第15回と第16回のあらすじと感想です。
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第15回
天文23(1554)年、道三は出家した。正式に道三を名乗るのはこれからになる。家督は義龍(高政)が継ぐことになり、内政に力を入れるように見えたが、その実信長と敵対する織田彦五郎や信安に手を回していた。道三と小見の方の子である孫四郎は危機感を覚え、光秀に相談するが、光秀はこれに反対し、孫四郎をがっかりさせる。その孫四郎は姉の帰蝶と連絡を取っていたおり、義龍に取ってそれは面白いことではなく、尾張に言って帰蝶にくぎを刺すように光秀に頼む。
光秀はこのような状態で、なぜ家督を譲ったのかを道三に尋ねるが、道三は力があれば生き残り、弱い者は淘汰されると光秀に教える。織田家の内紛も、信長が力があれば勝つだろうと睨んでいた。それを裏付けるかのように、尾張守護の斯波義統が彦五郎の家老坂井大膳に襲われ、さらに信長の叔父信光も帰蝶と密談を行った後、彦五郎を謀って殺してしまう。清須城はあっけなく信長の物となり、後は岩倉城を残すのみとなった。
道三の信長を見る目は正しかった。さらに孫四郎は祝いの名馬を尾張に贈る。この知らせは駿府にも届き、駿府にいた望月東庵もこれを知っていた。そして駒は藤吉郎につきまとわれていた。藤吉郎は家来の出自をいとわない信長に仕えようと本気で考えていた。一方で側室の子義龍の家督継承に異を唱え、孫四郎が尾張の支援のもと、家督を継ぐ動きもあった。しかし孫四郎とその弟喜平次は、仮病を使って部屋にいた義龍から殺されてしまい、道三はその死を嘆く。
第16回
道三は美濃北部の大桑城へ向かった。稲葉山城に別れを告げたということは、単なる隠居でなく、義龍を敵とみなしたということだった。これは明智家をも揺るがし、光秀は尾張に向かって帰蝶と会い、孫四郎をそそのかした帰蝶もよくないと指摘する。さらに、道三に味方することは、義龍との関係が悪化するだけなのでやめるように言うが、帰蝶は、これは美濃の中だけではとどまらないと指摘していた。
しかも帰蝶は光秀が孫四郎に反論したことから、すげなく光秀を追い返す。これを隣で聞いていた信長は、光秀の言うことも理解しており、道三が義龍とその家臣のような、多勢の相手に戦を仕掛けても無理であるとわかっていた。その頃駿河では太原雪斎が世を去り、人質となっていた松平元信は、東庵が豆を煮ているのを見て近づいてくる。そこへ菊丸が薬草を持って東庵に会いに来る。駒は美濃の国内情勢に話題を変えるが、元信もそれを知っていた。駒は光秀も巻き添えになると思い、駿府脱出を図る。
その頃光安は義龍の宴に参加し、何とか取り入ろうとしていた。光秀は義龍に、戦を仕掛けるのはやめるように念を押す。義龍は自分が頼芸の子、土岐源氏の血を引くことを周囲に言い広めており、光安の隠居や領地替えを提案したため、光秀は家に戻ってもそのことで迷っていた。しかしその後義龍に従い、光安は大桑城へ向かう。光秀は道三に会うべく大桑城へ赴くが、道三は自分が年老いたことを自覚していた。さらに、家督を譲る者を間違えたとも言う。さらに大きな国を作れと言う道三は、対決がすぐそこまで来ていることを悟っており、光秀もほぞを固めて光安同様道三に付く。
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まず衣裳から行きます。今回も松平元信がやけに赤い着物を着ていたり、斯波義統を襲った兵たちの着物の袖山の部分に、如何にもおろしたてといった感じで折り目がきれいについていたり、どうにも不自然な点が見られます。それから出家した道三の甲冑、どこかで見たことがあると思ったら、『風林火山』の、勘助が頭を剃った後の甲冑姿、あれに近いです。
その道三が義龍(高政)と対立し、稲葉山城を出て大桑城へ向かっていますが、本来は鷺山城に隠居し、その後大桑城に向かっているようです。その際稲葉山城下に火を放っており、『国盗り物語』では、自分が作り上げた物が灰となる様子を見つめつつ大桑城へ向かう設定で、このシーンの平幹二郎さん演じる道三には、かなりの迫力が感じられます。今回こういったシーンがなかったのは残念です。それとやはり、帰蝶がちょっと出張り過ぎなように思えます。この大河が期待したほど面白く感じられない原因の一つに、彼女がこのように描かれている点が挙げられます。それでも沢尻さんが演じていたら、それなりに様になったとは思いますが、どうも川口さんのイメージではないのですね。
また帰蝶は伊呂波大夫を呼んで、恐らく道三を越前に逃がすように言ったのでしょう。無論道三はそれには従わなかったわけですが、これだと長良川の合戦後に明智城が落ちた時、伊呂波大夫がまた出て来て、光秀の越前への逃避を手助けするように思われます。しかしこの伊呂波大夫もそういう傾向はありますが、東庵だの駒だの菊丸だのといった架空の人物は、やはり彼らだけでまとまるシーンが多く、実在の人物と触れ合う機会が限られているようです。だから駒が、何かといえば光秀のことを気に掛ける設定になっているのでしょうが、この期に及んでの駿府脱出など、そう簡単に行くものでもないと思います。それと雪斎の最期があっけなさすぎ。義元はあまり姿を見せませんが、この頃は『半沢直樹』の方で忙しかったのでしょうか。
あと道三が自らの人生哲学を述べるところがあります。これによると弱い者は淘汰されるとなるわけですが、ならば自らの息子である孫四郎も喜平次も、若年とはいえ淘汰されるべき存在だったということになります(これは後述します)。あと孫四郎の件で光秀をよく思わない帰蝶ですが、この場合は信長が言うことの方が正しいでしょう。何せこの人は、戦では数的優位に立つというのを金科玉条としていた人物と言われています。しかしその彼が『古今集』ですか…これは寧ろ、光秀の方にふさわしいのではないでしょうか。また元信が、あそこまで美濃の内情を喋るものかとも思います。
それから明智光安が義龍に取り入ろうと、盛んに謡いかつ踊るシーンが出て来ます。この人物も迷いに迷った挙句道三の側に付き、それが明智氏の命運を左右するのですが、やはりどこぞの安房守のように、くじで決めるわけには行かなかったのでしょう。ある人物に取り入ろうとして、恐らくは本人の身に合わない芸を披露する辺り、『西郷どん』の大久保一蔵の畳回しを思い出します。あれは一橋慶喜の側近をつなぎ留めるための苦肉の策でしたが、こちらの方は何とか功を奏しています。
そして廃嫡に危機感を覚えた義龍による孫四郎、喜平次の暗殺。これは割と有名な話で、義龍が仮病を使って2人を呼び寄せ、後で日根野備中守に殺させてしまっています。尤もこの孫四郎も喜平次も、さほどの器量の持ち主でもないともされており、もし彼らのどちらかでも優秀であれば、兄のこの奸計を見破っていたかもしれません。その意味では前出のように、乱世に於いては「淘汰」されるべき存在だったとも考えられます。
しかし道三がやはりきれいすぎて、あくの強さやふてぶてしさがあまり感じられないのは残念です。この道三の中の人と、明智光安の中の人がそれぞれ入れ替わった方が、あるいはよかったのではないかとも思います。また小見の方や平手政秀が、ちょっと空気なところもありました。小見の方は、東庵を登場させるために出て来ていたようにも見えます。一方で村田雄浩さん演じる稲葉良通、如何にも戦国武将的なこの人物の方に寧ろ惹かれるものがあります。
村田さんと言えば、『ノーサイド・ゲーム』の吉原前GMでもあるのですが、君嶋隼人に、明日からダイワ物流に異動になると言い、プレモルを片手にグラウンドで話すシーンが前回流れました。ああいう役が似合う人です。かてて加えてここ2週間ほど再放送をしていた『JIN-仁-』、あれは今の状況が状況ということもありますが、やはり惹きつけられるものがありました。これについてはまた詳しく。
ところで大河も朝ドラもとうとう放送中断ですが、民放の春ドラマは結局どうなるのでしょう。