まず、以前も『太平記』に関して投稿をしていますが、その時と比べて見方が多少異なることをお断りしておきます。
ここのところ『平清盛』と『太平記』関連投稿がご無沙汰になっています。『平清盛』、先月で終わらせようと思っていたのですが…恐らく『鳴門秘帖』関連投稿のせいもあるかもしれません。ところで、『太平記』の脚本担当の池端俊策氏(一部仲倉重郎氏)が脚本ということで、再来年の大河を楽しみにしている人も多いかと思われます。私は無論、実際に始まってみなければわからないというのが正直なところですが、面白くあってほしいとは思います。
しかしながらこの『太平記』、構成そのものは『龍馬伝』、『軍師官兵衛』、あるいは『西郷どん』とそう変わらない印象があります。主人公の足利高氏(後に尊氏)自身は、豪族の息子で鎌倉幕府に出仕し、父親と対立して自分探しの旅に出て、日野俊基らと親交を深め、その後彼らの動きに共鳴して、後に鎌倉幕府打倒に乗り出すといった具合で、要は自分の人生を導いてくれる人物と出会って、様々な人々と交流を持ち、最終的には自らの立ち位置を変えてしまう筋立てになっています。
『独眼竜政宗』とか『武田信玄』と並び称されることもあります。無論俳優さんはよく演じていましたし、鎌倉幕府の要人のキャストはかなり分厚いものでした。しかしドラマとしての規模からいうと、政宗、信玄とはやはり異なるものがあります。そもそもこの2つにしても、リアルタイム放送ではありえないだの、史実を描いていないだの言われていたようですし、『太平記』は特にトレンディ大河とも言われ、ドラマ自体は青年期から初老期の高氏(尊氏)の、少し前に触れましたが、成長物語的と言っていいでしょう。
恐らく時代背景からして、政治背景をディープに描くと物議を醸しがちで、また原作となった『私本太平記』自体、結構新解釈に基づいた部分があるためと思われます。成長物語自体は大河の定番でもあり、トレンディと呼ばれたりした割には、脇役がしっかり固められていたこともあり、この言葉にありがちな浮わついた雰囲気はあまりありませんでした。ただ構成自体は今時の大河とそう変わらない部分もあり、それゆえ政宗、信玄とはまた違った雰囲気があるのも事実でしょう。
これも触れたことがありますが、大河はヴィンテージ化することによって、美化される傾向があります。前出のように、かつて話題になった作品であっても、リアルタイムではあれこれ突っ込まれていることが多いのです。近年では『風林火山』などもそうだったようです。同じような構成で、リアルタイムでは突っ込まれ、年数を経ると懐古の情でもって見られる、その繰り返しというのもどうかなと思います。やはり、一年物のシリーズで過去との比較がしやすいというのが、関係してはいるでしょう。
それから『太平記』といえば、柳葉敏郎さんが演じた、ましらの石というオリジナルキャラが登場します。主人公に対抗する、それも一般人目線を代表する人物です。このましらの石も、確か後になるにつれて登場回数が少なくなり、それに取って代わる形で、足利家の内紛が描かれるようになって行きます。恐らく尊氏の立ち位置が確定することにより、その存在があまり意味を持たなくなったせいでしょうが(これは藤夜叉も似たようなところがあります)、ちょっともったいないように思います。大河での、主人公に対抗する一般目線オリジナルキャラとしては、石も含めたこの3人が有名です。
- ましらの石(太平記)
- 滝本捨助(新選組!)
- 矢崎平蔵(風林火山)
いささか「うざい」存在ではありますが、この手のキャラが登場することにより、ドラマが展開して行くという意味では面白い存在でもあります。石と平蔵は、自分の大事な存在を主人公、あるいはその主君に殺されて恨みを抱く点で、共通するものがあります。しかし捨助は基本ぼんぼんキャラで、しかも常に主人公と同じ組織にいたがる点で、他の2人と異なりますし、三谷氏のドラマらしいキャラともいえます。
また今後も太平記についてはアップしますし、DVD視聴も再開する予定ですが、大河作品の池端氏の脚本はどのようなものか、特に、どのような癖があるのかを今後見て行きたいと思います。