『はたらく細胞BLACK』第7巻続きです。
<転移、放射線、抗がん剤。>
この身体は自分たちを拒絶したが、自分はまだ生きていると言いながら、がん細胞は地上に出ようとしていた。その時強烈な光が彼目がけて浴びせられ、肝臓リンパ節に高エネルギー反応が見られた。放射線療法だった。しかし他にも生き残ったがん細胞たちがいて、肝臓、腎臓や頭皮などでも目撃情報があり、明らかに転移が起こっていた。身体中に散らばった彼らを退治するため、ついに絨毯爆撃(抗がん剤、化学療法)が行われ、細胞たちも巻き添えになってしまう。しかも副作用で、ただでさえ少ない髪も抜け落ちてしまった上に、キラーT細胞たちも負傷しており、免疫力が落ちていた。
その中で例の若手キラーT細胞が、がん細胞と戦いに行くと言い出す。そして一般細胞たちは、なぜこのようなことが起こるのかと怒りをつのらす。AA2153は、この爆撃はがん細胞を退治するためのものだと説明するが、一般細胞たちは、この身体の勝手に付き合えないとうんざりしていた。そこへDA4901が、この痛みはこの身体が生きて、がんと闘うという決意の表れであると言い、自分にできることをすると言って酸素運搬に出かけるが、その時爆弾が降ってくる。肺も機能が落ち、毛はすっかり抜け落ちたが、そんな中でも赤血球たちは酸素を届けていた。
酸素を届け終わったDA4901は血を流していた。クールな考え方をする彼は、今までこの身体はどうでもいいと思っていたが、結局それは、生きることも死ぬことも真剣に考えていなかっただけだった。今の彼は死が怖くてたまらなかったが、だからこそ、生きることを選んだこの身体に頑張れと言いたいと力を振りしぼる。その時またも爆弾が降って来て、その後の彼は行方不明となる。無論AA2153も、がん細胞たちに追われながらも酸素を運んでいた。そこへ例の若いキラーT細胞が現れ、この爆撃でがん細胞もかなり弱っているからもう一撃したい、そのためにも酸素を頼むとAA2153に伝える。そして、彼らの目の前にがん細胞が現れる。
<免疫療法、存在、託されたもの。>
AA2153は酸素を受け取りに行く、がん細胞はこの期に及んで、せっかく赤血球さんに会えたのにと白々しく言うが、キラーT細胞は、お前らは生きることも許されない存在なんだよと言葉を浴びせる。するとがん細胞は触手を出し、これによってキラーT細胞の動きが阻止されてしまう、がん細胞が出したのはPD-L1で、これがキラーT細胞のPD-1と結合するため、キラーT細胞の攻撃を抑え込めるのである。しばらく両者のにらみ合いが続くが、その間AA2153は酸素を取りに行き、また肝臓では抗がん剤を代謝すべく、血液の浄化が始まっていた。
AA2153は、後輩NC8429が座り込んだまま動けなくなっているのを見つけ、すぐ離れるように言うが、彼は自信を完全に失っていた。その時がん細胞がAA2153に襲い掛かり、酸素を横取りしようとする。AA2153はがん細胞に捕らえられるものの、NC8429に酸素を渡し、必要なことはすべて教えてあると言い、行けと促す。やがてNC8429はキラーT細胞に酸素を届ける。あの赤血球はどこだとキラーT細胞は尋ねるが、彼は無言のままでいたため、キラーT細胞は何が起こったのかを察する。相変わらず攻めあぐねるキラーT細胞だが、その時ベルトが装着される。外部からの免疫チェックポイント阻害薬で、これによりがん細胞のPD-L1との結合が防がれ、再び攻撃が可能になった。
その頃AA2153はがん細胞と会話を交わしていた。自分はがん細胞としての存在を示せた、何度でも戻ってくると言うが、AA2153は、何度でも打倒し戦う、それがだめなら共存すると断言する。その後キラーT細胞はがん細胞を倒し、体内は元の平穏を取り戻したものの荒れ果てており、NC8429は今後どうすべきか悩んでいた。しかし頭皮に向かった彼は、1本だけ毛が生えているのを目にする。頭皮の細胞が、酸素を運んでくれた赤血球のおかげだと言うのを聞いて、彼は、あの時自分に託されたのはこの身体の未来だったとわかる。そして1196は、肺が細菌で暴れているため招集に応じる。一旦収まったかに見えた体内では、またもがん細胞が暴れ出そうとしていた。
がんとの闘いは一向に収まる気配を見せず、放射線療法が行われるものの、それにもめげず彼らはあちこちに散らばり、今度は抗がん剤の投与が行われます。この抗がん剤は、細胞たちに取っては絨毯爆撃ともいうべきもので、一般細胞たちはこの身体の勝手に付き合えないと、不満をあらわにします。しかしこれは今までの不摂生とは違い、この身体が生きようとする決意でもありました。そして赤血球たちは酸素を運び続けますが、DA4901は行方がわからなくなり、AA2153もがん細胞につかまり、後輩NC8429に今後を託します。
またキラーT細胞は、がん細胞を相手に戦うものの、自分たちが持つタンパク質(PD-1、抑制性受容体)が、がん細胞の出すタンパク質(リガンド)PDL-1と結合してしまうため、相手を倒すことができません。その時外部から、免疫チェックポイント阻害薬が取り込まれます。作品中のキラーT細胞のベルトがその阻害薬で、PD-1とPDL-1の結合を阻止するため、キラーT細胞が自由に攻撃できるようになるわけです。所謂免疫療法です。これによってがん細胞は、一時的に壊滅状態に陥りますが、AA2153との会話にあるように、またも戻ってくることになりそうです。
ところでNC8429、赤血球の仲間たちは次々といなくなり、一人きりになった彼ですが、頭皮で一本だけ髪が生えているのを見て、また、頭皮細胞が酸素を運んで来た赤血球(恐らくDA4901)に感謝するのを聞いて、自分に託されたのはただ酸素だけではなく、この身体の未来であったことに気づきます。とはいえ荒れ果てた体内の復興はまだまだで、肺で細菌が暴れ回り、白血球に招集がかかることになります。
しかし本編に比べて、やはりこちらのがん細胞の暴れ方、赤血球たちがどのような目に遭うかの描写はかなり迫力があります。結局がん細胞によって4人の赤血球がいなくなってしまい、ちょっと頼りなさそうなNC8429にすべてが託されることになりました。本編の場合、特に第5巻では、がん細胞がかなり大きくなっていたと思われますが、手術や薬、それによる細胞たちへの影響は描かれていないため、いささか不完全燃焼に終わったきらいがあります。
あと、白血球を除く免疫細胞は、こちらでは本編ほどには描かれていませんが、この巻でキラーT細胞が大々的に登場します。特に、まだ実戦経験もないナイーブT細胞が、活性化した後一人前のキラーT細胞となり、がん細胞と本格的に戦う様は、赤血球たち同様、細胞の成長物語といった雰囲気があります。本編やフレンドでは、白血球とのライバル関係が描かれることが多いキラーT細胞ですが、こちらではウイルスやがん細胞退治専門の、独立した、時にNK細胞と共闘する存在の免疫細胞として描かれています。
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