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ベイカー寮221B/Baker House 221B

パペットホームズ、大河ドラマなどの好きなテレビ番組やラグビーについて書いています。アフィリエイトはやっていません。/Welcome to my blog. I write about some Japanese TV programmes including NHK puppetry and Taiga Drama, Sherlock Holmes and rugby. I don't do affiliate marketing.
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麒麟がくる第6回「三好長慶襲撃計画」

第6回のあらすじと感想です。

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三好長慶は、主君細川晴元を既に出し抜こうとしていた。その長慶は、万里小路邸で開かれる連歌の会に出席することになっていた。晴元は、長慶が摂津で挙兵するのではと疑念を抱いており、長慶の家臣松永久秀は、晴元もその会に呼んでみてはどうかと冗談めかして言う。しかし長慶が出席する目的は、連歌の師宗養が出席するためで、その後摂津越水城に戻る予定だった。

その頃伊平次は鉄砲の解体を進め、光秀を感心させていた。しかし伊平次は、妓楼に入り浸っていた時に、偶然に隣室の話を聞いていた。それは、長慶と久秀を密かに討つという計画で、光秀はそれを知らせるべく、三淵藤英の許へ向かう。その頃三淵の館では能が行われ、将軍義輝も密かに訪ねて来ていた。話を聞いた藤英は、その計画が晴元の差し金であることに気づいており、見て見ぬふりをしようとする。

しかし弟の細川藤孝は、晴元が義輝の前で鼻をかむなど無礼な振る舞いをしており、すぐさま万里小路邸へ向かおうとするが、それが義輝の意であると取られるとまずいと藤英は慎重だった。光秀は将軍は武家の棟梁であり鑑であり、静観を決め込むのはよくないと反論する。実は義輝自身もそれを立ち聞きしており、飛び出した光秀の後を追うように藤孝に命じる。だがその頃、既に刺客たちが万里小路邸へと向かっていた。

万里小路邸に侵入した刺客たちは、居眠りをしていた久秀や近習たちと斬り合いになる。久秀は長慶を逃がし、そこへ武装した光秀や藤孝が入って来た。彼らは刺客に睨みを利かせ、その隙に長慶や久秀は邸を後にした。晴元は、自分の計画が頓挫したことに無念の表情を浮かべる。一方光秀も左肩を負傷し、東庵の許へ行こうとして、藤英の家臣に同行してもらう。しかし光秀は東庵の家の前まで来て意識を失う。

そんな光秀を駒が支えて中に入れ、甲斐甲斐しく看病する。2日後気づいた光秀は、駒が今様を歌っているのを耳にする、子供の頃、旅芸人から教わったというのだ。やがて光秀は順調に回復し、藤孝が見舞いに水飴を持って訪れる。しかしその頃、大柿城で戦火が上がる。これで道三は信秀と交戦し、城は道三の手に落ちた。光秀も美濃へ戻るが、駒が一緒について来ることになる、夜、荒れ寺で火を焚きながら、2人は同じ筵にくるまって肩を寄せ合い、駒は今様を歌い続けていた。

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まずちゃんばらが出て来るので、楽しみにしていた人も多かったのではないでしょうか。しかしやけにスローモーションを使ったり、どう見ても光秀が刀で触ったようにしか見えないのに、斬ったことになっているのには疑問でした。風急を告げる事態と、久秀の対応はそこそこ見ごたえがあっただけに残念です。そもそも鉄砲を背負ったままで、斬り合いをするのもどうかとは思います。あとこの紅葉のシーン、これは以前からそうですが、如何にも作り物のもみじが、散っているのではなく置いてあるようにしか見えません。

それとやはり着物の色。庶民の男女の着物が黄色と赤とか、とにかく蛍光色と原色が多いですね。それと妓楼のシーン、ここでも伊平次が隣の会話に耳をそばだてているだけでいいはずなのに、隣に遊女が寝ているのをわざわざ入れています。色に加えてこういう露骨な描写も、どこかこの大河が大河らしくない一因かと思われます。尚その伊平次の着物ですが、この大河の中で、一番当時の庶民の物らしく見えます。将軍の側近の直垂と小袖のコーディネーションの方は、ちょっと抵抗あり。

それと
伊平次がたまたま隣室の会話を耳にした
義輝が藤英と光秀の会話を立ち聞きしていた
こういうストーリー展開、どうにかならないかと思います。伊平次の方はまあいいでしょう。しかし将軍がわざわざ立ち聞きするものでしょうか、確かに大河に立ち聞きはつきものではありますが。それとしきりに「義輝様」と言っていますが、せめて公方様くらい言ってほしいものです。

連歌の会、この連歌は当時の公家や武家の嗜みでした。ちなみに光秀自身も、本能寺の変の前に連歌の会(愛宕百韻)を催しており、例の「時は今 雨が下しる 五月哉」が発句となっています。この会には里村紹巴も名を連ねています。

そして肩の傷。光秀がこれに気づいた途端に、血が噴き出しているように見えるのは気のせいでしょうか。そして数日間意識不明の後気が付くというのも、割とありがちな設定ですね。ところで駒が、光秀の看病が何やら楽しいと言っていますが、所謂ナイチンゲール症候群なのでしょうか。何はともあれ、光秀を独占できるわけですから、嬉しいには嬉しいでしょう。しかしその後、美濃までついて来て荒れ寺で一晩過ごすというのは、要らなかったような気もします。ところであの荒れ寺と第4回の橋ですが、『鳴門秘帖』にも確か出て来ていました。

この2人が一緒にいるというのは、『軍師官兵衛』の官兵衛とおたつを連想させますが、ただその割には、この駒と光秀の関係があまり艶事めいていないなと思います。何というか、駒の思い出話に終始してしまっています。しかも旅芸人の一座がどうこう、これ『太平記』の藤夜叉と似たような設定です。池端氏が昔使ったネタを再び出して来ましたね。それから京の町の物乞い、実はスパイらしき人物は『西郷どん』の桂小五郎を思わせます。

飲み物-キルシュビア
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[ 2020/02/26 00:36 ] 大河ドラマ 麒麟がくる | TB(-) | CM(0)

葵徳川三代徒然-24

慶長13(1608)年4月、宮中の風紀は乱れており、家康は密かに関白を交替させようと目論みます。そしてこの年の8月には、秀忠が駿府を訪れます。そこで家康は、軍事に適した築城の手ほどきをし、もし西国の大名が攻めてきた場合にどうするかを息子に尋ねます。秀忠の答えは、関ヶ原の時同様中山道と伊勢街道を敵は通るというもので、そのための要となる安濃津城を建て替える必要があり、藤堂高虎は今治を離れてここの城主となります。家康は将来、謀反が起こることを想定しており、細かいことに囚われすぎていると秀忠を叱ります。無論政仁(ことひと)親王、後の後水尾天皇と血縁関係になることも家康は企んでおり、今の徳川家に取って天下分け目の決戦の相手は、豊臣家ではなく朝廷であるとも言います。武力を以て朝廷に圧力をかければ、朝敵となるのは好ましくないため、このような策に出たわけで、朝廷と豊臣の結びつきを防ぐことも念頭に置いていました。

その豊臣家では、阿波の蜂須賀家に秀頼への臣従を誓うよう、淀殿が誓紙を求めていました。家康はそろそろ秀頼を駿府に迎え、対面する時だと考えます。さらに家康は、いざという時に備えてシャムより武器を買い付けます。隠居のはずの家康がこのように振舞うことに、淀殿は不安を感じますが、秀頼の方は侍女の梢との間に子ができたことを淀殿に告げます。そして家康の後押しにより、完姫の夫である九条忠栄が関白に就任します。高台院を訪れた忠栄に高台院は、天子様のご機嫌を損じてでも公家の不正を正し、豊臣家と昵懇な公家であっても遠慮は無用と言い放ちます。さらに完姫には、徳川と豊臣両家の血を受け継ぐ者として、いざという時の仲立ちを依頼します。そして江戸では、秀忠の末娘の和姫を、公家に嫁がせたいとお江は言います。秀忠の目的は徳川の種を、お江に言わせれば「タンポポ」の如く他家にばらまくことにありました。

翌慶長14(1609)年2月、西国の大名の妻子を江戸に住まわせることや、マニラ総督ドン・ロドリゴがアカプルコまで戻る途中、ウィリアム・アダムスの船を貸し出すことなどが決定します。さらに家康は、西国から謀反が起こった際のもう一つの要、清洲城を点検した結果、尾張名古屋に築城することを決めます。一方で加藤清正や福島正則からは所領の築城を巡って反感を買い、これが後の両者の運命に影響します。そしてこの年の4月、島津家久(忠恒*)は幕府の指示で琉球攻めを行い、5月3日には京極高次が没して、お初は髪を下ろし常高院となります。養女初姫は大名の子ということで江戸へ下向しますが、千姫はなぜ自分は江戸へ下らなくていいのかと淀殿に尋ね、淀殿は豊臣家は大名家ではないからと答えます。その後秀頼に娘の結姫が生まれ、朝廷では九条忠栄が、不祥事の当事者である烏丸光広らの名を公言し、京都所司代の板倉勝重は、軽微な罰で済ませようとする公家に圧力をかけます。しかし家康はこれをよく思わず、極刑にすべしと宣言します。

朝廷と徳川家の関係が綴られて行きます。家康が後押しした九条忠栄、その妻で徳川と豊臣双方の血を引く完姫、さらに豊臣と昵懇の公家であろうとも、不正は罰するべきと言明する高台院。家康に取ってはこれ以上ないタイミングではありました。しかし不祥事、しかも時の後陽成天皇の女御と不倫関係になった、烏丸光広をはじめとする公家たちは、徳川家を見くびっており、自分たちや、身内である女官が忠栄に名指しされて顔色を変えます。彼らに取って武家とは、元は朝廷の守護職という認識で、正に『平清盛』の「王家の犬」の感覚であり、雅を解せぬ存在でもありましたが、時代は大きく変わっていました。家康があまりに厳しい態度を取ろうとするのに対し、天海僧正は朝廷を潰してはなりませぬと諭します。しかしこの一連の、公家への対処の厳しさが、後に和姫が入内するその布石となって行きます。

一方で家康は、西国大名の謀反を強く意識するようになります。蜂須賀家が差し出した誓紙ですが、その蜂須賀家が後年公家を匿い、謀反(宝暦事件)に加担したという設定で描かれたのが『鳴門秘帖』です。そして名古屋に城を築くことになり、尾張徳川家が始まることになります。しかしこの前も書きましたが、やはり公家への対処を巡っては、かなり異なった立場でありながら、幕末物を彷彿とさせます。一方で琉球に侵攻した島津家久(忠恒)ですが、この人物が奄美大島を薩摩藩の直轄としています。それから200年余りを経て西郷吉之助が流され、なおかつとぅま(愛加那)に出会った奄美は、この時に薩摩藩主の管理下に置かれました。尚この家久(忠恒)は、鶴丸城を築いた人物でもあり、さらに真田信繁に対して「日本(ひのもと)一の兵(つわもの)」と評価した人物であるともいわれてます。

(*)叔父に同名の人物がいるため、初名である忠恒と併せて表記しています。

飲み物-ワインのデキャンタとグラス
[ 2019/09/15 00:45 ] 大河ドラマ | TB(-) | CM(0)

『胡蝶の夢』その他時代劇諸々

少し前にBS時代劇について書きましたが、その時『胡蝶の夢』について触れています。司馬遼太郎氏の小説で、松本良順とその弟子の司馬潦海(島倉伊之助)、そして関寛斎をメインにした作品です。この作品を、もう何年間かドラマ化してくれとリクエストしているのですが、未だにドラマ化されたという話は聞いていません。司馬作品は脚本が難しいといわれる上に、医学や軍事を中心とした作品なので、制作費がかかることもその一因かと思われます。

さらにBS時代劇や土曜時代ドラマの場合、最長で10回程度ですから、かなり端折る必要もあるのでしょう。しかしだからといって、大河化は難しいとも思われます。これには主人公の知名度も絡んで来ます。幕末大河、特に『新選組!』などの、幕府方を主人公とした作品で登場してはいますが、医学そのものを主軸に据えることは、視聴者が限られるという懸念もあるでしょう。私としては史料が殆どない主人公の大河を放送するのなら、こういう作品の方がいいのではと思うのですが。

大河が半年単位であれば、その範疇内に納まるのですが、それもできないので痛しかゆしです。しかし、もし正月時代劇が3日ほど枠を取れるのであれば、その時に映像化という方法もあります。他にも埋もれている作品はありますし、時代劇専門チャンネルが、藤沢周平作品のドラマ化などを手掛けているのを見ると、NHKはこれでいいのかとやはり思ってしまいます。時専は以前も『御宿かわせみ』の明治編を手掛けていましたね。

ところで時代劇といえば、土曜時代ドラマ『そろばん侍 風の市兵衛』の演出が榎戸崇泰氏ですが、この方は『太平記』の演出担当だったのを思い出します。脚本が池端俊策氏ですから、まさに『太平記』コンビです。それから『鳴門秘帖』のDVDが9月21日発売予定だそうです。それと2019年の正月時代劇が2日連続ですが、初日と2日目とはテーマをがらりと変えて来るようです。正月時代劇も今まで様々なテーマがありましたが、今回のこれはやや異色にも感じられます。

あと『かぶき者慶次』が時専で8月から開始です。これは結構人気があったようですが、なぜか前田慶次が出て来た大河はわずかです。登場シーンが限られるせいもあるのでしょうか。このチャンネルは開局20周年ということもあり、公式サイトも一新していますし、姉妹チャンネルの日本映画専門チャンネルとも提携して、過去の色々な作品を流しています。テレビをコンテンツで観る時代になって、もうそれだけの年数が経ったのだなと思います。

飲み物-グラスビール
[ 2018/07/21 01:00 ] その他 | TB(-) | CM(0)

BS時代劇雑感

『鳴門秘帖』が終わって改めて感じたのですが、アレンジしたから仕方ないとはいえ、かなり端折った感があるのも事実でした。せっかく竹屋三位卿が柳川に言及しているのだから、その柳川藩の藩士も出してほしかったなというのが正直なところです。あるいは一部と二部に分けるという方法もあったでしょう。無論孫兵衛とか周馬とか、もっと嫌らしい感じで描いてもよかったし、主役の弦之丞も、あれだけ人でなし云々と言うのであれば、もっと心のうちに葛藤を持つようなイメージでもよかったかと思います。1977年制作分を一部しか観ていないので何ともいえませんが、やはり10回に納めるにはちょっと無理があったかと思います。

このBS時代劇、通常は2か月から3か月程度の長さの作品が多いです。ならばこれを逆手に取って、大河化するにはマイナーな人物のドラマを、ここでやってしまえばいいのです。『花燃ゆ』や『おんな城主 直虎』もこの程度の長さで十分だったと思います。要はまずBS時代劇として放送し、反響が大きければ、登場人物をプラスして大河化するという方法もあるのですが、今までその手法が採られたようには見えません。あくまでも大河とは違う目的で制作しているのでしょうが、この辺りは連携していいのではないかと思います。この点でもNHKはPPV化を改革の旗じるしとし、BS時代劇と大河をコラボさせて視聴料を取るという手もあるでしょう。改革といえば、ついに「NHKが映らないテレビ」(というかディスプレイ)発売です。これにNHKトップはどう応えるのでしょうか。

話が戻ります。再放送が多い反面、BS時代劇として放送できそうな小説が、未だにドラマ化されていなかったりもします。藤沢周平作品などでまだドラマ化してほしいのもありますし、以前、司馬遼太郎氏の『胡蝶の夢』のドラマ化でリクエストを送ったのですが、これも脚色が難しいのか、確か未だに制作されていません。いっそのこと、時代劇チャンネルと共同制作する方法もあるかと思います。あと再放送がやたらに多いイメージもあります。短いシリーズを何度も放送するより、3か月から半年ほどの作品を作ることも視野に入れるべきではとも思います。全体的にドラマの数が多すぎるので、リストラの必要があるのではと前にも書いていますが、その一方で、BS時代劇の企画制作もまた見直すべきなのかもしれません。

飲み物-バーのラテフロート
[ 2018/07/09 00:45 ] その他 | TB(-) | CM(0)

鳴門秘帖第10回「秘帖の行方」

蜂須賀重喜に鳴門秘帖を差し出し、孫兵衛と周馬は褒美を受け取ります。しかしその後忍びの者が、天井裏から入り込み、それを盗み出してしまいます。これで城中は大騒ぎになり、弦之丞たちも、その異変に気付きます。

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徳島城から鳴門秘帖を盗み出したのは旅川周馬だった。その場に駆けつけた家来たちを手裏剣で倒し、周馬は行方をくらます。その後竹屋三位卿藤原有村たちが駆け付けるが、周馬も秘帖も共に姿を消していた。城の外にいた弦之丞たちに太鼓の音が聞こえ、一同は何事かあったのかと怪しむ。その頃周馬は杖を頼りに城下へ戻ったが、お十夜孫兵衛と出くわす。お前のことは勘で気づいたという孫兵衛に、周馬は自分の正体を明かす。秘帖を奪って京都所司代の松平左京之介に渡すつもりであった。彼もまた公儀隠密で、周馬は周馬、弦之丞は弦之丞と別々に雇われていたのである。

どっちが転んだとしても、左京之介には痛くもかゆくもなかった。懐の褒美金を孫兵衛に向って投げ、それで夢を買えと言う周馬。孫兵衛には、一生暮らせるほどの金が入ったが、何かすっきりしないものを抱えていた。その孫兵衛は城下で、偶然万吉とお綱に出会い、周馬の正体を告げて去って行く。そして弦之丞は周馬を追うことにする。たまたま船大工の勘助が、土佐泊から船に乗ることを話していたことをお綱は覚えていた。源之丞は恐らく、周馬も同じことをするとにらんで土佐泊へ向かう。

土佐泊では周馬が手下と地図を広げていた。どこをどう行けば、渦をかいくぐれるかがその地図には示されていたが、そこに弦之丞たちが現れる。周馬は手下に相手をさせ、自分は逃げ出そうとするが、そこでお綱と千絵と出くわす。千絵は、利用された者たちのためにも周馬を斬ろうとするが、周馬は爆薬を使う。そのため千絵は手裏剣を使うが、これもかわされ、最終的にはお綱の短筒の銃弾に周馬は倒れる。「七代先まで祟ってやる」がいまわの際の言葉だった。そして徳島城では、またも鳴門秘帖が盗まれたことに対し、有村が重喜に怒りをあらわにする。

二人は城の庭先に、高木龍耳軒が控えているのに気づく。有村は龍耳軒にも言葉を荒げるが、龍耳軒はこれは蜂須賀家に取って吉兆、鳴門秘帖のことはなかったのですと進言する。有村はまたも怒るが、実は龍耳軒は蔭腹(予め腹を切ってからの諫言)を切っており、その場で果てる。土佐泊での騒ぎが治まった後、弦之丞たちは高木家へ向かう、高木家の家来原田は、すべては弦之丞のするとおりにせよという主の言葉を伝え、弦之丞は龍耳軒が牢で話したことを思い出す。その後弦之丞、お綱、千絵、万吉の4人はある行動に出るが、お綱の心にはもう一人別の男がいた。

源之丞たちは徳島城へと急ぐが、その後ろを横切るぼろぼろの衣服をまとった男がいた。それは森祐之助であった。どこかをさまよっていた風だが、お米の位牌を大事そうに持っていた。そして弦之丞たちは鳴門秘帖を手に、龍耳軒の縁筋の男のつてで城へ入るが、有村に見とがめられてしまう。そこで出て来た重喜の前で、弦之丞は懐から鳴門秘帖の箱を出し、これはたった今消えてしまう、それが龍耳軒殿のご遺志と言って、箱を篝火の中に入れてしまう。

あわてふためく有村はそれを取り出し、大事そうに抱えて徳島を出ようとするが、そこへ江戸からの文が来た。山県大弐が死んだというのである。挙兵計画が水の泡となることを恐れた有村は、西国のどこかを頼ろうとするが、そこへやって来た祐之助の太刀を受ける。そして祐之助もまた同じ太刀を有村から受け、2人は共に絶命する。その場へ来た四人の前に、お米の幻が現れた。お米は祐之助の身を借りて、自分を殺した有村を討ち、弦之丞を守ったのだった。その後四人は再び剣山の洞窟へ行き、世阿弥の墓に参る。

その後孫兵衛はお綱の前で弦之丞と斬り合いをし、弦之丞は笠、孫兵衛は頭巾を斬られる。しかし命を奪われたのは、孫兵衛の方だった。弦之丞は京へ上り、常木鴻山と共に、松平左京之介に焼け焦げた鳴門秘帖を差し出した。もはやそれは、蜂須賀家の陰謀の証拠にすらならなかった。左京之介は大儀であったとだけ声をかける。蜂須賀家の徳島藩は改易を免れたが、重喜は32歳の若さで隠居を命じられる。そして大坂の四国屋では、お綱と千絵が、お久良と睦まじく話していた。そこへ鴻山や源之丞が戻って来る。

今日は源之丞と千絵との祝宴とお久良は言うが、源之丞はもはや江戸へ戻る気はなかった。お綱は千絵のためにも江戸へ戻るように頼み込む。父も江戸で彼を待っているものの、これだけのことをしたなら父も喜んでくれると言い、千絵もまた甲賀家再興のめどが立ったにも関わらず、2人でその夜姿を消してしまう。その後お綱は江戸へ戻って堅気の商売につき、平賀源内もまた戻って、みよしやで万吉とお吉にエレキテルを紹介していた。そして武者修行時代は太刀で戦い、その後脇差で戦うようになった弦之丞は両刀を捨て、今は千絵と遍路の旅に出ていた。

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今回がいよいよ最終回です。全体を振り返ってみて、江戸から中山道くらいまでは結構面白いと思いました。正直な話主人公より、悪役サイドの方にそれを感じました。篠井英介さんの「麿」ぶりも様になっていましたし。ちなみに今回魅力的だなと思った人物は以下の3名です。

万吉
関谷孫兵衛
高木龍耳軒

ただ物語が終盤になるにつれて、やや駆け足になった感もあります。もっと孫兵衛と周馬の同床異夢、すれ違いぶりも見せてほしかったです。それと周馬が公儀隠密の割には、それらしき雰囲気があまりにもなかったのもいささか気になっています。また公儀隠密であることを明かすシーンは、脚本が尾西兼一氏ということもあってか、捕物帳または刑事ドラマ的な印象がありました。

主人公に関しては、やはり個人的には山本耕史さんより、もう少し陰のある人物の方がよかったと思います。無論今回は10回シリーズであり、主人公の公儀隠密としての、いわばダークサイドを描くには時間がなかったのも事実でしょう。恐らく77年の作品を観ていた人には、軽めの乗りだったかもしれません。ロードムービー風な仕立てにするのもありですが、ならば『一路』とか、あるいは映画ですが『超高速!参勤交代』の方がそれらしかったようにも思います。それとお綱はよかったのですが、やはり千絵が今一つでした。早見さん、端役でもいいから大河にでも出ていた方が、もう少し時代劇の雰囲気を出せたかも。あとお米の幻などもそうですが、女性大河的な演出があったのも残念。

それと事あるごとに弦之丞の「人でなし」が登場しますが、これはどうかなとも思います。そんなに刀を持つのがいやなら、公儀隠密などにならず、刀を捨てて蕎麦屋でも始めろと言いたくなるのですが…。この言葉により、公儀隠密として帯びている使命に、弦之丞本人がネガティブになっている感もあり、それが隠密としての陰の部分を楽しめなかった所以かとも思います。また蜂須賀家食客の、竹屋三位卿藤原有村の倒幕構想が、やや存在感が薄いようにも取れました。有村が筑後柳川に言及しているのであれば、涌井道太郎は少しだけでも出してほしかったし、山県大弐の訃報も唐突な感じでした。

ところで原作の最後に、このような一節があります。
「一国の大名として稀有なかれの不幸が、なんとなく、剣山の終身牢を思わせるような生涯だったのは奇であるが、死後二十年の後には、かれの理想どおり、尊王の声が国内にみちていた」
(注・かれ=蜂須賀重喜)
蜂須賀重喜は文化14(1817)年に亡くなっています。その20年後というのは1830年代で、この場合の国内とは阿波国内のことでしょうか。事実この時期に志摩利右衛門という藍玉の商人がいて、藩政改革に貢献の後、頼山陽らと交友関係にありました。そして日本国内で尊王の声が高まるのは、桜田門外の変の後となります。尚蛇足ながら、原作終わり近くの、孫兵衛と周馬のやり取りの章の小見出しが「踊らぬ人影」となっていますが、これがどうも『踊る人形』を連想させてしまいます。

それからセリフの説明についてです。蔭腹については説明がありましたが、その割に「サンピン」などの台詞には説明がないのですね。これは三一侍(さんぴんざむらい)の略で、下級武士を見下して言う表現です。元々は一年に三両一分の報酬しかもらえなかったため、このように呼ばれています。他にも道者船などの説明もなかったし、NHKは説明するしないの基準をどうやって決めているのでしょうか。

[ 2018/06/29 00:00 ] その他 | TB(-) | CM(0)

鳴門秘帖第9回「姉妹の契り」

いよいよ阿波へと渡った弦之丞とお綱は、勘助と言う船大工に案内されて、剣山を目指します。しかしやはり阿波に入った天堂一角や旅川周馬、そしてお十夜孫兵衛に付け狙わることになります。弦之丞は一角以下数人の阿波の原士を斬るものの、世阿弥を周馬に殺され、孫兵衛からお綱を盾に取られたうえに、世阿弥がお綱に託した鳴門秘帖を奪われてしまい、果ては徳島城の牢に入れられてしまいます。

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千絵と万吉は阿波へ向かっていた。その頃阿波では弦之丞が捕らえられ、徳島城内の牢に入れられていた。そこへ筆頭家老の高木龍耳軒がやって来る。龍耳軒は牢を通じて世阿弥の話を聞いており、弦之丞のこともすべて知っていて、このような馬鹿騒ぎに加担するなと言い放つ。佐竹から蜂須賀家に養子に来た重喜が功を焦ろうとし、藩の借財12万両をどうにかすべく、大阪の藍玉問屋を押しのけようとしたが、商人たちはそこで幕府に泣きついたのだった。このため幕府は普請工事、裏では幕府転覆の血判状、鳴門秘帖探索と徳島藩を締め上げた。

また有村も重喜に入れ知恵をしたが、この鳴門秘帖を見た者はいなかった。弦之丞は、ある御仁も同じことを言っていたと答える。しかし龍耳軒は、この鳴門秘帖は表に出してはならぬもの、あればそだけで蜂須賀家の命綱となる代物と言って、弦之丞を牢から出す。鳴門秘帖を取り戻させ、後は好きにさせる魂胆だった。弦之丞は龍耳軒から受け取った刀で相手の眉間を斬り、あたかも脱獄したように見せかけた。龍耳軒は弦之丞が逃げたこと、あいつは一筋縄ではいかぬ男であると大げさに言いふらす。

同じ頃孫兵衛は実家にお綱を連れて行き、そば米雑炊をふるまっていた。お綱はためらうが、毒など入っていないと孫兵衛はいい、生まれた土地の食い物はいいとうまそうに啜った。また鳴門秘帖を手に入れたこと、お綱を盾に取ったら、弦之丞は何もできなかったとも話した。その鳴門秘帖は仏壇の前にあり、その仏壇には一角の位牌があった。弦之丞も一角を斬ったのだと孫兵衛。なぜ自分を追って下諏訪、賭場、そして阿波まで追ってきたかというお綱に、伝法な口調の鉄火な女に惚れたからだという。

孫兵衛はその鳴門秘帖で一儲けを企み、お綱と夫婦になって阿波で田畑を耕し、子供に手習いを教え、子供を作ってその成長を見届けるつもりでいた。江戸で辻斬りをやっていたのに似合わないというお綱に、生まれたときから辻斬りをやるやつはいないと孫兵衛は声を荒げる。孫兵衛は子供の頃、父が愛人を作り、母がその反動で隠れキリシタンとなり、額にかんざしで十字の傷をつけてしまったため、頭巾をかぶるようになっていた。しかしお綱は、孫兵衛の言うことになにかしら違和感を覚えていた。一方女武者姿の千絵と万吉は阿波に入り、杖をつく旅川周馬を追跡する。

周馬は孫兵衛の家へ向かっていた。後をつける2人を弦之丞が見ていた。孫兵衛は覚悟を決めたと言うお綱に酒を注ごうとするも、周馬が入って来て、一角の位牌を拝みたい、お前のことだから位牌くらい作っているだろうといい、仏壇の前へ行く。仏壇の前の、鳴門秘帖が入った箱をお綱はそっと隠す。一角は位牌を拝んだ後、鳴門秘帖はないのかと尋ねる。あの箱には特殊な膠で封がされていること、甲賀の者らしい仕掛けがあることから、俺が箱を開けてやろう、中のは偽物かもしれんと言う。お綱はうろたえた表情をするが、周馬はそこに隠しているなと見抜き、それを渡せと迫る。

2人が対立した時、千絵と万吉が入って来た。千絵は孫兵衛を相手にし、万吉は一角に縄を投げて捕らえようとする。すると酒が囲炉裏にこぼれて火柱が立った。孫兵衛は、家を燃やすわけにはいかぬとあたふたし、千絵はその隙に弦之丞と共に、世阿弥が死んだ洞窟へ行って、世阿弥の墓である土饅頭に手を合わせ、お綱と姉妹であることを名乗る。千絵は世阿弥から、この空の下につながりのある者がいることを聞かされていた。その頃徳島城では龍耳軒が有村に、主君と家臣の話であると口をはさませないようにし、秘帖をなかったことにするよう重喜に提案する。

会いたいと思いつつ会えずにいた弦之丞と千絵は、再会をことのほか喜んだ。積もる話をする2人を、お綱は見つめていた。辛いだろうが、姉妹の契りを交わした以上辛抱しろと万吉。しかし箱を手にしたお綱と万吉に、甲賀衆が襲い掛かる。忍者たちは、かつての主の娘の千絵のことなど気にも留めず、周馬の命令通りに動いていた。彼らは甲賀衆を相手に奮戦するし、何とか鳴門秘帖を守ろうとするが、そこへ孫兵衛と周馬が現れる。お綱の短筒の弾丸がもう切れているのを、短筒から弾を抜いた孫兵衛は知っていた。

弦之丞たちは奮戦するものの、秘帖の入った箱を奪われてしまう。孫兵衛と周馬はその足で徳島城へ向かい、重喜に目通りをする。重喜は大いに喜び、褒美を取らせることを約束する。また有村も喜ぶが、龍耳軒は内心密かに、弦之丞が間に合わなかったことを嘆いていた。その箱は鍵付きの蔵に厳重にしまわれたが、その夜ある忍びの者が天井裏から入り込み、蔵を破ってその箱を盗み出そうとする。

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ここまで観て思ったことですが、弦之丞の役、本当はもう少し陰のある人の方でもよかったかと思います。アーカイブでしか観ていませんが、前回が田村正和さんだったので、そのイメージがあるのかもしれません。山本耕史さんだと、何か明るい印象になってしまうのですね。しかし再び虚無僧姿に戻っていますが、そしてはなはだ無粋なことではありますが、いつどうやって着物を着替えているのでしょう。

それと弦之丞と千絵が出会うシーンですが。花が咲いている中で、離れ離れになっていた男女が会うというのは、何かラブコメ的な雰囲気があります。そもそもああいうところで2人でいたら、すぐさま嗅ぎつけられるでしょうし、せっかく奪った鳴門秘帖が孫兵衛たちに奪われたら、せっかくの龍耳軒の言葉も無駄になってしまうと思うのですが…。それと早見あかりさん、女武者姿はなかなかですが殺陣が今一つな感あり。というか、むしろ弦之丞たちより、敵方のほうがまだ殺陣は様になっています。孫兵衛と周馬はなかなかいいです。周馬の雰囲気が、ちょっと作り込みすぎな気もしますが。

ところで龍耳軒が治水工事に言及していますが、やはり外様藩は普請をやらされています。これは薩摩も同じで、宝暦治水事件が起きたりしています。ちなみにこれは、かの『風雲児たち』の番外編にも登場しています。しかし徳島藩は幕末は幕府方に与していました。ここが同じ四国の土佐との違いといえます。また宇和島も藩主伊達宗城が、島津斉彬などと同じ四賢侯とされていましたが、幕末は勤王倒幕の藩とはなりませんでした。

しかし思うのですが、お綱の連発銃、あれは火縄銃でもなさそうですが、ああいうタイプの銃はあの当時(18世紀半ば)にはなかったと思います。所謂連発式のピストルが登場したのは、確か19世紀に入ってからです。尤もこの場合、彼女が単なる女掏摸では物語にならないから、あのような飛び道具を持たせたのでしょう。

前にもちょっと触れたかもしれませんが、主人公無双といった感じがやはり強いなと思います。もう少しドジを踏むところがあるといったアレンジがあってもよかったかもしれません。今回、ロードムービー風アレンジというのが売りなのですが、主人公がとにかく強くて、しかも牢に入れられてもすぐ出て来てしまうという設定はワンパターンな印象もあります。あとロードムービー的にするなら、もう少し回数があってもよかったかもしれません。さて次回は最終回です。

[ 2018/06/22 00:30 ] その他 | TB(-) | CM(0)

鳴門秘帖第8回「親子の名乗り」

阿波へ変装して乗り込んだ弦之丞とお綱を追って、竹屋三位卿藤原有村らが船のつづらに刀を刺すものの、中にあったのは宅助とお米の遺体でした。2人は船に残っていた周馬と一角に詰め寄られ、船から海へと身を投じます。

**********************

弦之丞とお綱はとある浜へ流れ着いた。その頃千絵は不吉な夢を見たと万吉に話す。2人が鳴門の渦の中に飛び込んだというのだ。万吉は、あの2人はただでは死なないと千絵を安心させる。そして徳島城では、継裃の一角、孫兵衛(元川島郷原士)、そして旅川周馬の3人が、竹屋三位卿藤原有村の仲介により、藩主重喜にまみえていたが、森祐之助は例の件で扶持を取り上げられていた。孫兵衛は、頭巾は切り傷のためと重喜に断っていた。彼らなら幕府に立ち向かえると有村。褒美を取らせようと言う重喜だが、孫兵衛は弦之丞が斬られていないことから、生きている可能性を示唆する。

その時家老の高木龍耳軒が出て来て、男女の死体が漂着したという話を聞いていないこと、2人が飛び込んだのは阿波の海の近くであったことから、恐らく泳ぎ切る自信があったのではないかと言い、喜ぶには早いと一同を牽制する。しかし周馬はそのようなこともあろうかと、人相書きを配下に配らせ、また竹屋三位卿も代官所に人相書きを手配して働きかけていた。役人たちに調べさせたところ、日和佐宿の大工の棟梁である勘助が、ずぶ濡れの男女2人と共に行方をくらませていたことがわかり、周馬はそれを有村に報告する。

その勘助は四国屋の船以外扱わない男で、恐らくは世阿弥のいる剣山に向かったということで、有村たちはその日のうちに山探しを始める。その頃男女のお遍路が、日和佐宿を通り抜けていた。勘助はその男女、つまり弦之丞とお綱を連れて、剣山の麓まで来ていた。役人がいるため裏道を行くしかないと言うが、途中でお綱が足を痛めてしまう。その後勘助は2人と別れた。この後土佐泊まで出て抜け荷仲間と会い、しばらく島でほとぼりを覚ました後、大坂に行くと言う。大工なので仕事はあるということだった。源之丞はお綱と古い社へ忍び込んで夜を明かすことにした。

お綱は弦之丞との旅も終わるのかと寂しく思うが、弦之丞はお綱を世阿弥に会わせ、さらに千絵と姉妹の契りを交わすまでは守らねばならないと言う。そして今までも自分のせいで周囲の人間が死んだり、傷を負ったり、目を付けられたりすることになり、守らねばまことろくでなしとなると口にする。お綱は、それでは死んで行った者が浮かばれない、皆あなたのために身を捧げたとと反論し、さらに弦之丞を千絵のもとに返すまでは自分も戦うと言ったため、弦之丞はろくでなしとは二度と言わないと誓う。また弦之丞はお綱に、共に旅を続けてよかったと言い、お綱は弦之丞に寄り添う。

しかしそこへ甲賀衆が斬り込んでくる。お綱を逃がして対戦する弦之丞。その頃剣山の牢から脱獄を測った世阿弥は10年ぶりに外へ出、とある岩に水をかけることで、かつてある物を隠した場所を探し当てる。そこには風呂敷包みが隠されていた。一方有村や周馬、一角、そして孫兵衛たちは、源之丞を目撃したという情報をもとに山探しをはじめ、目にした世阿弥を矢で射る。手負いの世阿弥を餌に、源之丞をおびき寄せるのも一興だが、早く殺した方が殺生の罪は軽いと有村。公家とは卑しきものよと孫兵衛、しかし彼らは途中まで同行し、それから別れて弦之丞を探す。

弦之丞は彼らに従う浪人たちに密かに忍び寄り、声も立てさせずに仕留めるが、一角に気づかれてしまい、川の近くの岩場で弦之丞と斬り合いになって仕留められる。そこへ周馬、孫兵衛がやって来て、瀕死の一角に、必ず弦之丞を仕留めると約束する。その頃大坂では、千絵が万吉からすべてのことを聞き、またお綱が姉であったことも知り、何とか阿波へ行きたいと四国屋に願い出る。同席していた常木は、弦之丞もどうなっているかわからない、様子見をと言うが、それでは遅い、姉であるお綱と源之丞が阿波に渡っているのに、自分だけ大坂にいるわけには行かぬと言う。

結局お久良は船で商いをする身として、乗りかかった舟であると千絵の阿波行きに同意し、船を出す。その頃阿波では一角が弦之丞に斬られたことと、飛び立つ鳥の羽音に有村が怯えていた。手負いの世阿弥は洞窟に身を隠すが、そこへ周馬がやって来る。ここは危ないし、千絵も来ているからと同行を勧める周馬に、世阿弥は弦之丞のことを問うが、周馬は知らぬ存ぜぬを決め込む。その時お綱の短筒が火を吹き、周馬は脚を負傷するものの、甲賀衆と立ち去る際に世阿弥に手裏剣を投げ、それが致命傷となった。

世阿弥は短筒の女が娘のお綱であることを知り、世阿弥様ではなく父と呼んでくれと頼み、鳴門秘帖を弦之丞に渡してくれと言って絶命する。そこへ孫兵衛がやって来て、お綱を倒し、鳴門秘帖を奪って逃げる。お綱を肩に抱えた孫兵衛は、大声で弦之丞を呼び出し、世阿弥のこととお綱のことを伝え、さらに有村に世阿弥が死んだことを話す。有村たちは鳴門秘帖を探すべく洞窟に入り、取り押さえられた弦之丞は徳島城の牢へと入れられ、高木龍耳軒と対面する。その頃千絵は万吉と2人で、阿波行きの船に乗り込んでいた。

**********************

まず天堂一角の身分がどのくらいなのか知りませんが、着ている裃が継裃、つまり肩衣と袴が共布でない裃です。元々平服扱いだったようですが、あれで殿様の前に出られたのですね。その一方弦之丞たちも、お遍路姿で登山だとかえって目立つような気がします。しかしこの2人の人相書き、何やら『西郷どん』の、吉之助と月照を思い出します。あるいは同じ人が書いたのでしょうか。

そしてまた弦之丞の口癖
「私はろくでなしになる」
が登場します。これ、聞かせられる方は結構滅入って来る言葉です。お綱がそれをもう言うなと誓わせたのも、無理からぬ話ではあります。しかし自分に関わって死んだ、あるいは不幸になった人の中に虎五郎が入っていないようですが、あれは入れるべきですね。いくら飲んだくれ親父とはいえ、この人も弦之丞といたために殺されたようなものだし、最後の最後に、自分は本当の父親でないと明かしたことからすると、結構重要な役割ではあるのですが。

それから殺陣ですが、弦之丞が浪人を2人仕留めるところがありますが、あれで返り血が全くないのはちょっと不自然です。まして動脈を斬るシーンなどは、少しばかり血をつけていた方がリアルに思えます。元々この原作は講談的なもので、そのためひところの時代劇、あるいは西部劇のように主人公がやたらに強くて正義漢的ですが、多少ドジを踏むところがあった方が、ドラマそのものにメリハリがつくかとは思います。またお綱相手に自分の思いをあれこれ述べるのは、ちょっと学園ドラマ的な演出にも見えます。これは大河でもかつて似たシーンがありました。しかしお綱、孫兵衛に対してはなぜか警戒心が緩いように見えますね。

一方でやっと脱獄した世阿弥が泥水を岩にかけて、黄緑に発光するシーンがあります。忍術といえばそれまでですが、何やらルミノール反応のようです。よく刑事ドラマで、血痕を調べるために使うあれですが、血痕の場合は青の光が出る仕組みになっていて、場合によっては赤や黄緑の光が出ます。しかもそれで鳴門秘帖の存在がわかってしまうのというのも、驚くべきことではあります。どのような仕掛けになっているのやら。

それから竹屋三位卿藤原有村が、世阿弥に手傷を負わせ、それで弦之丞をおびきよせるか、あるいは早めに殺すべきかと言って哄笑するシーンがあり、孫兵衛が卑しいものだと言いますが、戦国時代なんてそんなものでしょう。相手の身内や兵を人質に取って、相手に降伏を迫ることなどかの時代は日常茶飯事だったでしょうし、武田信玄の志賀城攻めは、相手の兵の生首で城を囲んだといわれています。しかし蜂須賀侯がどういう倒幕計画を練っていたのかはわかりませんが、幕府を倒すにはまず世論喚起と軍備がないと勝てません。結局倒幕は100年後、雄藩薩長が坂本龍馬を通じてミニェー銃とアームストロング砲を入手できたことにより、初めて実現できたのですから。それと大工の棟梁の勘助という名に、「あの」勘助を思い出します。

[ 2018/06/13 23:00 ] その他 | TB(-) | CM(0)

ダンカン・ロスの「赤毛クラブ」

以前パペットホームズのベインズと、声の出演の浅利陽介さんについて書いたことがあります。今回はそのパペットホームズのダンカン・ロス関連で、ちなみに声の出演は、『鳴門秘帖』に出演中の武田真治さんです。このダンカン・ロスという名前、聞いたことがある人もいるでしょう。『赤髪連盟』で、ジェイベズ・ウィルソンを連盟に加入させる人物です。実は彼には別の企みがあるのですが、パペット版では、ベイカー寮の4年生という設定になっています。

このロスは赤毛の持ち主で、放課後学校の敷地内をぶらついていたウィルソンを赤毛クラブに誘います。如何にも武田さん風な、小柄なイケメンといった感じの生徒で、燃えるような赤毛でないとこのクラブには入れないと言い、今は彼ら2人しか部員がおらず、部室も以前テニスクラブが使っていた所でした。そして活動はといえば、ロスが持って来る物をウィルソンが赤く塗るという、何とも単純極まりないものです。そして気が散らないようにと、ロスはその間姿を隠していました、ウィルソンは懸命に石だの空き瓶だの、ボールだのを赤く塗り上げて行きます。

赤く塗ったものは、ロンドンの赤毛クラブの総本部に持って行くとロスは言いますが、ある日魔が差したウィルソンはこっそりロスの後をつけます。実は赤く塗られた物は、ロスがすべて学校の裏の洞窟に持ち込んでいました。その理由がわからず、ウィルソンはホームズに依頼して来たわけです。ホームズとワトソンは、洞窟の中で赤く塗られたビーナス像を見つけます。そのため美術室にそれを持参したところ、美術クラブ顧問のノートン先生は、こんないたずらをしたのは誰だと嘆きます。そこでホームズは、ダンカン・ロスについて尋ねます。

パペホダンカンロス
赤毛のダンカン・ロス


Duncan Ross
本物のダンカン・ロス
(画像はDVDシリーズ「赤毛クラブの冒険」及び冒険ファンブックより)

ロスが美術クラブの部員であるのはわかったものの、ノートン先生は彼が赤毛であるということを言いませんでした。ホームズたちはロスのキャンバスの所に羽根があるのを見つけ、動物に詳しいシャーマンに訊いたところ、これは白鳥の羽根だと言います。そこで池のそばに行った2人は、当のロスが絵を描こうとしているのを見つけます。しかし彼は赤毛ではありませんでした。実は赤毛はカツラで、要はウィルソンを池に近づけないための作戦だったのです。

ウィルソンが池に石を投げこんだりするので、絵の題材にしようと思った白鳥が近寄らなくなり、一計を案じたロスは、赤毛クラブなる架空のクラブを作って、ウィルソンを引き離していたわけです。直接近寄るなと言ってもよさそうなのですが、そこは彼も言い出しづらかったのでしょう。ちなみにその後赤毛クラブは解散しますが、ウィルソン、ロスはまた違った形で、それぞれ別のエピソードに登場することになります。

このパペットホームズでは、如何にも少年ぽい声のロスが、世の中に赤い物を増やすのが赤毛クラブの目標などと言っていて、あの甲賀家乗っ取りを企む旅川周馬とは、かなり違うなと思ったりもするのですが、それはともかく。ビーナスを赤く塗るのに味をしめたロスは、今度はナポレオン像を赤く塗らせる予定だったようです。『六つのナポレオン像』と関係しているのでしょうが、あまり持ち出すと、ノートン先生に叱られるのでは…。

[ 2018/06/13 01:15 ] パペットホームズ | TB(-) | CM(0)

鳴門秘帖第7回「絶体絶命の船出」

四国屋の女将、お久良の取り計らいで弦之丞とお綱は阿波への船に乗ることになりますが、案の定邪魔が入り、2人は変装したうえで乗船します。一方病気に倒れた千絵はやっと目覚めますが、既に弦之丞たちは大坂を発った後でした。

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万吉の負傷、そして千絵の病気により、法月弦之丞はお綱を連れて阿波へ向かうことになった。異母妹に当たる千絵が惚れた男を奪おうとは思わない、しかし道連れの間だけ、弦之丞への思いを抱いていたいというお綱。そして大坂の蜂須賀屋敷、所謂阿州屋敷では竹屋三位卿藤原有村の前に、旅川周馬が姿を見せていた。甲賀者がいることに驚く有村に、弦之丞が敵という点では両者とも同じと言い、また配下に調べさせた情報として、松平左京之介が再び京都所司代となり、常木鴻山も与力に返り咲くと伝えた。有村は、今後は自分の手足となるように周馬に命じる。

そして阿波藩士森祐之助は、中間の宅助が、弦之丞とつながりのある女が、四国屋の女将お久良と親し気にしていたことを話す。恐らく阿波入りのためであろうと言い、森は四国屋を探らせようとするが、孫兵衛は直接四国屋に行けばいいと反論する。しかし周馬は、弦之丞が何も知らずに、その夜の四国屋の船に乗り込むのであれば、むしろ好都合だと言う。周馬は盛んに有村に取り入るが、天堂一角は、弦之丞を倒すなら閻魔大王とだって手を組むと、周馬にさほど抵抗感はなかった。その頃弦之丞は常木と会うが、常木は世阿弥殿といい弦之丞殿といい、鳴門秘帖は人の定めを狂わせると話す。

弦之丞は千絵や万吉が世話になっていることの礼を述べ、常木は自分も四国屋に縁があるため、手助けをすることになる。その常木の屋敷では万吉が、お綱と千絵が姉妹であることを驚きつつも、つれえところだが辛抱しろと言って聞かせる。そしてお綱は、うなされる千絵の首のあざと、自分のあざを見比べるのだった。川長の娘お米も阿波へ渡る予定だったが、このことは有村には内緒のため、口止め料をせびる宅助。お米は弦之丞とのことを宅助に知られ、自分の浅はかさが嫌になった、死ぬしかないと口にする。しかし宅助は、その件は祐之助には内緒にすると言う。

常木は有村が四国屋に入るところを見た。手代の新吉は、自分の一存でやったことにするために、お久良にはそのまま大坂にとどまってほしいと頼む。蜂須賀家の阿州屋敷の水見番所では、かなり厳しい検分が行われていた。有村はそのまま四国屋の座敷に居座り、船出までそこにとどまるつもりだった。その頃万吉はまだ傷が癒えず、源内の手当てを受けていた。弦之丞は千絵のために万吉を大坂に置いて行くつもりだった。常木は苫船に四国屋が支度を整えていると伝え、弦之丞は礼を述べるが、源内はくだらねえことだ、こんなことに命を懸けるなと悪態をつく。

四国屋に桜間という、侍崩れの旅役者の客が女連れでやって来た。しかしそれは変装した弦之丞とお綱だった。2人が新吉と話をしている間、床下に人の気配を感じた源之丞は刀を突きたてる。その男は周馬の配下の者で、周馬に奥の部屋、つづらと伝えて息絶える。四国屋に忍び込んだ周馬は、2つのつづらが運び出されるのを目にした。お久良は弦之丞とお綱の便宜を図るため、わざと別の道を通って有村を船着き場へ案内する。その時編笠の男が、自分を追っていた浪人たちを斬って逃げる。彼らは一角の手下だった。一角はそれが弦之丞のしわざであると決めてかかる。

宅助とお米は船待小屋にいたが、みだらなことをしようとした宅助が何者かに刺される。刺したのは弦之丞だった。つづらの中に隠れていた弦之丞、そしてお綱は、それぞれ着物を宅助、お米のものと交換する。森が2人が同行することを有村に隠していたこともあり、宅助とお米になりすました2人は怪しまれずに乗船する。そして周馬は、四国屋のつづらが船に載せられたこと、そして編笠侍は、自分たちを攪乱する目的であったと有村に告げるが、お久良はその言葉にかなりの不安を覚える。

その頃千絵は常木屋敷で目覚め、弦之丞を追うべく外に走り出るが、既に船は出てしまった後だった。大声で泣き叫ぶ千絵と、無事を祈るお久良。船は水見番所へとさしかかり、有村が船頭の松兵衛に、つづらの中身を問いただそうとするが、松兵衛は答えようとしない。また新吉は、雪乗せ笹の家紋は梅渓家からの蜂須賀家への献上品として開けようとしない。業を煮やした有村は、一角、周馬、孫兵衛に刀でつづらを刺させる。血が流れてきたため、弦之丞を退治したと思った有村は、阿州屋敷にそのつづらを運ばせる。しかしその中には宅助、そしてお米の遺体があった。

お米は苫舟の所で2人に会い、覚悟を決めて弦之丞に「自分はもう長くない、この命差し出します」と申し出たのだった。船中席を立った弦之丞はついて来たお綱に、自分はやはり人でなしの道を歩むことになると言うが、それではお米さんの覚悟が水の泡になると言うお綱。その2人を追う影があった。それは2人に目をつけていた周馬と孫兵衛だった。船の下は鳴門の渦、ここが源之丞の墓場になると孫兵衛は言い、どちらにつくか決めろとお綱に迫る。しゃらくさいとお綱は短筒を出し、源之丞は刀を抜くが、状況が不利になり、意を決した2人は海へと飛び込む。

**********************

宝暦の変の首謀者である、竹屋三位卿藤原有村の前で、甲賀者である旅川周馬と、天堂一角や阿波藩士勢が手を組みます。これで忍びの情報を得られることになるわけで、それをかいくぐって阿波行を決行しなければならない弦之丞に、常木鴻山が手を貸します。2人は変装してつづらに入ることになりますが、それを見ていた周馬が有村にそのことを報告します。しかしその時点で、つづらには別の人物が入っていたのですが…。

ところでこのつづら、梅渓家の家紋入りですが、雪のせ笹となっています。この梅渓家は公家の家柄で実在しますが、家紋は笹竜胆となっています。また雪のせでなく雪持ち笹というのがありますが、これは柳生家が使っていたようです。

それにしても天堂一角、常木が斬った浪人たちの斬り口を見て、常木の仕業であるにもかかわらず、また弦之丞だと言っています。この両者の剣法は、それほど似ているのでしょうか。孫兵衛を除くこの阿波勢は、幕府に抗いたがる姿勢はわかりますが、このあたりがいささか単純で、自分たちに立ち向かう者即ち弦之丞となるようです。敵には共犯というか、それを助太刀する存在がいるという発想にはならないのでしょうかね。

それから宅助、案の定というか呆気ない最期でした。しかし主が主なら家来も家来といいますが、この宅助以上に森祐之助の小物感が半端ないです。あの2人が本当に宅助とお米であるのか、ちゃんと見極めればいいのに。弦之丞とお綱であれば、その場で取り押さえることもできたし、公儀隠密を人質にすれば、京都所司代とも駆け引きできるし、お米も失わずに済んだのですが…というか、こういう人物だからお米が弦之丞に走るのですが。主人公無双の設定だから仕方ないにせよ、阿波勢がやけに脳筋に見える所以であります。

そして目を覚ました千絵、いくら弦之丞を追う目的があるとはいえ、何日間も寝込んでいた後で、アシガールよろしくあそこまで走れるものでしょうか。周馬の手下がいるかもしれないのに、あの時間に一人で出て行くのは危険に思うのですが。

[ 2018/06/08 00:00 ] その他 | TB(-) | CM(0)

鳴門秘帖第6回「十年ぶりの再会」

大坂まで来てはみたものの、商船以外の阿波行き船が出港停止になり、弦之丞とお綱は苫船で過ごすことになります。一方千絵も大坂まで来て、周馬から逃げ出したものの発熱し、さらにお綱は、自分が世阿弥の娘であることを知ります。

**********************

阿波徳島城主蜂須賀重喜の許へ、森祐之助からの手紙が届いた。公儀隠密の法月弦之丞がそちらへ向かっていると言う。食客の竹屋三位卿藤原有村は、手紙を千切った一片を食べてしまい、都や筑後柳川をはじめとする諸大名、山県大弐もいると公言したうえに、麿が船の差し止め、関所の警戒を万全にして、大坂でその隠密を迎え撃つとまで言う。それを聞いていた家老高木龍耳軒は、監禁中の世阿弥にこのことを話すが、世阿弥はそれはそれがしが娘婿になるはずだった男、この阿波一国火の海となるやもと言い、死に花を咲かそうとする。

一方お綱、万吉そして弦之丞は、大阪で足止めを食らって苫船の中にいた。そこへ万吉が箱寿司を持って現れる。うまそうではないかと弦之丞。そして阿波へ何とか渡るべく、万吉は四国屋へ相談に行く。お綱は弦之丞の髪を結い直しつつ、自分の思いを伝えようとしていたが、その時船を使っての売春かと捕り方がやって来た。弦之丞はお綱を逃がし、自分は捕り方たちの相手をする。その頃千絵は周馬から、漁師小屋と思しき場所に監禁されていたが、千絵にはお綱が嘘をついているように見えなかった。

周馬は大坂まで来るのにどれほど苦労したかと言い、弦之丞のことを口にする千絵を恫喝し、千絵を縛って阿州屋敷(徳島藩の大坂屋敷)に赴き、天堂一角やお十夜孫兵衛に、弦之丞を倒すという目的で協力を求める。一角は原士たちに、弦之丞が船のことで来るであろう四国屋を張らせ、見つけ次第斬るつもりでいた。そこに千絵を絡ませるという作戦だが、小屋へ戻ったところ千絵は逃げ出していた。千絵を血眼で探す周馬、一角と孫兵衛。その頃千絵は四国屋近くで万吉に会い、周馬から逃げて来たことを話すが、見張りに立っていた原士に襲われ、万吉は背中を斬られてしまう。

その時編み笠の男がやって来て原士たちを追い払う。この男は元与力の常木鴻山で、万吉を戸板に乗せて屋敷に運び、源内の手当てを受けさせる。その時原士たちと会った一角は、九鬼という男が斬られているのに気づく。編み笠の男がいたと言って絶命する九鬼。一同弦之丞に違いないと思い込み、周馬はそこに落ちていた千絵の櫛を折る。その頃常木の屋敷では、負傷の万吉のみならず千絵も疲れで倒れ、源内の患者が増えることになった。そしてお綱は万吉を探していて、偶然お久良と新吉に出くわす。

二人はその前に宅助から、お米の居所を聞かれていた。旅から戻った途端いなくなったのである。見かけたら連絡すると言ったその矢先、下諏訪で助けてくれたお綱に礼を言い、お綱は船のことで相談したいと言う。その頃常木屋敷では源内が、千絵が疲労がたまっており、治るには数日かかると言う。下諏訪で出会ったが、まさか大坂まで来るとはと言い、公儀隠密の法月弦之丞も、存外に骨のある男だったとも言う。また四国屋ではお綱が、阿波まで商い船で密航したいと頼んでいた。しかしもしこれが発覚すれば、四国屋の身代は潰れるとお久良は渋る。

命を賭してでもと言うお綱の右腕のあざが、偶然お久良の目に留まった。お久良はお綱の父親について訊いたところ、江戸を発つ前に死んだが、別の父親がいて武家であることを知らせたこと、しかも西国にいることを話し、それは、以前交流のあった世阿弥であるとお久良は断言する。世阿弥には芸者に産ませた子がいて、しかも千絵と同じ三日月形のあざがあった。お綱も十年前に訪ねて来たあの男を思い出していた。お久良はお綱が世阿弥の娘である以上、船を出さないわけには行かないと言う。

その頃お米は橋の上で、身を投げようとしていた。宅助が、阿波ならば左団扇で暮らせるというにもかかわらず、うちはおもちゃにされた長生きできない女子、みじめに泣くよりぱっと咲いて終わりたいと言って飛び込もうとする。その時弦之丞がやって来た。お米は弦之丞に、阿波へ行くなら四国屋の商い船が次に出る、自分は森祐之助の知り合いで、知っていることなら教えると言う。弦之丞は魔が射し、この女は使えると密かに思う。その時お綱がやって来て、四国屋とつなぎができたと言い、お米と再会したことに驚く。お米は必ず再会すると言って、その場を去って行く。

苫船に戻った弦之丞とお綱を源内が待っていた。千絵の病気を知らされた弦之丞は常木屋敷へ急ぐ。一方周馬や一角、孫兵衛は、編み笠の男と武家の女が戸板に乗った万吉に付き添っていたと聞き、やはり常木屋敷に急ぐ。しかしその屋敷にいるはずの弦之丞が、なぜか彼らのそばを走っていたため討ち取ろうとするが、ここでもお綱が短筒で助太刀をする。その後千絵と十年ぶりに再会した弦之丞は彼女の看病をする。お綱は月夜に引いた風邪と言い聞かせつつ外に出るが、そこに来た弦之丞から千絵の姉だと見抜かれ、千絵の病気が治らないので、一緒に阿波へ行ってくれと言う。

**********************

まず竹屋三位卿藤原有村、手紙を食べるなどまるでヤギです。しかも筑後柳川をはじめとする諸大名などと言う辺り、やはり立花家はかなり当てにされていたのですね。ところで山県大弐は、明和事件をその後起こしますが、いずれにしても倒幕には100年早すぎました。実際江戸時代には島原の乱、由比正雪の乱など、結構幕府に盾突く事件はあったのですが、やはり西洋列強の力と安政の大獄があってこそ、初めて幕府を倒すという発想が現実味を帯びて来たのですから。

そして千絵が思い通りにならなくなった天堂一角が、阿波勢と手を組んで弦之丞を討ち取る作戦に出ます。その千絵の逃亡の仕方もなかなかのものですが、万吉と会うのは偶然過ぎですね。まあ、お綱の弦之丞への助太刀も似たようなものです。まるで互いの位置情報を確認し合っているかのようです。結局万吉がケガをし、千絵が病気になって、この二人が常木屋敷にいわば匿われることになるわけです。しかし九鬼が言い残した「編み笠の男」を弦之丞と早とちりするのも如何なものか。弦之丞なら虚無僧と言いそうなものなのですが。

その千絵ですが、これは前にも書いていますが、「疲れがたまっている」わりにはやつれていないし、うわごともはっきりし過ぎかと思います。この点ではお米の方が労咳病みらしい雰囲気があります。しかしお米もなかなかプライドがありそうです。役に立ちたいというのは、つまり一緒にいたいということですね。恐らく下諏訪で来てくれていたら、あんな辱めを受けなかったのにという恨み言とも取れますが、それは宅助に言うべきでしょう。

そしてお久良、商家の女将らしく性根が座っています。しかしあれだけ、身代を潰すわけには行かないと言っていたにも関わらず、お綱のあざの謎が解けた途端、あっさり船を出すのを許したのは予想外でした。無論ここで謎が解けないと、彼女のために船を出す理由がなくなってしまうからなのですが。そしてお綱のあざと千絵のあざが同じだから、要は世阿弥の子であるということですが、この2人、あざの部分以外はあまり似ていないようです。ところでナレーションでは「義理」となっていますが、要は「腹違い」、異母姉妹というわけですね。島津斉彬と久光のような関係です。

ところで前回「胡麻の蠅」「食客」に解説がつくのはどうかと書きましたが、むしろ今回の「道者船」などに解説をつけた方がいいのではと思いました。道者とはこの場合お遍路さんのことですね。それにしても江戸っ子の万吉親分、大坂の箱寿司に慣れないようで、こんな食べ方をするのかと不思議がっていましたが、弦之丞は「うまそうではないか」。実際あの箱寿司というか押し寿司、美味しそうでした。

[ 2018/06/01 00:45 ] その他 | TB(-) | CM(0)
プロフィール

aK

Author:aK
まず、一部の記事関連でレイアウトが崩れるようですので修復していますが、何かおかしな点があれば指摘していただけると幸いです。それから当ブログでは、相互リンクは受け付けておりませんので悪しからずご了承ください。

『西郷どん』復習の投稿をアップしている一方で、『鎌倉殿の13人』の感想も書いています。そしてパペットホームズの続編ですが、これも『鎌倉殿の13人』終了後に三谷氏にお願いしたいところです。

他にも国内外の文化や歴史、刑事ドラマについても、時々思い出したように書いています。ラグビー関連も週1またはそれ以上でアップしています。2019年、日本でのワールドカップで代表は見事ベスト8に進出し、2022年秋には強豪フランス代表、そしてイングランド代表との試合も予定されています。そして2023年は次のワールドカップ、今後さらに上を目指してほしいものです。

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