今回から再び本編です。やはり本編を観るのはいいものですーというか、スペシャルにもう少しひねりを利かせてほしいのですが。それからOPも一部変わり、後半突入という雰囲気が漂って、吉之助にも変化が訪れます。
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吉之助は沖永良部島から再び薩摩に戻って来た。国父久光は吉之助を薩摩に留め置くつもりだったが、大久保一蔵が藩主茂久に口を利き、吉之助は上洛することになった。その頃西郷家は吉之助の遠島のあおりを受け、家を売り払って隣町の借家へ転居していた。祖母のきみも他界しており、吉之助は弟たちや妹の琴に礼を言う。その同じ日に海江田武次や大山格之助、そして村田新八らが酒を持って訪れた。吉之助は京で一蔵に会い、民の窮状を救うための上申書を久光に提出するつもりでいた。その夜吉之助は例の紙と斉彬の脇差を並べ、天命に従って生きることを誓う。
戻ってから5日目で京へ向かう途中、吉之助と新八は糸に出くわした。薩英戦争で糸の実家に火が回ったことを知った吉之助は、何かあったら言ってくれと伝える。糸はしばらく歩いて振り返り、吉之助を見送るのだった。そして到着した京は荒れ果て、会津と組んで長州を追い出した薩摩に対し、長州勢が罵詈雑言を浴びせていた。薩摩藩定宿の鍵屋にも、薩摩をののしる言葉がいくつも貼られていた。そんな時にひょっこり現れた吉之助に、お虎は嬉しさを隠せずにいた。吉之助は鍵屋の主人に迷惑をかけていることを詫び、一蔵がいる繁の家へ向かう。
そこで吉之助と新八は、一蔵が畳回しの芸を披露しているのを見て驚く。無論これには理由があった。大名による合議制の形で、参預会議が開かれたのはよかったが、中川宮主催の酒席で、泥酔した一橋慶喜に芋呼ばわりされた久光は、怒りをあらわにした。さらに慶喜自身も開国か攘夷かを決めかねており、この会議は紛糾していた。しかも久光は帰国するつもりでいた。このままでは薩摩の立場が危うくなると踏んだ一蔵は、畳回しをして供回りをつなぎとめる策を取ったのだった。芸妓のおゆうは、この芸で手を傷めた一蔵の手当てをし、胃薬を渡す。
吉之助は薩摩藩邸を訪れた。久光は煙管の吸い口を噛みながら、面白くなさげに吉之助とやり取りをするが、この男の必要性だけは理解していた。その後吉之助と新八は、慶喜が滞在している若州屋敷を訪れ、久光との会見を望むものの、家臣の平岡円四郎から門前払いを食らう。屋敷周りには隠密がうろついていたのだった。一旦鍵屋に戻った吉之助は、女性が訪ねて来ていることをお虎から聞かされる。お虎は吉之助の思い人ではないかと不満げだった。彼女こそかつて磯田屋にいたふきで、今は慶喜の側室となっていた。ふきは慶喜の手紙を持参しており、繁の家で会いたいという旨が書かれていた。
繁の家では慶喜が、例の遊び人風の格好で芸妓たちの絵を描いていた。そして二人きりで酒を酌み交わそうとするが、吉之助は攘夷か開国か、その決断から逃げてはいけないと諫める。慶喜自身孝明天皇の御前で、すべては自分にお任せをと奏上したばかりだった。吉之助は徳川家、諸藩共々手を組んで民のために政をすべきと言い、慶喜は斉彬に似て来たなと洩らす。こうして久光と慶喜の会見実現と思ったのも束の間、久光は帰国してしまう。さらに吉之助は軍賦役兼諸藩応接係の役目を与えられる。さらに平岡が、慶喜の身代わりに殺される事件が起きた。
平岡は駕籠に乗り込むところを斬られており、慶喜はこの暗殺にひどく怯えた。そして以前屋敷の近くにいた乞食が、この時もいて暗殺の有様を目撃していた。一方吉之助は久光が帰国したことに関し、慶喜に詫びを述べに行く。また平岡の急逝への悔みも述べた。そして、自分が軍不易諸藩応接係の役目に就いたことを話すと、慶喜は舌を噛みそうな名だと笑みを浮かべる。そして吉之助に対して、薩摩藩と手を携えて行きたいとも言うが、その目の奥には何か不気味なものが漂っていた。慶喜が部屋を出た後、吉之助は何やら不安な気持ちになった。
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まず本編の冒頭で、今後重要な存在となる人々が紹介されます。すなわち
岩倉具視
坂本龍馬
勝海舟
この3人ですが、なぜか桂小五郎だけがいません。実は桂は既に番組中に登場していると思われます。若州屋敷の近くにいたぼろをまとった男、あれが恐らくそうでしょう。クレジットが出ないのは、顔出しもなくセリフもなかったせいもあるかと思われます。
それから平岡円四郎が登場します。それともう一人、中江雪江(ゆきえ/せっこう)も出て来ます。あまり馴染みのない名前ですが、平岡はドラマにあるように一橋家の家老、そして中江は松平春嶽の家臣です。この中江を演じていたのが、一昨年『真田丸』で片倉景綱を演じていたヨシダ朝さんですね。この人物は橋本左内や由利公正と共に、福井藩の藩政改革を行い、種痘の普及にも努めたといわれています。
しかし吉之助が、あのcangoxinaの紙、まだ持っていたとはちょっと驚きでした。恐らくこの大河では、終生身に着けているのではないかと思います。しかしこの人も遠島で苦労したせいか、それまでとは違った雰囲気になりつつあります。それと大久保一蔵の畳回しですが、実はこれはこの人の持ち芸というかおはこでした。随分変わった芸といえばそうですし、あの大久保がこんなことをしたのかといささか驚きでもあります。それにしても大山や海江田、村田たちが酒を持って西郷家に集まるシーンですが、あれは酒を薄めていたのでしょうか。
ところでここに来て、それぞれの登場人物と、彼らを支える女性の構図が出来上がりつつあります。
吉之助-お虎
一蔵-おゆう
慶喜-ふき
後々桂小五郎と幾松、坂本龍馬とお龍も加わることになりそうです。一方で吉之助が京へ上る途中で糸に出会うのは、何やらフラグめいたものがあります。しかし糸の走り方に、どこか『JIN-仁-』の咲とダブるものを感じてしまいます。
それから久光が帰国を決めた後吉之助に会い、軍賦役兼諸藩接待係を命じて退室する際、何やら歌っています。実はこれは薩摩琵琶の曲で『迷悟もどき』の一部分です。実際はもっと長いのですが、大体半分くらいのところで
されば古人の言葉にも
聖人は人を謗らず
という部分があります。こういうのをさりげなく入れて来ますね。
(2018年7月18日加筆修正)