来年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』のガイドブックの内容について、思ったことを書いて行きます。主にニッコームック(産経新聞出版)『鎌倉殿の13人 完全読本』の内容をベースにしていますが、一部NHK出版のガイドブックの内容もまた参考にしています。
まずいずれも、出演者の紹介やインタビュー、スタッフの紹介、時代背景、舞台となる地の紹介、あらすじが紹介されており、ニッコームックの場合は、お馴染みの松平定知氏が今年も登場しています。
そしてキャスト関連です。以前から武蔵坊弁慶は誰なのか、あるいは今回は出て来ないのかと思っていたのですが、このガイドブックを見て、佳久創さんが演じることがわかりました。佳久さんといえば、あの『ノーサイド・ゲーム』で、アストロズからサイクロンズに移籍した里村亮太を演じていましたね。そして平維盛が濱正悟さんですが、この人も『ノーサイド・ゲーム』に出演していました。三谷さん、恐らくあのドラマを観ていたのではないかと思われます。
それから今回一番書きたかったのは、三谷さんのインタビューに関してです。このガイドブックの147ページにこのようにあります。
ただ、僕の大河ドラマは、「史実無視で好き放題書いている」と言われがちです。じつは『新選組!』も『真田丸』も、歴史上に起きたとされる出来事は、参考資料に従って、その日付まで忠実に書いていますし、必ず舞台となった場所に足を運んで風景まで眺めています。(中略)史実と史実のあいだを想像で埋めるのが、僕の仕事だと思っています。(中略)大河ドラマは、史実と史実の行間を読んで、史実の裏側に隠れているものに思いをこめることができると思っています。もちろん時代感覚の違う歴史上の人物を、現代目線で描くことの危険性は承知の上です。でも、夏は暑く冬は寒いといった共通認識は変わらないし、(中略)脚本家は人間を書くのが仕事ですから、僕らと共通する部分を見つけなければ、人物を描くことはできません。
三谷大河については前にも書いていますが、どうもふざけているように見えるという批判も多いと思われます。これに関して三谷さんは、史実は参考資料に従って書いている、史実と史実の間を想像で埋めると答えています。この史実と史実の間を想像で埋めるというのは、かつて『花神』の制作統括であった成島庸夫氏のコメントにもありましたが(『花神』大河ドラマストーリーより)、この「想像」の解釈について、何らかの食い違いがあるのではないかと思われます。
またNHK出版のガイドブックでは、三谷さんは史実でない部分は解釈をふくらませるといった意味のことを語っていますが、やはりこの「想像」とか、史実でない部分を自由に書くといった点が、視聴者が考える大河とのギャップとなって表れている感もあります。一例として『真田丸』の史実でないと思われる部分に、信繁と梅の婚礼で、きりがあれこれ信繁の世話を焼くシーンがあります。梅が、きりにそれをやめてほしいと言った時、
「あんた、嫁になったら急に強気になったわね」
と、月9さながらのセリフが飛び出して来ます。他にも、秀吉がいなくなってしまい、片桐勝元があちこちの部屋を探し回っていて、たまたま侍女が着替えをしているのを見てしまう、所謂「ラッキースケベ」のシーンなどが出て来たりしますが、こういう部分に馴染めないという人ももちろんいるでしょう。
何よりも、かつて『風林火山』の脚本を担当した大森寿美男氏のコメントにはこうあります。
何しろ殺戮も略奪も認められていた時代なわけで、彼らのしたことを今の価値観で判断すると、限界が出てくるのは必至です。ですから、善い悪いではなく、今に通じる人間ドラマが描ければそれでいいと考えています。
そもそも三谷さんも、当時の人々の感覚を大事にしたいと以前語っており、その意味では大森氏と共通するものがあるはずなのですが…。さらに三谷さんは、どちらのガイドブックでも、ベースとなる『吾妻鏡』に反することは描かないと言っていますが、結局そういった書き方が、史実に縛られた部分と、史実に縛られない自由な部分のギャップを大きくしているのではないかとも思います。
(この項続く)