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ベイカー寮221B/Baker House 221B

パペットホームズ、大河ドラマなどの好きなテレビ番組やラグビーについて書いています。アフィリエイトはやっていません。/Welcome to my blog. I write about some Japanese TV programmes including NHK puppetry and Taiga Drama, Sherlock Holmes and rugby. I don't do affiliate marketing.
ベイカー寮221B/Baker House 221B TOP  >  相棒

『相棒』第10シーズン第6話「ラスト・ソング」

久々に『相棒』関連です。

先日このドラマの、レギュラー登場人物の人気投票について書いていますが、これで1位になった、及川光博さん演じる神戸尊が相棒の頃です。たまたまジャズクラブにいて、安城瑠里子の歌を楽しんでいた神戸ですが、その後思わぬ事件に巻き込まれることになります。

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神戸は安城瑠里子、別名ミス・アンルーリーのライブを楽しんでいた。前半が終わってステージはしばしの休憩に入り、しばらくして後半が始まり、演奏が終わって客たちが満足げに出て行った頃、神戸はクラブで殺人があったことを知る。被害者は音楽事務所経営でプロモーターの、鎌谷充子だった。所轄署の署員がやって来て、やがて杉下右京もやってくる。充子の遺体のそばには携帯と、タバコの吸い殻が落ちていた。彼女はチェーンスモーカーで有名だった。

クラブ内は禁煙で、6階の非常階段の踊り場で喫煙していて落ちたように見えたが、携帯が無傷なのが如何にも不自然だった。この踊り場に出るドアはオートロックで、充子のストッパーの噛ませ方が甘く、ドアが閉まってしまい、慌てて非常階段を下りてクラブに戻ろうとして、足を踏み外したようにも見えた。

充子は瑠里子の楽屋に電話をしており、ステージが終わったら話をしたいと言っていたのだが、なかなか来ないため不審に思った瑠里子が遺体を発見し、第一発見者となっていた。楽屋も本当は禁煙だが、瑠里子は喫煙を許可していた。しかし灰皿に吸い殻はなく、チェーンスモーカーの充子はそこで10分ほど瑠里子と話しており、1本も吸っていないのは何とも不自然だった。また充子のタバコは、封を切った新品だったがそれは1本も吸っておらず、ならば遺体のそばの吸い殻は別のタバコであるはずなのだが、そちらのタバコの方が見つからなかった。

しかし瑠里子は正に「アンルーリー」(手に負えない)で、のらりくらりと話を交わす。実は開場前にも充子は楽屋にいて、どうやらツアーのことで揉めていたようだった。捜査一課は殺しの可能性を探っており、鑑識の米沢も、充子の遺体には死後についた傷があったと証言する。瑠里子のバンドのメンバーである森脇は、かつて瑠里子と仕事をしていたが、その後瑠里子はぱっとせず、たまたまCMで使われたリバイバル曲がヒットし、充子がスポンサーを見つけ、全国ツアーを組むことになっていた。しかし瑠里子は高い所や飛行機が苦手だった。

実際森脇によれば、瑠里子は恋人としては手にあまり、また歌手としても歌う曲を本番で勝手に決めたり、客の乗りが悪ければ手を抜いたりもしていた。クラブの支配人の千葉によれば、売れていない時の瑠里子は、森脇が面倒を見ていたようだった。杉下は、瑠里子が充子を殺す動機は考えられなかったが、自分から「揉めていた」と口にしたことを不思議に思う。翌日、杉下は神戸と2人でクラブをまた訪れる。

他殺の可能性もあり、ライブを中止して貰うかも知れないと杉下は言う。殺人時間は21時15分から30分、つまり休憩時間の間で、その時瑠里子は楽屋の電話で充子と話をしていたが、虚偽であることも考えられた。もちろん関係者以外の殺人の線もあった。しかし瑠里子はこう言い放った。
「今夜のステージが終わるまでは、何があっても教えてあげない」
また杉下は神戸から、瑠里子が昨夜"When love Kills You"を歌わなかったことを知らされる。

もし犯人が瑠里子なら、高い所が苦手なはずなのに、6階の踊り場で犯行に及ぶわけもないし、発見後瑠里子が真っ先に遺体のそばに駆け寄ったのは、携帯と吸い殻を側に置いて、事故死のように偽装するのが目的であったとも考えられた。その後杉下と神戸は保管庫に入り、そこで不自然な形跡を見て米沢に連絡する。果たして機材から血痕が発見された。恐らく充子が頭をぶつけ、それが基で死に至ったようだった。しかし瑠里子は、自分が充子を殺さなければならない理由は何であるかと捜査一課の3人に尋ねる。

実は充子はかなりギャラを値切っており、借金を抱えていた瑠里子はそんな条件を呑めなかった。そのため休憩中に保管庫に充子を呼び出し、突き飛ばして殺し、その後転落死を装った可能性もあった。しかも保管庫は、自由に立ち入りができるよう、鍵がかかっていなかった。しかしこの推理も決定的な証拠に欠けた。杉下は神戸と一緒にその夜のライブを見ることにし、捜査一課と米沢も立ち見ながら参加した。そして杉下は、”When Love kills You"をリクエストする。

ステージが終わった後、杉下はなぜ前日に”When Love kills You"を歌わなかったのか瑠里子に尋ねる。その気でなかったと瑠里子は言うが、実はこの曲はトランペットのミュートが不可欠だった。実は犯人は森脇で、トランペットの音を確認するため保管庫に入ったところ充子と言い合いになり、彼女を突き飛ばして殺し、保管庫を出て行ってしまっていた。その後保管庫に入った瑠里子は現場にミュートが落ちているのを目にする。しかしステージでミュートを渡すのも不自然であり、また森脇を庇うため、彼女の遺体を6階の踊り場から落として事故死に見せかけたのだった。森脇は脱税しており、充子から脅された挙句口止め料を要求されていたのである。

先に森脇が捜査一課に連行され、残った杉下と神戸に瑠里子は、自分が歌うには森脇が必要であり、実際ソロになって森脇と別れた時、うまく行かなかったことを話す。
「ジャズシンガーとして輝ける時って、あの男のアレンジと演奏と、そしてあたしの後ろにあいつがいる時だけだって。再結成してからは生まれ変わったみたいに 自分の望むように歌えた」
客席からはアンコールの拍手が鳴りやまなかったが、瑠里子は千葉にこう言った。
「あたしもう二度と歌わない。お客さんには、支配人から伝えて」

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ある曲を歌わなかったことで、犯人が誰であるかがわかるという展開ですが、研ナオコさんが演じたミス・アンルーリーこと安城瑠里子が、なかなかいい味を出していました。例によって、神戸が遺体をちょっと目にしただけで気分が悪くなったり、「細かい所にこだわるのが…」が出て来たり、米沢さんが捜査一課のみならず特命に情報を送っていたりと、この当時の『相棒』らしさが楽しめます。瑠里子を特命の2人に任せて捜査一課が森脇を連行するのは、粋な計らいと取るべきでしょうか。ちなみにこのシーズンのOPテーマもジャズ風のアレンジでした。

この頃は、無論リアルタイムでないせいもあるのでしょうが、結構楽しめる作品が多いです。最近のは、特命の2人がちょこまかと犯罪のにおいを嗅ぎつけて動き回ったり、それに青木年男が絡んで来たりするのはいいのですが、スペシャルがちょっと大掛かりになっている印象があります。
(2021年4月1日一部修正)

飲み物-ウイスキーロック

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[ 2021/04/01 01:15 ] ドラマ 相棒 | TB(-) | CM(0)

『相棒』第11シーズン第15話「同窓会」

1週間前に大河枠特番で『国盗り物語』の名場面が紹介され、その時明智光秀を演じた近藤正臣さんがゲスト出演していました。その近藤さん、実は『相棒』にも、かつての中学教師の役で出演しています。

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裏DVDの摘発の帰り、杉下は同窓会に向かう元中学教師の岩田から、吉村という元教え子に間違えられる。その吉村はその日欠席しており、また杉下とは外見もかなり異なっていたが、杉下は吉村になりすまして会場の料亭「松乃郷」に向かい、同行の甲斐を隣室で待たせて会に出席する。岩田は40年前に廃校になった中学の教師で、写真部の顧問をしていた。その場で辻という男が何度か話を切り出そうとするが、岩田にはぐらかされてしまっていた。やがて一同が岩田にプレゼントを渡し、本物の吉村が玄関先に置いて言ったと思しき紙袋を、吉村となっていた杉下も手に取る。

しかし中をのぞいたところ、手製の爆弾があるのに気づいた杉下は、甲斐と共に客や従業員を避難させ、甲斐に爆発物処理班に連絡を取らせた。その時仲居の文恵が戻って来て、ことの次第を聞いて驚く。また心臓に持病を抱えている辻と、この騒ぎで体調を崩した岩田は病院に搬送された。他の者たちは取り調べに応じた。文恵は例の紙袋を仲川に渡したと話す。またかつての生徒たちのうち、この同窓会を計画したのは弁護士の仲川で、2月5日ごろに同窓会の通知を出していた。

相棒同窓会
杉下右京(向かって右から2人目)に声を掛ける岩田(同3人目)
(テレビ朝日公式サイトより)

杉下たちは、辻の鞄から新聞の切り抜きを見つけた。それは俳句の投稿欄で、姫小百合というペンネームの投稿が掲載されていた。杉下は、同窓会で見た昔のアルバムに姫小百合の写真があったのに気づき、甲斐と2人で、終活と称して荷物の整理をしている岩田の家を訪ねる。2人は警官であることをあかし、例の切り抜きを見せる。「姫小百合」の歌にはこう詠まれていた。

在りし君思いて山を見上ぐればつゆ遥かなる夏ぞ忘れぬ

辻がこれを持っていたことと姫小百合の写真から、この「君」は副顧問で、廃校の年の夏に、生徒を連れて山に撮影旅行に行った間宮ではないかと尋ねる。一方岩田は別のグループと海へ行っていた。しかし岩田はそれには答えず、間宮は美人で高嶺の花だったと話す。その傍らには、貰い物らしい菓子があった。この短歌の掲載は2月3日付の新聞で、その2日後に同窓会の知らせが行ったことに釈然としない杉下は、仲川の事務所を訪ね、辻について尋ねる。しかし仲川は選挙準備を理由に2人を追い返そうとすし、岩田と間宮の関係について訊かれても知らぬ顔をする。

甲斐は親子三代で山岳救助隊をしている家から資料を借りて来る。その中には中学のアルバムもあり、間宮は確かに美人で生徒の憧れになりうる教師だった。その後2人は再び仲川、そして同じく同窓の遠山に会う。仲川は渋るが、遠山は間宮を心配させてやろうと、辻と自分とで、仲川が崖の方に行ったと伝えたことを話す。間宮はそこで崖から落ち、帰らぬ人となっていたが、中学生だった彼らはそれを打ち明ける勇気がなかった。

しかも辻はそのことを岩田に話し、岩田も辻を許していた。遠山が事件後その話をしなかったのは、岩田自身が爆弾犯の可能性もあるからだった。杉下と甲斐は再び岩田を訪ねて問いただすが、岩田はその質問には答えず、裏の物置のスコップを取りに行かせる。その時置かれていた化学肥料に杉下は目を留める。その成分は爆弾の成分とほぼ一致していた。しかし同窓会に出ていたのは、山に行った生徒たちだけでなく、岩田自身が引率して海に撮影旅行に行った生徒もいた。生徒思いの岩田が、真犯人を庇おうと、自分に目を向けさせているのではないかと杉下は疑う。

一方仕事が忙しいと欠席した吉村は、実は失業中でその日は家にいた。吉村も取り調べを受け、仲川の気持ちもわかると言って、辻と言い争いになったこと、さらに失業後は岩田の家に頻繁に通っていたことがわかる。その後捜査一課と杉下、甲斐は仲川が客を待っていた松乃郷に行く。これがばれたら弁護士の信用問題にかかわると言う仲川だが、伊丹は自作自演を疑う。そして仲川も、ついにある人物から助言を受けて同窓会を開いたと打ち明けるが、しかし誰であるかについては言葉を濁した。

杉下たちは羊羹を持って磐田の家を訪れる。菓子から話題を吉村に移し、最近会っていたにもかかわらず、杉下を吉村と間違えて同窓会に引っ張り込んだこと、辻の話を遮ったことは如何にも不自然だったことをほのめかすが、岩田は気分がよくない風を装って2人を引き取らせる。しかし岩田の家の玄関先にあった同窓会通知に、2人は不信感を抱く。そして彼らは、例の料亭の仲居の文恵が住むマンションを訪れた。文恵は自分が疑われていることに気づく。

同窓会のあて名の字は、かつて彼女がホワイトボードに仲川の名を書いていた時と同じ筆跡だった。また投函されたのは仲川の事務所の近くではなく、文恵の部屋がある浦和だった。それに加えて杉下は、仲川が常連客であるにも関わらず、取り調べの際、文恵が仲川のことをただ幹事さんと言ったことも気になっていた。文恵はならば確かめてみるように言い、杉下は仲川の携帯に電話をする。すると着信音がすぐ近くから聞こえて来た。文恵は訪ねて来た仲川の後頭部を殴って、隣の部屋の押し入れに隠していたのである。幸い仲川はまだ息があった。

文恵は仲川と不倫関係にあり、結婚の約束をしていたにもかかわらず、自らのイメージダウンを恐れる仲川と対立していた。そして同窓会の計画を吹き込み、吉村の名を使って、自分で作った爆弾を会場に持ち込むようにさせたのだった。爆弾の材料も作り方も、文恵はネットから情報を得ており、しかもこのような事態を引き起こしたことに、さして悪気もなさそうだった。杉下と甲斐はまたも岩田を訪れ、辻の回復状況を伝えると同時に、姫小百合の写真について話を切り出す。

岩田はかつて間宮に本心を打ち明け、その時姫小百合を渡していた。しかしその後間宮は見合いをし、断ったにもかかわらず2人の関係はぎくしゃくしていた。それが修復されないまま間宮は帰らぬ人となり、岩田は間宮のカメラのフィルムを現像して、姫小百合が撮影されていたのに気づく。間宮はそれを岩田に渡し、仲直りするつもりだったのだ。しかも間宮は、その姫小百合を遷していて足をすべらせたのだった。岩田は辻もこのことで悩んでいたことから、本当は自分が悪いのだと言おうとして言うことができず、良心の呵責を覚えて涙する。杉下は言う。

「真実を話すには、今からでも遅くはないと思いますよ」

その後花の里で、幸子が秘密にも色々あると言うが、甲斐は杉下には秘密が多い、私生活が見えないからと口を出す。そして一度家へ行ってみようと言うものの、わざわざ来なくていいと杉下から一蹴される。

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杉下が岩田という元中学教師から、吉村なる人物と間違われて同窓会に出席します。しかし岩田はそのことは承知済みで、逆に吉村の不在を逆手に取ったともいえます。教え子たちは表面上はにこやかでしたが、かつての写真部副顧問間宮の死を巡って確執が生じていました。磐田は爆弾を仕掛けたのが教え子の関係者であること、交際していた間宮の不慮の死は、自分たちに責任があると考えている教え子がいることなども知っており、だからこそ彼らでなく自分に目を行かせるようにしたとも言えます。教え子のことを何度も口にすることから、生徒思いの一面が窺えますが、一方で、間宮に嘘をついた3人のうち1人が真犯人かと思わせる設定にもなっています。

しかしこの事件の犯人は、仲居の文恵でした。不倫相手の仲川が約束を果たさなかったこと、さらにその仲川が、かつての事件を巡って、自分の信用に傷がつくことを恐れていることに目をつけ、同窓会の計画を持ち込みます。手製爆弾を持ち込んだのも無論文恵で、しかも同窓会が開かれている時は、自分に被害が及ばないよう外出していました。彼女にしてみれば、仲川もその仲間も恩師もどうでもいい存在でした。しかし筆跡や、常連客の仲川の呼び方などから、杉下が疑惑の目を向けることになります。それにしても、なぜ通知があそこにそのまま置かれていたのか、岩田がそのことを暗に知らせようとしていたのでしょうか。

爆弾も未遂で終わり、誰かが派手な殺され方をしたわけでもない反面、結構込み入っていて、しかも心理面が描かれたエピソードです。杉下と甲斐が頻繁に岩田を訪れるのも、相手にプレッシャーをかけるのが狙いのようですが、最後でそれが一転し、岩田自身が涙を流しながらすべてを告白するに至ります。ちなみに爆弾の材料を購入し、ネットで作り方を探すというのは、あの「ミス・グリーンの秘密」と似ています。こちらは、妹を殺された復讐にミス・グリーンこと二宮緑が仕組んだことです。

尚この姫小百合なる花ですが、オトメユリともいい、東北地方など限られた地域にしか生息せず、環境省のレッドリストにも入っていて、なかなか貴重な植物といえます。岩田に取っての間宮も、そういう実に貴重な存在だったのでしょう。

ところで「松乃郷」なる名前、「花の里」をもじっているようですね。

[ 2020/06/28 23:30 ] ドラマ 相棒 | TB(-) | CM(0)

『相棒』第18シーズン第12話「青木年男の受難」

『相棒』シーズン18第12回、青木年男拉致監禁の回です。監禁された中で彼は何をやっていたのでしょうか。

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ある朝サイバーセキュリティ対策本部の、土師太が特命にやって来た。青木年男が杉下右京から借りている本「蟻地獄図鑑」を返しに来たと言うが、杉下は心当たりがなかった。しかも青木は、緊急手術を受けるという電話をかけて来ていた。冠城が連絡しようとしても携帯はつながらず、さらに警視庁内部の資料に外部からログインした形跡があった。

青木の仕業と睨んだ杉下と冠城は、青木のマンションの外で、彼のカバンを発見し、何かで拉致されたと考える。刑事部長の内村は、アクセス権停止を命じるが、そうすると警察が気づいたことがばれ、青木の身に危険が迫る可能性があった。一方で、青木の性格からして素直に言うことを聞くとは思えず、情報を易々と相手に渡すリスクも低いと考えられた。案の定青木は屁理屈を並べ、犯人に自分の主張を呑ませようとしていた。しかしもし殺されでもしたら、警察がマスコミの餌食になることは避けられず、また青木もそれを見越してわざとパスワード解析に時間をかけているように見えた。

外部に漏らすなという内村の命令のもと、捜査一課は現場へ向かい、特命はファイルにあった神田北署へ行った。2019年の事件ファイルをすべて見せてくれという要請に、神田北署刑事第一課係長の後藤は、怪訝な表情を浮かべる。それは署長の梅本も同じだった。結局木村という巡査がファイルを持ち出し、さらに後藤から2人を見張るように命じられる。

一方青木は、ナイフを突きつけられながらも、敢えてパスワード解析に時間がかかるふりをして、時間稼ぎをしていた。青木がログインしていたのは、金狼会幹部刺傷関連のファイルで、木村は杉下たちの要請ですべてのファイルをコピーする代わりに、木村は捜査の同行を願い出る。金狼会の広瀬は、銀龍会の組長黒川の愛人に手を出したことで、銀竜会の古参相良に刺殺されかけたと話すが、黒川はそれを真っ向から否定する。

組対5課の暇課長こと角田によると、相良は昔ながらの情に篤いヤクザで、だれかの身代わりをしているのではないかと言う。また木村はその前に、飲み屋で相良が、組の構成員河野を組から抜けさせようとしていたのを目にする。その河野は、黒川の息子龍臣から呼び出しを受けていたが、当日は黒川にも龍臣にもアリバイがあり、後藤はそのまま相良を送検してしまう。しかも相良は取り調べではかなり詳しく供述し、誰かを庇っているように見えた。

青木は別の資料ファイルにもログインを試みていた。杉下は土師の助けを借り、石井直久という人物が、息子琢也が事故で搬送されたと連絡を受けて病院へ急ぐ途中、石段で会社員の千葉義人を押しのけ、死亡させたことを知る。杉下と冠城は再び神田北署へ行き、木村に映像をチェックしたいと言うが、防犯カメラの映像はなく、神田北署ではこの石井の自供と千葉に同行していた浜崎、戸川の証言のみで送検し、石井は重過失致死罪となっていた。冤罪の可能性もあるというのに、石井本人もその事実を受け入れていた。

その後冠城の調査により、千葉はパワハラをしていたという事実が浮かび上がるが、調書にはそれは記載されていなかった。浜崎と戸川がパワハラを逆恨みし、それを利用して、転落した千葉の息の根を止めた可能性もあった。しかも木村はその操作を途中で降ろされていた。防犯カメラの映像があればという杉下に、冠城は何とか映像を調達する。そんな中、事件の関係者で所在がわからない人物が浮上する。それは石井の息子で、慶明大の学生の琢也だった。

就活を控えて、父親が犯罪者では具合が悪いからだと伊丹は言うが、もし琢也が犯人の場合、自分の犯行だとバレないように、他の事件のファイルにもアクセスをさせた可能性もあった。しかし杉下は別の可能性もあると指摘。その時土師から、青木が後藤個人のファイルにアクセスしたとの知らせが入る。そのデータが杉下のPCに送られて来たが、それは例の画像に映っていたタクシーのドラレコ映像で、事のなりゆきは石井の証言通りだった。これが犯人が知りたかったの映像だとすると、青木は…と冠城が言いかけた時、杉下の携帯が鳴る。

青木は犯人に脅されつつもファイルをすべて閉じようとするが、その時PCの画面にウイルスの警告メッセージが出る。これに怒った犯人は青木を押し倒してナイフを振るう。杉下たちは現場に行き、そこに倒れている青木を見つけるが、青木は目を開いてこう言った。
「もうちょっと寝させてくださいよ。僕、ずっとろくに寝てないんで」

そこへ木村がやって来た。しかし彼の目当ての石井琢也は既に警察に出頭していた。木村は青木が琢也を装って送った偽メールにつられ、現場へやって来たのである。そして青木はその場を去って行くが、自分を利用したことを一生恨むと捨て台詞を残して行く。

杉下たちは、神田北署に着いた直後に、青木が誘導するかのようにファイルにアクセスを始めたことから、署内に調べてほしい人物がいたと睨んでいた。木村は石井の事件を降ろされたにもかかわらず、事件に詳しいことから独自調査をしていたのである。相良の件もしかりだった。しかしキャリアである梅本は、操作効率を重視していたのである。木村は神田北署に来た琢也の訴えを聞き、琢也が無実照明のためなら何でも協力すると言ったこと、後藤が何か証拠をつかんでいることから、青木を使って冤罪を証明しようとしたのである。

また千葉の横暴があると立件し難いことから、それを敢えて後藤は隠したのだった。すべてを明らかにするべきと言う木村の理念に対し、杉下は琢也を犯罪者に言及した。しかも琢也は木村を庇っていた。琢也を死なせないために木村は急いだが、彼にこのようなことをさせたのは自分だとわかっていたからだった。杉下は警察官としてそれを恥じるようにと言い、さらにこうも言った。
「もっとも君がこの先、警察官でいられるなんの保証もありませんがね」

木村は最後に一つだけ頼みがあると言った。杉下と冠城はまたも神田北署を訪れる。実は、後藤も木村と同じ考えであり、また広瀬が刺された件も木村は独自に調べていた。一方捜査一課は、龍臣を真犯人と睨んでいた。その証拠も挙がっており、龍臣が何と言い訳しようが、相良に身代わりをさせたことに変わりなかった。

最後に青木が特命にやってくる。杉下のおかげで土師に借りができたこと、あのウイルスの件も気づいていたのではないかと問い詰め、早々に救助に向かわなかったことで、真相究明を自分の命より重視する気かと声を張り上げた後、実際には杉下は借りていなかった「蟻地獄図鑑」を持ち帰る。

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青木年男の受難
犯人からナイフを突きつけられる青木年男(テレビ朝日公式サイト)

青木年男、上層部からも捜査一課からも「あの青木だから」で片づけられるのには笑ってしまいます。しかも杉下右京から借りた本が「蟻地獄図鑑」などというのも、この人物らしさを感じさせます。またウイルスの警告が出る際には、恐らくそのことを知っていたと思われますが、犯人が慌てているのにしらばっくれる辺り、また冠城が心配して駆け寄っても、「寝かせてくださいよ」などと堂々と言う辺りも如何にもです。杉下を自分と同等に見たがるところは、中の人が同じという点ということもありますが、正にパペットホームズのベインズと一緒です。このベインズも物言いはねちっこくて時に嫌味で、しかもホームズを勝手に自分のライバルとみなし、ホームズと知恵比べまでやってのける人物ですので。

この回は、本人の自供のみで送検させてしまう神田北署と、それに疑いを持つ木村巡査の対比が描かれています。事の真相を知りたい木村は、自ら捜査に同行させてくれと頼むのですが、その木村が最後の最後で、琢也に犯罪を起こさせることになってしまいます。善意が仇となるということか、行き過ぎた正義感と言うべきなのか。結局金狼会の広瀬を刺したのは、相良ではなく、河野を呼び出した黒川の息子龍臣であることが判明しましたが、琢也の父直久は冤罪になるわけでもなく、重過失致死罪が重くのしかかることになります。

しかし冠城亘も内村刑事部長に対し、このことが衣笠副総監にばれたらなどと揺さぶる辺り、特命らしくなって来たものです。一方で土師太、この人物がまたどこか変わっています。組対5課の方から特命を覗き込んでいることで、初めて気づかれるわけですが、しかし土師にしてみれば「出戻り青木」に大いに恩を売れるので嬉しい限りでしょう。無論青木に取っては、それが癪で仕方ないわけですが。

ところで先日『麒麟がくる』の松平広忠が暗殺されるのと、この回の青木が、こちらもまた中の人が同じということもあり、ダブると書いています。これ、広忠が相手に連行されて、あれこれ駆け引きを持ちかけるような展開であれば、さらに似ていたのですが…あちらはちょっと呆気なかったですね。

それから先日、コロナウイルスによるテレワークに関するニュースで、ハッキングに注意するようにと、こちらは本物の警視庁サイバーセキュリティ対策本部の方が警告していましたが、どうにもこうにも『相棒』がダブってしまいました。

[ 2020/03/24 00:30 ] ドラマ 相棒 | TB(-) | CM(0)

杉下右京の花の里そしてホームズのパイプ

『相棒』シーズン18の最終回。杉下右京がスランプで、推理力減退症候群と言われてしまいます。これには「花の里」の不在が絡んでおり、甲斐峯秋が新しい店を紹介してくれて、最後はその店の女将と杉下、冠城の揃い踏みで幕を閉じます。

このシーズン18は特に、花の里に代わる存在と風間楓子にいくらか注目していましたが、前者の方は最終回になって解決されたようです。その前から、陣川公平が杉下と冠城を連れて行った「青びょうたん」だの、久々登場のヒロコママの店だのが登場していたこともあり、そろそろ出て来る頃かなと思っていたところです。ちなみに甲斐峯秋は、花の里は杉下右京に取って、ホームズのパイプのような物だと言います。

ところでそのホームズのパイプ、これはその名もずばりホームズのパイプ/Holmes' pipesという投稿で書いていますが、所謂ディアストーカーにインバネスで、大きなパイプをくわえるホームズのイメージが定着したのは、かなり後になってからです。この大きなパイプはキャラバッシュと呼ばれ、ホームズが活躍した当時はまだ存在せず、代わりにブライアーという、灌木でできたパイプが主流でした。キャラバッシュを使うようになったのは、後年ホームズのシリーズが舞台化された時に、パイプを目立たせる狙いがあったからといわれています。

Calabash-pipe.jpg


尚パペットホームズでは「ピロピロ笛」、つまり吹き戻しがパイプの代わりです。ホームズが落ち着いて考え事をしたい時に、この吹き戻しを吹く設定になっています。

『相棒』に戻りますが、杉下右京は、花の里の初代女将である宮部たまきが店を閉めた後も、今回のようなスランプ状態に陥っています。ちょうと神戸尊とコンビを組んでいた頃です。その後月本幸子がこの店を紹介され、二代目女将としてシーズン17まで登場しました。しかし私としては、彼に取ってのこの店の存在は、ホームズに取ってのパイプというよりは、「ハドソン夫人の料理」のような物だというイメージを抱いていたのですが。

それからスカイラインの冠城亘バージョン60秒完全版が、期間限定で配信中です。

飲み物-ホットウイスキー
[ 2020/03/20 00:30 ] ドラマ 相棒 | TB(-) | CM(0)

『相棒』に見るシャーロック・ホームズ

先日放送された『相棒』の、「善悪の彼岸」関連エピ(2週連続放送)で、マリア・モースタンという女性が登場します。しかも彼女は、自分の国(イギリス)では、マリアでなくメアリーだと言っており、どう考えてもホームズ正典の『四つの署名』に登場する、メアリー・モースタンにちなんだものです。そもそもこのエピ自体、かのスコットランド・ヤードの元警部である南井十(みない つなし)が登場しており、ロンドンでの殺人事件を模倣した部分もあることから、ホームズ色が強く、ストーリー自体は『緋色の研究』も踏まえているようです。

元々これは、前々シーズンの「倫敦からの客人」、前シーズンの「倫敦からの刺客」の続きで、南井十の集大成ともいえるもので、前の2作で起こった殺人事件の実態が明らかになって行きます。また南井はこの中で、加齢による脳の障害を患っており、そのため感情の抑制が不可能になったり、記憶が失われたりして行きます。これらの障害も、ジェファーソン・ホープの大動脈瘤を模したものと考えられなくもありません。さらにロイロットという男性が登場しますが、これも『まだらの紐』のグリムズビー・ロイロットからのものでしょう。

『緋色の研究』関連では、2015年元旦に放送された「ストレイシープ」もまた然りです。これも「善悪の彼岸」同様、紅茶に毒を入れるシーンが出て来ます。この場合のホープ的存在は「犯罪の神様」と呼ばれる飛城雄一で、練炭自殺の希望者を募り、富士の樹海でやはり自殺のために訪れた、新井亮一に動脈瘤のことを打ち明けます。この新井と、杉下右京と面識があった西田悟己とが、結局練炭を焚いていたテントから逃れ出て、後に新井は悟己を、その悟己は杉下を愛するようになるのですが、これに関しては別に投稿しています

飲み物-シャンパン2
[ 2020/02/09 23:30 ] ドラマ 相棒 | TB(-) | CM(0)

「ついてない女」月本幸子

 『相棒』に月本幸子が登場したのは、シーズン4の「ついてない女」からです。幸子の夫は、闇金である城代金融の仕事を任された司法書士でしたが自殺し、その後彼女は城代金融絡みのヤクザである、向島の情婦となっていました。そして夫の命日、幸子は向島の殺害を図り、自分は香港へ高飛びします。しかし向島を銃で撃った時に、コートに血がついてしまい、慌ててベンチコートを代わりに羽織って車に乗りますが、途中でその車の調子がおかしくなります。

その時、当時の「相棒」だった亀山薫が助け舟を出し、幸子は亀山の車で成田へと向かいます。無論杉下右京も一緒でした。しかし幸子は2人が警官であることを知り、身バレを恐れて新宿からリムジンバスに乗ることにします。しかも杉下は例によって、ベンチコートが他の服装と合わないことを指摘しており、幸子はリムジンバスに乗る前に新しくコートを買って、ベンチコートをバス停に残して乗車します。しかし杉下は、ベンチコートは忘れものだと言ってバスに乗り込み、そのまま一緒に成田へ向かうことになります。

バスの中の杉下は、幸子の言動を不思議に感じていました。幸子はヨーロッパに行くといっていながら、香港にも向かう予定でいたのです。これではかなりの強行軍です。もちろんそれ以外にも言葉の端々には、明らかに取り繕っていると思われる部分がありました。一方亀山は、そのベンチコートのロゴから、とある草サッカーチームのメンバーを調べていました。そしてチームのメンバーに、向島の名前を見つけます。

杉下はバスの中ということで、鑑識の米沢守も交えてメールで幸子の背景を洗い出しており、幸子も杉下が何をしているか薄々感づいていて、落ち着かない様子です。そして杉下に、自分はついていないのだと過去を語り始めます。その間に亀山は、向島の住所がダミーであることを知り、本当の自宅の所在地を聞くため城代金融に乗り込み、その結果向島の自宅へと足を踏み入れます。そして杉下のアドバイスにより、虎の毛皮の敷物をめくったところ、その下の貯蔵庫に、弾丸を浴びたもののまだ生きている向島を発見します。

バスが成田空港に到着し、幸子が搭乗しようというその時になって、携帯の電池が切れた亀山は、つけて来た城代金融の社員の携帯を使い、向島を見つけたことを伝えます。幸子の高飛びの計画はは水の泡と消え、またも自分はついていないといいますが、幸子が香港で接触するはずだった相手も、当局に逮捕されていました。寧ろ、日本の警察に逮捕されてよかったですよと杉下は幸子に言います。実際香港での逮捕は日本よりもシビアだろうと思われます-昨今の香港の映像は、それがエスカレートした状態に見えます。

後に幸子は刑務所の脱走騒ぎに巻き込まれ、出所してからはハウスクリーニングサービスの社員から、食品会社社長の間宮の家の家政婦となります。しかし間宮から求婚されたことに裏があると思い込み、警察を呼んだことでこの話は終わってしまいます。その後杉下の紹介で「花の里」を任され、昨シーズンの終盤で福祉関係の仕事に就くまで、女将として杉下、神戸、甲斐、冠城やその他警視庁関係者とも顔なじみになりました。しかし今後花の里はどうなるのでしょう。

飲み物-ホットココア
[ 2019/11/14 00:00 ] ドラマ 相棒 | TB(-) | CM(0)

『相棒』に見る『刑事コロンボ』

遅くなりましたが、まず台風の被害に遭われた方にお見舞いを申し上げます。

『相棒』シーズン6の「寝台特急カシオペア殺人事件!」について、「神隠しの山の始末」のあらすじと感想で少し触れています。都内で起きた爆破事件絡みで、新年早々容疑者を札幌まで護送するように命じられ、特命の2人が容疑者と共にカシオペアに乗り込みます。ちょっと『オリエント急行殺人事件』的な乗りで、空き部屋に仕掛けられたビデオカメラがかなり重要な役割を果たしています。その後函館で容疑者が下車しても一件落着とはならず、札幌に到着した後も容疑者が逃げ出したり、ホテルで爆破事件が起こりそうになったりと波乱続きです。ちなみにこの時のゲスト出演者で、後に『相棒』のレギュラーとなった人物がいますが、誰だかおわかりでしょうか。回答は後日お知らせします。

また同じ『相棒』のシーズン15、警察官となった冠城亘が再び特命に戻って来ますが、その第1回の「守護神」で、『刑事コロンボ』を参考にしたと思われる描写が登場します。まずネイリストの来栖初恵が、人を呪い殺したと言い、そのうち3人目の被害者の靴紐の結び方が不自然であると、杉下右京が見抜くシーンです。実は被害者は靴紐をイアン・ノットで結んでいたのに、見つかった時は普通の蝶結びになっていて、それは他人が靴を履かせて紐を結んだことを意味していました。コロンボの「自縛の紐」も、明らかに自分で結んだとしては不自然な結び方の靴紐から、誰かが殺したという結論に至ります。

それから弁護士がネイルサロンに入って来て、名刺を見せて去って行くシーンですが、初恵はそれに乗せられて、名刺の住所を訪ね部屋へ入ります。初恵の真意はその弁護士を殺すことにありました。しかしこれは杉下の罠で、部屋の中には家具さえもなく、特命の2人と捜一コンビが初恵を待ち構えていました。これもコロンボの「権力の墓穴」に似たようなシーンがあります。上司に容疑者の住所を故意にちらりと見せたことで、上司はその住所に行って逮捕しようとしますが、実はコロンボ自身が借りていた部屋であり、本当の容疑者である上司をおびき寄せるための策でした。

『古畑任三郎』がコロンボをベースにしているのは確かですが、『相棒』はコロンボやホームズを含め、その古畑をもベースにしています。これは関連本に記載されています。こういう種明かしがちらちらとなされるのは、観る側としては楽しみでもあります。

あと昔のネタをリメイクするのも結構やっていますね。こういうのを追って行くとまた面白いのでしょう。

飲み物-アイスティー
[ 2019/09/11 01:00 ] ドラマ 相棒 | TB(-) | CM(0)

『相棒』第14シーズン第19話「神隠しの山の始末」

「神隠しの山」の後編、あるいは完結編ともいうべき「神隠しの山の始末」です。一見別々に見える村井流雲の失踪、そしてキャンプ場での斗ケ沢雄輔殺人が、ここで結びつきます。その黒幕となっていたのは意外な人物でした。

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斗ケ沢の遺体はキャンプ場で発見された。シーズンオフのこの時期、キャンプ場は管理人がたまに回るくらいだった。しかも犯人以外の物と思われる足跡が2つ見つかり、複数犯の可能性も出て来た。おまけに杉下もまだ見つかっていなかったが、杉下は彼なりに事件を追っていると冠城は断言する。また杉下が連絡を取ろうとした携帯が、電話回線工事業者の物であることもわかった。山梨県警の望月と冠城は、村井流雲の工房に聞き込みに行くが、喜久子は知らぬ存ぜぬで、電話工事会社の作業員もすぐ帰ったと答える。

2人は家の中を見て回り、冠城は窯の周囲まで目を光らせたため、誰かを焼いているとでも思っているのかと鉄朗から訊かれてしまう。翌日冠城は村役場へ行き、村井関連の展示コーナーを見ていて、前園になぜ当初は失踪事件として扱われたのかと訊くが、それは遺書とも取れる置手紙があったからだと前園は答える。これといい、神隠しとしてマスコミが騒ぎ出した件といい、村に取っては大きな迷惑だと前園は不満げだった。その頃斗ケ沢殺人事件の第一発見者が、かつて斗ケ沢と親交があった里実の夫で、キャンプ場管理人の亮であったことがわかり、夫婦で宝石目当ての共謀という線が濃厚になる。

杉下と電話工事会社の橘翔太は、工房の倉庫に監禁されていた。杉下は何とかしてさるぐつわと手足の戒めをほどき、翔太の縄も解く。杉下は、工房には以前もう1人住人がいなかったかと尋ねたが、翔太には心当たりがなかった。しかし電話回線を光回線に変える時に、ゲームをしたいと峰田夫妻が言っていたのを覚えていた。翔太は、あの夫婦はゲームをやるような感じではないと言う。杉下が峰田家で気が付いた時のTVと、囲炉裏にあった吸い殻は、やはり斗ケ沢があの家にいたという証拠に他ならなかったのである。

2人は逃げ出そうと戸を開けようとするも、外から鍵がかかっていた。そこで窓の鉄格子を外そうとしたところ、1個の壺が落ちて割れ、中には人骨が入っていた。作業を続ける杉下に翔太は、麓まで下りるのに近道を通ることを提案する。リスクが大きいと杉下は言うが、これは翔太がかつて工事でケーブルを引いたことのある道だった。その頃里実は鈴木と名乗っていた斗ケ沢が死んだことを、望月と冠城から知らされる。里実は昨日は買い物で甲府に行っていたと言い、レシートを証拠として手渡す。そして無為に過ごす夫に、借金を返す当てができたと話していたのは、そのことと関係があるのかと詰め寄り、その現場を望月と冠城に見られて警察へ連行される。里実の左の薬指には、斗ケ沢からもらった指輪があった。

里実は気分が悪いと言い出し、トイレに行ったため亮が先に取り調べを受ける。亮はキャンプ場を回ったのは先週だし、自分はやっていないと言う。そこへ前園が血相を変えて飛び込んでくる。更生すると決めた亮にこの仕事を任せたのは前園だった。しかしその時里実が飛び降り自殺を図ったことがわかる。幸いにして一命は取り留めたが、前園はキャンプ場をオープンしないことを決めていた。そして工房では、杉下と翔太のことはとても隠しおおせないと喜久子が言い、こうもつぶやく。
「この山はやっぱ呪われてんだよ」

その杉下と翔太はなおも逃げるための準備をしていた。翔太は夫婦のことはよく知らないが、祭りとか会合に誘っても顔を出さなかったと言う。杉下は古いアルバムを偶然見つける。すると翔太が戸が開いていると言い、2人は力を込めて戸を押し開けて外へ出た。鍵は誰かが開けていたのだった。長距離を走れない杉下は、その場で時間稼ぎをするつもりで、翔太1人が警察に通報するため麓へ走った。里実の部屋でも捜索が行われ、斗ケ沢の指紋が検出されたが、斗ケ沢は正体を明かしていない里実に救いを求めておらず、東京からタクシーで山に戻った時、山道口で下りて公衆電話からある人物に連絡を取っていた。また亮と里実は、別々の理由で一昨日甲府へ行ったのが明らかになる。里美は妊娠していることを確認しに行き、亮は宝石を換金していた。

亮が死体を発見したのは、数日前の大雨の日に、雨が気になってキャンプ場を回った時だった。そして斗ケ沢が持っていた宝石だけを手に入れ、換金したのである。さらに斗ケ沢が公衆電話で連絡を取った相手が判明した。その頃杉下は峰田夫妻の前に現れ、倉庫にあったアルバムの写真を見せる。それには村井の書を、喜久子が書いている様子が写っていた。つまり遺書が偽物であった点で、この事件は振り出しに戻った。斗ケ沢がこの山に最初に逃げ込んで来た時、村井が実は死んでいたことを悟られたため、夫妻は斗ケ沢を匿うしかなかった。ほとぼりがさめて斗ケ沢は宝石を換金しようとするも失敗に終わる。そして2度目に山に戻って来た時、工房には電話が通じないこともあり、公衆電話で協力を頼んだのである。

里実は斗ケ沢に妊娠のことを知らせていた。それを聞いた斗ケ沢は、東京で換金を試みるが失敗し、里実も自分がかなり甘い気持ちでいたことがわかって、バカバカしくなって自殺しようとしたと話す。冠城は、そんなことで自殺する方がバカバカしいと言うが、父親は犯罪者であるこの子と、この狭い村でどうやって生きて行くのだと涙を流す。その時翔太から110番通報が入り、パトカーが工房へと向かった。

夫妻が杉下を匿ったのは、斗ケ沢のことを聞き出せないかという思いだからだった。しかし杉下はなぜ自分を殺さなかったのか、あるいは人殺しができないのか、村井先生のことも誰かに頼まれたのかと尋ね、人骨は村井の遺骨であることを明言し、さらに自分の口で話してほしいと2人に言う。その言葉に鉄朗は、鉈を振り下ろそうとするができなかった。そこへパトカーが数台到着する。杉下は冠城がもう少し早く来るかと思っていたと言い、話すべきことがあると言って、いつもの服に着替え、冠城と共に村役場へ向かう。そこで冠城はテレビ関係者から、心霊特番「神隠しの村」は実は村の要請で作ったと聞かされたことを明かす。そして杉下は、夕霧岳の土が陶器に向いておらず、村おこし推進の前園との間に齟齬が生じたことを明らかにする。

峰田夫妻も同じことを伊丹たちに話していた。それがもとで前園は村井とつかみ合いになり、はずみで村井を殺してしまったのである。前園は重労働ばかり押し付け、名声は自分が持って行く村井に不満のある弟子たちを支援する代わりに、遺体の処理をさせる。そのことには峰田夫妻も呵責を感じており、自分たちの師匠を焼いたからには、ここで供養を続けるしかなかったと鉄朗は伊丹たちに話す。また喜久子も、先生がいなければ自分たちは結局三流の陶芸家でしかないと口にする。

結局前園は自分たちの秘密を守り、人を寄せ付けないために、神隠しの山という嘘の情報を広めていたのだった。また斗ケ沢への資金も提供し、その斗ケ沢を殺害したのも前園だった。前園は東京でまたも事件を起こしている斗ケ沢を、これ以上匿えないと思い、首を絞めて殺したのだった。また捜索隊が工房の方に行かないように指揮をしていたのも前園だった。前園は言った。
「村を守るためだったらなんだってやるよ」
しかし杉下は、これは村への背徳だと言う。

鉄朗は連行間際、倉庫のカギをはずしたのはお前だなと喜久子に言う。さらにやっと山を下りられると言って、2人でパトカーに乗り込んだ。その後東京に戻った杉下と冠城は花の里に行き、冠城はゴルフコンペの際の地元のお土産だといって、杉下にある物を渡す。それは村役場にもあった、イワナをモチーフにしたマスコット、イワナっちの皿だった。おそらく助役が発注して、あの夫婦が焼いた皿なのだろう。

杉下は米沢が、都市伝説を真に受けて山に入らなかった、不届き者がいたと言っていたことを話す。無論それは冠城のことだった。しかし冠城は5年前のキャンプで目にしたのは斗ケ沢だったとわかり、すっきりしたと言う。しかし斗ケ沢があの山に入ったのは、それより後の3年前だった。

無人の工房で時計が鳴り響く中、窯の前に1人たたずむ白いスーツ姿の老人がいた。

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黒幕は村の助役の前園でした。一見被害者のように見える人物が、村井の死を隠すために嘘の情報をまき散らし、マスコミを使って拡散していたわけです。しかも村井のみならず、斗ケ沢も殺害していました。何よりも村井の秘密を知り、峰田夫妻を脅して居座り続けたのが斗ケ沢であり、しかも東京で発砲事件を起こした以上、前園としてもこれ以上匿いきれなかったのは事実でしょう。しかしこれを村のためと言うのは詭弁であり、杉下から背徳であると反論されます。しかし冠城がこの5年前に見たというのは何だったのでしょうか。それを裏付けるかのように、ラストの部分で白いスーツの村井流雲が登場します。

一方でキャンプ場の管理人である遠藤亮ですが、あまり仕事をしているようにも見えず、別居中の妻の里実が大衆食堂とスナックで働き、自分の借金を一部肩代わりしているのとは対照的です。これなら里実が斗ケ沢に惹かれる気持ちもわからなくもないのですが、しかし斗ケ沢に惹かれた自分を後になって責め、こんな狭い世界で犯罪者の子供を産むことに、何の希望も見いだせないと言う辺り、村を守ると言う前園とは対照的です。斗ケ沢にある意味利用された側と、神隠しを裏付ける存在として利用した側の違いともいえます。あと電話回線工事会社の橘翔太、地味ながらなかなか存在感がありました。

ところでテレ朝の公式サイトには『相棒』シーズン18の情報がアップされています。何でも今回は20周年(土曜ワイド劇場時代を含む)ということで、杉下右京が行方不明になるという、かなり凝った初回スペシャルのようです。というか、2014年の劇場版『巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ』に似ているような気もします。
ちなみにリンク先の記事中に『寝台特急カシオペア殺人事件!』が登場しますが、これは結構好きなエピソードの1つです。寝台特急という限られた、しかも常時移動している空間の中での事件というのに非日常的性を感じるからでしょうか。

[ 2019/09/05 00:15 ] ドラマ 相棒 | TB(-) | CM(0)

『相棒』第14シーズン第18話「神隠しの山」

『相棒』で時々登場する、人里離れた場所での犯罪です。この次の回の「神隠しの山の始末」と連続して一話となっています。

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都内のある質屋で、男が宝石を売りさばこうとしていたが失敗し、店主は警察に通報する。店内にはその男、斗ケ沢雄輔の指名手配のポスターがあった。斗ケ沢は店から逃げ出し、警官ともみ合いになって威嚇射撃した後姿をくらます。東京と山梨の県境にある夕霧岳に逃げ込んだということで、警視庁は大規模な山狩りを行う。その中には捜査一課の伊丹と芹沢、そして杉下右京の姿もあった。斗ケ沢は3年前立川の宝飾店で宝石を盗み出し、警官から銃を奪って姿をくらませていたが、その時も夕霧岳に逃げ込んでいた。

一方冠城亘は、法務省の上司日下部彌彦らとゴルフのコンペに来ていたが、生憎の雨でコースを回れなかった。冠城は日下部に、夕霧岳は行方不明者が多く、神隠しの山であることを話す。そして捜査の途中木の幹に弾痕らしき跡を見つけた杉下は、単独で奥の方へ入り込み、祠を発見する。しかしその前に置かれた骨壺には、何も入っていなかった。そして杉下は崖から足を滑らせてしまう。その翌日冠城が渡したい物があると言って伊丹らを訪れる。杉下の携帯に掛けても通じないため、まだ捜査本部にいると思っていたのだった。そこへ角田六郎から冠城に、特命のコーヒーメーカーが壊れたという知らせの電話が来る。こちらもやはり杉下と連絡が取れていなかったのだった。

その杉下はとある民家で目を覚ましていた。ねんざした左足をかばうように起き上がり、囲炉裏に吸い殻があるのを見つける。その後外へ出た所、立派な登り窯があるのを発見した。ここは陶芸家村井流雲の工房だったのである。しかし岩井は7年前に失踪し、弟子たちも山を下りて、今は峰田鉄朗と喜久子の夫婦だけが残っていた。喜久子は、村井の目指す陶器を作るため、弟子たちが一日中働いていたこと、村井は生まれつき心臓に持病を抱え、いつ死んでもおかしくなかったことを話す。杉下は、村井の作品のテーマは死であることを持ち出し、よく知っているねと喜久子を驚かせる。

その頃杉下を陰から見ている男がいた。喜久子の夫鉄朗だった。杉下は手洗いを借りたいと言って母屋へ行き、電話で連絡がつかないかと試してみるが、喜久子によれば雷で電話が通じなくなっており、しかも公衆電話を使うには麓まで行かなければならなかった。さらに杉下は台所で3人分の茶碗と箸を見つけ、しかもゴミ袋の中に自分の警察手帳があるのを見つける。近寄ろうとする杉下に鉄朗が声をかけるが、喜久子が間に入り、鉄朗は態度を軟化させる。同じ頃冠城は捜査本部へ出向き、夕霧岳の都市伝説である、白いスーツの男の幽霊が道案内をするという話、さらに以前甲府法務局員とキャンプに行ってそれに出遭った話をし、伊丹や芹沢、米沢たちから呆れられる。

村の大衆食堂では、遠藤里実が接客をしていた。するとそこに別居中の夫の亮が現れる。食堂のTVでは、斗ケ沢が夕霧岳に逃げ込み、警視庁が捜査を行っているというニュースが流れていた。冠城は霧谷村役場を訪れ、助役の前園桔平に会う。前園は例の都市伝説にうんざりしていた。冠城が村井の失踪の話を振ると、マスコミが神隠しだなんだと騒ぎ立てて、陶芸の里も何もあったもんじゃないと吐き捨てるように言った前園は、実は村井を夕霧岳に呼んだ張本人だった。夕霧岳の土はいいということで工房を開き、これで移住者も増えるかと思っていたがその村井の失踪、さらに斗ケ沢が逃げ込んだことなどで、村のイメージはがた落ちになっていたのである。

その頃杉下は峰田夫妻と夕食を摂っていた。その時3人分の食器について触れた杉下に、喜久子はあんたの分だよと笑う。夫婦はタバコを吸わなかったが、吸い殻は来客の物だとも言った。食事の後、杉下は村井の書斎を見たいと言う。村井がいた当時のままにされていて、さらにスーツもクリーニングに出されていることに感心し、このスーツを借りたいと杉下は言い、また村井の写真がいつもスーツ姿である理由を尋ねる。喜久子は村井が自分では何もできず、弟子たちがすべてやっていたことを打ち明けた。杉下はさらに、斗ケ沢がここに忍び込んでいたのではないかと尋ねる。それを鉄朗が陰で訊いていた。杉下は途中で話を打ち切るものの、鉄朗は杉下が危険であるとにらみ、警察手帳を釜にくべてしまう。

山梨県警も協力して、杉下の捜索が始まった。刑事たちはAとBの2つの班に分かれて捜索することになったが、冠城は山へ入らず、里実の事情聴取に同行することになる、里実は以前村のスナックで働いており、斗ケ沢は宝石商の鈴木と名乗って、月に1度の割合で店に来ていた。そして実は盗品である宝石を里実にプレゼントしていたが、里実はそれは売ってしまったと言う。また昨日のアリバイを聞かれ、体調が悪くて寝ていたと答える。実は里実の夫の亮は借金まみれで、昼間から酒を飲むような自堕落な日々を送っており、しかも里実がその借金を一部肩代わりしていた。

杉下が村井のスーツを着て現れた。鉄朗と喜久子はは一瞬村井かと錯覚する。一方で当然ではあるものの、杉下の捜索は難航していた。鉄朗は杉下がすべてを知っていることに気づき、鉈を手にして杉下を殺そうとするが、杉下は工房でろくろをいじっていた。そして工房にやって来た鉄朗に、なぜ嘘をつくのかと言い、斗ケ沢が銃で脅しているのなら怖がらなくていい、銃弾はもう残っていないと教える。またもし斗ケ沢が死んでいてそれに関わっていたのなら、自首すべきだと諭す。

さらに杉下は、最近は村井の継承者であるにも関わらず、それらしい作風が失われて、大量生産の器ばかりになったこと、そして地元の土ではなく信楽の土を使っている点を指摘する。知られたくない点を突かれた鉄朗は、杉下ともみ合いになる。その頃電話が復旧したのを確認するため業者が来ており、杉下は強引にその業者の車に乗り込んで山を下りるように頼む。しかしトラックで鉄朗が後を追い、車は道のわきに乗り上げる。杉下は工事担当業者の橘翔太の携帯を借り、連絡を取ろうと試みるが、鉄朗が杉下をつかまえ、2人は斜面を転げ落ちる。

その頃、捜索から帰った伊丹たちに知らせが舞い込む。斗ケ沢の死体が発見されたのだった。そして里実は家で、売ったと嘘をついた指輪を眺めるが、その時亮が里実を訪ねて来た。

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本来斗ケ沢を追っていたはずが、いつの間にか行方不明になった杉下まで探すはめになり、しかも杉下が助けられた夫婦が意外な秘密を握っていたことが明らかになります。ただし本当の黒幕は、この夫婦ではありませんでした。

[ 2019/09/04 01:00 ] ドラマ 相棒 | TB(-) | CM(0)

『相棒』第14シーズン第7話「キモノ綺譚」

今日は『相棒』関連をアップします。『葵 徳川三代』については、明日以降となります。

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ある日杉下右京は、月本幸子の身柄を受け取りに警察署へ赴いた。彼女は風呂敷包みを持ったまま、あるマンションの前を何往復もしていて、不審者と思われて通報されたのだった。その包みの中身は女物の着物だったが、裏地をめくったところに、奇妙なメッセージが口紅で書かれていたのである。

「いつかおまえがそうしたように、あたしもおまえを殺したい。でも、できない。もどかしい…。幸子」

月本幸子はそれを元の持ち主に戻そうとするも、何と言っていいかわからず、迷っていた所を通報されたのである。杉下はこの背景を調べ始め、この着物を売ったのが着付け教室の講師の上條愛であることを突き止める。

杉下と冠城は愛に会うが、当の愛は、双子の姉妹の幸子が書いたものだろうと言う。冠城は名刺を裏返し、姉妹の母の絵美がやっているクラブの連絡先を書いてくれと言う。上條幸子はそこで働いていた。2人はそのクラブ「アルヘナ」で幸子を待ったが、その日、店では今日子と名乗っている幸子は現れなかった。そこで冠城は、近所の店で食事をしてから出直したいと言い、絵美に頼んで名刺の裏に、店の名と地図を書いてもらう。

そして翌朝、マンションの部屋から当の幸子が弟の吏玖(りく)を連れて現れる。待ち構えていた杉下と冠城に対し、幸子はごみを捨てた後、吏玖を学校に送り出してから2人と会う。幸子は例の文章に対し、単なるポエムであると答える。そこで冠城は三度名刺を裏返し、お得意のポエムでも書いてくれと幸子に頼む。幸子はショートヘアの愛と違ってウェーブのあるロングヘアだったが、それはウィッグのようだった。自宅に戻った幸子は、愛との交換日記を書き始める。部屋は2人で1室を使っていた。

鑑識の米沢が調べたところ、着物の文章の筆跡と幸子の筆跡が一致した。幸子といえば、花の里の女将も「さちこ」だと米沢は言い、杉下はそれが気になったようで部屋を出て行ってしまう。また冠城は、杉下と幸子の関係を怪しむ。ともあれ杉下はその夜花の里に行くが、月本幸子が小学校時代の双子の男の子の話を始め、クラスは別々だったが、時々入れ替わっていたと話す。愛と幸子は見かけはあまり似ていないと杉下は言い、大人になれば髪型や服装は別々になるという彼女の言葉にあるものを感じ取る。

杉下は幸子は実は愛で、髪や化粧を変えていただけではないのかと疑う。しかし特命に来ていた角田は、筆跡が違うのだから別人だろうと言っていた。そこへ米沢が来て、それぞれの名刺についていた指紋が全く同じだったと伝える。双子でも通常指紋は異なるものであり、それが全く同じであるということは、愛が幸子になりすましていたとしか考えられなかった。しかしここで引っ掛かるのが、2人の筆跡が明らかに異なる点だった。

そこで2人は吏玖に訊いてみることにするが、杉下は子供が苦手だった。それでも下校する吏玖を追跡するが、吏玖は2人を巻こうとする。なかなか思うようにならない吏玖に駄菓子を買ってやり、何とか聞き出したところ、幸子はメガネ、つまり杉下が好きだと言い出す。昨日会った幸子は杉下のことをメガネさんと呼んでいた。やはりあれは幸子だったのである。吏玖は道草しているとママから叱られること、ジュン君が来るからという理由で帰ってしまう。

吏玖は愛にいわれて、嘘をつくようにさせられているのではないかと2人は疑い始める。しかし戻って来た2人を待っていたのは、捜査一課のコンビだった。吏玖にあれこれ聞いたことで母親の絵美が警視庁に抗議を入れ、その結果2人に監視がつくことになった。特に法務省から預かっている冠城が監視対象だったため、杉下は単身で出かけ、暇になった冠城は自分の名札を作るが、杉下のよりもかなり大きめだった。特命には染まらない方がいいですよと言う伊丹の言葉をよそに、冠城はコーヒーを入れようとするがその時携帯の着信音が鳴る。

電話は月本幸子からだった。伊丹たちがまだいたら、女友達からの電話のように振る舞ってほしいと言って、杉下の言葉を伝える。それは6時に、ロイヤルタワーホテルのラウンジで落ち合いたいということだった。杉下は冠城と手分けをして、冠城は絵美が経営するアルヘナ、自分は自宅マンションに行って、2人が同一人物か否かをはっきりさせるつもりだった。同一人物ならどちらかが不在だからである。杉下は自宅のインターフォンに出た吏玖から、愛は今幸子だからどこにいるか知らないといわれる。同じ頃、冠城は激怒した絵美に平謝りだったが、そこへ今日子を名乗る幸子が現れる。

杉下は上條家に上がり込み、双子の姉妹の部屋を見ていたが、吏玖とゲームの続きをやるようにせがまれる。杉下は「ジュン君」について訊くが、どうやら学校の友達でも親戚でもなさそうだった。ママに叱られるからと、吏玖はその話をやめてしまう。そこへ冠城から連絡が入り、店の幸子は紛れもなくあの時の幸子であると言われた杉下は、自宅には愛はいないと伝える。2人は深夜、家に戻って来た絵美と幸子を出迎えて、多重人格、つまり解離性同一性障害の話を始める。ある時は愛、ある時は幸子である存在の姉を、吏玖は物心ついた時から受け入れていた。

2人の筆跡が一致しなかったのも、吏玖が嘘をついていたわけではなかったのも、愛の解離性同一性障害がそもそもの原因だった。そのため部屋には、愛と幸子それぞれの生活感が存在していたのである。愛と幸子は今も戸籍上は存在しているが、実は愛は子供の頃、誤って幸子を殺してしまっていた。絵美はもし幸子が蘇生しない場合、愛が罪の意識を持って生きるのを恐れて、幸子の遺体を竹林の奥に埋め、幸子は遠い親戚の所へ行ったと言い聞かせてすぐに転居し、その後も2人の娘がいるように見せかけて暮らしていたのである。その中で愛の中に幸子の人格が芽生えて行った。

幸子が交換日記をつけていたのも、愛の時と幸子の時、それぞれ記憶を残しておくためだった。愛はある程度2人の存在をコントロールできるようになり、例の文章も幸子の人格になっていた時に書いたものだったのである。愛は着物を返してほしいと言い、幸子もそれに応じた。愛が幸子を死亡させたことは子供ということで罪に問われず、絵美の死体遺棄も時効になっていた。しかし幸子の死亡届未提出は、法に触れるかもしれないと杉下は話す。

解離性同一性障害には治療が必要だが、今は折り合いがついていると愛は答える。杉下はこの場合、成人女性であっても幼い男の子の人格が現れると言い、ジュン君は何者かと尋ねるが、愛はママに叱られるからと言って去って行く。その後吏玖はジュン君とゲームを楽しむが、そのジュン君はまぎれもなく愛自身だった。

後日、出勤して来た冠城は、自分の名札が杉下のと同じ大きさに削られているのに気づく。しかし右京はこう言った。
「不統一は精神衛生上よくありません」

************************

以前、サヴァン症候群を取り上げた『相棒』第7シーズン最終話「特命」をご紹介したことがあります。今回も精神疾患絡みですが、こちらは解離性同一性障害です。この疾患は、自分以外の人格が複数現れる、所謂多重人格と呼ばれるものです。主人格と交代人格があり、この場合愛が主人格、幸子とジュン君が交代人格であると考えられます。実際、交代人格が現れた場合はこのエピのように筆跡とか、あるいは嗜好や言葉遣いも変わるといわれています。また交代人格の時の記憶が、主人格に戻った時には途切れるため、この中で愛と幸子が交換日記をつけていることは納得できますし、さらに異なる人格であるため、実際に2人が暮らしているかのような、それぞれの生活感が部屋の中に現れることもうなずけます。ちなみにアルヘナとはふたご座の恒星のことです。

ところでこの中で、吏玖に事情を聞こうとした杉下がこう言います。
「(子供は)理屈が通用しない、時として意表をつく行動に出る」
だから苦手だというわけですが、これは正に『ガリレオ』の湯川准教やミス・シャーロックと同じです。無論湯川のように、蕁麻疹が出るほど苦手というわけでもなく、ミス・シャーロックのように、真っ向から対立するわけではなさそうですが。その杉下が、不統一は精神衛生上よくないと言い切るのはむべなるかなです。

[ 2019/08/25 23:30 ] ドラマ 相棒 | TB(-) | CM(0)
プロフィール

aK

Author:aK
まず、一部の記事関連でレイアウトが崩れるようですので修復していますが、何かおかしな点があれば指摘していただけると幸いです。それから当ブログでは、相互リンクは受け付けておりませんので悪しからずご了承ください。

『西郷どん』復習の投稿をアップしている一方で、『鎌倉殿の13人』の感想も書いています。そしてパペットホームズの続編ですが、これも『鎌倉殿の13人』終了後に三谷氏にお願いしたいところです。

他にも国内外の文化や歴史、刑事ドラマについても、時々思い出したように書いています。ラグビー関連も週1またはそれ以上でアップしています。2019年、日本でのワールドカップで代表は見事ベスト8に進出し、2022年秋には強豪フランス代表、そしてイングランド代表との試合も予定されています。そして2023年は次のワールドカップ、今後さらに上を目指してほしいものです。

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