まず、『鎌倉殿の13人』第29回のあらすじと感想その2で、入力ミスと変換ミスが何か所かありましたので直しています。それと文章がわかりづらいところがあったため、それもいくらか修正しています。失礼いたしました。
では『武将ジャパン』大河コラムに対する疑問点です。
鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第29回「ままならぬ玉」 - BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン)
1.当時はまだ日本武道が確立できていません。
戦国時代ものなら、忍者の動きとして通じそうではありますが、幕末もので薙刀を使うような場面では、能力を発揮しにくい動きでしょう。
トウの動きに関する記述ですが、ここの「幕末もので薙刀を使うような場面」というのは、具体的にどういうシーンなのでしょうか。
2.組織としての忍者が確立する前の間諜(かんちょう)兼暗殺者である、善児とトウ。目の離せない二人です。
今年は殺陣も素晴らしい。
このコンビはちゃんと人を害することのできる動きです。
攻撃が当たっていないのに相手がわざとらしく倒れる――そんな2021年大河のような動きは極力控えていただきたいものです。
「目の離せない二人です」はいいでしょう。しかし例によって「今年は素晴らしい」「昨年は駄目」のパターンに持ち込むのが、武者さんらしいと言うべきでしょうか。それを言うなら、『麒麟がくる』でジャンプしながら相手を斬るのもおかしいし、『おんな城主 直虎』でも、殺陣がうまいと言うよりは、斬られ役の人がうまく倒れてくれたと思うようなシーンもあったのですが。これ、小檜山氏の方の朝ドラでも似たようなところがあります。
それとこの後の部分で、鼎立を三つ巴と言い換えることはできますとありますが、前者が三者の対立構図であるのに比べ、後者は、それが入り乱れるという意味が、強くなるのではないでしょうか。
3.おさらいしますと、義澄の父である三浦義明にとって、その嫡男は杉本義宗であり、孫が義盛です。
本来ならば義盛の父、そして義盛へとつながるはずの三浦一族惣領の座が、義澄と義村の系統に継がれたことになる。
以下がその系図ですね。
で、この下に系図があるのですが、これは他の記事にまとめた方がいいのではないでしょうか。そもそもここで三浦家の系図を出すより、まずあらすじを完結させてほしいです。
4.本当に、人選はこれでよかったんですか?
やはり三浦義村や畠山重忠を無理にでも入れておくべきだったのでは?
義村を入れたら自由に動けなくなるし、重忠を入れたら比企に遠慮するようになるから、避けるべきだったかと思います。そもそも比企が重忠を入れようとしないでしょうし、入れても北条との対立が激化するもとにもなりかねないし、このシステムも欠員補充が行われているわけでもなく、そう長続きしそうにも見えません。
5.京都では、梶原景時こそ「鎌倉本体の武士だ」と評されていました。
皮肉にも、景時がいなければもう頼家は持たないと判断していたのは、京都ということになります。このドラマの後鳥羽院は目論見が当たったとほくそ笑んでいることでしょう。
だからこそ、頼家に見放された景時を呼び寄せたとも言えるでしょう。京都を見くびってはいけませんね。
6.「これで比企に一矢報いることができた」
と無邪気に喜ぶのはりく(牧の方)。
義時が「そういうことではない……」と釘を刺します。
重い立場になったからには、それにふさわしい振る舞いをして欲しい。比企のことは忘れろと政子も言います。
そんなものは戯言だと言い合うりくと時政。すっかり悪い染まり方をしておりますね。
義時は「それにふさわしい振舞いをしてほしい」ではなく「御家人に範を示し、鎌倉を守ってほしい」と言っています。そして「悪い染まり方」も何も、時政とりくの夫妻は比企への対抗意識が並外れて強いのだから、こう言うのも無理はないでしょう。比企との対立をあまり表沙汰にするなと義時は言いたいのでしょうが。
7.頼家は図面に向かって乱雑にタテ線を引き、所領を半分にせよ、とでも言いたげに「それで対処せよ」と一方的に判断をくだします。
信心深い重忠は、神仏に仕える者をぞんさいにすると天の怒りを買うと困惑。
望むところだと頼家は答えます。今後所領のことは自分で処断する。好きにさせてもらうと言い切るのです。
頼家は、父・源頼朝に似ているようで、そうでもないところもあります。なかなか信心深かった頼朝に対し、頼家はハナから気にしていない風でもありますね。
この時頼家は「所領の広い狭いなどは所詮運、僧の身で欲深いとは片腹痛い」と言っており、それが重忠を煽ったとも考えられますし、またこの行動は、自分に圧力をかけようとする比企能員への反動でもあるでしょう。せめてこの2つについても触れてほしかったです。
8.さすが義村は立ち回りがうまいですね。目立たないようで、じわじわと権力の中枢に食い込んできています。
この間の結城朝光のことでも、自分の存在を知らせることなく景時を追い落としていました。こういう人物は、合議に加えるのではなく、一匹狼的に動かすのがやはりよさそうです。
9.善哉とは、源実朝を暗殺した公暁なのです。
確たる証拠はなく、この男児は「お前は源氏の後継になるはずだった、それが頼朝様の意志」と聞かされて育ちます。
「善哉とは、源実朝を暗殺した公暁なのです」
この大河を観ているのであれば、知っている人も多いのではないでしょうか。
10.頼家に新たな子も生まれて、焦っているのでしょう。りく(牧の方)が、時政を煽ります。
比企の思うままを許してはならない。
善哉すら邪魔者扱いをし、そのうえで「(将軍候補として)どなたか忘れていないか?」と言い募る。
狙いは千幡(9歳)でした。
「頼家に新たな子も生まれて、焦っている」と言うよりは、善哉という比企に無関係の子が生まれたものの、自分達に取ってはメリットがないわけです。一番の得策は、北条がついている千幡を担ぎ出すことにほかならないわけですね。
11.源頼朝と北条政子の子であり、後の三代将軍となる源実朝のことであり、乳母夫は阿野全成と実衣だから北条にとっては好都合です。
何度も書くようですが、全成と実衣が千幡の乳母夫らしく振舞うシーンがあまりないように思えます。武者さん、嫌いな大河だったら、その点についてあれやこれや書いたのではないでしょうか。
12.こうなったらどんな手を使ってでも……と言い出す妻。戸惑う夫。
「何年一緒にいるのですか、察してください!」
りくがノリノリ全開で夫にツッコむのですが……いやぁ、こいつぁ、とんでもねぇ悪女ですわ!
いやはや、前からりくは悪女呼ばわりされているようですが、私はそうも思いません。ただ京育ちであり、この手のことのかけては嗅覚が鋭く(と言うべきでしょうか)、実行力もあり、年若い継室がそうであれば、時政もつい言うことに従うでしょう。時政はちょっと勘が鈍いところもあり、それがりくにこのようなセリフを吐かせているように見えます。
13.三谷さんは随分と艶っぽい作風になってきましたね。
そもそもが夫婦の会話である以上こうなるでしょうし、これは『真田丸』でもそう変わらなかったかと思います。
14.白湯を淹れる全成の姿が映ります。
まだ鎌倉にお茶は到達していなようですね。
栄西が茶の栽培を始めてからまだ10年足らずで、そこまで普及しているわけではありません。無論それ以前に貴族の間などで飲まれていたことはありますが、第一、戦国時代くらいまでは武士階級でも白湯を飲んだりしていました。庶民の間にも茶が行き渡るのは、江戸時代に入ってからです。
それとこの時白湯を注いでいるのは、全成ではなくりくですね。
15.臆病で慎重で現実的。そんな全成の胸に、何か灯ってしまいました。
彼は権力欲は薄い。けれども、別の欲求はありました。
(中略)
妻にとっての琵琶とは、結局、結城朝光に会うための口実だったのか? そんな疑念が渦巻いてしまう。
離れてしまった妻の心を繋ぎ止めるためには、どうすればよい?
夫妻が育てた千幡を後継にすればよいのか?
妻は野心家でもあるし……と、でも考えたのでしょうか。この悲しい夫は、ついに呪詛を始めてしまうのでした。
この全成が実衣によせる思い、このシーンではそこまで描かれてはいません。呪詛を引き受けた彼の心の内が明らかになるのは、最後の方になってからです。ただ全成が悩んでいることは感じ取れます。あと文にある「百檀大威徳法」に何か意味があることも。
16.彼ら(注・義時と頼時)の愛読書『貞観政要』には、魏徴の言葉として以下のような答えの一例があります。
古より、帝王、之を艱難(かんなん)に得て、之を安逸に失わざるは莫(な)し。守成難し。『貞観政要』
古来より、為政者が国難に遭った際、その対処を怠っていたというのに国を失わなかったことはありません。守成こそ難しい。
頼時はこの困難を乗り越えてこそ、先が見えてくることでしょう。
ここでまた漢籍です。これも前回の「忠臣は二君に仕えず」のように、ドラマ本編中に出て来るものならまだ納得します。しかしドラマそのものには無関係なのですから、あらすじの後の方で書いてはどうなのでしょうか。それとこの時の頼時は、まだ為政者ではありませんね。
続きは次の投稿にて。