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ベイカー寮221B/Baker House 221B

パペットホームズ、大河ドラマなどの好きなテレビ番組やラグビーについて書いています。アフィリエイトはやっていません。/Welcome to my blog. I write about some Japanese TV programmes including NHK puppetry and Taiga Drama, Sherlock Holmes and rugby. I don't do affiliate marketing.
ベイカー寮221B/Baker House 221B TOP  >  風林火山

風林火山の歴史的背景24-上杉憲政と長尾家

上杉憲政が、長尾家を頼って越後に落ち延びます。この時嫡男竜若丸を、家臣の妻鹿田新介に託しますが、妻鹿田は憲政を裏切り、竜若丸を北条に売って、自分はその家臣になろうと企みます。しかしその思惑とは裏腹に、竜若丸のみならず、妻鹿田本人も従者も誅されてしまいます。第37回では、越後府中に着いた憲政が、景虎から初めて聞かされたのがこの事件でした。憲政は、嫡子を残して越後に来たことを、景虎から暗に咎められます。

ところでこの上杉憲政は、山内上杉家の出身ですが、越後守護の職は越後上杉家が世襲していました。この越後上杉家がさらに本家と上条上杉家となり、上杉定実の時代になって、当時の守護であった上杉房能の娘と結婚し、その後景虎の父である長尾為景と共に、この房能を倒して、自分が守護となります。ただしその後房能の兄で、関東管領の上杉顕定が攻めて来ますが、この顕定の侵攻は失敗に終わり、本人もこの戦で亡くなります。

しかし越後は守護代である為景の勢力が強く、定実は反為景勢力を結集するものの失敗します。その後為景が隠居させられ、晴景が跡を継ぎますが、この人がその父親ほどやり手でなかったこともあり、定実の守護としての地位も若干回復します。またこの定実には嫡子がおらず、縁筋に当たる伊達家から養子を迎えようとしますが、これも伊達家の内紛により見送られます。この時の養子の候補となったのが後の伊達実元で、この人物の兄の晴宗の、その孫が政宗に当たります。

その後、政の能力を欠く晴景に代わり、家臣の反乱を鎮めて、家中で頭角を現した景虎を擁する声が高まるようになり、景虎は定実の調停のもと、晴景の養子になります。その後定実も亡くなり、長尾家出身の景虎が政を仕切るようになります。元々守護の何であるかを理解しており、定実を間に立てて、晴景の養子として長尾家を継承しただけに、憲政を府中館に招き入れたのもうなずける気がします。

そして憲政は最終的に、景虎を養子とし、関東管領の座を譲ることになります。この継承は、北条攻めの後に鶴岡八幡宮で行われたのが通説となっています。また憲政は、本当は上野に留まるつもりだったのが、親上杉勢力がいなくなり、やむなく越後へ逃れたともいわれています。無論、この時逃れたおかげで、長尾家の当主景虎と養子縁組を行い、後の上杉謙信が現れ、上杉家が存続することになるわけです。

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[ 2017/12/17 00:45 ] 大河ドラマ 風林火山 | TB(-) | CM(0)

風林火山徒然-35

第37回のキーワードは「親子」といえます。前回から引き続いての大井夫人と晴信母子以外にも、上杉憲政と竜若丸、北条氏康と新九郎(氏政)がそれぞれ登場します。しかし大井夫人が晴信のことを思いつつ、ある意味天寿を全うしたのに対し、上杉憲政の子竜若丸は、家臣に裏切られて悲劇的な死を遂げます。一方で、この場合は勝者の側である北条父子ですが、父(新九郎の祖父)氏綱の遺言
「義を守りての滅亡と、義を捨てての栄華とは、天地格別にて候」
が氏康によって伝えられ、それが後に小田原城を包囲された時の、氏政の選択に大きく影響したともいえそうです。

その北条と武田は、新たに同盟を結ぶ必要がありました。元々今川の娘を迎えるというのは、かの三国同盟につながるものであり、さらに北条を加えることで、この同盟が完結することになります。しかしそこでもう一組の親子が登場します。三条夫人と、その娘の梅です。梅は北条家に輿入れすることになり、後の方の回で、三条夫人が別れを惜しむシーンが出て来ます。さらに、大井夫人の夢の中に、その心中を代弁するかのように、かつての信虎と晴信の確執が、そのまま晴信と義信の確執となって出て来ます。無論この時点では、この父子の関係はそれほどではなかったのですが、その13年後に的中してしまいます。

ところで上杉憲政と竜若丸ですが、憲政は越後に到着後、なぜ竜若丸を逃がさなかったのかと景虎から指摘されます。考えてみれば、いくら息子が残ると主張したにしても、まだ元服前なのに後に残し、父親のみが越後へ向かうというのは、いささか納得の行かない話でもあります。しかも、譜代でない家臣をあてがうというのもよくわかりません。この辺は見方が甘かったともいえます。また憲政はこの後しばらく上野に留まり、その後越後に向かったという説もあり、あるいは恐らくその時に、一緒に連れて逃げる予定であったとも考えられます。

それと、竜若丸を氏康に売るような真似をした妻鹿田新介、彼もまた読みが甘かったといえます。こういう形での主君への裏切りは、かの武田勝頼と小山田信茂を彷彿とさせますが、これがその辺りの大名や領主ならばともかく、北条氏康であったというのが運の尽きでした。氏康はまず竜若丸に太刀を渡し、斬りかからせてから竜若丸を成敗します。この部分はもちろん創作でしょうが、こういう創作なら大歓迎です。さらに、主君の嫡子を売ろうとしたけしからぬ奴と、妻鹿田たちを斬首に処してしまいます。

この妻鹿田新介を演じた田中実さん、個人的に『ホーンブロワー 海の勇者』のホレイショの吹き替えの印象が強く、声がどうしてもホレイショのそれとダブります。ちなみにこの時のペリュー提督の吹き替えが、勝沼信友を演じた辻萬長さんでした。田中さんが亡くなられたのは残念でした。閑話休題。景虎が上杉憲政を府中館に迎え入れたのは、相手が関東管領であったためですが、景虎のみならず、戦国時代にあってもなお諸侯は権威や権力を重視し、旧制度復活であれ天下取りであれ、それを必要としたのもまた事実ではあります。

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[ 2017/12/15 00:15 ] 大河ドラマ 風林火山 | TB(-) | CM(0)

風林火山第37回「母の遺言」

今川との縁組が決まった武田は、北条との同盟をも模索し始めます。一方その北条に攻め込まれ、平井城を後にした上杉憲政は、嫡子竜若丸が、家臣の裏切りで殺されたことを知ります。また晴信の母大井夫人は、晴信のことを案じつつ世を去ります。

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勘助と初対面を果たした大井夫人は、晴信が無茶な諍いをせぬよう、見守ってほしいと勘助に伝える。また、もし武田家が滅ぶとしたら、それは晴信が父にしたことへの報いであるとも言う。一方晴信は、今川が姫を武田に嫁がせるのを承知したことを知るが、勘助はこの件は、北条に知らせるべきであると言う。元々小山田信有がこの件を北条に取り次いでいたが、その小山田の急逝により、勘助が小田原に出向くことになった。今の北条は、武田に取って今川よりも大きな脅威となっていた。また晴信は、長尾景虎がどう動くかを考えていた。

北条氏康はその頃、上杉攻めの最中だった。氏康は嫡子新九郎(後の氏政)に、なぜ関東管領上杉家が滅びるかを説く。上杉家は諸国より武士を召し抱えたが、分不相応な知行を与えたため、家中が緩み切ってしまっていた。また管領上杉憲政は、専横の限りを尽くしたからだと教え、亡父氏綱の
「義を守りての滅亡と、義を捨てての栄華とは、天地格別にて候」
の言葉を引用する。その頃平井城に長野業政が来て、越後からの援軍もなく、勝ち目がないことから、憲政に逃げるように勧める。

業政は上野に残る予定だった。そして憲政の嫡子竜若丸も、上野に残ることを申し出る。竜若丸は乳母の夫である、妻鹿田新介と残留することになり、憲政は越後へ発った。竜若丸は、もし援軍が来ない時は、自分たちだけでも討って出ることを決意する。このことが葉月によって真田幸隆にもたらされた。幸隆は業政に恩を感じていたが、今の武田は北条と敵対できなかった。ほどなく氏康は小田原に戻り、訪れた勘助は勝ち戦を祝う。そして今後、越後の長尾と戦うためにも、北条と今川の和議、ひいては駿河、甲斐、相模の三国同盟の必要を説く。

躑躅ヶ崎では三条夫人が、此の度の縁組について大井夫人に報告していた。未来永劫、安泰を望む大井夫人。今は安らぎを得たと言い、三条夫人に対して、苦労など修行と思えばよい、それが自分の遺言であると言う、それを聞いた三条夫人は涙ぐむ。一方越後府中の館では、景虎が客人である上杉憲政に挨拶をした。景虎に取って憲政は目上であり、城に入れず館に招き、自分が訪れるという形を取ったのである。そこで憲政は、上野に嫡子竜若丸を残しているため、すぐにでも援軍を出すように景虎に依頼する。

しかし憲政は思いがけないことを知らされる。嫡子竜若丸が死んだというのである。嫡子を上野に残されたはご短慮であったと景虎。妻鹿田は竜若丸に縄をかけて、北条へ人質として連れて行かれ、さらに自らは北条への仕官を望む。氏康は竜若丸の縄を解き、新九郎の剣を持たせ、自分は清水吉政の太刀を借りて真剣勝負に出た。竜若丸は斬られてしまうが、氏康の額に一太刀浴びせた。真のもののふとはこのようなものであると、氏康は新九郎に言い、さらに妻鹿田らを打ち首にしてしまう。小田原を訪れていた勘助も、その一部始終を目にしていた。

婚儀が近づいていたが、義信の傅役である飯富虎昌は、一人浮かぬ顔をしていた。その様子を三条夫人と萩乃に見とがめられる。三条夫人は、幼い娘を嫁にやる必要がなくなって安堵していたが、もし北条との盟約成立となれば、今回は姫を北条家にやらなければなるからであった。実際勘助と晴信の間では、その方向で話が進んでいた。晴信は、勘助が大井夫人と会ったことを知っていたが、このことは母上に言うな、心配をかけてはいけないと口止めをした。大井夫人はもはや長くはなかったからである。

ある夜、仏間で意識を失っていた大井夫人は、かつて晴信が父信虎に反抗したように、義信が晴信に反抗し、ついに晴信を斬ろうとしたところで目を覚ました。その後大井夫人は、何かに導かれるかのように不動明王の間へ行き、今まで自分は人の欲や憎しみ、見たくない物を色々見て来たが、あなた様の御心だけが見えませぬと言い、その場に倒れて息を引き取る。翌朝晴信は、母が不動明王の間に倒れているのを見つける。大井夫人は既に呼吸をしておらず、散らばった数珠の球がその辺りにこぼれていた。天文21(1552)年5月7日のことだった。

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上野攻めで勢いに乗る北条氏康の許へ、勘助が盟約のことで訪れます。そして竜若丸の死を目の当たりにし、越後に逃れた父憲政は悲嘆にくれますが、これは明らかに憲政の失策であったといえそうです。とはいうものの、この人はその後しばらくして、例の遊興癖が出て、またも酒を飲みながら、遊女の踊りを楽しむようになるのですが。

一方武田家は、今川家との婚儀の支度に追われることになります。しかし勘助、どこにでも行って話をまとめて来ますね。その慶事の傍らで、大井夫人が他界します。彼女の夢に登場した信虎と晴信の諍い、あれは実際に前の方のエピにあったものですね。そして晴信と義信もまた、今川家との縁組がもとで、彼女が案じたような道を辿ることになってしまいます。

[ 2017/12/11 01:00 ] 大河ドラマ 風林火山 | TB(-) | CM(0)

風林火山の歴史的背景23-小山田家の裏切り

第36回では小山田信有が、側室の美瑠姫に寝首をかかれ、非業の死を遂げます。しかしこれはフィクションで、実際は病没しています。ただし、笠原清繁の正室を側室としたのは、事実であるようです。元々小山田氏は、武田氏とは敵対していた時期もありましたが、信有の父である越中守信有が和解をし、その後武田家の家臣となりました。静岡県の東部、都留市の辺りである郡内地方を本拠地としていたこともあり、駿河との交流もあったようです。またこの小山田信有は、本当は嫡男ではなく、兄の死により家督を継いでいます。

その信有の長男であり嫡男が、この回に登場し、父の死を伝えた小山田弥三郎です。この人物も、信有の諱を受け継いでいます。この人と弟の信茂は、かつては同一人物であるとされていましたが、近年の研究では別人となっています。この弥三郎信有はその後武田家に仕えるものの、永禄4(1561)年の第四次川中島の戦いには従軍せず、援軍を派遣しています。そしてその4年後、病没したため、弟の信茂が家督を継ぐことになります。この信茂こそ、織田信長の甲州征伐で、武田勝頼を裏切った人物とされています。

しかし信茂は武田家の戦では結構活躍もしています。長篠の戦いの際には、勝頼を諫めたともいわれていますし、御館の乱の際の和睦にも関与していたようです。武田家からの離反に関しては、織田からの誘いがあったともされていますが、これは疑問視されています。結局は勝頼の自刃後、主君を裏切ったかどで、織田から処刑されてしまいますが、武田家の武将としてはそこそこの存在であったようです。また『真田丸』に登場する小山田茂誠は、他の小山田家の出身とも、この信茂と同じ一門であるともいわれています。

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[ 2017/12/10 00:45 ] 大河ドラマ 風林火山 | TB(-) | CM(0)

風林火山徒然-34

まず大河ではありませんが、『風雲児たち~蘭学革命篇~』のHPの情報が追加されています。キャスト紹介が新たに加わり、また登場人物が動画で随時紹介される予定です。とりあえずキャスト紹介のページのリンクを貼っておきます。しかし高木渉さん、ちょんまげのヅラ似合いますね。

風雲児たち~蘭学革命篇~ 登場人物
(風雲児たち~蘭学革命篇~ 公式サイト)

それから『おんな城主 直虎』の公式ツイッターで、今までのエピとサブタイを振り返りましょうというツイートが流れています。最終回までのカウントダウン企画なのでしょうが、大河の公式ツイとしては珍しいです。他に流すべきことはないのでしょうか。

さて第36回『宿命の女』では、於琴姫、由布姫、そして美瑠姫の3人の「宿命を背負う女たち」が登場します。このうち於琴姫と由布姫は、武田から滅ぼされた家の娘で、武田の家に側室として入り、男子を産みます。また美瑠姫は海ノ口城主、平賀源心の娘で、一旦は勘助と相木市兵衛の協力により、武田を退けますが、援軍が帰った隙を狙って、初陣の晴信が再び海ノ口城を攻めます。美瑠姫の両親はその時に亡くなり、彼女は佐久の志賀城主、笠原清繁の正室となります。

志賀城攻めの際に、助け出されたというか、自ら助けを求めた美瑠姫は、水を差しだす勘助をはねつけます。その特徴のある外見は、恐らく彼女も覚えていたでしょう。しかしその男は武田の家臣となり、しかも自分の夫を攻める相手となります。また自ら救いを求めたその裏には、笠原の子を見に宿しているという事情もあったと思われます。しかし当初、彼女を恩賞としてもらい受け、側室とした小山田信有は、当然そこまではわかりませんでした。

むしろ塩尻峠の戦いでは、子のために勝利したいとまで言っていたのですが、その子藤王丸が成長するにつれ、笠原清繁に似た風貌、しかも月足らずで生まれた子ということで、彼の疑念はどんどん膨らんで行きます。しかしだからといって、美瑠姫を手放すことはしませんでした。自分の子でないと知りつつも、親として振舞おうといった姿勢が読み取れると、勘助自身がそのように晴信と家臣の前で述べています。

これは勘助の、四郎への態度と似たものがあります。しかしこの藤王丸は、四郎と違ってほどなく病死してしまいます。これで小山田は、ある意味複雑な関係から解放されるわけですが、美瑠姫にとっては、それを如何にも喜ぶような態度を見せたことから、許せない相手と映ったのでしょう。武田重臣である小山田を殺し、父や夫の仇を討った後彼女も自刃します。この点で由布姫よりすさまじい生涯といえます。

そして勘助はその小山田から、武田よりも由布姫大事であることを見抜かれます。太郎義信を、今後あるいは諍いが起きるかも知れない、今川の娘と見合わせたのが最大の理由です。まして勘助は、晴信に海を支配させたいなどと言っているのですから、何をかいわんやです。さらに、この後の桶狭間での「工作」を思えば、現実味が増して来ます。ただ四郎は本来諏訪家を継ぐ身であり、武田の後継者に急遽変更されたことが、その後の悲劇を招いたともいえます。

そして於琴姫ですが、この3人の中では一番自然体といった感じの側室です。由布姫より自分の方がお屋形様を慕っていると言いつつ。ことさらに野心を燃やすようでもありません。またリツも、この場合「宿命の女」といえます。当初勘助の妻になるはずだったのが、養女となり、さらに春日源五郎との縁談が決まります。しかし祝言の前に川中島の戦いがあり、養父は戻って来ませんでした。勘助と関わることにより、違う人生を歩くことになった女性といえるでしょう。

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[ 2017/12/08 00:15 ] 大河ドラマ 風林火山 | TB(-) | CM(0)

風林火山第36回「宿命の女」

前回に続いて女性メインの回ですが、結構面白いです。ちなみにサブタイの「宿命」は「さだめ」と読む方がよさそうですね。於琴姫と由布姫に続いて、これぞ宿命の女とも呼ぶべき美瑠姫が、とんだことをやってのけてしまいます。

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由布姫から於琴姫の様子を探るようにいわれた勘助は、積翠寺へと出かける。しかしそこで出会ったのはリツだった。父虎胤が負傷のため、この寺の離れの手入れをする役目を与えられていたのである。リツは、由布姫が於琴姫のことを知ったのではないかと不安がるが、勘助を於琴姫に引き合わせる。そして勘助は、於琴姫が身重であることを知る。於琴姫の祖父は武田信虎に討たれ、油川家は武田の軍門に下ったのである。今では諏訪の姫様よりも、私のほうがお屋形様をお慕いしていると言う。

勘助は、姫様はお心がお美しいと言い、ならばと言いたいことを切り出す。武田には他にも若様がおられる、姫様のお子はその方たちの下になるということを言って聞かせるが、於琴姫はそれは承知していた。一方由布姫は大井夫人に会う。大井夫人は、そなたは気高い、そなたは今も心は諏訪家の者であろうと言いつつ、そなたがいてこそ武田と諏訪の両方が安泰なのであるとも諭す。さらに、宿命を背負った女は悲しく、そして強いとも言うのであった。その由布姫の子四郎は、腹違いの兄義信から剣術の指南を受けていた。

晴信は入室して来た勘助を見て、由布のことは案ずるなと言う。しかし勘助が話しておきたいのは、今川家との盟約についてであった。義元の正室であった、晴信の姉が亡くなったため、代わりの人質を立てる必要があったのである。そこで勘助は、晴信の娘を今川家に嫁がせるのではなく、義元の娘を義信に嫁がせるという案を持ち出す。義元は面白くなかったが、雪斎は、今川家から姫を送ることで、義信は骨抜きにされると明言する。ただ四郎が跡を継ぐ可能性もあり、その四郎には勘助が肩入れしていることを懸念する。

使者として今川家を訪れた武田信廉と駒井政武に、義元は誰がこのことを画策したのかと尋ねる。駒井はとっさに機転を働かせ、お屋形様であると答える。勘助が関わっていないかと探りを入れる義元に、勘助はたかだか足軽大将、武田家は親類衆と譜代の臣が仕切っていると答える駒井。また晴信も、もし今川の姫をもらい、自分が何かで駿河を取ろうとした場合には、義信が自分を恨むであろうことを気にかけていた。しかしだからといって、自分の娘たちを駿河にやることは乗り気ではなかった。

勘助は郡内に小山田信有を訪ねた。小山田も今度のことに対し、勘助の関与を疑っていたが、勘助はお屋形様からの下知ということで、北条が異を唱えぬよう、取次を小山田に依頼する。小山田は、お家に背くことはしていないか、御曹司様を裏切るようなことをしていないかと尋ね、もし今川と戦になった場合、喜ぶのは諏訪であると核心をついた物言いをする。また、子のためを思う女子は恐ろしいと言い、美瑠姫の話題を切り出す。小山田は美瑠姫との間に男児がいるが、予定より二月も早い出産であった。

自分の子なのかどうか、小山田の疑いは晴れなかったが、武田の家臣である小山田家の側室となり、子を産んだことはあっぱれであり、そのため美瑠姫をいとおしく思っていた。また勘助に、武田より由布姫のことが大事であろう、支えてやれと、これまた本質を突いた言葉を投げかける。しかしその子藤王丸は病であり、助けてやりたいとも話していた。そんな折、美瑠姫のいる駒橋の屋敷から知らせが来る。藤王丸が亡くなったのである。その頃、勘助は四郎に剣の稽古をつけており、ほどなくして由布姫と四郎は諏訪へ戻り、於琴姫は女児を出産した。

年が明けて天文21(1552)年、信有の嫡男小山田弥三郎が、躑躅ヶ崎を訪ねて来た。父が、側女に寝首をかかれたと言う。その側女こそ美瑠姫であった。様々な憶測が家臣の間で飛び交うが、勘助は一人、小山田は報われずとも美瑠姫との子を、我が子の如く育てようとしていたと発言する。その後美瑠姫は、父、夫の笠原清繁、子の藤王丸に仇を討ったと伝え、自刃して果てた。小山田の死は、表向きは討死とされることになる。その後大井夫人は、初めて会う勘助に、由布姫についての話題を切り出す。

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由布姫と勘助、美瑠姫と小山田の関係をだぶらせたように見える展開です。実際勘助が、今川家との縁組をどう見ていたかはともかく、今川の姫を娶らせ、後年今川と何か確執が起こった場合には、四郎が跡を継ぐ可能性もあるわけで、その意味では「我が子の如く」思っていたとしても無理からぬ話です。一方で於琴姫の境遇は、由布姫とそっくりです。この小山田家は、過去に油川家と武田家の争いが起こった際には、油川家に味方してもいました。

ところで今回、浅利陽介さんが演じている小山田弥三郎、この人はかの小山田信茂の兄といわれています。元々同一人物と思われていたようですが、兄弥三郎はこの13年後に亡くなり、その後弟信茂が家督を継ぐことになりました。その信茂が、織田と徳川の甲州征伐の際に調略され、主君であった勝頼を裏切ることになります。その後自分の息子を、織田に人質として差し出そうとしますが、逆に主君への不忠を咎められて処刑されることになります。

[ 2017/12/04 01:30 ] 大河ドラマ 風林火山 | TB(-) | CM(0)

風林火山の歴史的背景23-武田晴信の正室と側室、そして子供たち

第35回「姫の戦い」では、於琴姫=油川夫人が登場します。武田晴信は正室である三条夫人以外に、諏訪御料人(由布姫)、油川夫人、そして禰津御寮人の3名の側室がいました。それぞれの子供たちについてまとめておきます。

三条夫人
義信
龍芳(海野信親)
信之
黄梅院(北条氏政室)
見性院(穴山信君室)

諏訪御料人(由布姫)
勝頼

油川夫人(於琴姫)
真竜院(真理姫、木曽義昌室)
仁科盛信
葛山信貞
信松尼(松姫)
菊姫(上杉景勝室)

禰津御寮人
安田信清

ちなみに三条夫人の三男信之は、夭折したといわれていますが、生前に一族の西保氏を継承したという説もあります。

『武田信玄』では
諏訪御料人ー湖衣姫
油川夫人-絵理
禰津御寮人-里美となっています。なお、『風林火山』には禰津御寮人は登場しません。また『風林火山』では、黄梅院と見性院の本名が、それぞれ梅と菊となっています。

しかし武田晴信の場合は、子供たちよりも兄弟姉妹の方が多く、兄弟は親類衆や僧侶となり、姉妹は今川義元や諏訪頼重をはじめ、そこそこの武門に嫁いでいます。ただし菊御料人と呼ばれる妹のみ、公家の菊亭晴季に嫁いだとされています。この菊亭晴季、『真田丸』の昌幸の正室薫が、その娘であることを自称していました。しかし昌幸は息子たちに、実際は侍女だと打ち明けます。恐らくはこの菊御料人に仕え、それが縁で昌幸と夫婦になったという設定なのかもしれません。

飲み物-パブのビール2
[ 2017/12/03 01:15 ] 大河ドラマ 風林火山 | TB(-) | CM(0)

風林火山徒然-33

第35回は由布姫と於琴姫中心、それにリツが絡んで、結構コミカルな展開もありました。女性にはまるで疎い勘助が、晴信と女性たちに振り回されるシーン、その一方で於琴姫を迎えるに当たって、三条夫人や由布姫、特に由布姫が絡むシリアスなシーンが展開されて行きます。またこのことに関して、家臣たちの思惑も様々でした。その思惑は、諏訪太鼓のシーンの時に、それぞれが心情を語る形で紹介されて行きます。しかしなぜ駒井政武は、於琴姫が身重だと知っていたのでしょう。

まずリツ、恐らく父虎胤があれこれ勘助のことをしゃべっていたようで、勘助としては知られたくないことまで口にします。その時うっかり洩らしたのが、お屋形様の新しい側女のことでした。勘助は諏訪に向かう途中、怪しい輿の一行を目にします。どうも新しい側女のようです。そして諏訪では、由布姫がお屋形様も訪ねて来ない、これではまるで幽閉だと不満をあらわにします。さらに、新しい側室のことを示唆するような言葉を勘助にぶつけます。

さらにタイミングよくというべきなのか、大井夫人の体調がよくないことを知り、見舞いに行くと言って、久々に甲府へ向かうことになります。その頃勘助は晴信に、新しい側女である於琴姫について尋ねますが、晴信はしらを切り通します。一方で由布姫は、大井夫人から寅王丸の出家を初めて知らされます。しかもこのことが口止めされていた、晴信も伝えなかったといったことが、彼女を疑心暗鬼にさせた節もあります。

このようないきさつもあり、せめて今夜は姫様と共にと、なにやら軍師にふさわしからぬ発言までする勘助。そして翌日由布姫は勘助に、於琴姫のことをほのめかすような発言をしていました。しかし晴信は於琴姫のことは、由布姫には伝えていないといいます。つまりこれは、由布姫がかまをかけたわけです。軍師が引っかかるのも妙ですが、この手のことに疎い勘助ゆえ、やむをえないといえるでしょう。しかし三条夫人は由布姫に、その程度のことを得心できずにどうするとたしなめます。

結局由布姫は勘助に、四郎を諏訪家でなく武田家の後継者として育てるとまで言います。何やら武田家乗っ取りの感もありますが、寅王丸出家を知って踏ん切りがついたとも取れますが、戦いだと明言する辺り、於琴姫をかなり警戒しているようです。しかもこれを認めなければ、またお屋形様の首を狙うと言う辺り、何とも面倒臭くもあり、情報の少ない諏訪で暮らしていることが、逆に彼女自身を追い詰めているようにも取れます。しかしこの時にひどく咳込み、これが後の伏線となります。

ところで来年の『西郷どん』から、大河のフォーマットが少し変わるようです。これについてはまた。

飲み物-ビール2種類 
[ 2017/12/01 01:30 ] 大河ドラマ 風林火山 | TB(-) | CM(0)

風林火山第35回「姫の戦い」

原虎胤の娘リツ、そして新しい側室である於琴姫が初登場です。そして大井夫人を見舞う由布姫は、於琴姫をひどく意識しており、三条夫人にたしなめられます。また四郎を、武田の後継者として育てることを決めてしまいます。

***********************

砥石城が村上の手から真田に戻り、また摩利支天が再び勘助の手に戻った。そして勘助は、砥石崩れの時に負傷した、原虎胤を見舞いに行く。また虎胤が、晴信から平瀬城代に指名されていたが、詳しいことは勘助も知らなかった。そして虎胤は、嫁を迎えてはどうかと末娘のリツを紹介する。しかしリツは、恐らくは父虎胤から聞かされていたようで、勘助と由布姫のことを知っていた。またうっかり、お屋形様の新しい側女について、口を滑らせてしまう。その後諏訪に向かう勘助は、ある民家の前で不審な輿の一行を目にする。

民家の中には打掛を着た姫がいた。その後一行は旅立って行くが、後から来た年配の女に勘助は事情を訊く。しかしその女は、答えられぬの一点張りだった。そこで勘助は、お屋形様からの言いつけであると言うが、その女も、お屋形様からの言いつけで、甲斐府中に向かっていると言う。女は下がれと命じ、勘助を押しのけて去って行く。その後小坂観音院に到着した勘助は、四郎から母が泣いていたと聞かされる。また越後のことを訊かれ、甲斐や諏訪よりも住みにくいと答えるが、由布姫は長尾景虎について知りたがっていた。

また由布姫は、お屋形様が通うこともなく、顔も忘れてしまったと言う。侍女の志摩は気を利かせて、四郎に手習いをさせようとし、勘助は新しい筆を渡す。その後由布姫は勘助と差しで、自分には情報が入らないと嘆き、勘助の摩利支天を見て晴信とのつながりを示唆する。彼女も禰々の摩利支天を持っているが、最早晴信とも会えず、幽閉されているようなものだとも言う。その後武田家の様子を訊き、大井夫人が病に伏せていることを勘助が伝えると、見舞いに行きたいと言う。しかし新しい側女が来ている時点での甲斐行きを勘助は案じる。

結局由布姫は、四郎と志摩を連れて甲斐へ足を運ぶ。そこで大井夫人に会い、寅王丸について尋ねるが、大井夫人は、寅王丸が出家したことを知らせる。実は志摩は、そのうちお屋形様から話があるだろうと、このことを勘助から口止めされていたのである。その頃勘助は晴信に、油川家の姫君について尋ねていた。晴信はしらを切るが、ならばその名を騙る者を見た故、成敗いたしますると勘助が気色ばむのを見て、由布姫がこのことを知っているのか尋ねる。疑うておられる節があるので、是非今夜は共にと促す勘助。

晴信に取って由布姫は、政や戦のことを訊きたがる相手であり、心が休まる側室ではなかった。いっそあれが男であればとも晴信は言う。その夜晴信は宴を催し、諏訪太鼓の音色を楽しむ。それは四郎が、諏訪家の継承者であることを知らしめるものだった。しかし家臣たちの心中には、様々な思惑が渦巻いていた。また駒井政武は、油川の姫が既に身重であることを知っていた。翌日、お屋形様によきお方がいるようでと言われた勘助はうろたえる、由布姫はすかさず、どのような者か会いたいから連れてまいれと言う。

そこへ三条夫人がやって来た。三条夫人は、そなたもその姫も同じ側女である、さようなことを得心できぬのなら、武田家の女人として恥ずべきことと言って聞かせる。実はこの件は、由布姫の謀であった。晴信はその前夜酒が過ぎたせいで、由布姫と一夜を共にしてはいなかったのである。さように女子の悋気を恐れてはならぬと言う勘助に、晴信は、板垣に似て来たと笑う。一方由布姫の方は、四郎を武田家の跡継ぎとして育てる、それが自分の戦いだと言って、勘助に同意を求め、また油川の姫について知らせてくれと言う。

しかし勘助は、ご悋気も大概になされませと答える。これを聞いた由布姫は戸惑い、ひどく咳き込む。様子を気遣う勘助に触るなと言い、このままではまた諏訪家の娘として、お屋形様の御首がほしくなると言う由布姫。勘助はその夜、伝兵衛に油川の姫の様子を探らせようとするが、このことは既に家中で広く知れ渡っていた。積翠寺の裏手にいるという情報をもとに、勘助は姫を斬ろうと思って寺へ出かける。外から寺の中の様子を探る勘助だったが、その時不意に、原虎胤の娘のリツが姿を現す。

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今回は
「見舞いに行って思わぬことを知る」
「新しい女性の登場」
が織り込まれた回です。この主役は本当は由布姫なのでしょうが、どうも皆が油川の姫、つまり於琴姫に振り回されている印象があります。真の主役は於琴姫と言えるのかもしれません。

しかし由布姫、戦場で共に戦う仲間としては、あるいは頼もしい存在なのでしょうが、実際側室としてはかなり面倒くさそうです。彼女もこれは気づいているようで、後に病に倒れた時、勘助に同じようなことを言います。今後次第に於琴姫との違いが明らかになって行きます。

[ 2017/11/27 01:15 ] 大河ドラマ 風林火山 | TB(-) | CM(0)

風林火山の歴史的背景22-滋野氏三家と晴信の側室

第34回「真田の本懐」では、海野家を再興する話が登場します。この海野家は滋野氏の中でも、禰(根)津、望月と共に一族を代表する家、所謂滋野氏三家でした。この滋野氏は元々は、清和天皇の皇子貞保親王の流れを汲むとされ、平安時代前期には信濃の御牧を統括していて、滋野という姓を名乗るようになったのは、9世紀前半とされています。後に一族の一人が海野姓を名乗るようになったとされていますが、詳しいことは不明な部分もあります。しかし御牧を統括する家系ということで、勘助が初めて真田幸隆に会った時の、名馬を育てる云々もうなずけるというものです。

信濃とのかかわりは、滋野恒蔭が貞観10(868)年に信濃介となったことが発端といわれています。ちなみに滋野氏には海野、禰津、望月の他にも、真田をはじめ矢沢、春原、出浦、香坂など、この『風林火山』や、『真田丸』で有名な家もあります。この海野家を継いだ龍芳は、その後信親と名を改め、海野家の当主となりますが、武田家の滅亡に及んで自害したとも殺されたとも、あるいは織田信忠から処刑されたとも伝わっています。しかし彼の息子が生きながらえ、江戸時代には今川氏同様、高家旗本として生き残ることになります。

ちなみに禰津氏からは、武田信玄の側室である禰津御寮人が出ています。この禰津御寮人は、『風林火山』では登場していませんが、『武田信玄』ではそれらしき人物が登場します。大地真央さん扮する里美が、この人物に相当するといわれています。この人の子は武田信清で、後に出家することになります。無論禰津御寮人以外にも、晴信には諏訪御料人(由布姫)、油川夫人(於琴姫)といった側室がいました。この油川夫人の娘の一人が菊姫で、後に上杉景勝の正室となります。次回は、いよいよその於琴姫が登場です。

飲み物-カクテル
[ 2017/11/26 00:45 ] 大河ドラマ 風林火山 | TB(-) | CM(0)
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『西郷どん』復習の投稿をアップしている一方で、『鎌倉殿の13人』の感想も書いています。そしてパペットホームズの続編ですが、これも『鎌倉殿の13人』終了後に三谷氏にお願いしたいところです。

他にも国内外の文化や歴史、刑事ドラマについても、時々思い出したように書いています。ラグビー関連も週1またはそれ以上でアップしています。2019年、日本でのワールドカップで代表は見事ベスト8に進出し、2022年秋には強豪フランス代表、そしてイングランド代表との試合も予定されています。そして2023年は次のワールドカップ、今後さらに上を目指してほしいものです。

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