では視聴率に行きたいと思います。視聴率についてはあまりとやかく言いたくないのですが、参考までに。まず『西郷どん』の平均視聴率は12.7パーセントで、これは前年の『おんな城主 直虎』よりも0.1パーセント低い数字でした。無論これは関東地区での数字です。一般に幕末物、それも薩長土大河は、関東では数字が低く出がちです。そしてまた『直虎』の方も、戦国大河としてはかなり視聴率が低かったといえます。ちなみに幕末大河の平均視聴率で、過去の例を挙げてみると
竜馬がゆく(1968)14.5パーセント
花神(1977)19.0パーセント
翔ぶが如く(1990)23.2パーセント
篤姫(2008)24.5パーセント
龍馬伝(2010)18.7パーセント
花燃ゆ(2015)12.0パーセント
こうなっています。当該作品が放送された当時の、他の時代を舞台にした作品と比べると、概して低いのが特徴です。
また幕府方を主人公にした場合ですが、
三姉妹(1967)19.1パーセント
勝海舟(1974)24.2パーセント
徳川慶喜(1998)21.1パーセント
新選組!(2004)17.4パーセント
八重の桜(2013)14.6パーセント
さらにこの両方の人物が主人公となる『獅子の時代』(1981)は21.0パーセントです。幕府方だから必ずしも高いともいえないようです。
それにしても『竜馬がゆく』の数字ですが、今の基準で見ても決して高いとはいえません。『八重の桜』より低いのです。その一方で、『篤姫』の数字は驚くべきものがあります。しかし戦国時代を舞台にした作品ほど高くはありません。むしろ戦国時代の方が、長きに亘って戦いが続き、しかも現代に直結していない分、番組制作においてかなりのアレンジができるというメリットがあるからでしょう。
ここで最近3年間の数字をグラフ化したものを貼っておきます。
青-真田丸
オレンジ-おんな城主直虎
グレー-西郷どん
です。
直虎と西郷どんはほぼ重なっていますが、中盤は直虎、始めの何話かと最後の方は西郷どんがやや高くなっています。『真田丸』『直虎』は終盤の数字が低めでしたが、『西郷どん』は最終回が数字がそれまでよりも高めに出ています。
それから総合視聴率ですが、これは『西郷どん』が18パーセント、『直虎』が17.3パーセントで、こちらの方では前作を抜いています。実際ビデオリサーチのサイトを見ていて、かなり総合視聴率が高い時もありました。BSもしくは録画で観ている人が多いと見るべきでしょう。最近はテレビ離れもあり、またタイムシフト視聴もあるため、リアルタイムの数字だけでその大河を推し量ることも難しくなっているといえそうです。しかしそれを考えると、『花燃ゆ』『平清盛』の総合視聴率はどの位だったのでしょうか。
そして前にも書いてはいますが、もちろん地元では、リアルタイムの視聴率はかなり高く(30パーセント)出ています。
それから余談になりますが、昨日触れた「史実」絡みで。戦国関連になりますが、「直江状」というものがあります。これは『天地人』『真田丸』で登場しているのでご存知でしょう。『天地人』の時はやたらに長い書状となっていましたが、『真田丸』ではそれがいくらか抑えられ、直江兼続に書状を送った西笑承兌も出ていました。但しどうも「家康を怒らせた」というイメージは払拭できないようです。実際はこの直江状は、徳川家康が会津の様子に難色を示しているから、実情を知らせるようにと言う承兌の要請に応じて、兼続がしたためたものです。実際家康はこの件で、承兌に礼を述べています(『鹿苑日録』より)。直江状に関しては
北の関ヶ原1にも書いています。せっかく直江状を出すのなら、この辺りも描いてほしいなと思ったものです。また会津攻めに向かった家康が、石田三成の挙兵を知って開いた小山評定、これもなかったとする説もあります。
私も以前から史実が大事という点については書いています。しかしこれは『花燃ゆ』絡みで書いてもいますが、『花神』を手掛けた成島庸夫氏の「史実と史実の谷間にある多くの有りそうな話を綴ってゆく」というのが、やはり大河の基本かなとも思います。その一方で、歴史上あったとされることは、必ずしも固定されたものではなく、後々の研究によって変化して行く可能性もまたあるわけです。さらに、その史実は本当に史実なのかということもあります。たとえば歴史小説などには、作者によるフィクションも混じっていますので、史実か否かは、やはり自分で文献を当たるのが一番いい方法だろうと思ってはいます。