石神は大したものです。物理学者は仮説を立てて、実験でそれを実証するが、数学者はすべて頭の中でシミュレーションを行うとも湯川はいいますが、これも石神が、頭の中で練り上げて行ったものなのでしょう。しかも不具合な場合に備えて、きちんと相手の出方を読んでもいます。彼が高校教師にならず研究者になっていたら、恐らくは別の道が開けていたでしょう。彼が登山を愛したのも、一つの頂点に様々な方法でたどり着けるという、数学の論理が応用できる趣味であるからともいえそうです。

しかし、殺人後彼の命じるままに行動して来た靖子は、最後の最後で彼の意のままにはなりませんでした。かつての夫を殺し、石神にいわれるまま隠蔽し続けることに呵責を覚えた彼女は、ついに自首します。自分の行動まで指図され、縛られていることに我慢できなくなってしまったというべきでしょうか。

一方で石神は孤独でした。孤独だからこそ自殺も考え、そこまで追い詰められていた自分を、いわば救ってくれたといっていい靖子に、特別の感情を持つようになります。だからこそ、殺人隠蔽という奇妙な恩返し?計画も練られたわけです。彼の部屋の殺風景さ、生徒たちにあまり相手にされないような状態で、授業をしているような描写にも、それがよく表れています。また、湯川から「そんな素晴らしい才能をこういうことに使うべきではなかった」といわれた石神は、このように答えます。
「そんなことをいってくれるのは君だけだ」

湯川は最後の方でこうもいいます。
「もし石神が人を愛せずに生きていたら、こういう殺人を犯すこともなかった」
石神の「愛」はどこか歪で、結局報われることもありませんでした。ただ、彼が計画を立てて靖子に指図し、靖子がそれを受け入れたことが、はなはだ妙ないい方ではありますが、2人の恋愛関係だったのでしょう。ところで肝心の富樫の死体は、石神がばらばらに切断し、水中に投棄していました。エンディングで、その捜査の様子が描かれています。

結構この『ガリレオ』シリーズは、物理学者が絡んでいるだけあって、デジタル機器は多数登場しますが、それに公衆電話であるとか、凶器である電気ごたつのコードであるとか、石神が湯川から頼まれた証明の正否を判定する場合に、鉛筆を電気鉛筆削り器で削る所ところとか、ちょっと懐かしい雰囲気もあって結構楽しめます。そういえば、この作品には登場しませんが、湯川が謎を解く際に道路に石ころで方程式を書いたりする、あれも結構アナログといえばアナログです。

ところで冒頭の部分で、クルーザー炎上の仮説実証の実験場に来た内海が、湯川が相変わらず人の心を読まないことに苛立つ場面が登場します。また、現場近くで練習をする草野球チームの監督に、物理学的な視点からダメ出しをしてみたり、相変わらずの湯川准教ではあります。

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[ 2015/07/01 00:08 ] ドラマ ガリレオ | TB(-) | CM(0)

容疑者Xの献身 4

『容疑者Xの献身』について4回目です。物語の大筋についてはあらかた書きましたので、部分的にピックアップして行きます。花岡母子に完璧なアリバイがあることに関して、湯川は、珍しく超常現象であるバイロケーションの話を持ち出します。『ガリレオ』では、それ以外にも、やはり超常現象であるテレポーテーションの話を湯川が研究室で持ち出しますが、もちろん最終的には、証明できないとして否定されてしまいます。しかしこのようなことが引き合いに出されるほど、このシリーズでは犯罪の完成度がきわめて高く、本人が現場から離れた地点で相手を殺害できるようなケースが多いのも事実です。

それから、石神が足がつかないように、近所の公衆電話から靖子に指示を出す方法ですが、これは他の刑事ドラマでもお目にかかるパターンです。『相棒』で、公衆電話からの通報を受け取って捜査を開始するエピソードがありますが、これももちろん犯人側が居場所をさとられないためです。公衆電話という、一見前時代的にも見えがちな設備というのも、使いようによっては相手の裏をかくこともできるわけです。しかし公衆電話というのは位置が決まっているものである以上、その位置から容疑者の行動を特定できることもあり、その意味では両刃の剣ともいえます。

草薙と内海が、協力要請で湯川の研究室を訪れた時、草薙が、容疑者の靖子がすごい美人だぞと口にして、湯川が関心を示す場面があります。確か『ガリレオΦ』でも、水着姿の若い女が多い海岸の近くと聞いて、捜査に協力することになります。湯川は意外と女性に関心があるのかと思いきや、その後のどこか冷めた口ぶりからすると、どうもその人物の特徴の一環として捉えている、『ガリレオΦ』の場合は、そういう女性たちがいるというのを、一つの現象として捉えている感が無きにしもあらずです。その後内海は城ノ内桜子にこのことを話すのですが、彼女はあっさり「顔が目当てで来る人だっているし」「うちにだって私目当てで来る人がいる」などといい出す始末です。

その靖子の弁当屋に、かつての靖子の馴染みの客である工藤が現れた時、ちょうど石神と湯川が店内にいて、湯川が弁当を買っているところでした。湯川はその時工藤に初めて会ったのですが、石神の不機嫌そうな態度から、あるものを感じたようです。しかし石神がそのような態度を取ったからといって、必ずしも工藤の存在がマイナスになったわけではありません。その後石神は雨の中、工藤が靖子をアパートの近くまで、車で送って来るのを目撃したわけですが、この時、ストーカー疑惑で警察の注意を逸らせると踏んだとも取れます。その他にも、アリバイを裏付けるために、美里の同級生と映画館の売店で会ったという証言も取り付けます。

いよいよ事件が大詰めに入って、内海が湯川の研究室を訪れようと帝都大に足を運んだ際、湯川が不要になったレポートをシュレッダーにかけず、焼却しているのを目にします。シュレッダーだと信用できないというのが彼の言い分ですが、実際ストレートカット式のシュレッダーは、かさばる上に情報が読み取られる可能性があります。そのせいもあって、今はクロスカット式が多いです。また被害者の富樫慎二が、バカラ賭博で借金を作っていたこと、そのせいもあって靖子の住所を、昔働いていた店で聞き出し、強引に訪れたことがわかります。このため、草薙や内海が他の刑事と共に、歌舞伎町のバカラ賭博を摘発しますが、ここのところは結構圧巻です。

そして湯川と草薙、そして内海の3人が四川料理を食べる場面が登場します。ちょうど石神の出勤表のコピーを見る場面ですが、この時も、辛さで脳は活性化しないと例によって一言述べます。しかしなぜ四川料理かと思うのですが、あるいは四色定理と掛け合わせている感もあります。余談ながら、四川料理といえば辛い調味料で煮込んだ、あるいは炒めた物というイメージがありますが、おこげ料理(鍋巴)も実は四川料理ですね。

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[ 2015/06/29 23:48 ] ドラマ ガリレオ | TB(-) | CM(0)

容疑者Xの献身3

前回の続きです。この作品に登場する石神は、実年齢よりも老けてみられる感じの人物で、部屋にはインテリアらしきものは少なく、本と資料であふれています。しかし、流石に湯川が天才と太鼓判を押すだけあり、数学にかけては天才的な才能を示します。その才能が、マイナスの形で働いたのが、この富樫慎二殺人事件の隠蔽といえます。

実際石神は、完璧に隠蔽できると踏んでいたのでしょう。何よりも、靖子、そしてその娘の美里が、自分の指示通りに動いてくれていたからです。しかし湯川は、草薙や内海から事件の概要とを聞いており、ある結論を導き出します。それは、
*石神は殺人はやっていない
*ただし隠蔽はする
*隠蔽が難しい時は、警察の追求を何とか逃れようとする
この3つです。そして、事実はその通りでした。元々石神は大学時代、大学院に残って研究を続ける予定だったのですが、家庭の事情でそれがかなわず、高校の数学教師になりました。しかし大学2年の時、四色定理の証明方法を模索していて、既にそれは発表されているという湯川に、あの方法は美しくないと答えます。こと学問に関しては、かなりこだわりのある人物でもあり、そのこだわりがこの隠蔽工作でいかんなく発揮されたともいえます。後の方で石神が、「幾何の問題に見せかけた関数の問題」と口にするのは、正にこの殺人と隠蔽を意味していたはずです。

つまり、石神にとって犯罪の隠蔽は、花岡母子を庇うと同時に、自らが考え出した隠蔽方法の具現例でもあったわけです。それがうまく行くことで、自らがどのような刑を言い渡されようとも、その結末に何らかの形で満足できるはずでした。しかも靖子に、自分は彼女に命じる権利があるとまでいっているわけです。しかし、最後の最後になって、靖子が自首して来たのを石神は目にし、大声で泣きわめきます。靖子が自首して来たということは、それが失敗に終わったことを意味するものでもあったからです。こういう、隠蔽を如何に成功させるかがテーマである以上、やはりこの原作が物議を醸したのも無理からぬことではあります。面白い視点だなとは思いますが。

そんな石神は、一方で登山を趣味にしていて、湯川を雪山登山に誘います。その途中の山小屋で、石神はこのようにいいます。
「今登らないと一生機会がない」
既にこの時点で、石神は自首を覚悟していたとも取れます。また湯川が自分は君の友達だといっているにも関わらず、「僕には友達はいない」などと答えたりもします。なのに、途中で転んで斜面を滑り落ちてしまう湯川に手を貸し、ガスが晴れるまで少し待とうといい、登山をするうえでは好きパートナーであることを示したりもします。石神のこういう多面性もまた、隠蔽をするうえで起こりうる様々な障害を予測し、それへの対応策を練ることに大きく貢献したのかもしれません。

ところで、この雪山の山頂に着いた時、石神はこうもいいます。
「あの答えは美しくない」
これは事前に湯川から、「何も解けない問題を作るのと、それを解くのとではどちらが難しいか。ただし必ず答えはあるものとする」という宿題を出されており、それに答えたわけですが、恐らくこの時点で、湯川が自分の隠蔽にうすうす気づいているということはわかっていたでしょう。

最後の方で湯川は石神にいいます。「そんな素晴らしい才能を、こういうことに使うべきではなかった」

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[ 2015/06/29 00:20 ] ドラマ ガリレオ | TB(-) | CM(0)

容疑者Xの献身 2

先日分の続きですが、まず当該記事に一部誤りというか思い違いがあったので、訂正しています。

この作品は本来の推理小説とは違い、謎解きではなく、犯罪の隠蔽という点に重きを置いています。そのため、ミステリ関係者の間でも物議を醸したといわれますが、作者の東野氏は、読者個人の判断にゆだねるというスタンスのようです。

隣室で起こった殺人に石神が気付いたこと、そして、花岡靖子に好意を持っていたが、この殺人隠蔽の発端ともいえます。かつての夫の富樫は大がかりな借金をこしらえ、しかも復縁を迫り、血のつながりのない娘に手を出そうとするような男で、ある意味正当防衛ともいえる殺人でしたが、しかし犯罪は犯罪です。警察の手からどうやって彼女たちを守るか、石神はまずアリバイ工作から始め、犯行日を1日ずらすことにします。

そして花岡家で殺人があった翌日、母子を映画に行かせ、自分は替え玉の死体を準備して、というかある男を自分で殺して、しかも身元がわからないようにし、警察にそれが被害者の富樫であると思い込ませます。それに加えて、警察の事情聴取の際の対応の仕方までを指示します。一見さえない中年男といった感じの富樫ですが、この指示をする時には何ともいえぬ凄味が感じられ、靖子も従ってしまいます。

しかも石神の周到さは、これにとどまりません。自転車を一台盗み、それに富樫の指紋をつけて、現場の近くに放置します。これで警察は、富樫がこの現場の近くまで自転車に乗って来て、何者かに殺害され、身元がわからないようにされたと考えます。しかもわざわざ新品の自転車を盗み、持ち主が必ず盗難届を出すように仕向けたわけです。これで現場の死体にみんな目を向けざるをえなくなります。

元々石神は、湯川が天才と呼ぶほどの男で、しかも久々に会った夜、ある理論の証明が正しいか否かの判定を依頼し、それを6時間ほどで解いてしまいます。こういう、筋の通った隠蔽方法を考えることなど、彼にとってはそう難しいことではなかったでしょう。しかも、盗聴の恐れがないように、わざわざ公衆電話から靖子の携帯にかけて指示を与えているのも、かなり確信犯的といえます。

また、替え玉を準備する時は、近所のホームレスの1人に声をかけ、仕事を紹介するといって連れ出しています。しかも富樫が持っていた簡易宿泊所の鍵を渡し、富樫のいた部屋に入れて、その男の毛髪と指紋を残させるようにします。この鍵は富樫が勝手に持って出たため、警察に届が出されていました。当然この部屋にも調査が入るとにらんだ石神は、被害者がその部屋から自転車で現場に行く、という一連の流れの裏付けを完全なものにしたのです。他にも、自転車といい簡易宿泊所といい、「届」を出させるように仕向ける方法もまた、高度なテクニックです。届が出されると、必ずそこに注目が集まるというのを見越してのことでしょう。

それから、ストーカー行為にしても、いくらかは靖子への想いもあったのかもしれませんが、これも警察の目を欺くためのトリックでした。わざわざレンタカーを借りて、かつて靖子が錦糸町でホステスをしていた頃の馴染みであり、靖子に恋心を抱いている工藤の車を追いかけ、ホテルでの2人を撮影して、それを工藤と靖子の家の郵便受けに入れるわけです。さらに靖子の部屋の郵便受けには、この先どのように振舞うべきかの指示も一緒に入れられていました。

この中では登山歴のある石神が、湯川と雪山登山をする場面もあります。ここには殺人隠蔽とは全く別の、2人の人間、友人としての繋がりが垣間見えます。しかし途中山小屋に一泊した時、湯川は石神にこういいます。
「君は思い込みの盲点を突く」

それ以外にも色々示唆的な描写が出てくるのですが、これはまた後ほど。しかし、この中で石神が学生時代に解いていた四色定理、これはグラフ理論と関連がありますが、グラフというものが繋がりを求めるものである以上、富樫慎一殺人事件の隠蔽もまた、繋がりを持たせる必要があったわけで、それに石神は最適の人物だったといえます。ただ惜しむらくは、理論上完璧なものが、実際の人間関係では必ずしも完璧ではなかったことでしょう。

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[ 2015/06/28 00:31 ] ドラマ ガリレオ | TB(-) | CM(0)

容疑者Xの献身 1

実は、『真夏の方程式』は映画館でも観て、その後DVDでも観たのですが、これを観るのは今回が初めてです。ざっとあらすじを書いておきます。


弁当屋を営む花岡靖子は、娘の美里とアパートで二人暮らしをしていた。その隣には、高校の数学の教師で、湯川学と同じ帝都大出身の石神哲哉が住んでいた。ある夜、泰子は別れた夫の富樫慎二がいきなり部屋に入って来たことで、衝動的に富樫を、美里と共にこたつの電気コードで絞殺する。物音を聞きつけた石神が2人の部屋に現れ、この殺人について隠蔽を企てることにし、花岡母子に指示を与える。

その後、顔をめちゃくちゃに潰され、指紋を焼かれて服を燃やされた男の死体が発見される。警察は捜査に入り、行方不明の富樫と断定して、靖子に事情聴取をするが、彼女には娘と映画を観に行ったというアリバイがあった。しかも、パンフレットにきちんとチケットがはさんであった。捜査に窮した警察は、湯川にこの件についての協力を依頼する。

湯川に会った石神は、久々に数学の話に花を咲かせる。元々大学時代の石神は、四色定理の解の出し方に熱中していて、それで湯川とうまが合ったのだった。遅くまで話し込んむ2人。その後石神は靖子の経営する弁当屋に湯川を誘い、弁当を買わせる。また容姿に構わない石神が、珍しく、湯川はいつまでも若々しくて羨ましいなどと口にしたことで、湯川は彼が靖子に恋心を抱いているのではないかと思う。

石神にとって、靖子は命の恩人でもあった。それというのも、やる気のない生徒たちを相手の生活に疲れ、自殺を考えていた時、引越しの挨拶に来たのが、靖子と美里の母子だったのだ。そのためにも石神は2人を守りたかった。しかし、靖子が工藤という男とホテルで会っているのを目撃し、ストーカー行為に及ぶようになる。

しかしこの行為も、実は石神の作戦だった。警察にストーカー被害に遭っていることを伝え、このように答えるようにといった指示が、すべて石神から出されていて、靖子はその通りに振舞ったのだった。他方で石神は湯川を雪山に誘う。山小屋で湯川は話を切り出そうとするものの、うまく行かなかった。

ついに石神は、富樫の殺人事件で警察に自首した。しかも部屋には証拠品がすべて揃っており、警察は彼を留置所から拘置所に送ろうとするが、その前に湯川が訪ねて来た。実は湯川は、草薙や内海が事情聴取で目にした、石神の出勤簿のコピーを見せてもらい、12月2日と3日、2日続けて午前中半休を取っていることを不審に思ったのだった。

つまり12月2日の午前中は、富樫の死体を処理し、翌日の未明は、警察に発見された男の死体を処理したのだった。つまり、発見された死体は富樫のものではなかった。近くのホームレスに声をかけ、富樫が持っていた簡易宿泊所のカギを与えてから、夜になって仕事を紹介すると嘘をついて迎えに行き、その後殺したのだった。

湯川はこうもいった、靖子は12月2日のアリバイばかり聞かれて不思議に思ったに違いない。確かに彼女は2日に娘と映画を観に行ったが、富樫が殺されたのは1日だったからだ。つまり石神は、富樫が死んだのは2日であるように偽装し、1日には何も起こっていないことにしたかったのである。

しかしいよいよ拘置所に送られることになった石神の前に、靖子があらわれる。私も同じ罰を受けるという靖子。殺人事件以来、彼の指示通りに動いて来た彼女が、初めて自分の意志で動いたのだった。


この作品の詳しいことに関しては、またアップします。

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[ 2015/06/27 00:58 ] ドラマ ガリレオ | TB(-) | CM(0)

ガリレオΦ(ゼロ)

『ガリレオ』第1シリーズ放送終了後、映画『容疑者Xの献身』とタイアップする形で放送された拡大版で、2004年当時の設定になっています。助手の栗林が、ナビゲーター役を務めています。ドラマ中に、大学時代の湯川と草薙の場面が挿入されており、この時草薙は殺人の濡れ衣を着せられて、湯川に無実を証明してもらうよう頼み込むわけです。湯川はこの当時から、若者らしいカジュアルな服装でなく、シャツにベストにズボン、ちょうど三つ揃いのスーツの上着を脱いだような、似合ってはいるものの、どこか年齢不相応な服装です。ただし、准教(2004年当時は助教)になってからの湯川のような、人を食ったような雰囲気はまだありません。若き日の湯川を演じているのは、三浦春馬さんです。

さて2004年、湯川が助教授になったことを知った草薙が、研究室に捜査協力の依頼にやって来ます。だめもとで、現場付近は海岸で、水着姿の女の子が沢山いると話したところ、湯川は関心を示します。これが、湯川と草薙の初めての共同捜査でした。その後この2人は、共に捜査をすることになるわけですが、ドラマ本編では、草薙よりも内海薫、そして岸谷美砂と行動を共にし、推理を行うという設定になっています。この時は、学生の塩野谷あかりが捜査に絡むため、彼女の存在が、内海、そして岸谷といった女性刑事の存在をほうふつさせるものとなっています。

事件そのものは、とある金属専門加工会社の前社長の息子が、何者かに殺され、住まいが全焼するという不審なものでした。そこで湯川と草薙が捜査に向かったわけですが、いつものこのドラマに見られる倒叙の形、犯人が冒頭の部分でそれとなく浮かび上がる設定とは、多少違った趣向になっています。何人かの登場人物に、それとなく犯人らしき雰囲気をちらつかせてはみるものの、かなり後になるまで犯人は特定されず、そして、犯人自身が湯川にヒントを与えるという点も特徴的です。これには、湯川の捜査デビューという点も考慮されているようです。結局犯人は、その息子の父親の前社長なのですが、叩き上げながら金属加工について優れた論文を発表した人物でもあり、それがいわば殺人に活かされたわけです。

また、この中で湯川と草薙はビーチバレーに参加し、女の子たちから脚光を浴びることになります。夜になって彼女たちと何を話しているかと思いきや、物理学の話ばかり。彼女たちも最初はかっこいいとか新鮮だと思って聞いてはいますが、あれを何日も繰り返されると飽きるでしょうね…たぶん。ちなみに塩野谷は、警察官になることを決め、多少は女らしくイメージチェンジをして研究室に向かい、「恋とビキニで大学生活を充実させる」などと口にしてみたものの、なぜそれが大学生活を充実させる、全くわからないとにべもない口調で返す湯川。そんな湯川に「全くわかってない…」と一人かこつ塩野谷。この辺の女心の読めなさは、やはり変人ガリレオというべきでしょうか。

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[ 2015/06/21 23:53 ] ドラマ ガリレオ | TB(-) | CM(0)

物理学者と監察医

ガリレオの変人性」の続きです。『ガリレオ』第1シリーズには、監察医の城ノ内桜子という女性が登場します。見た目如何にも女らしく、スイーツも好きなこの城ノ内先生は、殺人事件の舞台になった料理学校に通った経験もあります。しかしいざ仕事となると、警察関係者が鼻をふさぐ中、平然と腐乱死体の検死を行いますし、スイーツも遺体保存用の冷蔵庫から取り出して食べているわけですから、職業柄とはいえ、かなり肝っ玉が据わっています。

私はこのガリレオをホームズになぞらえていますが、城ノ内桜子は、そのプロ意識あるいは動じない姿勢から、「女ホームズ」といった感があります。湯川と2人で、ホームズのホームズ的なる部分を分担しているようにも見えます。第1シリーズでの湯川-内海-城ノ内の関係は、主に湯川と内海、内海と城ノ内という2通りの場面で構成されることが多く、内海薫が湯川の愚痴を城ノ内にこぼすという展開が主流です。内海も湯川にしてみれば、ある意味パペットホームズに取ってのアガサ(ホームズとアガサ参照)的なところもあり、一種の仕事仲間として存在するものの、互いの胸の内を明かすまでには至らないわけです。

これは城ノ内もしかりです。そもそも、彼女は湯川と最初から面識があるわけではありませんでした。第4話で初めて会い、その後もまた顔を合わせますが、理系出身という共通の背景を持ち、内海のように捜査協力を求めるわけではないため、互いに関心のある分野で会話が盛り上がることもあり、湯川には好感を持っているようです。とはいえ、この2人ももちろん恋愛関係にあるようには見えません。内海とは違った意味での仕事仲間、あるいは話の合う相手といったところでしょうか。

元々のホームズには、アイリーン・アドラーという女性が登場し、自分を出し抜いた相手として、ホームズの記憶に刻み込まれる存在となります。ただ、城ノ内桜子が湯川を出し抜くという場面はまず登場しませんし、彼女は事件に関わった人物でもありません。湯川がやっているのは、あくまでも本業の傍らの警察の手伝いで、そのため内海が日常的に研究室に来るようになり、助手の栗林が渋い顔をするわけです。むしろアイリーン的な存在がない方が、物理学者の日常としてはふさわしいような気もしますし、そういう存在があればあったで、また日本の社会風土に合った描かれ方になるかとも思います。見てみたくはありますが。

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[ 2015/06/14 19:27 ] ドラマ ガリレオ | TB(-) | CM(0)

ガリレオの変人性

またも『ガリレオ』関連です。ガリレオには多分に和製ホームズ的なところがあると前にも書きました。ちなみに最初のシリーズは2007年に放送されて、湯川の変人ぶりがかなりの反響を呼んだようです。2011年にNHKでBBC『シャーロック』が放送された時、イメージがいくらかだぶった人もいるでしょう。また、その前に放送されたグラナダ版にも、奇人と呼ぶにふさわしい振る舞いが登場します。この「系譜」は少年向けに多少アレンジされているとはいえ、パペット版にも確実に受け継がれています。

ただしガリレオは、あくまでも日本向けにローカライズされたホームズ的存在であるため、もちろん本家ホームズのような奇人変人ぶりは見られません。元々彼は『緋色の研究』でいう「諮問探偵」(延原謙訳)ではないし、もちろんワトソン的な人物と同居しているわけでもありません。従って、彼のどこか扱いにくい部分が出やすい同居空間(221B)や、ワトソンまたはマイクロフトのとのプライベートな関係の中でなされるやり取り、及びそれに関連した変人ぶりは見られません。

ドラマで見る湯川学の行動は、すべて研究室であるとか警察であるとか、あるいは被害者や容疑者と関わっている時間や空間でなされるものに限られています。従って、私的空間での彼の行動、あるいは変人ぶりについてはこちらは窺い知ることは出来ません。そうはいっても普段の無愛想かつ理屈っぽい物言いに加え、研究室で料理してみたり、あるいは警察の許可なしに被害者宅を捜査してみたり、いささか常軌を逸した人物であることも確かです。また、剥げかけたマグカップに薄めのインスタントコーヒーを作って飲む有様は、身だしなみには多少気を使っているように見えるにもかかわらず、こういった点に如何にも無頓着な人物であることを窺わせます。

原作では草薙俊平とホームズ-ワトソン的なラインを形成していますが、ドラマでは女性刑事が絡むため、これも本来のホームズ物とは趣が異なります。とはいえ、彼女との微妙な距離が、また独特の雰囲気を添えていることもまた否定は出来ません。探偵ではなく、探偵的行動を取る科学者と警察の組み合わせというのもまた、日本的で気に入っています。また、第1シリーズの監察医の城ノ内先生も面白いのですが、彼女については別に書きたいと思います。

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[ 2015/06/14 15:18 ] ドラマ ガリレオ | TB(-) | CM(0)

ガリレオと事件と人間関係

ガリレオの第三弾目です。このドラマの特徴として、というか東野圭吾氏の原作がそうなのですが、事件で起きるのは非日常的なことで、そのため警察が頭を悩ませ、湯川准教の所に相談に来るわけです。非日常というのは、しばしなオカルト的な要素もあるわけですが、断じてこれらはオカルトではなく、すべて科学的に証明できるものばかりです。それを如何に証明するかというのが、このドラマの見どころであるわけですが、同時に、人間関係も見逃せません。

原作では、本来湯川=ホームズ、草薙=ワトソンといった役どころのようです。尤もドラマの場合は、このコンビではなく、内海薫が最初から登場します。おおまかに言って湯川と内海、弓削、そして監察医の城ノ内に加え、助手の栗林と学生たちが絡むのが一般的です。この場合ワトソン役は、意外と(万年?)助手の栗林さんなのではないかとも思います。ちなみに内海は、第5章で女子学生の谷口から相談を持ちかけられ、湯川との恋愛関係かと思って話を聞くものの、実はアーチェリー部員との交際についてのもので、むしろ逆に、自分が湯川と付き合っていると思われていると聞かされ、かなり驚きます。

湯川の事件の解明は、授業に則った方法ですが、その前に、思いついたことを整理するために地面や車の曇った窓などに方程式を書き連ねます。如何にも「変人ガリレオ」の面目躍如といった感がありますが、彼の推理にはこの行為が不可欠です。その後、研究室での実験と、黒板への板書という形を取って、徐々に事件の全貌が明らかになって行きます。無論それ以外にも、現場周囲の事物であるとか、容疑者や関係者のちょっとした表情も見逃さず、エピソードによっては、これが結構重要な位置を占める時もあります。

ドラマの構成は、犯行と犯人がまず紹介され、その後事件解決となる倒叙の方式が多いです。かつて『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』でも用いられた方法です。犯行の手口をあらかじめ見せることで、どのような過程を経てその犯行にたどり着くかを見る楽しみがあるからでしょう。

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[ 2015/06/08 00:13 ] ドラマ ガリレオ | TB(-) | CM(0)
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『西郷どん』復習の投稿をアップしている一方で、『鎌倉殿の13人』の感想も書いています。そしてパペットホームズの続編ですが、これも『鎌倉殿の13人』終了後に三谷氏にお願いしたいところです。

他にも国内外の文化や歴史、刑事ドラマについても、時々思い出したように書いています。ラグビー関連も週1またはそれ以上でアップしています。2019年、日本でのワールドカップで代表は見事ベスト8に進出し、2022年秋には強豪フランス代表、そしてイングランド代表との試合も予定されています。そして2023年は次のワールドカップ、今後さらに上を目指してほしいものです。

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