10日に亡くなられた渡哲也さんが、俗にいう石原軍団(石原プロモーション)のメンバーであったことは、先日書いていますが、ここも先日解散が発表されています。これは石原裕次郎氏の遺志によるものだったようで、ご本人の34回忌を迎えてやっと実現されたとの由。この石原裕次郎氏は、青春スター、さらには刑事ドラマで一世を風靡しながらも、1987年に50代の若さで亡くなっており、その前年に『太陽にほえろ!』で、部下のことと自身の病気を話すシーンが登場しますが、これはアドリブとのことです。
ところでこの方が人気絶頂だった頃、日活が制作した映画『若い人』(1962年)に出演しています。この『若い人』という小説についてはご存知の方も多いと思います。
戦前の北国(北海道と思われる)の女学校の教師である間崎慎太郎が、生徒である江波恵子の情熱的な作文にかなりの印象を受け、またその江波も、独身である間崎にやや屈折した恋心を抱くようになります。これを同僚の女性教師である橋本スミが諫めますが、江波は間崎に対して、気を引くような態度を取るようになり、母親と間崎の下宿にやって来て、靴をプレゼントしたりします。
その後も江波のやや羽目を外したような態度はやまず、修学旅行の列車で大泣きして、間崎に手を取って慰めてもらったり、周囲から妊娠していると疑われ、病院でちょっとした騒ぎになって間崎がそこにやって来たり、間崎の下宿に来てそのまま眠ってしまったりします。挙句の果ては、間崎が彼女の母親の料亭での喧嘩を仲裁しようとしてケガを負い、そのまま江波の家で療養することになり、その時彼女との肉体的関係が出来てしまいます。
これは橋本に知られることになります。しかもその橋本は共産党活動にこっそり加わっており、自宅で開いた集会が非合法に当たることから検挙されます。それを知った間崎も悩みますが、最終的に橋本と共に人生を歩むことになります。
私も高校生の頃この本を読み、この作品に登場する学校と同じ系列の、所謂ミッションスクールに通っていたこともあって、作品の背景についてはかなり理解できました。しかしその当時、ここまで恋愛に積極的な女の子がいるのかと思ったものです。無論江波だけではなく、彼女の友人や他の先生も出て来るし、中には如何にも優等生といった感じの子もいます。江波の場合、見かけもよくて勉強もでき、庶子という出生上の理由もあってのことなのか、かなり思索的でもあり(だから間崎も彼女の作文に心を動かされたのですが)、修学旅行中の記録も気の利いたことを書いたりしているのですが、如何せん好きな先生へのアプローチが相当にすさまじいです。
ところでこの作品は過去何本か映画またはTVドラマ化され、もちろん教師の間崎も、色々な俳優さんが演じています。石原裕次郎さんもその一人です。で、ここから先は、ご本人には大変失礼かと思いつつ書いて行きますが、この間崎先生は独身ということもあり、生徒たちに大変人気があります。過去の作品の中で、1972年のドラマの石坂浩二さん、1976年の映画の小野寺昭さん、1986年のドラマの田中健さんや、往年の二枚目俳優で1952年の映画に出演した池辺良さんなどは、確かに女の子たちからは素敵な先生と慕われもするでしょう。こういうキャラにはパターンがあり、たとえば細身であるとか優しそうであるとか、二枚目(イケメンとはまたちょっと違うので)であるとか、そういう雰囲気のあるなしが条件としてつくわけで、裕次郎さんの場合、またちょっと違った雰囲気ではあるのですが…。尚、この時の江波は吉永小百合さんが演じています。
あとこの作品の場合、校長先生が外国人である(これも昔のミッションスクールによくあること)のに加え、修学旅行の際の会話や基地の見学などで、当時の軍部などから問題視された記述があったりで、その意味でも話題作であったともいえます。本の内容の詳細については、機会があればまた書く予定です。というか、書いている内にまた読みたくなって来たので、探して読んでみようかと思っています。尚裕次郎さんがかつてこの映画に出ていたというのは、亡くなられた後の雑誌の特集号で知りました。