第19週第1話(第87話)と第2話(第88話)です。
第86話
悠人のインサイダー取引疑惑の報道をTVで観た雪乃は、電話でめぐみにそのことを知らせる。状況が呑み込めていないめぐみにネット見てと言う雪乃。めぐみと舞はネットニュースでこのことを知り、めぐみは悠人に電話をするが不通音が聞こえるのみだった。お兄ちゃんは悪いことなんかせえへんと舞。
悠人に高橋から電話がかる。高橋はインサイダー取引ではないと言った悠人をなじり、どんな思いで会社ここまで大きくしてきたと思ってんだよと、怒りの声をぶつける。さらに高橋は、お前が全部終わらせたんだとまで言うが、悠人は最早何も答えられなかった。舞も悠人に電話をするが悠人は出ようとせず、やがて不通音に変わる。
そこへ藤沢が来て、すずかけ工業の徳永が来ていると知らせる。その徳永は表で記者に声を掛けられていたが、何とか振り切っていた。IWAKURAさんとこもえらいこっちゃなあと言いつつも、すぐに話題を変え、試作のネジのサイズ変更を申し出る。舞が事務所に戻ると、悠人に関する方々からの電話にめぐみが対応していた。
舞は会社の前に記者がいることを知らせる。取材断ってんけどと言うめぐみは、みんなに集まってもろてと舞に頼む。めぐみは社員を前に、悠人の報道のこと、本人と連絡が取れないこと、週刊誌の記者が会社の前にいることを伝える。色々話を聞かれると思う。申しわけないとめぐみは頭を下げるが、社長が謝ることはあらへんと宮坂。
今回のこととは無関係と宮坂は言うが、結城はかつて悠人がIWAKURAを買い取ってくれたことに触れ、ここにおる全員関係ないことはないと言う。社員たちも協力を申し出、笠巻はいつも通り仕事してたらええと言う。めぐみは社員たちに礼を言うが、悠人からは依然として連絡がなかった。
舞は事務所に残って、ネットニュースを見ていたが、雨が降りそうだからもう帰りとめぐみに言われる。一方めぐみは済ませておきたい仕事があるらしかった。舞が家に戻ろうとすると、記者たちが5人ほど家の前に張り付いて連絡を取り合っていた。結局帰れないまま舞はデラシネに行き、悠人のことを案じる。
やがて閉店時間になり、舞は出て行こうとするが、ええよ、僕も雨やむまでおるつもりだったしと貴司。舞は雨がいつ止むのを気にする。その雨の中を悠人はふらつきながら歩き、公園へ入って行くが、やがてその場に倒れてしまう。雨はなおも降り続いていた。
第87話
雨の中帰路に就く佳晴は、公園に倒れている男を見つけ、酔っ払いだと思って顔を見たところ、悠人であることがわかり、家に連れて戻る。そこへ久留美が帰ってくる。久留美は悠人を見て聞こえますかと声を掛け、濡れて冷えた体を温める処置に取り掛かる。しばらく経って悠人は意識を取り戻す。久留美は、倒れてはったので父が連れて帰って来たんですと言い、何があったのかと尋ねる。
酔って喧嘩しただけやと言う悠人は、久留美が勧めるスープも飲もうとせず、迷惑料やと1万円を渡そうとする。断る久留美に、悪いことして稼いだ金は受け取られへんかと悠人。そしてめぐみと舞が望月家にやってくるが、悠人は家族や佳晴の好意を素直に受け取ろうとしない。そんな悠人に久留美は、めぐみと舞がどれだけ心配していたか、その気持ちを考えてほしいと言う。
久留美はさらに言う。
「大事な人がしんどい時に、何もでけへんのってホンマにつらいんですよ。支えてくれる家族がいてはるんやから、頼ったらええやないですか」
3人は家路につき、記者たちを無視して中に入る。
翌朝、悠人が起き出してくるが、家族の心配をよそに自分のせいで迷惑をかけている、帰ってこうへん方がよかったなと言い出す。連絡つかへんで心配するより全然いいと舞。しかし悠人は家族と打ち解けようとせず、何があったのかと訊かれてももう終わったとだけ言い、悪い事やっていなくても、レッテル貼られたら投資家として失格やと口にする。
何ではぐらかすん、お母ちゃんも私もホンマのこと知りたいだけやと舞は言う。めぐみも少し前に会った時に、ちゃんと話聞けていたらと後悔する。舞は兄に助けを求めたことがあってもその反対はない、何もでけへんかったと言いかけるが、悠人は自分を責めるな、おふくろと舞のせいでなく全部俺のせいや、損失出したためインサイダー情報に飛びついてしもうたと話す。
舞は悠人の部屋へ行く。潰れかけの工場にしがみついている親父が情けないなと思っていたが、自分の方が情けないと言う悠人。舞は浩太の歩みノートをそばに置いて出て行く。悠人は、浩太が自分のことを書いているページを読み進めて行き、父の気持ちを初めて知る。その後悠人は仏壇の前に座り、めぐみと舞に、親父、俺のこと分かろうとしてくれてたんやな、生きてる間に言うてくれてたらよかったのにと。
いつも喧嘩してたやないのとめぐみ。悠人は涙を流しながら、舞が以前言っていた
「無くなったもんは、二度と取り戻されへん」
という言葉に言及し、それホンマやったわ、仕事も信用も、親父と話し合うチャンスもと言い、浩太の写真に向かって詫びる。
しかしめぐみは言う。取り戻せるもんもある、いっぺん失敗したくらいで何や、お父ちゃんなんか何べん失敗しても諦めへんかったでと息子の肩をなでる。そして悠人ならやり直せる、しっかり罪を償って、仕事も信用もちょっとずつ取り戻したらええねと励ましの言葉をかける。そして舞も兄の背中に手をやる。
悠人のインサイダー取引疑惑が報じられ、驚いた雪乃はめぐみにこのことを知らせます。岩倉家に行くのではなく、電話で知らせたのですね。しかし放送瞬間にTVの電源をオンにした人、あるいはNHKにチャンネルを合わせた人の中には、いつもの『舞いあがれ!』の時間なのに、何のニュースかと驚いた人もいるのではないでしょうか。
しかも当の悠人とは連絡が取れません。しかも例によってと言うべきなのか、マスコミが会社の前に張り付いています。『芋たこなんきん』でもこんなことがありましたね。社員たちはめぐみに協力的で、土屋は記者をしばこうとまで言い出し、流石にこれは止められます。そして夕刻になり、雨が降りそうなので早く帰った舞は、記者たちが家の前にもいるのに驚きます。
結局デラシネに難を逃れる舞ですが、悠人とはやはり連絡が取れません。その頃悠人は雨の中を1人で歩き、やがて倒れ込んでしまいます。幸いなことにその様子を佳晴が見ていて、家に連れて帰ります。帰って来た久留美は、流石看護師、てきぱきと手当てをし、悠人も意識を取り戻します。
しかしここが悠人らしいと言うか、ひとの好意を素直に受け取らず、久留美に対してもお礼も言わずに、迷惑料を渡そうとします。めぐみと舞が来ても素知らぬ顔、佳晴がチョコレートを買って来てくれても「頼んでへん」、ついに久留美は悠人に向かって、めぐみと舞の気持ちを考えてくれと言い出します。単に彼女が、舞の友達だからという理由だけではないでしょう。
その後も家族との対話に応じない悠人でしたが、舞が浩太の歩みノートを見せたことで、父の気持ちを理解できたようです。そして仕事のことや信用のこと、父との対話を怠ったことなどで、激しく後悔にさいなまされる悠人ですが、めぐみは無くしたものは取り戻せると息子を励まします。