小日向のことで悩み、司法修習生のことで悩み、なぜ自分は嘘をついて体裁を取り繕うかで悩む史朗です。事務所に来た司法修習生は安心だと思ったのですが…。しかし小日向の件は予想とは随分違い、これで安心してこのことを賢二に打ち明けます。
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小日向大策が、史朗のスマホにひっきりなしに食事の誘いを入れて来ていた。同じ頃上町美江は、史朗に女性の司法修習生の教育を頼もうとしていた。最近はセクハラも増えており、仕事には男も女もないのだから、筧先生なら安心と言う美江だが、史朗は自分がゲイであることがばれているのではと気にする。さらに小日向は、火曜と金曜の夜ならいいとまたしても連絡を入れて来た。修習生のことを話す史朗に賢二は、若い女性でしかも先輩がジェントルマンで独身、なのに実はゲイなんてその子可哀想だねと言い、史朗は呆れてお前の乙女心には感心すると言う。
その賢二は、火曜日は美容学校時代の友人と飲み会で、その子と食事に行かないでねと頼み込む。史朗は史朗で、また小日向からの連絡が届いていた。その前に史朗は実習生の長森夕未と裁判所に出かける。途中で転んだ彼女に手を差し伸べてやると、夕未はその時しっかり史朗の袖をつかむ。夕未が自分に好感を持っているように史朗は感じ、この件といい小日向の件といい、自分はモテてるのかなと思う史朗。そして約束のレストランで小日向を待つ史朗は、スマホに賢二の「帰りが遅くなる」という連絡が入っているのを見て、奇妙な罪悪感を感じる。その時黒のスーツに黒いシャツの小日向が現れ、またも同居中の恋人、井上航について話す。
今度は旅行の当日、着ていた服をクリーニングに出していたのに気づいた航は、小日向に取って来るように命じた件だった。無論午前8時に店は開いておらず、小日向は航の機嫌を取るのに懸命だった。小日向は史朗の隣に移り、航のことをなぜか史朗にはすんなり言えたこと、自分も限界であることを話し、史朗は迫られているように感じる。しかも小日向は史朗が好きなタイプだった。そこで史朗は、自分には一緒に住んでいる相手がいると口に出してしまい、小日向は驚いた様子で、航を呼んでいるから会ってほしいと言う。
その航が入って来たが、ジルベールとは似ても似つかぬ普通の男で、しかもレストランにはふさわしくない、学生のようなラフな格好だった。年齢は30才だと言う。史朗は大きく当てが外れてしまtった。そして家に帰ったところ、賢二が頭痛がするとソファに横になっていた。シロさんも飲んで来たのと尋ねる賢二に、史朗は、修先生と少し飲んで来たと言ってその場を取り繕う。
史朗は夕未と一緒に、事務所でクライアントの相談を受けていた。そのクライアント生稲(いくいな)は、医療過誤で母親を死なせたことで、医療訴訟を起こそうと考えており、史朗が和解を勧めても納得しない。しかし史朗が、病院に治療経緯の説明と謝罪を条件として取り付けたことで、和解を承諾する。その後一緒に昼食を摂っていた夕未に史朗は、本当は裁判をやればこっちにも金が入ると言いながら、医療訴訟が多すぎて小児科と産科の医者のなり手が減ったと教える。夕未は、綺麗事ばかでは仕事として成り立たないですよねと答える。史朗は自分が清濁併せのむ大人に見られている、まずいと思い、夕未につい彼氏がいるのかと訊いてしまう。
美江は男女のことを仕事に持ち込むことはよくないと言いつつ、でも筧先生は独身だから仕方ないですねとも言った。どうも妙な勘違いをされているようだが、結局夕未は妻子のいる修の担当となった。史朗は2人続けてその気のない相手から振られたのだった。史朗はその日は鍋でもしようと思い、鶏モモ肉を探したものの売り切れで、最後に残っていた比内地鶏手羽先が目に入った。しかし思った以上に効果で悩んでいると、中村屋の店員が半額シールを貼ってくれた。帰宅して鍋の準備を始め、手羽先が煮えるまでしばらく待っていたが、その間夕未や美江、小日向の言葉が頭を駆け巡るので、蓮根のきんぴらを作って気を紛らそうとする。
やがて史朗も帰って来て、2人で水炊きの鍋を囲んだが、これが思った以上に美味だった。けがの功名だなと言う史朗に、賢二は不思議そうな顔をする。仕事でちょっともやもやしていたと史朗は言い、賢二にあまり食べ過ぎるなと言って、卵雑炊を作る。賢二は雑炊をきんぴらと一緒に嬉しそうに食べる。その後史朗は、ジルベールこと航のことを話して聞かせる。全然ジルベール似でないこと、着ていたTシャツにハリネズミが描かれていたが、それはハリネズミではなくネズミが針を持ているだけだと話す史朗に、賢二は笑い転げ、いつかあってみたいと史朗に頼む。この件で小日向との食事のこともスルーされて安心する史朗は、元々自分は賢二が心配するほどモテないと改めて思う。
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なにやら小日向の件といい、長森の件といい、史朗の取り越し苦労といった感じがするのですが、それも思わぬ形で幕を閉じます。長森の件は、事務所でゲイであることをカミングアウトしていないせいもあり、史朗に取ってはこれが未だにハードルになっているようです。しかし事務所ではゲイを公表していないせいで苦労し、小日向にはゲイを公表したせいで要らぬ心配をし、そして小日向とのことを賢二がどう思うかでまた悩む史朗ですが、結局ジルベールこと航が取り持つ縁になて、賢二も小日向に会うことになります。
そんな史朗が悩みを解決できるのは、やはり料理のようです。そういえば水炊きまで、全く彼の手料理が出て来なかったのが、取り越し苦労と連動しているようにも見えたのですが、水炊きときんぴら蓮根を作ることで、やっと落ち着いた感があります。今回は、賢二を除けばかなり隙のない人に囲まれていただけに、最後の最後で航のことで賢二も大笑いし、気分もほぐれてよかったねと言ったところでしょうか。
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