藤井雄一郎代表強化委員長のインタビュー、後編はサンウルブズ関連のインタビューです。今回は協会というより日本ラグビー界の問題点ともいえます。
日本ラグビーの交渉役、藤井雄一郎。
<後編>サンウルブズの可能性と存続。
これまで何度も書いてはいますが、サンウルブズは今シーズンが一応スーパーラグビー最終シーズンとなります。しかし藤井氏は、代表強化にスーパーラグビーは不可欠であり、撤退どころか逆に日本は複数のチームを持つべきで、また撤退を唯々諾々と受け入れることもないと主張しています。
SANZAAR(南ア、NZ、オーストラリア、アルゼンチンによるスーパーラグビーを運営する組織)が言って来たことなんて、めちゃめちゃです。『15チームだと日程が組みにくい。それはサンウルブズが入っているせいだ。サンウルブズを抜いた方がリーグの価値があがる』なんて、どう考えてもいちゃもんですよ(笑)。
実際この撤退が決まった時、ちょうど1年ほど前になりますが、ラグビー関連SNSの掲示板で、SANZAAR、特に南ア(ワールドカップの投票で日本に敗れ、意趣返しをしたという噂あり)はやっていることがヤクザだなどという書き込みもありました。これに関しても、やはり交渉能力のなさが原因となっていると藤井氏は見ています。サンウルブズを運営する社団法人ジャパンエスアールの前の首脳陣は、この時何ら交渉をしていませんでした。
さらに今のトップリーグでも、参戦したがっているチームは複数あること、海外は寧ろお客が少ないこと、最終的に南アが離脱する可能性もあることから、そうなれば日本の存在は重要になってくると語っています。実際スタジアムのキャパにもよりますが、そこそこのカードなのに空席がかなり目立つ試合もあります。しかも撤退を言われてはいるものの、ワールドカップで日本の置かれた位置が変わったこともあり、今後どうなるかわからないのが実情のようです。
『SANZAARはすべてカネで動く、あんなカネは出せない』と言う人もいますが、商売を優先するならなおさら、日本を巻き込んだ方が価値があがる。『そうした方がアナタも得するよ』と口説けば、まだまだ情勢が変わる可能性はある。来年をどうできるかはさすがに難しいタイミングになってきましたが、2年後、3年後を考えれば、そこまで見込んだ交渉をするべきです。2年後に復帰できれば、次のワールドカップへの準備には十分つなげられる。
さらに藤井氏はこうも話しています。
もちろん、日本協会がサンウルブズの価値を再評価する必要はあります。財務の安定は不可欠なので、協会およびスポンサーによる財政的支援は必要です。
私としては、このサンウルブズのPRがまだまだ可能であるにも関わらず、どこか中途半端な印象があるのが疑問です。トップリーグと代表以外に、ラグビー界がこういうチームもあることをもっとPRすれば、関心もまた高くなるはずでしょうし、それだけ後押しも期待できなくはないでしょう。何せ日本初のプロチームということで、どうすればいいのか図りかねているといったところでしょうか。また復帰の可能性はあるというのは、CEOの渡瀬裕司氏の意見とも共通する意見です。
「2021年から、これまで通りのサンウルブズとしての形を見直すのは難しいでしょうが、それでも何らかの形でスーパーラグビーへの関与ができないか、その可能性もゼロではないと思っています。リーグの見直しというのは、必ずありますから。これまでもチーム数が変更になることなどはありました」
(渡瀬裕司氏、Rugbyぴあ~がんばれジャパンラグビー!特集号)
前出南アの離脱の可能性ですが、南アとオセアニアとでは、時差がかなりあります。南アの場合ヨーロッパと同じタイムゾーンであり、そのためにはヨーロッパと連携した方が、生中継の視聴率も上がる可能性が高いわけです。実際かつてスーパーラグビーに所属していた南アのチームは、ヨーロッパ勢とプレイしています。たとえばNZと南アの試合が行われた場合、NZは夕方である程度の視聴率が見込めても、南アは朝の時間帯ですから、当然TV視聴にそれが影響します。
ラグビーの場合、オセアニアが強いこと、さらに日本がその地域と同じタイムゾーンにあることから、この利を生かすべきでしょう。試合を積極的に行うことで、TVでの生観戦の視聴率はかなり上がりそうです。(無論時差を逆手に取ることもできます。ヨーロッパの昼間の試合を週末の深夜にのんびり観るのは、これはこれで楽しみではあります)
ただしこの場合、アルゼンチンがどうなるでしょうか。本来ならば北米勢との試合が望ましいのでしょうが、北米は2027年のワールドカップが予定されているものの、現時点でそこまで強くなく、プロリーグのメジャーリーグラグビーも、やっと軌道に乗り始めたところです。
ともあれ、日本が数チームを擁してスーパーラグビーに再び乗り込めるのなら、それはそれで喜ぶべきことでしょう。海外勢にしても1試合のためでなく、複数の試合のために来日した方が効率はいいのですから。(この項続く)