『武将ジャパン』大河コラム、第47回関連記述への疑問の続きです。
鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第47回「ある朝敵、ある演説」 - BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン)
https://bushoojapan.com/taiga/kamakura13/2022/12/12/172451
1.報告を終えた義村たちが廊下へ出ると、宗政はずるいと責めたてます。
それでも義村はまだ諦めていない様子。
彼としては、自分のミスでやっちまったわけじゃないし、上皇様がこんな間抜けだとは思わなかっただろうけど、そこは仕方ない。
当初の目論見と比べたらずいぶん獲れる魚は小さくなったけど、せっかくだから獲っておきたい――そんなところでしょう。
最後まで、ぶれませんね。つくづく根性が悪いというか、ただただ計算高い。しかしそこが素敵です。
ここのセリフですが
宗政「ひどいではないか」
義村「まあ、そう言うな」
宗政「で、どうするつもりだ」
義村「とりあえずは様子を見る」
「まだ諦めたわけではない、俺に任せろ」
で、その前のシーンを見ると、義村は「すぐに兵を調え…」と言いかけたところで、宗政も院宣を懐から出しています。つまりこの時点で、他の有力御家人にも院宣を出しているのを義村は知るわけです。そして御所へ赴き、広元が院宣に言及した所で、すかさず自分に来た分を差し出すと言う流れです。
一方宗政も成り行き上、自分に来た院宣を出さざるを得なくなるのですが、その後義村に対し、ここで上皇様を裏切るのかと言いたげです。一方義村は、院宣は出したものの北条に与したわけではなく、あの押松を調べて、誰と誰に院宣を贈ろうとしたかを見たうえで決めると言いたいのではないかと思われます。
しかし武者さんの書き方だと、義村が何をしたいのかが今一つ見えてこないのですが…。
ところで宗政の「どうするつもりだ」というセリフに、パペットホームズのワトソンをちょっと連想します。
2.夫である義時の異変に気づいたのでしょう。
京都で何が起こっているのかとのえが焦りながら問い詰めています。
「兄は見殺しにされたのですか!」
しかし義時はそっけなくあしらい、次男の北条朝時と共に奥へ。
二階堂行政も、婿殿はこうなることがわかっておったのかと憤りを感じています。
「ゆるせませぬ!」
ここにもプライドがへし折られた女が一人います。のえは京都が好きです。兄が京都のいることは誇りだったことでしょう。
その京都で兄が討たれてしまうなんて……執権の妻という地位にまで上り詰めていたのに、それを防げなかった!
ここのところですが、恐らく行政とのえは別ルートで光季が討たれたことを知り、義時が何か知っているのだろうと問い詰めていると思われます。それから
「のえは京都が好きです」
とありますが、元々祖父の二階堂行政は京の人ですし。そして
「執権の妻という地位にまで上り詰めていたのに、それを防げなかった!」
と言うよりは、夫が何か工作したのだと思ったのではないでしょうか。
3.ここで義時が足を止め、のえを労り、優しい言葉を掛けていたら運命は変わったかもしれない。
しかし義時は踏み間違った。
上皇との戦いでは正解を選べるのに、妻との対峙では間違いばかりを選んでしまいます。
「のえを労り、優しい言葉を掛けていたら運命は変わったかもしれない」
まずやらないでしょうし、踏み間違ってもいません。ここで優しい言葉をかけると、のえはさらに追及してくるでしょうし、彼に取っては院宣を誰に渡したか、そのうえで自分はどう行動すべきかを考える方が先でした。
4.上皇から御家人たちへ送られた院宣――義時が眼の前に並べ、時房と泰時を呼んでくるよう朝時に伝えます。
院宣は全部で8名分。
驚くべきことに、北条時房宛のものもあり、後鳥羽院は北条を直接揺さぶるつもりだったのでしょうか。
あるいは蹴鞠で通じ合えたと勘違いしたか。
その真意は不可解ですが、もしかしたらこれも時房の愛嬌がなせることかもしれません。
あんなにかわいらしく蹴鞠に付き合った時房なら、自分の味方をするかも……と後鳥羽院も考えてしまった可能性が。
ドラマ本編で泰時が
「北条までも分断するつもりだったんでしょう」と、わかりやすく言ってくれていますね。
またこの大河では蹴鞠で決着をつけたことになっていますが、実際は時房は、三寅を連れて帰るまでに交渉を行っており、使えるやつと上皇は踏んだのでしょう。
5.義時がそう言うと、時房は記念に院宣をもらいたいと言います。
呆れたように首を横に振る義時。トキューサよ、駄目に決まっているでしょ! 悪用されたら困るじゃないですか。
悪用されるより何より、この当時院宣を「記念に」貰うなどという発想が、果たしてあったのでしょうか。
6.死の覚悟を、自分よりも先にあの泰時に伝えた!
政村のことなんて全く触れなかった!
自分たち親子への愛が、気遣いが、一片もない!
私の人生は何だったのか?
せめてここで義時が立ち止まっていれば、政村を呼び寄せていれば、あるいは……。
「死の覚悟」と言うより、自分の後継者をはっきりさせたと受け取るべきかと思います。お前が跡を継いでくれることが何よりの喜びと言ったことで、政村が義時の後継者となる目がなくなったわけですから。そのうえで、自分にもしものことがあったら、時房や朝時に、泰時を支えてやってくれと言っているのでしょう。
「せめてここで義時が立ち止まっていれば、政村を呼び寄せていれば、あるいは……」
いや、どうにもならないと思いますが。政村を呼び寄せて、お前も兄上を助けてやってくれと言うのならまた別ですが。
7.そんな兄の真意を見抜いた実衣は「気持ち悪い、一人でかっこつけている」と言います。
私も同じ意見です。かっこつけているだけではなく、もう燃え尽きているし、いっそ死んで楽になりたいように思える。
最終回目前の大河主人公が自滅願望に取り憑かれているなんて、驚くばかりですよ。
最終回目前の主人公が、自滅願望ではなくても、覚悟を決めるというのはよくある話だと思います。一例を挙げれば、かの『真田丸』も最終回の1つ前の回で、塙団右衛門も戦死し、自分たちの不利を悟った信繁は妻子を伊達政宗に預け、きりにも沼田にでも戻るようにと言っています。
ただ信繁には、この回でこの決めのセリフがありました。
「これでしまいかー、徳川兵に真の武士は一人もおらんのかー」
こちらのほうは、関東に真の勇者はいないのかと言う意味ですから、今回とは逆の構造とも言えるでしょう。
8.「御家人たちの心を打つものにしてくださいね」
政子が大江広元をスピーチライターにして、演説用の原稿を作成しています。
これはあくまで朝廷と坂東武者の戦である。鎌倉が危ないと訴える。そのほうが心に響くと広元が言うと……。
「なんでもいいから。時がないの、急いで」
「かしこまりました」
このシーン、広元が自分で実際に筆を取っているし、その後の演説のシーンでは目を見開いていますから、見えないふりをしていて、本当は見えていたのではないでしょうか。実はこれ、あらすじと感想で書こうとして書きそびれていたのですが。
9.実衣も横から同意します。
(中略)
泰時が言い切ります。
演説のシーンですが、やはり政子にすべて言わせるべきだったなと思います。そしてこの後の部分に
「微かに涙ぐみ、完敗を噛み締めているような義村」
とありますが、宗政の方を向いていることからして、やはりこうなったなと確認している感じですね。
10.義時は潤んだ目で政子を見返します。政子も潤んだ目で微笑んでいます。
ここで義時はやっと深く息をつきました。
天命に呑まれていた男は、やっと息ができるようになったようです。
義時ですが、息をつこうとするその前に、政子に何か言おうとしているように見えますが、結局それが言葉にならず、深く息をつくことになったものと思われます。
あと、MVPと総評関連では次回に回します。例によって武者さんが好きなジェンダー論が登場しますが、毎回毎回、同じようなことばかりですね。