7月23日は、文月(ふみづき)の23(ふみ)日、つまり「ふみの日」です。ふみといえば大河ドラマ『花燃ゆ』ですが、こちらはふみから38、つまり「みわ」へと名前を変えて奥女中となりました。なぜこのようなことを書くかと、この記事に関連があるからです。詳しくは後ほど。
「『相棒』シーズン11第11回「アリス」-横溝正史とイギリスミステリー2」の続きです。この中ではスクラップブックが謎解きの鍵を握るわけですが、その前に、なぜスクラップブックなのかについて書いておきます。元々イギリスあるいは英語圏の女性たちの間では、スクラップブックを作る習慣がありました。その時々で押し花や何かの記事を貼ったり、あるいはレシピを書き込んだり、写真が普及するようになってからはそれも貼って、ちょっとした備忘録あるいはアルバムの役割をも果たしていたようです。また、『赤毛のアン』の作者、ルーシー・モード・モンゴメリーも、スクラップブックを作っていました。彼女は仕事用とプライベート用を使い分けていたようです。
そして、子爵家の令嬢である瑠璃子と、ホテル経営者の娘である朋子も、それぞれのスクラップブックを作っていました。このうち、朋子のは火事で焼けてしまいましたが、瑠璃子のは、失踪と同時に警察が捜査の手掛かりとして持っていたため、難を逃れました。後に朋子は、茜にそのスクラップブックを渡し、茜は、それをライターの遠野、実は永沢公彦に本の資料として渡していました。しかし、遠野はこのスクラップブックに隠されたメッセージにぴんと来ず、結局杉下右京が中心にこれを解き明かすことになります。
しかし、失踪の前日に作られたページには、『不思議の国のアリス』のお茶会の挿絵が貼られていて、さらにその下にTomoko's flower、「朋子さんの花」とあります。そのため右京は朋子の誕生花を調べ、それがヒナギクであることがわかります。しかし、ヒナギクと一連の事件とどう関わりがあるのでしょう。そこで朋子の最後の言葉「ヒナギクじゃなかった。茜が危ない。あの子を助けて」が浮上します。彼女はここで、「ヒナギクではない」ということを述べています。恐らく、別の花に謎が隠されていることに気付いたのでしょう。
それで杉下と甲斐は、茜が保管していたホテルの備品、いわゆるアメニティを見せてもらい、それに月下美人の花がついているのに気付きます。この月下美人はどのような花であるのか、それは「闇に咲く花」です。この「闇に咲く花」が大きなヒントとなり、茜を人質に取った遠野と杉下、甲斐は、二百郷家の空き巣に入られた部屋に向かいます。そこには柱時計がありました。6時で止まったままになっていて、しかも9の部分に、やはり月下美人のマークがついています。杉下は遠野の命令で、甲斐から後ろ手に手錠をかけた状態になっているため手を動かせません。そこで、やはり遠野にいわれて、こちらは手を前に手錠をかけた状態の甲斐に、左右交互にに針を動かすようにいいます。左右交互というのは、この時計が振り子時計であるためでした。
ここでもうお分かりかもしれません。「8-3-2-3-9-8-7」とは、「闇に咲く花」を数字に置き換えた物でした。また6時で止まっているのは、アリスのお茶会の場面に出てくる時計が、正に6時を指したまま永遠に続いていたからです。そして、最後の7に針を持って来た時点で、床が動き、地下への階段がありました。4人は階下に降り、旧華族の資産がそこに保管されているのを発見します。しかし遠野は、この財宝を我が物にしようと企んでいるようです。しかしその前に、茜を助けなければなりません。杉下はわざと遠野=永沢を挑発するようなことをいい、隙を見て彼の刃物を奪い、茜を彼から解放します。その後、遠野の服に忍ばせた盗聴器を伝って「出店」が来て、その後捜査一課もやって来たわけです。
しかし、結構様々な作品がそこかしこに見えるエピソードです。それについてはまた次回。